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社長が訊く 〜任天堂で働くということ〜

目次

開発環境コーディネータ編

Vol.2

取締役社長 岩田 聡 / 森脇 友城 2003年入社 / 島田 健嗣 1992年入社 / 田原 靖之 1994年入社

2 DSの話〜『脳トレ』制作3ヵ月の秘密

岩田

DS用に3Dのライブラリやデータを作って、軌道に乗せるだけでも
大変だったと思いますが、それ以上に、ユニークな部分で
いろいろ取り組んでくれましたよね。


まだ何に使うかぜんぜん決まっていないうちに、
「音声認識と手書き文字認識を研究して良いですか」と
相談に来てくれましたが、当時、どういう思惑があって、
今日の動きはどこまで読めていたのかというのを
初めて聞いてみたいんです。

島田

DSにマイクとタッチパネルがつくという時点で、
音声認識とか手書き文字認識の話は当然出ていましたし、
開発部門からも、「もしかしたら使うかもしれない」という話は
聞いていたので、下調べはしていたんですけれども、
いつから本格的な準備を始めるかは決めていませんでした。


その当時は、「そんな技術は社内の誰も経験していないので、
実際に使うことになったら大変じゃないか」という話をしていたところ、
岩田さんが2004年1月に初めてDSの発表をされたときに
「音声認識と手書き文字認識ができます!」って言われたんですよ。
それまでは「どっかでやらなアカンなぁ」という感じだったんですが、
そこからは「これは本格的にやらなアカンな、ヤバイなぁ」と(笑)。

岩田

電子手帳などの他の商品で使われている技術を見ていましたから、
もちろん発表した時点で技術的にできることはわかっていたんですが、
それをDSに搭載したときにゲームの中でどれくらいのものが
作れるのかということは、まだ不明確な段階でしたね。

島田

当時調べていた手書き文字認識技術の中で、実際使えそうなものはある
というのはわかっていたんですが、それがいろいろな言語で動くのかとか、
そういうところまではまだ調べられていない状態でした。

岩田

こちらからどんどんいろんな会社にコンタクトしたんですか?

島田

当社のリリース情報を見て、メーカーさんの方から
我こそはと来てくださいました。
環境制作部のこういった仕事は、半分営業の仕事なんですよね。
たくさんの売り込み案の中から、いくつか実際に利用できそうなものを
見極めて、DS用に修正してもらって、最終的には
松下電器さんでということになりました。

森脇

それで、松下電器さんに提供いただいた手書き文字認識の
ライブラリと、送られてきたサンプルプログラムを使って、
DSでデモソフトが動かせるように調整した後、
社内に向けて営業をしていきました。

岩田

いつ頃から動いていましたか?
私が1月にDSのことを外部に発表してすぐに、島田さんたちが
私のところに来て、「早めに開発しておきましょう」と提案してくれて、
「今は何に使うかわからないけれど作っておきましょう」
と決めましたが、1週間や10日でできるものではないので、
もっと経ってからできてきましたよね。

島田

最初のものはDS発売前の秋頃にはできてたんですね。
ただ、ちょうど同時発売ソフトの立ち上げもサポートする必要があったので、
こんなこともできるという感触を僕たちの中で確かめながら、
ちょっとそのまま置いていたんです。
それで、同時発売ソフトのサポートがひと通り終わって少し楽になった
年末頃に『脳トレ』の最初の話が出たので、すぐに動き出すことができました。

岩田

ちなみに、『脳トレ』の試作品は、ディレクターの河本さんが
独自に作った方法で数字を認識していて、
一応認識しているんだけどまだストレスを感じる状態でした。
それでも、それを川島先生のところに持って行ったら「面白い!」と
言ってくださったわけです。


ちょうどそういう話が持ち上がった2004年12月頃に、
ライブラリの準備ができてたんですね。


そもそもこのソフトは、社内の部門横断の
『ユーザー層拡大プロジェクト(※1)』で研究されて、
試作したんですが、その後の本制作は、
なんと環境制作部で作ろうということになるんですよね。


それは、環境制作部で手書き文字認識や音声認識のライブラリを
ちょうど作っていて、これから仕上げないといけないということと、
この技術がこのソフトで初めて使われるという理由で、
「ここで作るのが一番効率が良い」ということになったからなんです。
これが『脳トレ』が3ヶ月でできた最大の秘密なんですけどね。

島田

『脳トレ』のときにもうひとつラッキーだったのは、
松下電器さんの技術担当の方が、すごく任天堂のことが好きな方で、
つきっきりで熱心に対応してくださったんですね。
「任せてくれ!」って。

田原

「ここまでやる必要はないかもしれないんですけど、がんばって
チューニングしてきました!」って、
自分のことのようにがんばってくださいましたね。

岩田

そういうムードに人を巻き込んでいくのは
みなさんの仕事でもあると思うんですよ。
人との相性が良かったということだけでなく、
こちらが大事だと思っていることをちゃんと伝えて、
実際に改善してもらったら、こんな風に良くなった
というのが伝えられているから、相手の方もよりやる気になって、
どんどん力を入れてくださったわけですよね。

島田

途中から「こんな風にやっているんですけど」とモノを見てもらったんですね。
そしたら相手の方にこちらが何がしたいのか伝わって、逆に相手の方から
「こういうこともできますよ」という提案をしてもらえたりしました。
ありがたかったですね。

岩田

手書き文字認識技術を、一般的な電子機器で使うのと、
ゲームで使うときの違いって何ですか?

森脇

ゲームの場合は正解・不正解を判断しないといけないということです。
子どもの書くつたない字や、急いで書いた雑な字にも
素早く対応できないといけない、というところを意識して、
ゲームで使うためのチューニングをしました。

岩田

『脳トレ』の何が厳しいって、早解きじゃないですか。
早く書けば乱筆になるに決まっているのに、
その字を的確に判断しないといけないわけです。


でもそこがうまくいったので、
『脳トレ』はお客様に認めていただけたんだと思うんですよ。

島田

一番サクサク動いてくれる点を評価して選んだ松下電器さんの
手書き文字認識技術ですが、ゲームで使うにはまだストレスを感じる
ものだったので、手書き文字認識技術側のチューニングと、
ゲーム側の工夫というのを同時に行いました。


ゲーム側とライブラリ側が同じベクトルを向いて話し合っていて、
ゲーム側が持っていないものを松下電器さんが持ち寄って、
松下電器さんが持っていないものをゲーム側が持ち寄って、
ということがうまくできましたね。

岩田

手書き文字認識と同時に音声認識の準備もしていましたし、
それが終わるなり、漢字認識とか、音声合成とか、
次々作っていましたよね。
次々やっていく原動力は何だったんですか?


漢字認識の技術などが用意されてなかったら
もっと脳トレ』はなかったし、音声合成の技術がなかったら
お料理ナビ』はないんですよね。
もちろん、ソフト側からのアイデアもあるけれど、環境制作部が
提供したネタからソフト制作が始まった面もあるんですよ。
DSの一連の流れでは特に多いですよね。

田原

音声認識や手書き文字認識といったいろいろな技術をメーカーさんが
紹介してくださるので、わりとネタをいっぱい持っておいて、
ソフト部門から相談があると情報を出していく、ということを
パラレルにやっていました。

島田

DSは世界で展開されているので、そういう技術をいろいろな言語に
対応させなければならないのが大変ですよね。


ドイツにも出張で行きました。
そこでやったことは、データ取り自体というよりは、それまで
NOE(Nintendo of Europe)のメンバーとあまり密に
仕事をしたことがなかったので、彼ら自身がどんな人たちで、
どういう仕事をしているのかを知り、
データ取りというのがどういう仕事で、どんな目的で、
どんなことに気をつけなければいけないかを
しっかり話し合うということです。


みっちり2日間話し合って、実験的に2、3人のデータ取りをして
帰って来ましたが、もし行かなかったら、
できなかったか、かなり遅れていたと思います。


実は、NOAには特にこのために行ってないんですよ。
NOAは普段からやり取りしてるから大丈夫だろうと思っていたんですが、
結局何回かやり直しになったんですね。
やはり、このために直接会って、意思疎通をしておくべきでした。

岩田

そういう意味では、コーディネートの仕事は国内だけじゃなくて、
海外に向けてもつながっているわけですね。
他にも印象に残ることはありましたか?

森脇

『脳トレ』発売後に取り組んだ、漢字認識用のデータサンプリングも
大変でした。漢字はものすごく文字数が多いので、
大勢の社員に書いてもらったんです。200文字くらいを約500人に。

田原

見たこともなくて筆順もわからないような漢字も
書いてもらったのですが、作ったプログラムにバグがあって、
たくさん漢字を書いた最後の方でフリーズしてしまって、
「止まった」っていう電話がいっぱいかかってきたんです。
謝りながらもう1回やってもらったのですが、
おかげでたくさんデータが集まって結構良いものができましたね。

岩田

漢字認識は、率直に想像以上の出来で、最初に触ったときに
びっくりしました。それで、それを見て、「『もっと脳トレ』は、
『脳トレ』と重なったトレーニングは入れずに、
漢字トレーニング中心にしよう」と決めて、
ああいう方向に進んだわけです。
それがその後で『漢字そのまま DS楽引辞典』に使われたり、
ソフトメーカーさんが作られた『漢検』のソフトにも
使われていくんですよね。

田原

そういう風に、苦労の成果が目に見えるとモチベーションが上がりますね。

※1:ユーザー層拡大プロジェクト
普段ソフト制作に直接関わりのない社員も含めて様々な部署からメンバーが集まり、
新しいソフトの企画を行うプロジェクト。

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