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社長が訊く 〜任天堂で働くということ〜

目次

製品技術編(1)

Vol.5-1

取締役社長 岩田 聡 / 森 真吾 1991年入社 / 高田 対馬 1996年入社 / 和田 将樹 1992年入社

1 踏まれても、落とされても…

岩田

ではまず高田さん、担当している仕事について
話してください。

高田

私は、任天堂製品の機構に関する試験・評価を担当しています。
落ちても簡単に壊れないか、お客さんが遊んでいて
指をはさまれないかなど、世に出す商品として求められる
耐久性や安全性などについて確認するため試験を行います。
小さなお子さんからお年寄りまで幅広いお客さんが
どのような使い方をされて、そのとき何が起こるかという
視点で行います。

岩田

試験で押さえるポイントはどのように決めるんですか?

高田

基本となっている試験がひととおりあるのですが、
それ以外にも製品が実際にどのように使われるかを想定して、
どういう試験をやっていくべきかを製品ごとに決めていきます。
会議を行い、製品技術部門と開発部門とで
経験や勘もふまえて相談をしながら、評価項目や
その基準も設けます。

岩田

高田さんは製品技術と開発と両側の部門を
体験されているので、それぞれの立場から感じるところを
聞かせてください。

高田

できるだけ立場によって言うことが変わらないように
しようということですね(笑)。

一同

(笑)

高田

どうしてもそこは立場によって相反するところがありますので。

岩田

実際、何が相反するんですか?

高田

例えば開発で設計をしていますと、小さく格好良くっていうのが
一番で、その中で可能な限り強度や信頼性というものを
大事にしようと思うんですけれども。
強度や信頼性に最も重点をおいてみると、
やっぱり製品は大きく、えー…。

岩田

大きく、厚く、やぼったく、重く、かっこ悪くなる(笑)。

一同

(笑)

高田

そこが製品技術部門と開発部門とで思いが一番
矛盾するところですね。

岩田

私はいつも評価項目の決め方がすごいな、
面白いなと思ったり、ここまでやるんだなと思ったり
するんですけれども(笑)。
具体的にどういった試験を行うのですか?

高田

設計をすすめる段階で、合格するのが難しい試験が
いくつかありまして、そのひとつに「落下試験」というのがあります。
据置機の場合は1メートルの高さから落とすんですが、
携帯機は1.5メートルの高さから10回ほどですね。

岩田

以前、製品評価の考え方について
当時の部長から聞いたことがあるんです。

「携帯機は胸ポケットに入れるから、何かの拍子に
落としてしまうんだ、そのときに壊れちゃいけない。
だから1.5メートルの高さから落としても壊れないように
設計しなきゃダメなんだ。
それから、子供さんは自転車のかごにゲーム機を入れて
急ブレーキをかけるかもしれない、そのときかごから
落ちる先はコンクリートなんだ!」と。
それに対して開発者は、
「まぁなにも、コンクリートに落とさなくても…。」と
言うんですけどね(笑)。

1.5メートルの高さから落として液晶が壊れないように
するのは、やはり設計的には相当に難しいんでしょうね。

高田

はい。考慮して作っていてもなかなか試験は
一発でOKにはならないですね。
試行錯誤を何度も繰り返して、細かいところもあわせると
多いときで10種類以上の改良を加えます。
例えば耐久力を上げるために、中にスポンジや緩衝材を
入れたり、位置を変えてみたりと繰り返して
少しずつ良くしていきます。

岩田

こういった考えに基づいて、根気強く試験と改良を
重ねて、耐久性を高めていくわけですね。

高田

開発からは過剰品質なんじゃないかって言われることも
あるんですけれども、そこでちゃんと意見は聞きつつ、
本当にそれが適正なものなのかを考えつつも、
絶対譲らないところは、譲らないっていう意思をもたないと
いけないと思います。

岩田

「過剰」ということにひるまないことが大事なのかな?

高田

…やり過ぎかなと自分自身思うこともあるんですけど(笑)。

一同

(笑)

高田

例えば落下試験では10回と言っていますけど、
実際は100回落として平均値を取っています。
10回だけだと、たまたま10回OKなだけかもしれないからです。

数十台といったサンプルを上限100回まで落としてみて、
平均何回で壊れるか、ミニマム何回で壊れるか、
このロット(※注1)の場合はどうかと、そこまでやっています。
そうしたときに、やはり良い評価結果が出たものが
世の中では壊れにくいんですよね。

岩田

なるほど、そういう結果がはっきり出るんですね。
ある程度、相関関係が見えてくるから、そういう試験が
無駄じゃないんだっていうのが実感できるんですね。

では、丈夫にすること以外に、機構を担当する人が
同時に考えることってなんですか?

高田

安全性ですね。
法律や規格でも定められているんですが、
とがっているものや、踏んだりして簡単に折れるものだと
怪我をしやすいとか、ちょっと引っ張っただけで簡単に
取れてしまうと、小さなお子さんが飲み込んでしまう
危険性があるとか、そういったところを第一に見ますね。

開発部門もそういうことを考慮に入れて作ってはいるんですが、
それ以上に我々は使い手視点で確認します。
丈夫に作るだけではなく、
「壊れたときに危険ではない壊れ方をするように作る」
というところまで考えるのが我々の仕事です。

岩田

この仕事で大変なところってどういうところですか?

高田

スケジュールのやりくりですね。
トラブルがあると、元のスケジュールに戻すのが大変なんです。
順調に進められる商品というのはあまりなく、
必ずどこかに悩まされる要素が入っていて、それに
臨機応変に対応していくというのが難しいですね。
定められた品質レベル基準を予定した期間内に
達成しないといけなくて、期限の日が刻々と迫ってくるのに、
いろいろ試してもなかなか評価で思うような結果が出ないときに
すごいプレッシャーがありますね。
でもその分、達成できたらうれしいんですけど。

岩田

先ほどの話でもありましたが、最近では、丈夫さと
デザイン性のどちらも追い求める理想が高くなって、
いわば新たなチャレンジをしているので、
製品評価も更に難しくなってきているんでしょうね。

高田

そうですね。
でも開発部門は製品技術部門の信頼性評価が厳しいと
いうことを重々承知していますので、強度と耐久性に関しては、
設計段階からものすごく考慮しているなと思います。

驚いた例としては、Wii本体の上ハウジングに、
トタンのような形をした金属部品がついているんですけれども、
あれは実はもともとEMI(※2)対策用のシールドでなくて、
本体を誤って踏んでしまったときでも
すぐに壊れてしまわないようにつけてある部品でして…。

岩田

…。 えっ、Wiiは踏むものじゃないのに、
踏まれることを想定して設計されていたんですか。

高田

Wii本体を初めて開発部門が持ってきたときに
その部品がついていたので、「これは何ですか?」と聞いたら、
「踏みつけ対策や」と(笑)。

一同

(笑)

高田

実際、Wii本体が数ミリほどぶ厚くなるはずなんですが、
それでもそれは必須だということで、開発部門が
設計の段階から入れていたんですよね。

岩田

私があれだけ「本体は薄く作って」って言ってたのに(笑)。

一同

(笑)

高田

その金属部材を取りつけると、何キロの体重の人が
踏んだらどれだけ変形するかというのをコンピュータで
シミュレーションもしたうえでその設計になっていると
いうのを聞いて、開発部門の気合と言いますか、
意地でも試験を通してやろうという意志の強さを感じました。
その結果、人が誤って製品を踏んでしまった場合を想定して、
80キロの重さで1分間製品を踏み続ける
「静荷重試験」という難しい試験にも無事合格しました。

ちなみにフォローしておきますと、そのトタンのような部品は、
後にシールドとして大きな効果を得ましたので、
強度だけではなくEMI対策にもなりました。

※1:ロット
同一条件で製造された製品の集まり。
※2:EMI
電子機器が発する電磁波が、周辺の他の電子機器の操作に影響を及ぼす現象。

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