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任天堂株式会社 経営方針説明会 質疑応答

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Q1
Wiiの正確な発売価格および発売月の発表はいつ頃になるか。また、基本的に赤字にならない価格で発売するという考えで良いのか。

岩田: 正確な価格や発売日については、今年の9月頃までにはお話しする必要があると思っています。というのは、第4四半期に出す、第4四半期イコール10月から12月の間ですから、その前に当然お話しないといけませんので、9月までには何らかの形でそういう機会を作ろうと思います。また、価格が赤字にならない値付けなのかどうかということについてですけれども、ゲーム機というのは、最初は赤字が当たり前というのは、妙な常識だと思うんですね。もちろん、近い将来、ものすごく劇的なコストダウンが見込めるのであれば、最初に少し赤字が出てもトータルとして、ビジネスとして成立するという考えのもとに、そういう考えも一つありうると思うんですけれども、ただ、どんどんそれがエスカレートしていまして、恒常的にハードで赤字を出すのが常識であるかのような考え方があるのは、そういう考え方をお持ちの方もいらっしゃるようですけれども、任天堂はそういう発想とは、距離を置いております。実際に、じゃあ我々が赤字になるのかならないのかということについてですけれども、1円も赤字にならないかどうかはわかりません、が、巨額の赤字がハードで生まれるということはないようにするつもりです。また、そのことは結局どこかで取り戻さないといけないわけですから、むしろ私達はWiiのビジネス全体で、初年度から健全なビジネスが展開できるということを前提に考えております。

Q2
ゲームキューブのときを思い起こせば、サードパーティの前評判はかなり良かったと思うが、今回Wiiの発売前とゲームキューブ当時の発売前と比べた場合、サードパーティへの対応や、サードパーティの評価の違いなどはあるのか。
また、製造委託費に関するスキームは、Wiiになってゲームキューブの頃と変わるのか。

波多野: ソフトメーカーさんは、先ほど岩田の話の中でありましたけども、多くのソフトメーカーはグラフィック重視という方向が主流だったと思います。そういう中で、ここ一年ぐらい、特にDSの昨年の販売の推移を見ていて、やはりアイデアというのは非常に重要だというご意見が大分主流になって来て、今回のE3で今日ご出席の方の中で行かれた方はお分かりかと思うんですが、たくさんソフトメーカーが出展されている中で、任天堂だけが、違った展示というか違ったコンセプトの展示だったと思います。(ソフトメーカーさんが)今まで悩んでいた、あるいは今後どうしようかと迷っている中で、お考えをまとめられる上で非常に参考になった、というご評価だと思います。以後、国内のソフトメーカーさんは、ほとんどと言っていいくらい、Wiiについての細かい技術説明を聞きたい、そして、E3で展示されたソフトを是非一度、E3に行かなかった開発者達に、見せてほしい、紹介してほしい、実際体験もさせてほしい、そういうソフトメーカーさんが圧倒的に増えてまいりました。そこで、私どもも準備の都合もありまして、先月の末から今月の20日くらいまでかかるかも分かりませんけれども、東京の支店と、それからご希望であればもちろんソフトメーカーさんの開発者のもとへ行きまして、皆さんにプレイをしていただいて、アイデアを出していただこうと、体験会を実行中でございます。きっとアイデアを出して、新しいソフトを作っていただけると思っておりますし、私どもも、そういう方に対するご協力は惜しみなくさせていただこうと思っております。開発ツールも非常に安い価格で提供しようと思っております。20万ちょっとくらいを考えております。OEMの価格についてですが、これは原価が明確に私の方に来ていないんですけれども、一応考え方は、ゲームキューブとほぼ同じ、まあそれぐらいの価格で、考えております。それ以上の制限は特に考えておりません。

Q3
4年前(2002年)の経営説明会で、岩田社長は「ソフトの低価格化は業界の崩壊に繋がりかねないと危惧している」、「価値がある商品を作れば、価格は下げなくても大丈夫なんじゃないか」というような話をした。今日の話ではWiiではいろいろな価格帯のソフトが出てくるように思えるので、ソフトの低価格化について、もう少し説明してほしい。

岩田: ソフトの低価格化には反対であるということを私が申しあげたにもかかわらず、任天堂は脳トレを2,800円で売っていることへのご質問じゃないかと思うんですけど、私が、ソフトの低価格化に危惧を持っておりましたのは、本来、ボリュームをたっぷり作り、ものすごくコストをかけて作って、最初は非常に高い値段で売られたソフトが、非常に短い時間の間に、どんどん値段が下がるという流れがですね、非常に悪い循環を生んでいるのではないか、というポイントにございます。ソフトというのは表面上のハード的な原価ではなくて、その上に載った無形のものの価値で、実際に光ディスクそのものを作るには、そんなにお金がかからないのに、それ以上の値段を認めて買っていただいている、ということが成立しているわけですから、その意味で、イタズラに値段を下げたり、あるいは高かったものをあっという間に値下げしていったりすれば、それは価値がどんどん下がって不健全じゃないですか、と言えると思います。私どもは、一方で、ソフトには、ソフトによってボリューム感に応じた、テーマや内容に応じた、あるいは場合によっては、それは開発に要したエネルギーや時間や、最終的には開発コストと言えるかもしれませんが、そういうものに応じた、適正な価格帯というのはあるのではないかと思っています。あらゆるものが、例えば、今でしたら携帯型のゲーム機は4,800円というのを私どもは一つの標準価格帯においていますが、「全部4,800円です」としたときと、その全く新しい方に興味を持っていただくために、非常にシンプルでコンパクトに作ったものを違う値段帯、安い値段帯で興味を持っていただくというのとでは、広がり方が全く違うと思うんですね。逆に言えば、かつてゲーム機を普及させようと思えば、ハードの値段を下げるか、ソフトのおまけをつけるかしかないっていうのが業界の常識であったのに、今回DSでは、2,800円のソフトで遊びたいために、15,000円または16,800円のハードを次々買っていただけたという新しい流れができたというところに価値があると思っています。で、テーマごとにあるいはボリュームごとに、適切な価格帯を選びたい、そして一度つけたものは、未来永劫変えないという必要はないでしょうけども、例えば5年前、10年前のものであれば、当時と同じ値段である必要がないのですが、半年たったら値段が下がっちゃう、9ヶ月たったら値段が下がっちゃうでは、「早く買ったら損だ」、ということをお客様がどんどん学習しますので、ますます新作が売れにくい流れを作ってしまう、ということで、そこに一線をおきたいということですね。

Q4
Wiiの3年後の目標販売台数は、何台ぐらいを目指しているのか。

岩田: 今回、Wiiで何台売りますという宣言は、今のところするつもりはありません。が、ゲームキューブよりはるかに売れないと、これは失敗だというふうには思っています。また、ゲームキューブより売れるか売れないかというような次元でものを考えているぐらいなら、この仕事を続けていかないほうがいいわけですから、当然、ゲームキューブのときより、はるかに実績を残せるように努力したいと思います。

Q5
あるゲーム会社の人が、Wiiは、「野球のルールでやっていたら、急にサッカーのように別のルールで戦うようになった」というようなことを言っていた。
これまでのDSとかゲームキューブとか、スーパーファミコンとか、いろんなハードが登場したと思うが、今回のWiiとそのゲームソフトに対するユーザーの反応というのはこれまで以上と見たらいいのか。

宮本: 僕自身はちょっと観念的になりますけど、ものを作っているという意味ではあまり変化したとは思っていないんですよ。基本的には面白いものを作ろうというなかで、もともとコンピュータでものを作ると、ソフトウェアを触るだけで違うものができるのかって、ハードウェアが一緒でも違うものができるんだなっていうふうに、ドンキーコングを作った当時思ったわけですね。
それ以外、ソフトウェアをいじれば何でも作れるんだなって思いながらも、やっぱり任天堂というのはバーチャルボーイを作ったり、それからコロコロカービィを作ったり、周辺機器を含めて開発をするということをやってきたんですけど、どうしてもやっぱりソフトウェアを作り変えていくことで新しいものを作っていた。だから、その中の進化ですから、ずっと、それが高度になっていく。特にサッカーとかになれば、サッカーに詳しい人がもっと面白くなるように作るとか、まあサッカーでも、他のアクションゲームでもロールプレイングゲームでも、そういう文法でずっと作ってきたんですけども、いよいよ、やっぱり遊び全体の新しいビジョンを見せないといけない、というふうな節目やと思うんですね。それで、インタフェースをちょっといじるんじゃなくて、大きくいじろう、ということを考えました。
で、せっかくインタフェースを大きくいじるのだから、さっき岩田も言ってましたけど、ソフトのパッケージのあり方とか、それから、プレイヤーがどういうふうなイメージで遊んでくれるとか、どんなふうに興味を持ってくれるとか、そういうところまで、一回作り変えようよ、ということをゲームデザイナーが考えたほうが、作るほうも楽しいんじゃないかと感じてやってきました。だから、それは結局任天堂のゲーム作りというか、任天堂のもの作りはずっと昔からそうだったという点では一緒だと思うんですね。

それで、具体的にWiiのいろんなソフトを作ってみて、今度ショーに出したりしてみてもですね、今日もみなさんに触っていただけたと思うんですけど、まあ、この業界でビジネスはしているんですけども、商品にはあまり触ったことがない。特に、この業界の経営者であるけども、ゲームでは遊んだことがない、みたいな方まであるわけですね。その人たちが、素直に楽しそうに遊んでいる。それから、高性能グラフィックに対してものすごく熱心な人たちも、結構あんなこけしのような人形の絵を見てですね、楽しそうに遊んでくれている。これを見ているとやっぱり、遊びの姿自体が変わってくるなという予感はあって、せっかくその中にいるんですから、できるだけボタンを増やしたりせずに、それから、過去のルールにこだわらずに、できるだけ誰でも簡単に遊べるふうに、ゲームのデザインをまとめていきましょうよっていうことを、僕ら自身もやっていますし、サードパーティの方にもお話することはあります。
ちょっと長くなりましたね。

岩田: まず最初のご質問にあった、違うルールのものを要求されたってことなんですが、実は任天堂の視点で申しあげますと、任天堂は、新鮮で珍しくて面白い遊びをつくろうというふうにいつも考えてきたつもりですから、そのやり方は単に器が変わっただけで、全く違う角度からものを考えなきゃいけないっていうふうに感じていないんです。ところが、業界全体で見ますと、より良い「○○ゲーム」を作ろうということを、例えば10年間継続してされている方もいるんですね。そういう面ではもう、僕らが手の届かないようなすごい高度な、「何々ゲーム」に関してはすごい専門家っていう方がたくさんいらっしゃるし、今までの流れのものをうまく料理するってことに関してはものすごい高いレベルの能力をお持ちの方がたくさんいらっしゃるんですが、私たちが違う器をポッと作ったときに、自分たちのノウハウがどう活きるかということがまだおわかりにならなくて、戸惑っている方がいるというのは事実かもしれません。ただ、これは時間が解決すると思っていまして、任天堂も会社の中で全員がすぐに慣れたわけじゃなくて、さっと違う箱に順応した人、例えばDSが出たときもWiiを作り始めたときもそうでしたが、さっと順応した人とゆっくり順応した人がいましたから。ただ、順応できなかった人はいないので。これは必ず時間が解決するというふうに思っています。

それから、私自身がE3で感じたことですけども、今まで、例えば大手のパブリッシャーの方々が任天堂のブースに遊びに来てくださると、その中で一番偉い人は後ろで腕を組んで見てるんですね、ゲームを。自分では触ってくれないことがほとんどなんですよ。
ですが、今年はほぼすべての一番偉い人が、真っ先にWiiリモコンを手に取って、振ってくださっていたのが、私にとっては非常に印象的でした。

Q6
Wiiの発売の後、利益がこれまでの最高域を超えていくことができるか、もしそれが可能であるとすると、どれぐらいの時間軸を見ているのか。

岩田: まず、今期という観点で見ますと、やはりすでに普及の本格期に入ってくるニンテンドーDSや、あるいはある意味すでに開発償却が終わっていて収益性の良いゲームボーイアドバンスを考えますと、携帯型の方で利益はより大きく上がり、据置に関してはハード600万台、ソフト1,700万本という計画がございますが、これを達成したとしても、利益への寄与は、今期のところでは限定的かと思います。
一方でDSが今期でピークアウトになるとは私は思っておりませんので、来期に向けてですね、Wiiの立ち上げが順調に進めば、十分さらに大きな上積みがあると思っています。最高益がいつ達成できるかということに関しては、私はまずは最高益をいつ達成するかを目標にしているわけじゃなくて、特に据置型に関しては任天堂はこの10年チャレンジャーなわけですから、そのチャレンジャーの立場から、新しく一番売れる機械になるために、どうやってやっていくのかということに一番フォーカスしていますので。いつ最高益が出せるのか、来期なのか再来期なのかもっと先なのかということに関しては、今お答えしようがありません。できるだけ早く、そういう日が来るようにしたいと思います。

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