MENU

Nintendo Switch

INTERVIEW

『Nintendo Labo』は、お客さん自身の手で「つくる」ところから始まるという点でもほかのゲームとは大きく違いますし、Nintendo Switchでしか実現できないものになっていると思うんですけど、実際に商品化するまでには、かなりの苦労があったんじゃないでしょうか?

そうですね・・・最初は「めっちゃ簡単にできる」と思ってたんですけどね。

(笑)

段ボールで作ることにすれば、組み立ても修理も自在ですし。
でもやっぱり、「はさみやのりを使わずに作れるようにしよう」としたことがまず大変やったと思います。

つまり、段ボールだけで作ることができる、ということですか?

はい。「商品として買ってきたものだけで完結しないと、やっぱりそれはダメでしょう」と。
これはまあ当たり前やとも思うんですけど。

そこは最初から、決めていましたね。もし段ボール以外を使うなら、当然、キットに入れないといけないので。
そういったところも考慮して、「道具を使わない」という方針で設計をはじめました。

だからなんとか道具を使わず組み立てられるよう、形にしていきました。
でも、その形になった段階で一度アメリカや東京でモニターテストをしたことがあったんですけど、そのときの結果が散々で・・・。あれは本当に・・・。
僕、ショックでその日、ホテルでちょっと泣いたんですよ。
本当に! マジで! 悲しかったんです(笑)。

(笑)。そのテストでは、みんな作れるだろうと思ってたのに、作れていなかったんですか・・・?

ですね。まだ完璧に作れるところまでは難しいんじゃないかとは思っていたんですけど、もう、想像以上に作れなくって。
一番怖かったのが、作っている本人が「上手に作れている」と思っていたことなんです。

自分が作ったものはうまくできていると?

そのモニターテストで強烈に覚えているのは、「ボクにはできたけど、小さい子には難しいんじゃないかな?」って言う子がいて、その子の作った「おうち」が一番ボロボロだったことなんです。
そこで「ヤバい」って思ったんです。「失敗した」って自覚できるならいいけど、「ちゃんとできていないのに、できているつもりになっている」その状態が、一番ヤバいと。

何回か試行錯誤してモニターテストをしたかと思うんですけど、どれくらいの段階のものだったんですか?

ほぼ最終段階のものでした。

そうなんですね・・・。このとき、設計を担当されていた小笠原さんは、どう思いました? 段ボールを設計していくことは初めてのことだったのではないかと思うんですけど。

梱包としての段ボール設計は今までもありましたが、「つくりやすい段ボール設計」は初めてでした。
それでもどうにか設計を進めて、このモニターをしたとき・・・本当にショックでした。阪口さんも、涙したって言ってましたけど・・・ハードメンバーも正直、ヤバかったです。
なぜかというと、何も考えずに設計してきたわけでなく、何も知らない社員を呼んで、組み立ててもらう、「大人モニター」はしてきていて、うまくいっていたんです。
だから、完璧とまでは全然思ってはいなかったんですけど、7~8割くらいまではできるんじゃないかと思っていたのです。しかし・・・結果は散々で。本当にショックでした。

このときは、「段ボールでできている」っていうこと自体がメッセージで、コンセプトそのものだと思っていたので、出来上がりもあえて本物に似せたデザインにはしていなくて、生の段ボールに近いものだったんです。実際、デザインの段階で「ピアノのフタ部分をグランドピアノっぽいカタチにしたい」というような話もあったんですけど、「そこはお客さんがそうしたければ自分で発想して作る領域やから、せんでええ」とか。

写真01

この表面の印刷も、同じ理由で、はじめは全然なかったんです。
でも、それだと表裏がわからないので、表裏が逆のまま作って無茶苦茶になってしまったり、やっぱり、「ある程度のデザイン性がないと、完成形を想像もできない」、というのが、モニターテストを通してわかりました。
そこから、「表裏がわかるように、段ボールシートの表面は50%以上塗ろう」というルールに変えました。

作る工程も変えていったんですか?

かなり変えました。工程自体を減らして、難しいところを見直していったんです。強度をあげる必要もありましたし。カッコよさよりも作りやすさを優先しました。

八角形だったパーツを、六角形に・・・とか。
差し込むツメの部分も、10パターン以上作って、差し込みやすさを追求して。

それでどうにか、ツメも変えて、印刷も分かりやすくして、簡素化していきました。
一番基本の、「裏表」と「ツメ」に関しては、絶対にわかりやすくないとダメっていうところと、徹底的にパーツの数を減らしたり、複雑なものはシンプルにしたり。

あと、「手が3ついるところは2つにする」ってところですね。
誰かが押さえておかないと、すごくやりにくいところがあったんですけど、小さい子には難しいだろうということで。

とことんまでシンプルに、わかりやすく設計し直していったということなんですね。

先ほどのモニターを受けて、小学生を集めて、段ボール設計の見直しを目的とする子供モニターを実施するということにしました。
のべ100名以上のモニターに参加いただきました。

それは、開発チームで行ったんですか?

はい。やらなきゃヤバい!と。
それで、モニターの反応を見ながら改善して、
またモニターをして、効果を確認するということを繰り返しました。
「つくる」の説明書をさわれる動画にするコンセプトは決まっていたのですが、
このときはまだ、段ボールの設計図面が確定していない開発途中の段階です。そのため、写真でパラパラマンガを子供モニター専用に作って、それを見てもらって、どこで詰まるかということをやっていました。

少ないもので1000枚、多いもので3000枚ぐらいになりますね。設計を変更すると写真も撮り直しです。

気の遠くなるような作業ですね・・・!?

「つくりやすい段ボール設計」というものは、とにかく前例がなかったので、どんな感じになるのか、手探り状態でやっていました。でも、ここがつくりやすさの肝だという想いもあったので、徹底的に追究していきました。

モニターにはハードのメンバーもソフトのメンバーも参加していて、ここで得たフィードバックを実際の製品の「さわれる組み立て動画」に活かしています。

ここについてはソフトも徹底的に追求しているんです。説明書って、いきなりコマが飛んでどこがどうなったかわからなくなるとか、変化が小さくてみづらい、みたいなことがあったりすると思うんですが、『Nintendo Labo』の「つくる」は動画になっていますし、回転や拡大もできるので、そこらへんは解決してると思っています。
あと、普段ゲームのセリフを書いている人が説明文を書いてるので、楽しく作れると思います。

世界一“イケてる”組み立て説明書と思ってます!