特集 ゼルダの伝説 インタビュー

更新日:2014.7.9

ミンナニ ナイショダヨ THE LEGEND OF ZELDA

『ゼルダの伝説』ってこんなゲーム 応用編

1986年に第一作が発売され、今年で28年を迎える『ゼルダの伝説』シリーズ。まだ『ゼルダの伝説』シリーズを遊んだことがない人のために、『ゼルダ』の“キホン”について、開発プロデューサーの青沼英二さんにインタビューしてみました。

「ナゾトキ」のしかけは青沼さんも考えてるんですか?

青沼
基本的には開発スタッフがあつまってアイデアを出すんだけど、ひとつのタイトルで必ず1つくらいは、僕から「これは実現して!」っていうものがあります(笑)。
たいてい、前から実現したかったけどできなかったアイデアがいくつかあるからね。そういうアイデアは、最初は今作っているゲームに全然合わないんじゃないかって思ったりするけど、やってみたら、作品全体の雰囲気が変わるような何かに結びついたりする。
それもひとつの「しかけ」だね。ひとつのアイデアをどんな風にアレンジしたら驚くようなしかけになるのかということを考えながら作っています。

『ゼルダの伝説』のアイデアスケッチ

気に入っているしかけはありますか?

青沼
「視点がかわる」ようなしかけは、好きですね。
たとえばニンテンドーDSの『夢幻の砂時計』っていうタイトルで、それまでは普通の視点で進むけど、あるところにいくと、画面が敵の視点になるっていうボスがいて、リンクを敵の視点でみながら攻撃をよけていくっていうしかけがあって。DSが2画面があったから、敵の視点と自分の視点が切りかえられるという遊びができたんですね。同じことをやっていても、見かたをかえるだけで全然ちがうっていうのが、トリック的に面白いなと思っていたんです。
ニンテンドー3DSの『神々のトライフォース2』でも、普段はトップビューという見下ろすような視点で3Dのマップを進めるんだけど、壁に入るとサイドビュー、正面からの視点になって、今まで見えなかったものが見えたりするっていうのも、トリッキーな感じですね。
トップビュー サイドビュー 壁画になってひと味違った冒険が楽しめるしかけ(ニンテンドー3DS『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』より)

ハードの特徴をいかしたしかけがあるんですね!

青沼
そのハードでできるいろんなことを考えて、それを使って驚くようなしかけを作りたい!っていつも考えています。
Wiiリモコンを持って「剣を振る」って動作は普通に考えつくかもしれないけど、さらに剣を振る方向で敵のリアクションを変えるとか、そういうものがどんどん入っていくと、「本当に剣をあやつっている」って感覚が強くなっていくよね。そういう性能をもったハードでなければできないしかけを考えるのも、『ゼルダ』なのかなと思っています。
振リ方次第でアクションが変わる!(Wii『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』より) 縦斬り 斜め斬り 回転斬り

Wii U向けに面白いものを考えているところなんですね!

青沼
そうです!
毎回、新しいハードになるたびに、「これをああ使えば面白いな」ってことをいろいろ考えて、その中で「これはずっとやっていても飽きずに楽しめるな」という遊びをぐっとしぼって、それらがゲームの中心になる、という風に設計していますからね。
Wii U版も、Wii U GamePadがいろいろ活躍することになると思いますよ。

ちなみに…、Wii U版はどのような『ゼルダ』になるんですか?

青沼
まだあんまり話せないけど、今作は、「ゼルダのアタリマエを見直す」のがテーマ。Wii U版では、とにかく「広大な世界で展開するゲーム」っていうことをひとつの答えにしています。たとえば「この山を越えて向こう側にいったら、どうなるのかな?」とか、「こっち側からはこう見えているけど、むこう側からはどんな風に見えるのかな?」って探険する遊びを、これまでのゲームではあまり自由にできなかったんです。今回のWii U版では、本当にずーっと歩き続けようと思ったら、山を越えて、谷をわたり、はるかかなたまで歩き続けられる。そんな広大な世界に、新しい『ゼルダ』の遊びがどう入ってくるのか…。ぜひ期待してほしいです!
最新作インタビュー

広い世界で冒険するのが楽しみですね!

青沼
たとえば自転車に乗ると、今まで行けなかったところに行けるようになって、いろいろ行きたくなっちゃうでしょ。そういうのが、広い世界を冒険する喜びだと思うんです。
最初は、帰ってこられなくなったらどうしようってドキドキしたりするんだけど、そこに自分が行ける範囲を広めてくれたり、ちょっと勇気の出る何かが加わったりすると、とたんにいろいろやってみたくなるっていう、自分が少し成長したような感覚。そういうことを楽しんでほしいなと思います。

『ゼルダ』で成長するってことですね。

青沼
そう、『ゼルダ』はその世界の中で新しい経験をするのが楽しいっていうゲームなんですよ。
普通の生活の中でも、いろいろな経験をしていると思うけど、『ゼルダ』でも同じようにそうやって経験して、成長を感じてくれればいいかな、なんて思います。
プレイヤーもリンクと一緒に成長する?

最後に、『ゼルダ』を遊ぶ人たちにメッセージを!

僕が『ゼルダ』を作っていて一番感動したのは、あるファンレター。入院して病気とたたかっている小学生の女の子のお母さんからの手紙で、リハビリの間に遊べるように『時のオカリナ』をわたしたそうです。はじめのうちは「私にはムリ」っていう感じだったんだけど、だんだん遊ぶようになって。あるときそのお母さんに向かって「リンクもこんなにがんばってるんだから、私もがんばらなきゃ!」っていって、がんばってリハビリをするようになった。そしたらみるみるうちによくなっていったんだって。
それを読んで、リンクをあやつるのはプレイヤーである自分なので、遊んでいるうちに自分に返ってくる何かがあったのかな、と思ったんです。主人公のがんばりと、自分ががんばっていることとが“リンク”したときに、前向きに考える何かに転じてくれたっていうのは、本当にうれしいですね。
そういうのはゲームを作る僕らがわざと仕組めることではなくて、ゲームを遊ぶ人がその世界でどんな経験をしたかっていうところがカギなんですけどね。でも、『ゼルダ』というゲームでは、そういうものを感じとってもらえる可能性があると思っているので、そういうことをこれからも期待してもらえたらうれしいです!

入門編を見る