いよいよ発売! ゲームボーイアドバンス特集

3.開発者インタビュー

『くるくるくるりん』

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「お父さんも楽しめるシンプルなゲームです」

佐藤浩 プロデューサー:
任天堂株式会社
業務部 技術課
佐藤浩
クルリン
豊嶋真人 プロデューサー:
株式会社エイティング
豊嶋真人
渡邉康成 メインプログラマ:
株式会社エイティング
渡邉康成

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30代が中心になって生まれたアイデアアドバンスでスピードも操作性もアップ

−−『くるくるくるりん』はどうやって生まれたんですか。
佐藤:もとのゲームのアイデアはエイティングさんにありまして、秘密のルートを通って(笑)、私に提案があったんですよ。そこで、私がプロデューサーに立ち、任天堂ブランドで出すことに決まったんです。
豊嶋さん 豊嶋:もともと我々の会社はゲームセンターのゲームを中心に作っていたんですが、「最近のゲームセンターはマニアックになっているけど、もっと簡単に遊べるゲームがほしいね」という意見が出たんです。過去でいうと『テトリス』のようなマニュアルを読まなくてもできるゲームですよね。そこで、画面を見ただけでどうすれば良いのかがわかるシンプルなゲーム性のものを作ろうということになったんです。よく引越しなどで長いテーブルを移動するときに、いろいろ試行錯誤しながら角を曲がったりしますよね。あるいは、大型のトラックが細い道に入るときに、工夫してカーブしたりですとか。そこで、うまく回れると気持ちがいいですよね。そういった要素をゲームに取り入れて、おもしろくできないかということで企画が生まれたんです。最初はゲームセンター用の基板で叩き台を作って、そこで佐藤さんにご提案しました。
佐藤:この案をいただいたときに「30歳以上を集めてプロジェクトチームを作りました」と言われたんですよ。
豊嶋:プロジェクトチームというと大げさなんですけど、30を過ぎると現場を遠ざかることが多くなるんですよね。そんなおじさんたちが集まって、「おじさんでも手軽に遊べるゲームが欲しいね」と話したことが、きっかけだったんですよ。
佐藤さん 佐藤:叩き台を見せてもらった瞬間、「なんだ、これはおもしろいぞ」と思ったんです。でも、わりと最初は任天堂の中でおもしろさを理解してもらえなかったんですね。そこで、社内の人を説得するために「これは3年に1度の逸材だ!」と言い続けてきたんですよ。
豊嶋:一見だれでも出来そうなゲームですが、実は回っている棒を壁にぶつけないように進めていくのは難しい。まず手にとってほしいですね。雑誌に掲載されている画面写真だと棒が回っていないので伝わりにくいと思うのですが、1度触われば楽しさがわかると思います。

−−「棒を回す」アイデアはその30歳以上プロジェクトで出てきたんですか。
豊嶋:たとえばレースゲームが好きな人がいれば、「レースゲームのどんなところが楽しいか」とか、自分のゲームの好きな部分をみんなで出し合っていったんです。叩き台ができるまでは、そういった他愛ない話を続けながら何度か試作のゲームを作ってみたりで、やはり4〜5ヶ月はかかりました。最初の業務用の叩き台を作った技術者は38歳くらいでしたね。本当に小学生の子どもがいるくらいのお父さん。子どもとゲームで遊んでいても、すぐに負けちゃうし、子どもはすぐに覚えちゃう。お父さんでも遊べるゲームを作りたいというのが今回の動機なんですよ。

−−アドバンスで発売することになったのはどういった経緯があったんでしょうか。
取材風景 佐藤:最初の話があったのが2年前なんです。そのときはNINTENDO64かゲームボーイカラーで出したいというお話だったんですよ。でも、ゲームボーイカラーではオブジェクトの回転機能がないので、棒自体を回すことができないんです。回っているように見せることはできますけど、そうすると背景もなにもないゲームになってしまうんですね。64だったらできますけど、64のソフトは当時7800円くらいしますよね。だから、このシンプルなソフトを64で売るのは難しい。それで私も半分あきらめていたのですが、ゲームボーイアドバンスというものが出るということを噂で聞きまして(笑)、「これはできるぞ」ということで進めていったんです。アドバンスはオブジェクトの回転ができるハードですから。そこで、任天堂の社内で仮のアドバンス版を作ってみて、エイティングさんに正式に「やりましょう」とご提案したんです。

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コースの試作は200以上

−−渡邉さんが参加したのはいつですか。
豊嶋:アドバンスで作れるようになってからですね。
渡邉:そのころ、ちょうど30歳になったので(笑)。

−−それまではゲームセンター用のゲームのプログラムをやっていたんですか。
渡邉:そうですね。あとは他社さんのハードですとか。

−−初めてアドバンスの開発に関わっていかがでしたか。
渡邉さん 渡邉:一番最初に任天堂の新人さんが作ったテスト版のアドバンスソフトを「見ますか?」といわれて、悔しいから「見ません」って言ったんです。見るとそれを土台に作ってしまうので。
佐藤:僕も最初から、新人が作ったプログラムを基礎にすることはやめようと言っていたんです。
渡邉:どちらかというと、業務用の叩き台とアドバンスで自分が作ったものとを比較しながら試行錯誤で作り上げました。なんといってもゲームセンター用のモニター画面と、携帯ゲーム機の液晶とでは画面から受ける印象も違うし、操作感覚も別物になりかねないので。

豊嶋さん −−シンプルなゲームだけに、調節が難しそうですね。
豊嶋:業務用の叩き台をアドバンスで気持ちの良い操作感にするのに、3ヶ月くらいかかりましたね。操作感が一番大切ですから、棒の長さを変えてみたり、回転の速さを変えてみたり、他にも色々試してもらいました。

−−コースを作るのも大変だったんじゃないですか。ボツになったものもたくさんありそうですよね。
渡邉:そうですね。あれになるまでに200近くのコースを作りました。たとえば、作ってみて前半はおもしろいけど、後半がおもしろくないということであれば、その後半だけを別のパーツに差し替えたりとか。いろいろ組み合わせを考えて作っていきました。
豊嶋さん −−テストプレイも30歳以上のかたが?
豊嶋:多少口ははさみましたね。あとは、うちにいる事務職の女性社員とかにやってもらいました。ゲームが得意な男性社員がテストしていると、どんどんマニアックな方向にいってしまうんですよ。

−−キャラクターの「クルリン」は女の子にもうけそうですよね。キャラクターがついたのはいつですか。
佐藤:いまのキャラクターは任天堂でつけました。こういったゲームを売り出すとき、方向性は2つあると思うんです。親しみやすいキャラクターをつけて子どもにも楽しめるものにするか、シンプルなゲーム性をクールに売り出すか。私としては、大人にも遊んでほしいけど娘やその友達にも遊んでもらいたい。冷静に考えても、人間味があるほうがゲームをやっていて楽しいに違いない。そこで、キャラクターをつけることに決めたんです。

−−なるほど。確かにあのキャラクターがあると、ほのぼのしますよね。
佐藤さん 佐藤:任天堂でキャラクター監修をしている小田部羊一というひとがいるんですよ。ポケモンのアニメを監修していて、かつてアニメの『アルプスの少女ハイジ』のキャラクター監督をしていたひとですね。そのひとが久々にご自分でキャラクターを描いてくれたんです。いくつか描いてくれた中では、ウサギやリスのようなかわいらしいキャラクターが多かったんですけど、「クルリン」だけは異彩を放っていたんですよ。それで、すぐにこのキャラクターに決めました。エイティングさんに持っていったときも「やっぱりこれだ」と。軽いストーリーをつけようということで、「クルリン」が兄弟を助けていくというお話にしたんです。「チクリン」「ピカリン」と兄弟がいるんですよ。

−−対戦もできるんですよね。
豊嶋:ええ。最初はおまけのつもりで入れたんですけど、テストプレイをしてみると、かなりおもしろかったですね。4人同時にプレイすると、あとの3人の棒がゴーストになって現われるんです。お互いにぶつかったり、妨害しあったりはしませんし、1人プレイが4つ集まっただけというシンプルなものなんですけど、これがおもしろい。
渡邉:ワンコーナーのミスが命とりになるんで、かなりスリリングですよ。

渡邉さん −−N.O.Mの読者にこっそり攻略のポイントを教えてください。やはり棒をスピーディーに動かすほうが上手くいくんですか。
渡邉:スピードをあげたほうが行きやすいんですけど、それを先に覚えちゃうと、あとの面で困るんですよ。最初はボタンを押さないで、普通にやってみることが大切です。あとは自分が思っているよりも、ワンテンポ早く棒を進めたほうがいいです。ひっかかった場合は、「練習モード」のお手本をぜひ見てください。

−−このゲーム、シンプルですけどハマる人が続出しそうですね。
佐藤:今回の作品の特徴は、プログラマがひとりということです。それだけシンプルなものを、ひとつのしっかりしたゲームとして成立させているということは、自慢できるんじゃないでしょうか。

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