1.トレーディングカードが変わる? ポケモンカードe大研究
カードeリーダー開発者インタビュー

さて、赤羽さんたちの「新しいポケモンカードを作りたい!」という思いから始まった「カードe」という遊び方。次は、そのカードをゲームボーイアドバンスに繋げるカードeリーダーを作った方々へお話を伺ってみましょう。

福田和彦さん
株式会社ハル研究所 PD事業部
課長 福田和彦さん
吉野元文
任天堂株式会社 開発技術部
吉野元文



紙のカードに数キロバイトのデータを入れたい
N.O.M 先ほど、クリーチャーズの赤羽さんに伺ったのですが、カードeの仕組みというのは、クリーチャーズさん新しいポケモンカードを作るために考え出されたものなんですよね。
取材風景 吉野:そうです。任天堂も新しい遊び、ということについては、いつもいろんなことを考えているのですが、クリーチャーズさんのトレーディングカードを進化させたい、という企画を伺って、任天堂としても大変良いアイディアだと思ったんです。そこで、この仕組みを実現するために、ポケモンカードを作られているクリーチャーズさん、カードeにコードを印刷する技術を持っているオリンパスさん、カードeリーダーの設計をするハル研究所さん、それに全体をまとめてカタチにする任天堂で、一緒にプロジェクトを立ち上げたんです。
N.O.M プラットフォームがアドバンスに決まったあとは、どんな作業があったんですか。
試作品 福田:それまでは、研究のためにカードeの技術が使われているオリンパスさんの既存の商品とパソコンを連動させて、テストをしていました。でも、今度はアドバンス用のものを作らなくてはいけない。そこで、このような試作品を作りまして、アドバンス用のカードeリーダー制作にとりかかりました。試作品の設計だけで、5ヶ月くらいかかりましたね。
試作品 吉野:これは苦労しましたね。設計は一緒にプロジェクトに加わっていたハル研究所さんにお願いし、部品調達や組み立てをすべて任天堂が担当しました。さらに並行して、機構関係の設計を行なっていきました。印刷されたコードを読み取るモジュールが非常に大きいので、最初のプロトタイプのサイズはかなり大きくなってしまいました。リーダー自体に電池が必要かもしれないという話もあったので、どうしてもこれくらいのサイズは必要だったんです。
N.O.M これは今年の3月に東京で行われたゲームボーイアドバンスの発表会の時にポケモンの総合プロデューサーである石原さんが持っていたものですよね。
吉野:ええ。アドバンスのデザイナーにも監修してもらいましたが、最初は「なぜこんなに大きいの?」と言われてしまいまして(笑)。それで、発表会にこれを使ったんですけど、やはり、関係者から「大きすぎる」という意見が出たんですよ。そこで、なるべくムダな空間をなくし、小さくしていきました。最終的に電池も必要ないということがわかったので、いまの大きさにまで落とせたんです。
N.O.M ポケモンカードeのeアプリの部分はクリーチャーズさんが開発していくわけですよね。
福田:そうですね。試作品の段階でソフト開発もスタートしました。
N.O.M eアプリを試すうちに、ハードの仕様が変わることもありましたか?
吉野:例えば最初はセンサー部分にスイッチをつけて、カードが通ると電源がつくようにしていたんです。でも、そうするとカードをリードさせたときに、カードの表面にキズがついてしまうんですね。カードを入れたかどうかはコードで判別できますので、それではスイッチをなくしてしまおうということで、なくしたりしました。
N.O.M カードを何枚も続けて読みこんだりするのは、特殊な技術なんですか。
取材風景 福田:実はバーコードの各ブロックには番号がふりわけられていて、読みこんだときに、どの番号を読んでどの番号を読んでいないかを認識するようになっているんです。結果的にすべてのブロックがそろえば、ミニゲームやショートムービーが始動できるという仕組みですね。
N.O.M その小さなデータを印刷できる技術もすごいですね。
吉野:このバーコードは非常に小さなドットが集まってできているんですが、このドットが繋がったり、欠けたりすると読み取れなくなるんですね。ですから、ドットがきちんと印刷ができて、品質が管理できるようになるまで、何千枚も印刷する実験を何度も行いました。 また、印刷実験していくとカードの大きさに切断する精度にも問題があることがわかりました。 リーダーのセンサーの位置が決まっていますので、コードの印刷位置がズレると、コードが読み込めなくなるんですよ。 この問題を解決するための印刷実験を何度か行いました。 結果的には、今までのポケモンカードと製造工程は違いますし、印刷後のチェックも厳しいものとなりました。
N.O.M コストを抑えるのも大変だったのではないですか。
取材風景 吉野:もともとアドバンスにつけようという話になったのは、コストダウンの意味もあったんです。 オリンパスさんのスキャントークリーダーにはCPUが使われていて、そのCPUがコードをデータに変換する処理をしているようなので、その処理をアドバンスですればコストダウンになると考え、今のような形になりました。

従来にないカードゲームの可能性
N.O.M カードeリーダーは今回ポケモンカードeと同時発売になりますが、ほかにもいろいろなことに使えそうですね。
吉野:ええ、そうですね。ポケモンカードeは株式会社ポケモンが発売する商品ですので、任天堂もこのしくみを使っていろんな遊び方にチャレンジして行きたいです。その一つとして、例えばゲーム&ウオッチのゲームが入ったものも、試験的に作ってみました。
N.O.M 一番時間がかかったのはどこですか。
取材風景 福田:今回は、コードの技術をもっているオリンパスさん、eコードにいれるプログラムを作られるクリーチャーズさんとハードを作る当社と任天堂さんと、数社が共同で作業を始めました。それぞれが独自のテクノロジーやノウハウを持ち寄ったわけですから、それをまとめあげるのに時間がかかりましたね。
吉野:まだアプリケーションの内容も決まっていなかったので、我々みんな手探りで作業を進めていました。
N.O.M それは大変でしたね。
福田:それと、今回はカードというアナログな媒体を使いますので、ユーザーさんが繰り返しシャッフルしたり、汚したりということが考えられますよね。そこで、部屋を40度くらいに温めて、ハル研のアルバイトに1週間くらいシャッフルしてもらったんです。それでもまあまあ読めたので、普通に汗がついたくらいで読めなくなることはないと思います。
取材風景 吉野:任天堂でもいろいろと耐久テストをしました。プログラムが入っているのが、紙のカードということで、ロムカートリッジにはないいろいろな遊び方が可能になると思います。今後この仕組みを使った遊び方をどんどん広げてゆきたいです。期待していてくださいね。
N.O.M なるほど。そこまで苦労して作ったハードですから、私たちも大事に使いたいですね。今日はどうもありがとうございました。



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