3.ポケモンはいつも新しい遊びのシンボル
株式会社ポケモン 代表取締役社長 石原恒和氏インタビュー

石原恒和氏
株式会社ポケモン
代表取締役社長
石原恒和氏
ポケモンミニ、ポケモンカードeという新しい遊びを提供し、ますます広がるポケモンワールド。この動きは、まさに進化といっていいですね。ポケモンの総合プロデューサーでもあり、株式会社ポケモンの社長でもある石原恒和氏に、ポケモンの新しい夢を語ってもらいました。大人も子どもも必見の貴重なインタビューですよ。



株式会社ポケモンとは
任天堂、クリーチャーズ、ゲームフリークの3社が共同で設立した会社。ポケモン関連商品の販売、ライセンス管理、ゲームソフト・カードゲームの開発・発売など、ポケモンを世界に広めるためのさまざまな業務を行なう。いわばポケモンの総合マネジメント企業。



ポケモンミニは新しい子どもの道具
N.O.M ポケモンミニのアイデアはどこから生まれたんですか。
石原さん石原: 最初は任天堂の企画開発部でスタートしたんですよ。そこで進めていた新しいハードのプロジェクトと、ポケモンが融合する形になったのがポケモンミニですね。ゲームボーイアドバンスがゲームボーイのハイスペック化の形で動いていったのに対して、ポケモンミニはむしろロースペック化しているわけです。でも、単純にロースペック化するだけではなく、アドバンスとは違う別の遊びが思考できるようなネタをどれだけつめこめるかと考えていきました。画面のピクセル数は96×64と小さいですけれど、むしろ、1ビットのグラフィックの中でどこまで濃い遊びが作れるかというのが、開発陣にとっては挑戦ですね。表示能力と画面の見やすさ、カートリッジの容量など、それぞれの要素のバランスがとてもいいハードです。
N.O.M ポケモン専用のハードの構想は以前からあったんですか。
石原: 特に考えていたわけではないのですが、もともと、ポケットピカチュウがある意味でポケモン専用ハードでしたよね。それがカラー化や赤外線通信の追加で進化していきましたから、新しい進化として、ポケモンミニのようなハードが生まれても不思議はないわけです。
N.O.M カートリッジを取りかえられるようにしようというのは、最初から考えていたんでしょうか。
石原: ポケットピカチュウを作ったときに、カートリッジやキャラクターを取りかえられたら、もっといろいろな遊びができるなあと思っていたんですよ。それをミニでは強化して、むしろゲームボーイに近いところにまで持っていった。さらに、ゲームボーイを越えるファンクションも備えているんです。
N.O.M ポケモンミニ用に発売されるソフトはポケモンオンリーになるわけですよね。
石原さん石原: ええ。株式会社ポケモンが、ポケモンのソフトを出していくという形です。でも、ポケモンしか遊べないからつまらないとはまったく思っていないんですよ。ポケモンは表現のきっかけに過ぎなくて、遊びのバリエーションを示すためのわかりやすい道しるべなんですね。例えばマリオだって、最初は兄弟で落としっこをしていたようなものが、だんだんお医者さんになったり、ゴルフをしたりするようになりましたよね? それと同様に、みんなが遊びを理解する入り口としてポケモンというものがあって、そのポケモンで今回どんな遊びができるの?ということですよね。ですから、ミニゲームがたくさん入っている楽しいものから、攻略しがいのあるパズルが入っているものまで、お好みに応じて選んでいただければよくて、そのうえでひとつひとつがポケモンの世界観を少しずつ押し広げていければ、という感じです。今回はソフトも1200円ですし、「欲しいものを好きに買ってください」と言えるかなあと思っています。

ゲームボーイより高度な通信機能
N.O.M こういうハードが欲しいという気持ちは、いつ頃から石原さんの中にあったんですか。
石原: 僕は最初、単なるゲームマシンではなく、もう一歩先に動いていく新しい子どもの道具にしたいと思っていました。つまり、キッズPDAみたいなコンセプトをもっていたんですね。将来、ゲームカートリッジを取りかえていくことや、ゲームカートリッジそのものが変わっていくことで、ゲームと呼べないものがどんどん子どもたちの道具になっていく。そういう道筋を考えています。将来はゲームの領域を少し広げるような新しいソフトも生まれてくるでしょう。赤外線通信機能も、ゲームボーイより高度なんですよ。あるプロトコルで通信を行うと、1メガビットクラスのデータをやりとりしてゲームを書きこんだりということも、それほど難しいことではないんですね。ですから、任天堂がローソンで行なっているゲームソフトの書き換えのようなことが、将来このハードでもできるようになるかもしれません。
N.O.M ハードのスペック面でも、石原さんが意見を出されたんですか。
石原さん石原: 希望を出してかなえられた面と、技術的に無理だった面がありますね。でも、最終的には希望の半分くらいは実現できていると思います。結果として赤外線通信が1メートル以上の距離に対応していることや、振動機能をしっかり備えたこと、あるいはショックセンサーという入力方法が付け加えられたことなど、かなり新しい要素が入れられました。あとは、仕掛けとして入れている新しい機能もあるんですよ。
N.O.M なるほど。新しい遊びがいろいろ考えられそうですね。ポケモンにとって、やはり通信というのは大事な要素だとお考えですか。
石原: そうですね。ゲームボーイが通信機能を持っていたことで、ポケモンが新しい遊びになっていったことは確かですよね。やはり通信はポケモンにとって非常に大事なことだし、それで遊びが拡張していくということが根幹でしょうね。
N.O.M ポケモンミニにはショックセンサー、振動機能なども付いています。これも新しい遊びを作るための仕掛けですか。
石原: ええ。振動をさせないと友達にデータを投げられないとか、そういう身体感覚を表現したり、あるいは単純に振ることによって新しいゲーム性が生まれますよね。
N.O.M ハードのデザインや大きさについてはいかがですか。
石原さん石原: もう少し大きくてもよかったのですが、子どもにとってはこれくらいのサイズが一番いいかなと。今回はABボタンを使わないでプレイする遊びが非常に多いんです。片手でサイドのCボタンを押すだけで遊べるので、とてもシンプルですよね。ゲームボーイはABボタンと十字キーをどうやって使うかが勝負ですが、このゲーム機ではサイドのワンボタンでどれだけおもしろいゲームを作れるかに挑戦しています。だから、電車の中で片手で遊べるゲームが多いんですよ。
N.O.M これから、ポケモンミニはどのように展開していくのでしょうか。
石原: 現状のスペックだけでいえば、ゲームボーイよりピクセル数も少ないですし、音も単音ですし、技術的に大きなトピックはないんですね。ただ、さっき言ったようにいくつか仕掛けがあって、その仕掛けに複数のソフトが対応するようになっている。単なる携帯ゲーム機ではない領域まで拡張できるような遊びが開発できる仕様になっているんです。そこが新しいんですね。とにかく、いまはまず本体と3本のゲームソフトを買ってほしいですけどね。
N.O.M 今後、どれくらいの間隔でソフトが発売されるのですか。
石原: そうですね。3ヶ月で2本ずつくらいのペースをめざしています。どんどん新しいソフトが出てきますので、期待してください。

ポケモンカードeでワンランク上の環境を
N.O.M ここで、ポケモンカードeについてもおうかがいしたいと思います。ポケモンカードeは、石原さんご自身が、新しいカードの形を作りたいと考えてスタートしたと聞いています。紙のカードを進化させたかったのでしょうか。
石原さん石原: まず、カードが次の世代になったとき、なにをたずさえていくとおもしろいのかということを考えました。第一ステップとして、紙の中に通常の印刷物で可能な最大限のデータを入れたいと思ったんですね。もちろん、1ミリ角の漢字を1文字ずつ印刷してもいいんですけど、それはあまり意味がない。ただ、それと同等のデータを格納できるようにしようということで、複雑な暗号コードによって何キロバイトものデータが格納できる特許技術を獲得しました。それによって、通常のポケモンカードのデータ量ではありえないものを紙の中に入れることができた。これが我々が「ペーパーロム」と読んでいるリードオンリーの技術です。次のステップでは書きこみ可能なカードが出てくるかもしれませんが、現状においては、我々が獲得できる身近な技術で、コストパフォーマンスに優れ、かつ遊びが拡張できる最大限のものを作った。それがポケモンカードeなんですね。
N.O.M 未来のカードはこんなふうになるというビジョンがあったんでしょうか。
石原: 僕としては、遊びかたをできるだけ豊かにしていきたかったんですね。4、5人でポケモンカードを遊ぶときに、それぞれがゲームボーイアドバンスも持ちよっていて、コイントスや試合時間を計るのにカードeを使う。試合が始まると、2人はアプリケーションを駆使してバトルをしている。そのほかの子たちは、それまでは「遊びたいなあ」と思いながら待っていたのが、自分のアドバンスでカードeのデータを読みながらデッキを組んだり、ミニゲームを遊んだりできる。遊びの環境が、ワンランクあがるイメージですね。そして、子どもたちは、自分たちがそういう環境で遊んでいることをカッコいい、楽しい、と感じることができる。そういう無限の広がりを演出したかったんです。
N.O.M 最近の子どもたちの遊びの世界は複雑ですよね。そういうことを感じてカードeを作られたんですか。
石原さん石原: というより、ポケモンカード自体がかなり複雑な遊びなんですよ。戦略的にも、カードロジック的にも、コンセプト的にも、子どもたちがアプローチできる限界までいってしまっているんですね。その軸をさらに深めて先鋭化することもできるのですが、そっちへ向かうと、だんだん狭くて細い道に入っていきますよね。実際にそんなふうに先鋭化しているマニアックなカードゲームもありますが、ポケモンは本来、そういうキャラクターやゲームではないんです。だから、いまあるポケモンカードゲームに対して、別の軸から遊びを考え直す仕掛けが欲しかったんですよ。そこで、一見まったく関係のない軸から、遊びの構造をもってきて、それを融合させたんです。カードをスライドさせてデータを読みこませるという行為は、みんなが経験ずみのことですから、違和感なくやってくれるんじゃないかと思いました。カードをどんどん読みこませてゲームを遊ぶということも、子どもたちは直感的にわかるだろうと。
N.O.M 子どもたちって新しいものにあまり抵抗がないですよね。カードeも一見とても新しく見えますけど、すぐに受け入れられそうな気がします。
石原: ええ、本当にそう思います。最初に見た時に「なんだ、これは!」と言っていた子が、1週間後には10年前からあったもののように道具として使いこなしている。そんな現象が、実際に起こると思いますよ。それくらい子どもの順応は早いですね。
N.O.M 未来的な道具を出すときに、ポケモンが入り口になるという面がありますか。
石原さん石原: やはり、ノンキャラクターのものや、まったく新しいキャラクターを使ったものは、その時点ですでに入り口を難しくしているんですよ。そういう点では、ポケモンは入り口をわかりやすく示しているシンボルだと思うんです。実は複雑なポケモンカードのようなものもあるんですが、ポケモンであれば小学校1年生でも一生懸命漢字を読んでついて来てくれますよね。そこがポケモンの最強の部分じゃないでしょうか。
N.O.M これからも、子どもたちのシンボルとして活躍しそうですね。
石原: そうですね。ポケモンはいつも、革新的な新しい遊びを次から次へと提示して、子どもたちに挑戦状をたたきつけているんです。それを見て子どもたちが「受けてたとうじゃないか」と思ってくれる。その状況が続けば、まだまだチャレンジングな遊びを提供していけると思います。

ポケモンを未来に向かって開いていく
N.O.M 株式会社ポケモンの社長として、今後の展開をお聞かせください。
石原: 株式会社ポケモンは、まさしくポケモンを未来に向かって開いていく会社です。その方法は、やはりおもしろいプロダクトを作って、ポケモンの世界観とポケモンそのものを広げていくということです。ですから、子どもにとってチャレンジングなものを、商品そのもので提示していきます。今回はポケモンカードeとポケモンミニで、みなさんの評判をお聞きしてみようと思っています。その商品の評判が、とりもなおさずポケモンという会社の評判になっていくでしょうね。
N.O.M これからも、株式会社ポケモンから新しい商品が次々出てくるのでしょうか。
石原さん石原: むしろ今回のカードeやポケモンミニがどう化けるかがポイントですね。任天堂もだいたい5、6年に一度くらいしか新しいプラットフォームを出さないですよね。それはイノベーション(技術)が足りないからではなく、ひとつのプラットフォームに対して、長く地道に刺激的なソフトを出しつづけ、新しい遊びを提供しているからです。そういう面では、ものすごいパワーを持っている。その点は、ポケモンミニやカードeでも見習いたいと思っています。ポケモンカードも1996年に発売されて、その仕組みは5年間ずっと変わらないんです。5年経って、今回ようやくカードeという新しい仕組みを提示したのは、それだけ長くポケモンカードを遊んでもらった果ての、バージョンアップなんですよ。ゲームボーイがあるとき突然カラーになったようなものですね。カードeも、前のポケモンカードと混ぜて遊べるけれど、その先にもっともっと楽しい遊びを用意している。そういう継続性、互換性の保証のある商品を、我々も作っていく予定です。



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