2.ゼルダと音の世界 〜サウンドチームインタビュー〜

任天堂株式会社 情報開発本部 制作部 制作課 係長 ディレクター 青沼 英二
任天堂株式会社 情報開発本部 制作部 制作課 係長 ディレクター 青沼 英二
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 課長 サウンド担当 近藤 浩治
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 課長 サウンド担当 近藤 浩治
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 サウンド担当 永田 権太
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 サウンド担当 永田 権太
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 サウンド担当 若井 淑
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 サウンド担当 若井 淑
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 サウンド担当 川村 昌史
任天堂株式会社 情報開発本部 技術部 技術課 サウンド担当 川村 昌史


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タクトを使って身体で音楽を表現
−−タクトというのは指揮棒ですが、これは青沼さんのアイデアなんですか。
青沼 実は最初のアイデアでは、タクトじゃなかったんです。ちょうど今回の作品を作りはじめたときに、テルミンという楽器が注目されていまして、当初はテルミンを使いたかったんですね。楽器を演奏するというよりは、テルミンのように身体を動かして音楽を作り出すということをやりたかったんです。ところが、テルミンという楽器は説明するのも、操作をするのも難しい。試行錯誤をしていくうち、タクトになりました。
タクト
−−オープニングでケルト音楽のようなものが流れますね。こういったものは青沼さんが指定するんですか。
青沼 いえ、そういうわけではないんです。グラフィックもそうですが、僕が具体的に指示をしているのではなくて、担当者が個々に提案をしてくれるんです。サウンドはお任せですね。不思議とゼルダというものは、そういうスタッフの気持ちが集まって、最後に違和感なくひとつの世界観にまとまるゲームなんですよ。
−−ゼルダのSEはかなりリアル志向だと思うのですが。
青沼 ニンテンドウ64の『時のオカリナ』に参加したとき、最後に宮本が「音の材質感って大事だよね」と言ったんですよ。それで、プレイしながら「ここはなぜ木の音がしないの?」とか、全部チェックしていたんです。そのあたりから音のリアルさを追求するようになりました。今回は特にああいったマンガっぽい絵ですから、音のほうをリアルにすることで現実感をもたせることが大事だったんですよ。
大海原
−−カモメの声などはやはり本物を使っているんですか。
川村 実はあれ、カモメじゃないんですよ。最初はカモメを使ってみたんですが、あまりカモメっぽく聞こえなかったんです。それで、ゾウのパオーンという鳴き声を加工して使いました。ほかにもいろいろ駆使していて、ワニとラクダとライオンをあわせたりとか。
−−動物の声は実際に録音するんでしょうか。
川村 いえ、基本は素材集のCDからとります。ただ、自然音の中には野外で録音するものもありますね。鉄で木をたたく音を録音したくて、鉄パイプを楽器ケースに隠して、森のほうまで遠出したこともあります。あとは、砂浜を歩く音は、ポテトチップスを袋の中でガサガサさせているんですよ。
−−人間の声も入っていますが、これは声優さんですか。
内部スタッフでの録音風景
〜録音風景〜
奥から、サウンド担当 峰岸透、
サウンド担当 川村昌史、
サウンド担当 渡邊貴宏
青沼 当初は内部スタッフの声でやろうと思っていたんですけどね。
川村 スタッフの声でも演技のいいものは残しているんですが、やはり素人には限界があるんです。セリフといっても「おーい」とかだけなんですが、スタジオの中で100メートル先を想像して「おーい」を言ってくれといっても、素人には難しいんですね。


BGMもインタラクティブに変化
−−バトル担当の若井さんはいかがでしたか。
敵をヒットしたときに、オーケストラのトゥッティが鳴る
若井 目標にしていたことは、ゼルダのインタラクティブ性を曲にも求めることです。バトルシーンでは、曲自体は同じでも、主人公の状態でアレンジやテンポが変わります。それから、敵をヒットしたときに、オーケストラのトゥッティ(全員で合奏する部分)が鳴るんですね。このトゥッティはSEではなくて、曲のコード進行にあわせた音階にしてあるんですよ。そういう複雑なしかけを入れてあるので、本来ならSEとして処理する音をBGMに組みこむというややこしいプログラムを組んでもらいました。
川村 1つのしかけを作っていると、彼がどんどん新しいものをもってくるんですよ(笑)。
若井 トゥッティ以外にも、ボス戦ではダンジョンごとに違う仕組みを入れています。例えば、敵とテニスのラリーのように弾を打ちあうステージでは、打ち返すごとに半音ずつ音が上がっていくんです。
近藤 彼はプログレが好きなので、ボス戦ではその趣味の一端も楽しめますよ。
−−プログレというと、どんな感じですか?
若井 カノンの手法を取り入れました。でも、カノンってつじつまをあわせるのがすごく大変なんですよ。結局そこだけで2週間くらいかかりました。両手と顔だけのボスのシーンなんですが、両手のとき、片手のとき、手がないとき、全部曲が違うんですよ。まあ、言われないとだれもわからないと思うんですが(笑)。
両手と顔だけのボス
−−すごいこだわりですね(笑)。永田さんがBGMで特に気にしたことはありますか。
永田 ゼルダはずっと同じテーマ曲を受け継いでいますよね。ただ、まったく同じではおもしろくないし、かといってあまりにアレンジを変えてしまうといままでのファンが嫌がるだろうと思うと、そのかねあいが難しかったです。でも、結構大胆にアレンジしたかもしれません。
−−BGMではなにかテーマはありましたか。
永田 個人的なテーマは「サービス、サービス」です(笑)。それで、さりげなく『時のオカリナ』の音楽を入れてみたんですが。
青沼 今回のゲームには『時のオカリナ』にゆかりのある人物もちらほら出てくるので、自然な形で『オカリナ』の音楽が入っているとファンはうれしいですよね。
−−ゼルダのメインテーマは近藤さんの作曲ですよね。もしかして、ほかのスタッフにアレンジを任せたのは今回が初めてですか。
近藤 そうですね、初めてですね。
−−ダメ出しはありましたか。
近藤 いえ、全くありませんでしたよ。
永田 でも、オープニングの版画のシーンを近藤にやってもらったときは、やはりオリジナルは違うなあと感じました。あれが入ったことで、ゼルダになったと思います。
オープニングの版画のシーン ムービーを見る
約30秒 1,455KB


最後に…
−−川村さん、若井さん、永田さんはゼルダの音楽を担当されるのは今回が初めてですよね。感想を聞かせてください。
川村 64のゼルダのSEも、スーパーファミコンから引き継いでいるのは謎解き音だけなんですね。そうであれば、キューブでも引き継ぐのは謎解き音だけにしようと思い、自分なりに新しいゼルダのSEを作ってみました。また、今回もサラウンドで作っていますので、後方からわき出す敵の音も聞こえます。ぜひ5.1chで再生してみてほしいですね。
インタビュー風景
若井 最初は正直言うとやりたくなかったんですよ。(一同笑)それは悪い意味ではなくて、ゼルダというゲームに期待していたので、スタッフとして関わるとプレイする楽しみがなくなるなあと。もちろん、プレッシャーもありました。でも、すごく勉強になりましたね。任天堂を代表する作品で、任天堂のサウンドチームの方向性を理解できたことは、本当に力になりました。
永田 ゼルダに携わることができてラッキーだったと思います。何のゲームの担当になるかはそのときのタイミングによるところも大きいので。入社以来、ゼルダのようなゲームはやってみたかったので、今回その夢がかないました。
アリルにもテーマがある
−−近藤さんはいかがですか。
近藤 僕は今回、数曲しか作っていないんです。ゲーム音楽ならではのインタラクティブなネタをみんなが出してくれて、良いものができたと思います。フィールドでも、かなりインタラクティブなしかけがあるんですよ。
永田 最初の島(プロロ島)には妹のテーマ曲も隠されています。あまり気づいてもらえないと思うんですが、妹がいなくなると、そのテーマは流れなくなるんですね。
青沼 ゼルダのサウンドは一見さりげないんですが、その力はすごいですよ。一度サウンドが一切鳴らないバージョンをプレイしたことがあったんですが、それは辛かったですね。このソフトは完成しないんじゃないか、という気持ちになりました(笑)。一度音を消してプレイされると音の大切さがわかると思います。みなさんもぜひ、サウンドに注目して遊んでみてください。


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