満を持してついに発売! 開発スタッフインタビュー「大合奏!バンドブラザーズ」
ディレクター西田勝ディレクター北村典子サウンドディレクター米政美 「大合奏!バンドブラザーズ」

「単なる"音ゲー"だと思ったら大間違いです!」と熱く語る開発メンバー。
実はこのゲーム、世に出るまでの遍歴が紆余曲折あったとか。
聞くも涙、語るも涙…
とは言いませんが、遂にこの世へ登場するまでの長い歴史と、ソフトに託された想いを聞いてきました。ソフトを使って楽しくセッションもしてきたので、今回はみんな笑顔のインタビューで楽しいです!



古〜い歴史はゲームボーイカラーの時代からスタート
N.O.M: このソフト、最初はどのハードで出す予定だったんですか?
北村: ゲームボーイカラーです。約5年まえの企画が最初ですね。

N.O.M: そんなにまえなんですか?
西田: そうです。最初はこのキャラクターであるバーバラちゃんが生まれまして、「これを使ってゲーム作ってくれませんか」って色々な人にお願いして回ったんで、任天堂のゲームとしては珍しいキャラ先行のゲームになりますね。でも「ちょっと気持ち悪いからダメ」って断られ続けました(笑)。

インタビュー風景北村: 無名キャラクターって使いづらいんですよね。それが大きな要因ではあるのですが、ともかく実現しませんでした。でもせっかく作ったキャラクターなので、ならば自分達でゲームも作ろうと思い立ちまして。

西田: とはいえ私と北村はもともとアートワークの仕事をしていたので、いわゆる"ゲーム"は作ったことがなかったんです。どうしようかなと考えていたところ、部内にサウンドチップ(カセットの基盤に取り付けるチップ。いい音が出せる)の提案をしているチームがあって、そこを巻き込もうということになりました。

北村: ダンスゲームなどは既にその頃ありましたから、そうではない別のものを…そしてそれまでの任天堂のイメージとはちょっと違った変わったもの、かつ高年齢層をターゲットにしたものにしたいと思ったんです。

米: その音声チップは、生音を取り込んで鳴らすことができたんです。生のギター音などを入れればロックっぽさがでるかなと。
インタビュー風景
西田: で、ダンスゲーム風やよく言うところの"ゲーム"ではなく、"セッション"をメインにしたゲームにすることを考えたんですね。社内に吹奏楽部があるんですが、定期コンサートなんかを見ていると、どうも見るよりやる方が楽しそうだなということで。ギター、ベース、ドラムの3つの要素を試作してプレゼンテーションをしたら、企画が通ったんですよ。その後、ゲームボーイアドバンスが立ち上がる時期と重なったため、乗り換えることになりました。

N.O.M: そこから本格的に企画がスタートしたわけですね。
西田: 「ドレミファソラシド」という音階を使った要素はサブ的な位置づけで考えていて、これを入れた方が広がりが出るなーというレベルで入れておいたんです。でもゲームボーイアドバンスのボタンを数えると、十字キー、ABボタン、LRボタンなのでオクターブ半音を入れると「♪ドレミファソラ」までしかなく、対応させようにも足りないんですよ(笑)。そのため、「シ」の音はスタートボタンを使っていたのですが、操作性が悪いのですごく不評でした。

N.O.M: 音楽ゲームでは致命的ですね(笑)。
インタビュー風景米: 結局のところ、ボタンの数や音質の問題で、やりたいことが出来ないとわかって、この段階でNGになり、また企画はお蔵入りになってしまいました。

北村: 無線通信という機能が、当時はちゃんと確立されていませんでした。セッションするには複数個のカセットが必要になりますよね。すると敷居が高くなってしまったり、通信機能を充実させようとするとコストなどの問題で障害があって。

米: あと、ゲームボーイアドバンスでこのソフトをやるには、もっと音量が欲しかったんです。これは音楽ゲームなんだから、ちゃんとした音をできるだけ大きく出したい。まあ、みんなが携帯用のアンプやスピーカーを持っていたら話は別ですが(笑)。

ニンテンドーDSでついに開発再スタート
インタビュー風景西田: その後しばらくは別のゲームの仕事をしていました。2004年2月に上司に呼び出されまして、なにごとかと思ったんですよ。そしたら自分の知らないところで、「これを作りたい」とスタッフが訴えていたらしくてですね(笑)。社長の岩田から「やる気はあるか」と聞かれたので「やります」と答えました。そこで初めてニンテンドーDS用ソフトとしての開発がスタートしたわけです。

N.O.M: ニンテンドーDSなら開発が可能だったんですね。
西田: そうです。音のサンプリングやボタン配列、ワイヤレス通信といった要素があって、これまでの問題を全部クリアしていたんですね。ただ、これまでの苦い思い出を抱えていましたので、開発中はとても不安でした。ワイヤレス通信を使ったセッションができる頃になって、やっと「いけるかな?」と思い始めました。じつはDSワイヤレス通信についてはハードの開発と平行作業だったので、もしものことがあったら切腹覚悟で! という気持ちでいたんですよね(笑)。

N.O.M: 背水の陣ですか(笑)。
西田: まったくその通りです! 
開発は順調だったんですが、問題点がひとつ浮上しまして。
……えー、ニンテンドーDSのタッチパネルを一切使っていないという重大な問題が……(笑)。

N.O.M: ニンテンドーDSの存在意義を問う、重大な問題じゃないですか!(笑)
西田: そうなんですよー。それで困っていたら、岩田からヒントをいくつかもらえました。練習モードを作ったり、エディットモードでも直感的に入力できるように、タッチパネルを使う形にしました。

インタビュー風景米: 自分で作曲する人なら、タッチスクリーンは感覚的に使えていいと思うんです。昔はボイスレコーダーに吹き込んだりして、そこからパソコンに打ち込まなくてはならなかった。これはその場で吹き込んで形にできるわけですから。シーケンサーとして見ても優れていて、パソコンだとなにから手を着けていいかわからない人もいたと思います。でも初心者のためにも敷居を下げようということで、必要最低限の要素だけを入れたんです。

北村: 大抵の人はメロディ以外って打ち込めませんよね。これならイメージだけ選べば演奏が自動的につきます。そこからさらにアレンジすることも可能ですから。

西田: 自分でコード進行が入れられると、より高度に…それこそアマチュアからプロの方まで楽しめると思います。

米: 慣れていない人にとって、楽譜を打ち込むのって大変じゃないですか。でもこれは操作がとてもシンプルなので打ち込みも気楽にできるんです。

西田: デバッグ作業をしているスタッフたちが、勝手に自分たちで遊びを作っていたんですよね。多人数(8人以上)の楽譜を作って大合奏してたりとか。

米: 年末年始はこれで100人プレイをして、"第九"を演奏して欲しいなあと思います(笑)。

N.O.M: 11月に『NINTENDO WORLD Touch! DS』が行われましたが、そこでの反応はいかがでしたか?
インタビュー風景北村: 私は5会場回ったのですが、やはりやや高年齢層の方が楽しんで下さるようです。知らない人同士で組んでもらってセッションすると、選曲の時から団結力を発揮して、ワイワイ盛り上がっていました。スコアの見せ合いをしたりで、楽しそうでしたよ。

米: 音楽を通じてコミュニケーションを取れるというところが評判になっているみたいです。気に入ってくれた方は、何度もチャレンジしに来てくれたりもしましたね。

N.O.M: 演奏していると、失敗しても笑いが出るのがいいですね。普通の楽器だと、「ちゃんとしなきゃいけない」っていうのが大前提じゃないですか。上手くなければいけない、というような…。
インタビュー風景米: 学校の演奏会なんかで、みんなでリコーダー吹いてると、「ピー!」って音を外す子がいたりしますよね?まさにああいう感じでの空気が流れてきてほのぼのできますよ。

北村: これは下手な人がいた方が味が出て面白いんですよー。

西田: 私は家でも全く音楽を聴かない人間で、AV機器を全く持っていないんですが(笑)。車に乗ってFMラジオの音楽を聴いていると、知らないうちにベースラインを追うようになっていて、意識改革が進んでるなあと自分で感心しましたよ。

「いい感じ」に合奏、さらにいろんな発想で楽しい遊び方を
N.O.M: 12月に発売されましたが、振り返っていかがですか?
北村: コンセプトもしっかりしていましたし、構想自体が長かったので、製作に入ると予定通りに進んだという印象ですね。

米: 楽しく弾けるスコアというものをひたすら考えていましたね。また、苦労して入れたタッチスクリーンシステムも、今となっては無くてはならないポジションになりホッとしました。

西田: 音声もサラウンド効果などを使い、システムとうまく絡んでいると思います。これはいける、という確信があります。ただ北村が、発売されるまで「出るかどうかまだわからない」と心配していましたね。

N.O.M: それはどういうことで?
インタビュー風景北村: ゲームボーイアドバンス用に開発していた時、デバッグ終了間際でダメになったからです。それがトラウマになってすごい疑心暗鬼に(笑)。無事に発売されて心底ほっとしました。

西田: 私は今回マネジメントを初めてやったのですが、同時発売は絶対と言われていたのがすごいプレッシャーで、「できなかったらもうクビだな」と思いながらがんばりました(笑)。でもそのプレッシャーと戦いつつも楽しく。チームワークも良かったので、やりやすかったんです。私自身、音楽のことはわかりませんから、判断を求められても「わからん、何とかして」としか言えなくて(笑)。

北村: だからスタッフ内でやるしかなかったんですよ。「いい感じにしといて」が合い言葉でしたから(笑)。

米: セッションする時も「いい感じに弾いといて」、スタッフロールを作る時なども「いい感じにロール作っといて」でした(笑)。

N.O.M: 「いい感じにロールして」って、なんだかスゴイですね(笑)。ではユーザーへのメッセージをお願いします。
北村: 一応、「サウンドコミュニケーションシステム」と銘打っていますので、このソフトがきっかけになって色々な友達ができたらいいなと思います。私個人としては、これによって人の輪が広がっていって欲しいなという夢がありますので。

米: 音楽を始めるとかバンドを組むというと敷居が高くて挫折してしまう人も多いと思います。でもバンドブラザーズは、そんな人でもすぐに入ってこれる音楽ソフトです。演奏することの楽しさ、みんなで1つの音楽を作り上げる楽しさというものが、少しでもわかってもらえたらうれしいです。

西田: ユーザーさんにはいろいろ発想して遊んで頂きたいのですが、例えばカラオケ屋さんにこれを持って行って、マイクのところにケーブルをつないで合奏して、『カラオケボックス』ならぬ『合奏ボックス』にするというものをぜひ(笑)。スタジオを借りて練習するとお金かかりますし、カラオケ屋さんなら安価で大きな音が出せるので楽しいと思いますよ!(注:お店の許可は取ってくださいね) あと、甲子園のアルプススタンドで"六甲おろし大合奏"とか、色々と発想をふくらませて面白い遊び方をして下さいね。


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