2-2. 開発スタッフインタビュー
任天堂株式会社 プロデューサー 田邊賢輔任天堂株式会社 アシスタントプロデューサー 大谷明
任天堂株式会社 コーディネーター、アシスタントプロデューサー 田端里沙

名作メトロイドシリーズの最新作、それもFPA期待の新作ということで、首を長くして待っていたファンも多いことでしょう。
今作のポイントや開発までの道程、RETROとのやりとりなどをインタビューしてきました。嬉しいオマケ情報もあり、ファン必見のインタビューです。最後までお楽しみに。

“ファーストパーソンビュー(一人称視点)を活かした『メトロイド』らしい遊び方の追求
--今回は『メトロイドプライム』の続編ということですが、開発の経緯を教えて下さい。
田邊 田邊: 2003年4月頃から、アメリカと日本を行ったり来たりして作り始めたのがスタートですね。今回のテーマは『ダークとライト』なんですが、これはNOA(Nintendo of America)の子会社であるレトロスタジオからの提案でした。で、このアイディアを見て「どこかで聞いたようなネタだなあ」と思ったんですよ。それって『トライフォース(ゼルダの伝説 神々のトライフォース)』と同じじゃ?と。2つの世界を行ったり来たりして闘うという案は、実はかつての自分が考えたアイディアだったんです(笑)。10年ぶりに同じテーマを持った作品を扱うことになりましたが、まあ両方とも自分が関わってるからいいのかな、なんて。

--それは驚いたでしょうね(笑)。
田邊:確かに…でも、10年ぶりに同じテーマを全く違う作品で、どう表現できるかなという部分で、非常に楽しみでもありました。

--新作を作るにあたって、特に注意した部分はどこでしょう。
大谷:前作のストーリーは、正直に言うとあまり奥深い展開というものがあまり感じられなかったと思います。おもにサムスが1人で謎を解いていく、という感じでしたよね。でも今回は、他のキャラクターを使ってストーリー部分を拡げて行こう、という話になりまして。『光と闇』ではライトビーム、ダークビームなんていう設定も生まれまして、表裏一体の世界といった設定もかなり練り込みました。
左から、田端、田邊、大谷 田端:前作を遊んでいない方でもスイスイ遊べるように、ビーム攻撃力や特性の使い分けなどに気を遣いました。今回は光の生物に対してはダーク属性の武器を、闇の生物に対してはライト属性の武器を使うということになっているんですが、さらに弾薬システムなんかも盛り込んで戦略性の幅を拡げています。この辺りのシステムを上手く使うよう、プレイヤーに対して考えさせるという部分はちょっと難しかったですね。

--新要素として挙げられる部分は、まずマルチプレイでしょうか?
田邊:そうですね。メトロイドというゲームは基本的には一人で遊ぶゲームだとは思うんですが、ファン同士が一緒に遊べる環境があったら、楽しいんではないかと思って採用しました。アメリカでは『FPS(ファーストパーソンシューティングゲーム)』が最先端なんですよね。なので、基本的にはFPSのマルチプレイになっています。確かにあちらのFPSと純粋に比較されると、操作性の違いに若干違和感を覚えるかも知れません。でも、ぜひともメトロイドファンの人同士で遊んで欲しいです。

--FPSが市場のシェアを多く占めているということでですか?
田邊:そうです。FPSか格闘アクション系、後はスポーツ系のゲームで9割近く行くんじゃないでしょうか。任天堂は新しくゲームを作る時に「これまでにない部分を持ったもの」というのを最優先に作ります。とにかくほかの作品との差別化なんですが、メトロイドプライムシリーズでは1スティック操作を意識して取り入れました。FPSは基本的にスティックを2本使って遊ぶものが多いんですよ。でもそれは逆に言うと、FPSをしない人から見たらとても敷居の高い操作方法ですよね。日本でFPSに馴染みのない人でも、気軽にチャレンジできるということで、この部分は気を遣いました。

--2本スティックだったら諦めてしまう人が多いでしょうね。慣れない人には、確かに難しいと思います。
田邊:ゲームの難易度的には、メトロイドって決して易しくないんです。逆に、やや難しいレベルだと思います。ですから操作系統をできるだけ楽にして、間口は広げつつ、かつゲーム自体の難易度はそこそこに保つようにしました。そうでないと、従来のファンの皆さんからは「難しくないとメトロイドじゃない!」と言われるんですよね(笑)。

ゲームキューブの性能を極限まで発揮したビジュアル
--初心者やあまりこういうものが得意でない人に対して、どういう部分を考えられましたか?
田邊:武器の入手タイミングなどは計算してあります。つまり、あえて使い方の練習はさせないようにしているんです。チュートリアルモードというのを用意しているゲームも多いですが、もっと自然にゲームに組み込みたかったのです。自然にプレイしていく段階で、どうやって覚えさせていくかを考えました。最初にある程度の能力を与えておいて、その武器の特性や操作を覚えてもらっておいてから取り上げます。そうすることで、序盤からそこそこ派手な快感も楽しめ、その後の謎解きの予想も付くという効果があるんじゃないかと考えました。これ、前作でもやったんですが、2回もやっちゃいましたね(笑)。

--親切すぎると面白さが半減、ということですか。
田邊:いまのユーザーさん達は、攻略本を片手に、そのまんまのルートを遊んだりというのが多いんですね。でもメトロイドファンの方は、探して行く楽しみ、知っていく楽しみというものを求めていますから。

--アメリカと日本のユーザーさんで、遊び方の違いってあるんですか?
田邊:スキャンという部分にはっきり違いが現れますね。アメリカのユーザーさんは、スキャンメッセージを読まずにとにかく撃ちまくりたい。日本のユーザーさんは丁寧にスキャンして、とにかくテキストを読みまくる。なので、日本版ではスキャンメッセージに、より気を遣っています。映画の字幕とおんなじで限られた文字数で、できるだけ正確にデータを伝えなくてはいけませんし、ただ眺めるのではなく、興味を引けるように内容も英語から変更した部分がかなりあります。あ、田端のほかにもう1人英語要員がいるんですが、彼が作った日本語メッセージがどことなく『文語体』なんですよ(笑)。敵キャラの説明関係は彼が関わっているので、「これがその人の作ったメッセージかな」なんて裏読みしてもらうと面白いかも(笑)。

--ゲームの雰囲気としてはかなり怖いと感じて、思わず逃げ回ったりしました(笑)。
大谷 大谷:それじゃ、弱虫サムスじゃないですか(笑)。キャラクターのなかでは“ダークサムス”というのがストーリーの節々で出てくるんですが、闘うにつれて強さが変わったりします。 その世界に入るのが、段々怖くなってくると思いますよ。遊ぶに従って、その恐怖感が変わってきますからね。 ライトワールドとダークワールドの違いを出すことや、それによってどんな遊び方が出来るかを考えたりという作業は、かなり試行錯誤しました。ルミナスは、メトロイドの世界に元々いたキャラとは別に考え出したもので、レトロスタジオのデザインです。
ダークサムス ルミナス

--言葉が悪いですが、あまり可愛い感じではないですよね? ちょっと怖いというか、虫っぽいというか…。
田邊:ええ、あれは蛾なんです(笑)。敵だけじゃなく、ダークワールドにいるだけで体力が削られていくという怖さもありますね。ビジュアルでも当然そうですが、心理的にもジワジワと来る怖さ、孤独感というのを表現したかったんですよね。
田端:ボス達も結構いい顔をしていると思いますよ。ボス戦に関して言えば、ただ撃てばいいというわけではなく、それぞれに攻略方法を用意してあります。スキャンメッセージを読んで、自分で考えて攻略方法を見つけ出す…というのが堪能できるはずですよ!

--絵といえば、ムービーが各所に入りますね。映画のような印象で、相当な出来だと思ったんですが。
大谷:コンテは全て企画開発部で製作し、ムービーのデータ自体はレトロスタジオがハイクオリティに仕上げてくれました。ボリューム的には前作の3倍ですから、かなりの量ですよ。
田邊:これはムービーだけでなくてプライムシリーズはビジュアル面でゲームキューブの性能を、ピークまで使い切ったと言える出来だと思います。レトロスタジオはコンセプトアートから既製のゲームにはない独特のデザインを造り上げていますから、ビジュアルから受けるインプレッションのレベルは、かなり高いと思いますよ。

--かなり高レベルだということですね。
田邊:ムービーには大別すると2種類あります。まず「プリレンダムービー」というのは、そのままムービー用に作った映像を再生する技術。もうひとつ、「リアルタイム」というのがあるんですが、これはゲーム内にあるデータを使ってその場その場でカメラやモデルを動かしていくというものです。前者はゲーム仕様に変更があった場合に、整合性を取るのが非常に難しいという面があります。後者は、データロードのタイミングや量の最適化を測ることが重要です。
田端:ただ、プライムシリーズでは、イベントが起こったときのスーツやビームの装備が違っていたりするので、その場合にはリアルタイム方式を採用した方が効率が良いんです。でも、オープニングやエンディングなど、その心配が無いところでは、プリレンダムービーを使っています。

今回も嬉しいボーナス要素あり。やり込み要素大!
--田端さんは前作に引き続きの参加で、やはり英語要員として活躍されたんでしょうか?
田端 田端:前作は渉外担当で入ったんですが、今回は開発の中盤から仕様関係も監修させてもらいました。特に後半は、ROMがアップデートされるたびに内容を確認するのとコーディネートを平行しなければならなかったのが大変でした。
大谷:やはり通訳を介在したやりとりは、時間がかかる上にどうしても語弊が生まれてしまうんですよ。そこはやはり喋れた方が有利ですよね。
田端:前回に比べて色々な部分を任せてもらったので、今回は「自分が作っている」という感覚で仕事ができました。ボムガーディアンというのが、初めて仕様をまとめたボスなんですが「初めての子供にしては可愛くないね」と言われたりしています(笑)。

--大谷さんはパブリシティも担当されたんですね。
大谷:これはアメリカ先行発売ということで、任天堂ソフトでは珍しいパターンですね。アメリカは情報を出し過ぎてしまうきらいがあるので、そこのすり合わせをNOAとやっていきました。やはり違う言語を使う相手との意思の疎通は難しいと思いましたし、こちらが伝えたいこともおそらくダイレクトには伝わってないでしょうね。アメリカの感覚は、民族的にも日本の感覚とは全然違いますから。
田端:通訳の時も日本人が使いたがる曖昧な表現は通じませんしね。でも、ゲーム自体はアメリカ人ならではの感覚のお陰でカッコよくなったという部分もありますから。レトロと任天堂は信頼関係のある会社同志だからできることだと思います。

--ずばり、スタッフオススメのポイントはどこでしょう?
田邊:現場にいるという臨場感ですね。これはサウンドの効果が大きいと思います。効果音などのエフェクト関係はレトロスタジオなので、その辺りは若干洋ゲーテイストじゃないでしょうか。BGMは全て任天堂のメトロイドオリジナルスタッフが担当しています。
田端:私からはオススメの遊び方ということになりますが、疑問があったらとにかくスキャンですね。ヘルプ的要素として使えますから、注意深く見ていくといいんじゃないでしょうか。これはオマケ情報ですが、今回もアイテム回収率のパーセンテージによってエンディングは3パターンに変化します。75%以下、それ以上、100%で違う映像を見て頂けますよ。“ギャラリー”はスキャン率が関係していて、40%、60%、80%、100%で色々と見られる絵が出てきますので、お楽しみに。
大谷:ゲームに疲れたら、ワインでも飲みながらギャラリーを見て気分転換して欲しいですね。それと、やはりスキャンは重要なファクターですね。敵の動きなんかも、よく見ていると避けられないということはありません。AIもきちんと考えていますから、弱点を調べたりすることが大切になってきますね。
田邊:初見では難しいと感じられるでしょうが、ちょっと詰まったら1度やめて、翌日またチャレンジして下さい。間が空いてから見てみると、新しい発見があるでしょう。繰り返し遊んでいくことで、自分が上手くなっていくことがわかっていくゲームなので、ぜひとも楽しんで頂きたいですね。
ただいま公式ホームページで開発者へのご意見、ご質問を募集しています。プレイされた方は一言だけでもいいので、ぜひメッセージをお願いします。
左から、田端、田邊、大谷

--どうもありがとうございました!

サムス・アラン(ダークスーツ)


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