2.宮本 茂ロングインタビュー マリオの生みの親からのメッセージ
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「世界のマリオ」とまで言われるようになった、愛すべきキャラクター。
この存在を創り出したのが、任天堂専務取締役であり、現在も第一線のゲームクリエイターとして活躍する宮本 茂です。
マリオが誕生した頃の逸話から、今後の展望、そしてクリエイターの日常など、多岐に渡るエピソードが満載のインタビューになりました。
任天堂株式会社 専務取締役 宮本 茂
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「またマリオ?」と言われていたのが大ヒット
『スーパーマリオブラザーズ』が発売20周年を迎えましたが、それについてどう思われますか?
『スーパーマリオブラザーズ』宮本:なかなか実感がわかないですね(笑)。例えば自分が危機に瀕している時でも、あまり気にせずにやってきたし、それと一緒で今も特別な感覚が無い。これまでひたすらに繰り返して積み上げてきたものがあって、現在あるものはその結果だといういう風に。意外と淡々としています。敢えて言うなら、ホントに運が良かったということですね。

マリオがここまで大きくなったことについて、お話し下さい。
宮本宮本:変に制限をつけなかったのが良かったんだろうと思います。キャラクターが生まれてそれが世間に知れてくるようになると、「好きな色はなんですか?」「好きな食べ物は?」というように、設定が細かく決まってきちゃうんですが、大体24〜25歳くらいということ以外はなにも決めていませんでした。それはなぜかと言えば、その後でマリオを使ったゲームを作る時に、ゲームに沿った設定でない場合は活かせなくなってしまう。ゲームを作る上で邪魔になりそうな情報を入れなかったんですね。今後も、それを踏まえた上で自由に作っていきたいと思っています。

現在は任天堂以外のサードパーティー各社も、マリオを使ったゲームを制作していますね。
マリオ宮本:そうですね。初めの頃は「マリオに野球は合わないだろう」とか思ってたんですけど、やってみると意外に合う。ビデオゲームのキャラクターですから、おおらかに使ってもらったらいいんです。そうやってきて良かったと思っていますし。任天堂が作っている本流以外の所でも、とにかくビデオゲームと言えばマリオという風に出し続けることですね。それによって、新規のユーザーさんがマリオを目にする機会があるわけですから。

サードパーティーの制作するマリオは、宮本さんが考えているマリオが表現されていると思いますか?
宮本宮本:マリオがなにをしたらいいかという部分に関しては、関係する社員全体に思い入れと厳しいレギュレーションを持ってもらっていて、逆に僕の方が甘いくらいです。出来上がってくるモノについては安心していますね(笑)。ただ、キャラクターの絵に関しては監修のチームがあって、そこのチェックは厳しいですよ。元々はドット絵で、いちいち多くのパターンのマリオを描いてチェックというのを繰り返していたんです。でも、NINTENDO64になってからキャラクターが3Dになりましたね。これが幸いして、ひとつのモデルを作ったら、あとはそれを動かせばいいだけになって非常に楽な制作になったんです。そこからかなりマリオのゲームの幅が広がったように思います。当然、野放しに提供しているわけではありませんけどね。

守るべきラインがあるということですか。
宮本:一線を踏み越えないで頂いてるということですね。でも、例えばテニスだったら大胆に動いてもらえばいいし、その辺はおおらかですよ。単純に、純正のジャンプアクションゲームに関しては慎重にやっているということですね。

『スーパーマリオブラザーズ』20周年ということで、誕生にまつわるお話をお願いします。
宮本:当時、スーパーマリオを作っている時は、社内からは「またマリオ?」と言われていたんですよ。それまでにもたくさんのソフトに出演していましたし。ファミコンが出て約2年が経過し、ディスクシステムへ移行しようという時で、カセットでの最後のゲームとしてディスクシステム用のゲームと同時に作っていた物…というのが本当のところです(笑)。

"ついで"とはいえ、いまでも大活躍ですね。
宮本:作る側としては、まずゲームシステムがあって、そこに被せるものがキャラクターなんです。マリオは被せやすいガワになってる。彼を使うと、ネタが考えやすいんですよね。

マリオシリーズから誕生した脇役も、どんどん主役級の活躍をするようになっていますよね。
宮本宮本:ヨッシーアイランドが最初かな? "ふんばりジャンプ"や、舌を伸ばして取るというのをしたかったんですね。最近はワリオに続いて、ワルイージなんていうのも出てきて。ワリオが生まれたら、「じゃあワリオにはマリオにルイージがいるように…」と言われて誕生したのがワルイージです。だから彼はテニスがなかったら存在しないですね。それぞれ必要に応じて作っているんですよ。スタッフ内には「いつもマリオが主役でルイージがかわいそうだ」と言う人がわりといまして、どちらかというとルイージの方が大切にされているような気がします。それで『ルイージマンション』も出来ましたし(笑)。

10月にはついにピーチ姫が主人公の『スーパープリンセスピーチ』が発売ですね。 ピーチ
宮本:ピーチはピーチらしく、ということを大切にしています。カサをわざわざデザインしたり、ピーチの面白さを出して行きたいと。ピーチらしさというのは、脳天気なお姫様ってことなんですよね。本人はマリオに守られてるなんて思ってない。女性は強いというイメージです。開発スタッフにもカカア天下の家庭が多いですし(笑)。女性が強くあってくれる方が、なんだか安心なんですよ。ピーチに関しては、今後も色々やらせてみたいと思っています。

キャラクターを使うにも、どの辺りまでは良くて、どこからがNGというボーダーラインがあると思うんですが。
宮本:絵に関しては相当ありますよ。デッサン狂いはいちばんダメです。でも、それ以外に関しては「遊びが面白ければいい」という基準で進めてきました。例えば『ヨッシーの万有引力』では、ああいう"かたむきセンサー"を使ったゲームを作りたかった、という想いがまずあったんですね。あれがただの横スクロールゲームだったら、企画を受け入れなかったでしょうね。チャレンジがそこにあるなら積極的に進めるんです。

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クリエイターになるために必要なこと
宮本さんご自身について伺いたいと思います。私生活をちょっとお話し頂きたいんですが…。
宮本:ゲーム制作はですねー、夢のような世界ですよー。ゆったりと好きなように楽しく仕事して、たくさんお金もらって…(笑)。

いやいや、実のところをぜひ(笑)。相当お忙しいのではと思うんですが。
宮本宮本:人間忙しいと忙しいなりになんとかするもので、適当に隙間を見つけて休んでます。色々抱え込んでる時は、周囲に手伝ってくれる人もたくさんいますし。担当者がほとんど作ってくれることも多いですし、担当者の自由に進めてもらいますよ。あまりそういうイメージはないかも知れませんけど、ちゃんと聞き分けます(笑)。ただ、完成間近の2〜3ヶ月前になると明け方まで…という生活になってしまいますね。ニンテンドーDSで出た『スーパーマリオ64DS』は、仕様や仕上げに関してかなり関わっていたので、夜中もがんばりましたよ。若手の方が先にダウンしたりということも有ります。ただ、忙しくても土日は休むようにしていますよ。やっぱり、結婚してからは家族と一緒に過ごす時間を取るように心がけてますし、家族と遊んだり、シェルティーのトライカラーを飼ってるんですが、その散歩をしたり。あと5年ぐらい前からは庭いじりや日曜大工をしていますね。それと、趣味でブルーグラスというジャンルの音楽をやってるんですが、ギターを弾いたりですね。

ブルーグラスとはなんでしょう。
宮本:ちょっとマニアックなジャンルで、アイリッシュの音楽がアメリカで成長してできた音楽なんです。ギターやバンジョー、マンドリン、フィドルなんかを使うんですが、コード(コード進行)がほぼ似たような感じなので、人が集まるとセッションがすぐ出来るんです。フェスと呼ばれるキャンプでその集まりに行くと、誰とでもセッションができるんです。100人くらいがその輪にいて、みんなでセッション。最高の時間ですね。

長くやってらっしゃるんですか?
宮本:大学の頃にブルーグラスのバンドをしていて、多少ブランクはあったものの、もう30年になりますね。技術はちっとも進歩しないんですけど・・・ゲームと音楽で手を使っていれば、老化防止になりますから。これさえやっていれば絶対ボケない!

N.O.Mの読者の方にはゲームクリエイターを目指している人も沢山いると思うのですが、なにかアドバイスは?
宮本宮本:ゲームは技術で作られるので、当然なにかしらの技術は覚えておく必要があります。本来、"ゲームクリエイター"という職業はないんですよね。プログラム、サウンド、グラフィックなど、どれかひとつは身に着けないと。それと、ゲームで遊ぶというのは当然ですが、それ以外のことも大変重要です。「人はなにを面白いと感じるのか」を知らなければならない。そのためには、色々なことをしていなくては。スポーツ、音楽、なんでもいいんですけど、ともかく自分の幅を広げる活動をすること。友人がたくさんいる、相談できる人がいることも大切です。大学になると、大概は人種が偏るものなんですが、積極的に外部の人たちと交流したり、なにかを見に行ったりすることでどんどん広げないといけません。それと、大好きなことに打ち込むのも必要ですよ。

広い視点が不可欠ということですね。
宮本:大学の時に自分はもっとしておけば良かったといまでも思ってます。当時僕は留年したんですが、自分ではそれが良かったと思うんですよね、親には怒られましたけど(笑)。学外の人たちとセッションしたり、遊んだりして、そのつきあいがとても貴重だった。音楽つながりでカントリーのお店でライブをしたり…そういう場所で知り合うウエスタン好きの人達って、ホントに濃いんですよね。その中に混ぜてもらって一緒に旅行したりすると、まるでサーカスの団体のようで、普通の自分がすごく浮いてると思ってしまう(笑)。

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マリオはフォーチュンキャラクター?
実際にゲームを作っていて、アイディアが浮かぶ瞬間はどういう時ですか?
宮本宮本:意外に普通なんですがスタッフと会議をしている時が一番多いですね。これは本当です。会議では色々な役割の人が必要で、それぞれ重要なんですよ。良く解っていない人がいても、「これはこうでこうで…」と説明しているうちに、逆に自分がより明解に解ったりする。だから色々な人がいなきゃいけないんです。素直に本音で話す天然の人とかもね、それぞれ大切なんですよ。あとアイディアがまとまるのは、お風呂に入ってる時かな。お風呂で浮かんだアイディアはかなり正確ですが、逆にアテにならないのが布団の中のアイディア。いちいちメモを取っておく程度のものではありませんね。会社では付箋にキーワードを幾つか書いて貼っておいたり、絵を描いて並べ替えたり…というような感じです。手で書いて、目から入って、口で話して耳から入れるという流れがいいのかな?

マリオに関して、今後の展望などありますか?
宮本:なにもないですねえ(笑)。ただ、デジタルメディアを使った新しい仕組みがあれば、そこにマリオを使いたいと常々思っています。やはりデジタルメディアのなかでこそ、というキャラクターだと思いますから。いまから15〜16年前にアメリカで行った認知度調査で、初めてマリオがミッキーマウスを抜いたということがありました。まだ生まれて数年のマリオを長い歴史のあるミッキーを比較すること自体がナンセンスだと思っていました。いま、マリオ自体が誕生してから25年、やっと当時のミッキーの年齢の半分ですよね。二世代近く生き延びたので、それは大変ありがたいと思っています。ただ、キャラクターというのは古びていくものなので、そうさせないように最新の技術と組み合わせていくのがマリオの未来です。

任天堂にとってのマリオとは、どういう存在なんでしょう。
宮本:ゲームデザインという仕事の無かった時代に、自分がその仕事を認められるようになった、私にとって、ラッキーなキャラクターだと思います。ドンキーコングの頃は、プログラマーがゲームを作るものだという風潮でしたが、じっくり向き合ってゲームを企画したいと思っていました。スーパーマリオが生まれてからは"ゲームクリエイター"という呼ばれ方をされるようになって。ゲームデザイナーとしてはフォーチュンキャラクターですよね。ポケモンは、「マリオの販売数にチャレンジ」という田尻さんの野望があって、作り始めたというきっかけになっているしね。私も色んなキャラクターを作ってきましたけど、結局、サインの横になにを書くかというと、いつもマリオなんです。

色々な意味で、フォーチュンキャラクターなんですね。
宮本宮本:忘れもしませんが、スーパーマリオの制作が追い込みに入っていた頃、僕の長男が生まれたんです。「名前はマリオにしたら?」なんて言われましたけど、乗らなくて良かったですよ(笑)。その後スーパーマリオで世間に大きく認知されましたから、子供に恨まれることになったかも知れない。マリオのデザインに付いて、何故こんな変なおじさんが売れたの?って不思議がられるんですけど、その理由はゲームそのものが面白いから、マリオというキャラクターをユーザーさんは受け入れざるを得なかったんですね。これが"ヘリオ"って名前だったら、"ヘリオ"が売れてたと思います(笑)。任天堂にとっては、よきパートナーであり、超えていくべき目標という感じでしょうか。

再販されたファミコンミニのスーパーマリオと、ゲームボーイミクロのファミコンバージョンも大人気ですよね。
宮本:ありがたい話です。制作した人間としては、「こういうの出そうよ」って自分からは言い出せないものなんですよね。でも上手い具合に社内から「出そう」という声が上がって、嬉しかったです。自分ではなかなか…言えませんよね(笑)。

では、最後に宮本 茂から生のメッセージをどうぞ!! >> 生メッセージを見る!
再生時間:1分14秒
約13MB

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