Nintendo Online Magazine 2006-April No.93
ニンテンドーDS Lite ニンテンドーDS Lite開発スタッフインタビュー
任天堂株式会社 開発技術本部 米山和夫 任天堂株式会社 開発技術本部 米山和夫 任天堂株式会社 開発技術本部 崎山友行 任天堂株式会社 開発技術本部 崎山友行

ニンテンドーDSLite 今回のニンテンドーDSからニンテンドーDSLiteのように、過去にも任天堂は携帯型ゲーム機における数々のダウンサイジングを成功させて世間を驚かせてきました。ゲームボーイミクロも記憶に新しいところですよね。
このようなハードウェアの小型化において活躍するのが機構設計と呼ばれるセクションです。開発スタッフの方から聞けた話は本邦初公開のエピソードが満載。いつもとは少し視点を変えて、ニンテンドーDSLiteの“中身”に迫ります!

ハードは多くの人が情熱をぶつけて完成する
N.O.M:米山さんや崎山さんが携わっている機構設計というセクションは、どのような仕事をするところなのか教えてください。

米山:新しいハードウェアを開発する際は、まず商品企画のデザイナーがコンセプトデザインを作成します。私たちはそのデザインが実際の商品となるように、本体のサイズやディスプレイの性能、各種ボタンの配置や可動部分がスムーズに動くかどうか、そして各パートで使う部品や材料の選定なども行っていきます。3D−CADシステムを使ってハードウェアをプログラム上で立体的に設計する事で、コンセプトどおりの商品化が可能かどうかをデザイナーと検討する。さらに、ここにCPUなどの各種回路が設置された基板を設計するセクションが加わることで、ハードウェア全体の設計図ができあがっていくわけです。

N.O.M:みなさんは機構設計として、いままでどんなプロジェクトに携わっていたのですか?

米山 米山:入社して最初の代表的な仕事はアーケード版の『ドンキーコング』ですね。アメリカ向けのアップライト筐体の機構設計を担当しました。当時はワンソフト・ワンハードの時代です。『ドンキーコング』のゲームデザイナーである宮本と一緒に仕事をしたのを覚えています。そのあとはファミコンにAV端子機能をプラスしたニューファミコンやスーパーファミコンジュニア、それからゲームボーイカラー以降の携帯ゲーム機のプロジェクトにはほとんど参加しています。

崎山:私はニンテンドーDSが機構設計として最初に参加したプロジェクトで、そこからゲームボーイミクロ、今回のニンテンドーDSLiteと続いています。

N.O.M:デザインどおりに作ってみたら、部品が収まらないという事態はあったりするんですか。

米山:ええ、試作上では何回も出てきます。デザインコンセプトの段階ではデザイナーに自由にやってもらうのですが、そこに中身が加わってくると、やはり商品化するためには改めて仕様を考えることになる。こちらから部品のレイアウトを提案して、おたがいの妥協点をみつけていきます。もちろん、必要な部品を詰め込めばいいというものではなくて、携帯型ゲーム機の場合はユーザーさんが手に持ったときの前後左右の重心バランスも考えながらレイアウトしていくわけです。開発中は基板設計のセクションも巻き込んで、場所の取り合いですよ(笑)。

外観だけじゃなくて中身も改良点がいっぱい
N.O.M:ニンテンドーDSLiteがこのサイズになった経緯を聞かせてください。

米山:携帯型ゲーム機として、操作性を犠牲にしてまで小さくするわけにはいかないんです。もちろんディスプレイの大きさはキープしたいし、ボタンの配置も変えるわけにはいかない。そんな中でダウンサイジングするために、今回は部品メーカーさんと協力してカスタムメイドのパーツをいくつか使っています。

崎山 崎山:たとえばニンテンドーDSは上下のディスプレイは同じ液晶なのですが、じつはニンテンドーDSLiteでは上側のディスプレイは従来とは異なる部品を使っています。フタの部分(外観はDSと同じ厚さに見えるが、内側から見るとかなり薄い)はなにかと衝撃が加わる部分でもあるので、より強固に、それでいて薄い液晶モジュールを探していました。でも、今回のコンセプトを満たすレベルを既成の部品に求めるのはむずかしかったので、液晶メーカーさんと試行錯誤しながらのカスタムメイドとなっています。既成の液晶モジュールをいかに薄いボディに組み込むかではなく、薄いボディに合う強度の高い液晶モジュールを、部品の段階から作りあげているわけです。

米山:同じ理由でステレオスピーカーもカスタムメイドです。あの薄さではとてもじゃないが、既成の部品は使えないと言われてしまいました。でも、そんなときは部品メーカーさんから、こんな部品が新しく作れますよ、という提案を受ける場合も多いですね。ただし、大量生産する商品ですからコストも抑えないといけない。最先端の部品ばかりを使うとコストも高くなってしまうし、すべての工場でその部品を生産時に適用できるかどうかの問題も出てくるんです。そういう点もふまえて、どこにどれだけ新しい部品を使うかも悩むところではあるんですね。

N.O.M:ディスプレイの輝度がアップしているのに、電池の継続時間も上がっているのが不思議でしょうがありません。

米山:電池は同じサイズに見えますが、じつは電気的な容量が約20%アップしているんです。今回はディスプレイは暗い部屋で遊ぶと少しまぶしいぐらいだと思います。そこで目の負担にならない輝度を選んで遊んでもらいたいのと、省電力という2つの意味で輝度を4段階に調整できるようになっています。この機能のためACアダプターの出力などにも変更を加えており、従来のものとは異なるACアダプターとなっているわけです。

崎山:今回のディスプレイはかなり電力を食うのですが、周辺の回路の段階でかなりの省電力化に成功しています。そんな努力もあって電池継続時間の延長が成し遂げられているんですよ。

N.O.M:太く、長くなったタッチペンはさらに使いやすくなってますね。

米山:こちらの予想以上に幅広い年齢層の方に楽しんでいただいているようで、特に高齢のユーザーの方には従来のタッチペンでは小さくて少しあつかいにくいのではと感じていたんです。

崎山:ニンテンドーDSではタッチペンを本体のタテ方向に収納していました。ところが今回は本体自体が前よりも小さくなって逆にタッチペンは大きくなるわけですから、ヨコ方向に収納するしかない。それならタッチペンをもっと長くできたように思えるかもしれませんが、じつはギリギリなんです。本体の裏側を見るとわかるんですけど、2種類のカートリッジ用のスロットと電池の間のわずかなスペースを生かして収納されているんですよ。

使いやすさに磨きがかかって、ますます楽しく
N.O.M:よく見ると色々なところに変更が加えられているのに気づきます。

米山 米山:最近は本体をタテに持って遊ぶソフトも多いですよね。その際、音声入力がスムーズにできるようにマイクを本体の中心へと移動しています。本来、マイクのような部品は基板上へ直に設置した方が空間効率がいいんです。でも、最終的にはなんとか可動する本体のヒンジ部分という無難なところへ持っていくことができました。

崎山:ボタン配置もさらに使いやすくなるように見直しています。たとえば電源スイッチは以前は開かないとON・OFFができませんでした。でも、本体を閉じてイヤホンで聞いているだけのソフトも発売されているので、閉じたままでも操作できるように本体の側面へ移動しています。ただ、カバンの中で何かにひっかかってスイッチが誤動作しないように、少し強めに操作しないと動かない構造にしてあるんです。

米山:これはニンテンドーDSから備えている機能なのですが、DS用カートリッジを抜くときに1回プッシュするとカートリッジが飛び出してきますよね。ここにちょっと工夫がありまして、指がカートリッジに触れた状態だとそのまま抜けるんですが、プッシュ直後に指を離すとカートリッジが1cmほど動くだけで途中で止まるんです。バネの勢いで飛び出したカートリッジがユーザーに当たる危険性がないように配慮されているんですよ。

N.O.M:ボタンの押し心地がニンテンドーDSとは少し違う感じもしますね。

米山:そうですね、十字ボタンとA・B・X・Yボタンを押したときの感触にも改良を加えています。傾向としてはゲームキューブのコントローラに近い雰囲気です。

N.O.M:3種類のカラーリングはどのように決まったのですか?

米山:カラーリングはデザイナーから提案されるのですが、ニンテンドーDSの購買層が性別を問わず、また年齢層も幅広いので、できるだけ女性や高齢者の方にも気軽に選んでもらいやすい色をセレクトしています。それから軽いという意味での“LIGHT”なイメージも持ってもらいたい狙いもありますね。

崎山 崎山:今回は2色成形で独特な質感を出しています。クリスタルホワイトとアイスブルーに関しては透明な部品を、エナメルネイビーには薄いブルーがかった半透明の部品が使われています。本来はカラーチェック用の試作品は社内で作ってしまうのですが、今回は2色成形のために外部の専門業者さんに依頼しています。それぐらいこだわりのある微妙な質感が表現できたと思っています。

N.O.M:その他、今回心がけたことはなんですか?

米山:携帯ゲームの機構設計に携わる者として強度は軽視できません。誤って本体を落として壊してしまったとしても修理代に数千円かけていただくのは忍びないですし、修理代にかかるぶんをおもしろいソフトに使っていただきたいですしね。そのために今回も内部構造の補強や部品の配置バランスも含めて強度をかなり上げ、強度試験は長期間かけて行っています。ただ、そこには重さやサイズとの葛藤もあるんです。この悩みはゲームボーイの時代から機構設計に携わっている者の宿命ですね。

N.O.M:最後にニンテンドーDSLiteの発売を楽しみにしているユーザーの方へメッセージをお願いします。

ニンテンドーDSLite & ニンテンドーDS 米山:ぜひ店頭などで実物を触ってみてください。ディスプレイが見やすく明るく、そして本体が持ちやすくなったので、より幅広い年齢層の方に気軽に楽しんでいただける携帯型ゲーム機になっています。

崎山:使い勝手に関してだいぶ見直しているので、長く付き合える完成度の高いハードウェアだと思っています。丈夫には作ってありますが、なるべく丁寧に扱ってもらえるとうれしいです(笑)。

N.O.M:今日はありがとうございました!


インタビュー当日、出張で同席できなかったニンテンドーDSLiteのデザイナー江原唯からのメッセージです。

江原:DS Liteは年齢、性別、ゲーム経験の有無を問わず幅広い層の方を対象にデザインしました。DSは多機能ではありますが、それが「複雑で難しいもの」と錯覚されないよう、いろいろな工夫をしています。手軽に、直感的に遊べるようにデザインしたので是非実際に手にとってDSならではの魅力的なゲームの数々を体験してみて下さい。


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