Nintendo Online Magazine 2006年7月号

『New スーパーマリオブラザーズ』開発スタッフインタビュー
左から:任天堂株式会社 ジェネラルプロデューサー:手塚卓志、ディレクター:足助重之、デザイナー:蔭山大輔、サウンドクリエイター:鈴木太樹

長く愛されている人気シリーズだからこそ、多くのファンの期待を裏切ることはできない。その意味でシリーズの新作を世に送り出すプレッシャーというのは相当なものではないかと思います。今回は『New スーパーマリオブラザーズ』の開発スタッフに話を聞きました。予想どおり、数々のこだわりエピソードが飛び出す濃い内容となっています。本邦初公開のマル秘情報も聞けました!


新しいスタンダードを生み出すという挑戦
NOM:今回オーソドックスな横スクロールアクションとして『スーパーマリオブラザーズ』の新作をリリースした経緯やコンセプトを聞かせてください。
手塚:ニンテンドーDSの立ち上げ時に合わせて『スーパーマリオ64』をリメイクしました。それと並行するような形でGBA用の『スーパーマリオアドバンス』シリーズも作り続けていて、ついにリメイクするネタが尽きてしまったんです(笑)。

NOM:えっ! そ、そんな理由だったんですか? 手塚
手塚:まあ、それは冗談で、じつはニンテンドーDSでも今回のような横スクロールの『スーパーマリオブラザーズ』は必要だとずっと考えていたんです。というのも、ニンテンドーDSがすごく話題になっていて、いままでテレビゲームに触れていなかった人が多く遊んでくださっています。そういう人たちでも自然に楽しんでもらえる『スーパーマリオブラザーズ』を作りたかった。プレイヤーになんの予備知識が無くても楽しめるものを作ろうと製作を始めたんです。

NOM:従来のシリーズですと新作はタイトルの後ろにナンバリングされたり、ハードウェア固有のタイトルが追加されています。今回はタイトルの頭部分に“New”がつけられていますよね。
手塚:最初から“New”をつけることは自分のなかで決まっていました。昔の『スーパーマリオブラザーズ』って、スタンダードなアクションゲームとして認知はされているんですけど、マリオを知らない人が遊ぶと少し昔のゲームという感触を持たれるようなんですよ。基本のシステム自体を変える必要はないんですけどグラフィックやサウンドの演出を今風にしていくことで、横スクロールの『スーパーマリオブラザーズ』における、これからのスタンダードとなるものを作りたかったんです。
足助足助:私は『スーパーマリオアドバンス』シリーズの開発にアシスタントディレクターとしてずっと参加していました。その当時から新作の『スーパーマリオブラザーズ』を作りたいと思っていて、そして企画を手塚と相談している時期にニンテンドーDSが登場します。ニンテンドーDSって、タッチペンでの操作や上下2画面とかが話題になっていますよね。それらはもちろん大事なんですが『スーパーマリオブラザーズ』で体験できる“昔からの遊び”というものを、いまの時代に提供できないかと考えていました。そして当時、ファミコンミニの『スーパーマリオブラザーズ』が大ヒットしていたこともあり、これは新作の『スーパーマリオブラザーズ』もイケると確信を持つことに。
手塚:昔を懐かしんでファミコンミニ版を買ってくれる方がすごく多いみたいですね。光栄なことです。
足助:でも、いまリリースするんだったら新しくパワーアップしたものを出したい。『スーパーマリオブラザーズ5』というタイトルにしてしまうと、ファミコンからスーパーファミコンへと発展してきて、そのライン上にある続編というイメージを強く持たれてしまいます。

NOM:つまりシリーズの新作でもあり、ある意味『スーパーマリオブラザーズ』への挑戦という捉え方もできる。
足助:ええ。ただし、心がけたのは昔の『スーパーマリオブラザーズ』の良さは絶対に壊さないようにすること。そのなかで新しくできるところは積極的に新しいアイデアを盛り込んでいこうと。その点でも『New スーパーマリオブラザーズ』というのは、すごくしっくりくるタイトルでしたね。
手塚:『スーパーマリオアドバンス』シリーズを作っているスタッフなので、すごくマリオのことに詳しいんです。僕はファミコン版やスーパーファミコン版の『スーパーマリオブラザーズ』を作ってきているんですけど、年数が経っていることもあって忘れている部分もあるんですが、彼らは本当に細かいところまで良く知っています。
足助:プレイヤーとしても経験していますからね。ちょうど小学生のときにファミコンで『スーパーマリオブラザーズ』が初めて発売されました。当時はファミコン大好き少年で、夢中になって遊びました。

NOM:子供の頃に遊んでいたゲームシリーズの新作に開発スタッフとして加わるのはどんな気分なんですか? 蔭山
蔭山:ファミコン本体といっしょに買ってもらったのが『スーパーマリオブラザーズ』でした。当時ウチは家族で遊んでいたんです。それから年月が経って両親もゲームを遊ばなくなってきて、自分が開発に関わったゲームを見せても、いまのゲームは少し難しいらしくて遊んでくれないんですよ。でも、今回の『New スーパーマリオブラザーズ』なら遊んでもらえるかな、と思いながら作っていました。
足助:みんなが楽しんでもらえるゲームを作りたいな、という将来の夢を思い描いたのは『スーパーマリオブラザーズ』を遊んでいたときです。でも、まさかその新作の開発を担当するとは思っていなくて。しかしディレクターとして開発を進めていくことは、タイトルの重みもあってプレッシャーは強かったんですけど、逆にシリーズタイトルに見合うソフトになるよう目標を大きく掲げることができ、高いモチベーションを保てました。
手塚:あんまり悩んでいる感じは見られなかったけどね?
足助:じつは色々と困ってはいたんですよ(笑)。でも、仕様を決めるときには迷いは少なかったですね。自分の遊びの根本が『スーパーマリオブラザーズ』なので、そこに問いかけながら大切に進めていきました。
鈴木鈴木:自分はファミコンを買ってもらえませんでした。両親が屋外で遊ばせたいタイプだったんです。だからバットとグローブを持って出かけて安心させつつ、友達の家へ行って遊んでいました(笑)。

手塚:今回はファミコン版の『スーパーマリオブラザーズ』に関わっていた古株のスタッフと、彼らのような若いスタッフがいっしょになって進められたプロジェクトなんです。異なる世代がここまでがブレンドされた開発チームはなかったんじゃないかな。そういう意味では大変でもあり、おもしろくもありました。


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グラフィックもNewなところが満載なんです!
NOM:マリオが登場するゲームはキャラクターのグラフィックチェックをシビアに管理していると聞きますが、今回はその点で苦労されましたか?
ゲーム画面手塚:じつは今回のキャラクターは『スーパーマリオ64DS』で使われた3Dモデルを参考に使っています。ただ、2Dの背景と3Dのキャラクターをどのようにマッチさせるかは試行錯誤をくり返しました。

蔭山:例えば、木1本の表現にしてもリアルにドットで描くと手前にあるキャラとの比較でどうしても少しパサついた感じになってしまう。3Dのキャラクターが手前にいて、それに合う背景というのはドットらしいドットではなくて、もっと質感を大事にしたものじゃないかと。

足助:ステージにあるブロックや足場などのマリオと直接触れ合う部分と、背景などのマリオと直接関係しないものは、はっきり違いをつけてあります。このことでマリオがステージ内のどこを進めるのか、プレイヤーにもわかりやすく表現できたと思っています。今回は『スーパーマリオブラザーズ』シリーズを遊んだことのない人でも自然に楽しんでもらいたかったので、特に注意しました。キャラクターとステージの仕掛け、そして背景、この3つを並べたときの調和と違いの調整は、どれかを少し変更しただけで全体にも影響がおよぶ部分だったので担当スタッフはがんばってくれたと思います。

NOM:色々なアイテムで変身したマリオのグラフィックも楽しいです。
足助:キャラクターが3Dでモデリングされていることもあって、簡単に拡大や縮小をさせることができたわけです。そこでマリオを大きくするとどのくらい迫力が生まれるんだろうと試してみたら、たしかにインパクトはあるんだけど大き過ぎてもステージの仕掛け自体が画面に映らない。でも、この演出はイケると感じたのも事実で、どのくらいのサイズなら巨大マリオのままステージを遊べるか調整していきました。
蔭山:個人的に試さなくて良かったなと思うのは、巨大マリオになったときにデザインを変えなかったことです。ここでデザインを変えてしまうと、どうしても色々なマリオの形の1つという印象を持たれてしまう心配がありました。普通のマリオのプロポーションのまま大きくすることで、敵やコースの仕掛けとの大きさの比較による違和感といいますか、より巨大になった雰囲気を味わってもらえると思います。
手塚:それとは逆にチビマリオはプロポーションの変更をしているんですね。どうも、そのまま小さくするとインパクトが少ない。そこでマリオの身体のバランスを意図的に変えてもらった数多くの案を出してもらいました。
蔭山:じつは鼻とかをだいぶ大きくしてあるんです。チビマリオに関してはどのようにデフォルメするかがポイントでした。最初は鉄腕アトムに出てくる御茶ノ水博士ぐらい鼻を大きくしたんですが各所から「こんなのマリオじゃない〜!」とクレームが届いたり(笑)。

NOM:巨大マリオで敵やコースの仕掛けを吹き飛ばすのが気持ちいいですよね。
ゲーム画面 足助:当初壊せたのはブロックぐらいだったんですが、もっとハチャメチャな感じを表現したくて土管なども壊せるようになったんです。
手塚:当初、巨大マリオは特定のコースの限られた場所だけで使える演出でした。ただ開発を進めていくうちに「これだけ看板になるような演出だったら、どこでも試せるようにしようよ」とマリオの生みの親である宮本から話があって仕様を大きく変更したんです。
足助:全部のコースで試せたら楽しいというのは宮本から話をうける前から感じていました。しかし全コースで出現させるとなると、ゲームの仕様上の問題点もたくさんあって、ハードルは高いこともわかっていました。でも宮本の一言で、問題点をクリアして、ハードルを乗り越えようと決心ができました。

NOM:落ち着いて考えてみると、どこでも巨大になれるのってすごいです。
足助:その裏ではバランス調整で苦労しているんですよ。例をあげるなら、コースの先に進むために使う階段状の足場を巨大マリオで壊すとします。そしてそこで変身が解けてしまうと、そこから先へは進めなくなってしまいます。そこで階段を壊してもジャンプで先へ進めるように隠れブロックが現れるようにしたり、巨大マリオだと天井に頭がつかえるような場所では時間がムダにならないよう変身がすぐに解けるようにしたり。多くのコースで不都合がおきないようにちょっとずつ工夫を加えてあるんです。
手塚:プレイヤーが「ここで巨大マリオになると気持ちいい」とか、「ここで巨大マリオになったけど役に立たなかったぞ」など、成功や失敗を問わず色々な体験をしてくれたらうれしいですね。
足助:巨大になったマリオを通常と同じ速度で歩かせると、マリオが大きい分、よけいに動きが遅く感じるんです。もちろん動きが遅く見えることで重量感が増すのでまちがいではないんですが、コースをハデに壊していく爽快感はあまり感じない。重量感があって、しかも爽快さが必要なんです。この矛盾した要求に答えてくれた蔭山にはとても感謝しています。
蔭山:グラフィックだけではなく色々な組み合わせで現状のような演出が完成したと思っています。例えば、巨大専用のアニメーション、歩くときのカメラの揺れ、巨大になったときのBGMや足音など、いろんな要素が組み合わさって実現できたものだと思っています。

NOM:個人的にとっても好きなのがシリーズとしては『3』から続いている箱庭風のマップ画面です。 ゲーム画面
蔭山:マップ画面の担当デザイナーが『マリオカートDS』などを担当していたので、デザインテイストの決定については早かったです。基本的には実際にプレイするコースをマップ上に表現したいというコンセプトがありました。プレイヤーにこれから挑戦するコースの中身が伝わるといいなと。

NOM:かなりにぎやかですよね。ワープできる土管がやけに気になったり。
蔭山:最初はもっとハデでちょっと遊園地のミニチュアのような子供っぽい雰囲気だったんです。マリオが登場するゲームは全年齢対象のものなので、あまりカワイイ雰囲気になりすぎないよう注意しました。また各ワールドのマップは横長の地形なので、どうしても前後の奥行きが狭く見える。そう感じないようにマップ画面の木や建物や看板の角度などを工夫して、より奥行きが感じられるように作っています。
足助:各ワールドが持つイメージは大切にあつかいました。次のワールドへ移動してマップ画面を見たときに「あっ、新しいワールドへ来たな」という新鮮な気持ちを感じてくれればと思います。その辺はBGMもふくめて全体で演出がされているんです。小さなことなんですが、マップ画面の木などはBGMのリズムに合わせて動いたりしているんですよ。
鈴木:じつはコース内にいる敵もBGMと連動しています。曲のリズムに合わせて跳ねたりとか、ターンとかしているので気付いている人も多いと思いますけど。

NOM:えっ、本当ですか? プレイに夢中で気付きませんでした。
鈴木:難度と直結してくるものなので横スクロールのアクションゲームとしては珍しい演出かもしれません。この部分は最後まで試行錯誤していましたね。
手塚:最初はクリボーだけ曲と合わせて動かしてみようという感じだったんですけど、試してみたらコレがおもしろい。そのうち色々なコースで同じ演出をお願いしていたら、いつのまにかゲーム全体の仕様になりまして。いそがしいときにがんばってくれたと思います。リズムをあらわす効果音をボイスコーラスにしたのは本当に最後の最後だったんですが、あれはいい判断だったと思いますね。


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感覚的な部分にこだわる大切さと、その難しさ
NOM:ファミコン時代の操作方法を継承しているのもいい感じです。
ニンテンドーDSでプレイ足助:十字ボタンと2つのボタン操作だけで遊べるようにするというのは開発のスタート時からこだわった部分です。ファミコン版って、この操作方法で十分遊べたじゃないですか。だから今回はプレイ中にタッチパネルで複雑な操作をさせたり、同時に3つ以上のボタンを操作させたりするアクションも絶対に加えませんでした。とにかく初めてアクションゲームに触った人がスムーズに遊んでもらうことを前提に考えました。じつは先ほど十字ボタンと2つのボタンと言いましたが、コースをクリアするだけなら十字ボタンとジャンプボタンだけでもできるんですよ。

NOM:あっ、言われてみれば確かに!
足助:できるだけシンプルで簡単な操作ですべてのアクションを遊ばせたかったんです。たとえば壁ジャンプですが、壁からジャンプするときに人によって、操作方法が異なるんです。壁に向かって、十字ボタンを押したままジャンプする人と、跳ね返って次に向かう方向に十字ボタンを押してからジャンプする人。通常、一つの動作には一通りの操作方法しか用意しないのですが、誰でも直感的に操作してもらうために、どちらでも壁ジャンプができるようになっているんですね。新しいアクションに自然と慣れてもらうことが大事だと考えたからです。ただ、アクションを受け付ける操作方法の幅を広げてしまうとプレイヤーが意図しないところで誤動作する場合も出てくるので、その辺のバランス調整には苦労しました。
手塚:4種類あるボタンのどれをダッシュとジャンプに割り振るかも迷いましたね。結局オプションで2パターンから選べるようにしました。GBAの『スーパーマリオアドバンス』シリーズに慣れている人はデフォルトじゃないほうのダッシュがBボタンのほうが遊びやすいかもしれません。

NOM:オプションといえばサウンドの項目には3種類のモードがありますよね?
鈴木鈴木:サラウンドモードはニンテンドーDS本体のステレオスピーカーの位置よりも少し広がったところから聞こえてくるような印象を受けるはずです。ステレオモードよりは左右への空間の広がりを感じることができると思いますよ。ヘッドホンモードは画面の左右で鳴る効果音などを左右それぞれのスピーカーから個別に鳴らさないようにしています。人間の耳って、左側から聞こえてきた音をまずは左耳で捉えて、そのあとに右耳でも聞いていますよね。

NOM:いわばヘッドホンをしていないような状態を作っているのがヘッドホンモードということでしょうか。
鈴木:ええ、そういうことです。左右から入ってくる音がハッキリと分かれてしまうと、人間の耳としては自然な状態ではないんです。そのまま長時間プレイしていると生理学的な違和感から疲れやすくなる。それを防ぐような処理を加えてあるわけです。

NOM:ひさしぶりのマリオは、最初なかなか自分の思い通りに動いてくれなくて大変でした。
足助:操作感覚に関する調整はすごく時間をかけて行っています。もちろん、いままでの『スーパーマリオブラザーズ』シリーズを全部試して、それぞれのアクションにおける操作感覚を参考にしつつ練り上げていきました。
手塚:そこの部分で、今回は初心者向けだし操作を簡単・快適にすればいいと考えてしまう場合が多いですが、それほど単純な話ではないんですね。
足助:軽快な操作感覚にすれば思い通りに動かせて気持ちいいかもしれませんが、思わずミスをしてしまって「ああぁ〜!」と残念がるのも『スーパーマリオブラザーズ』の楽しさだと思います。あえてプレイヤーを困らせるような部分も慎重に残しつつ、ストレスを感じないようなバランスをめざしました。
手塚:いま、ファミコンミニで『スーパーマリオブラザーズ』を遊ぶとけっこう大変だと思います。それよりはスムーズに遊べて、なおかつ新しい演出が生きるような操作感覚。それがどの辺にあるのか探し出すのが大変でしたね。
足助と手塚足助:操作感覚だけでなくプレイヤーは画面から受け取る情報でもストレスを感じるので、マリオの動きは注意深く調整しました。たとえばマリオが歩いているときに移動スピード自体はゆっくりでもアニメーションを少し速く動かすことで機敏な印象を与えるとか。その他ではマリオが左右へ方向転換したときのターンのアクションですね。3Dのキャラなのでリアルに回転させることはできるんですがただリアルに回転させてしまうと機敏性がなく、ターンがじれったく感じてしまう。

NOM:なるほど。リアルにターンするからこそ遅く感じるわけですね。
足助:そうです。ファミコンやスーパーファミコン時代の『スーパーマリオブラザーズ』のようにパッと方向転換した感じがとても操作感には気持ちよかったんですね。でも、そこまで極端にしてしまうとせっかくキャラクターを3Dにした意味がない。そこでグラフィックデザインの立場で蔭山が表現してくれたのが、方向転換の途中にほんの一瞬だけ回転しているマリオが表示されるようにアニメーションと速さを調整してくれました。ほとんど認識できないくらい短い時間に方向転換しているマリオが表示されるのですが、これがあるのと無いのでは動きのスムーズさが違う。
蔭山:本当に一瞬なんですけど、そのグラフィックを表示するタイミングを見直していくと、マリオの動きが確かにスムーズに変わってくる。担当プログラマーのそばに張り付いて、もうちょっと、もうあと1フレーム前へ、後ろへ、という具合に微調整していきました。

NOM:お話を聞いていると、まさに『スーパーマリオブラザーズ』シリーズのようなアクションゲームは開発スタッフの方々が提供するテイストやニュアンスという感覚的な部分が大切なんだと感じます。
蔭山蔭山:そうかもしれません。異なる担当同士での細かいせめぎ合いの連続です。せっかくここまでがんばって快適に遊べるものを作ったのに、なぜ、その快適レベルを落とさなくちゃいけないんだ、そんな疑問も当然ながら出てくるわけです。

足助:デザイナーさんは極力絵をキレイに見せたいし、プログラマーの中にはもっとレスポンス良く快適に遊ばせたい意見を持つ人もいる。それぞれの言い分があるわけです。ただ、そこは白黒つけるものではなくバランスなので本当に難しいところです。それぞれの担当にも理由を納得してもらった上で調整する必要もでてきます。その点では自分よりもさらに広い視野で手塚がチェックしてくれていたのは助かりましたね。
手塚:現場にベッタリ入っていると、わからなくなってしまうことも少なくない。そこを、ちょっと引いたスタンスで眺めてみると元々のゲームのコンセプトや、どんなプレイヤーに向けて作られたタイトルなのかを忘れずに考えることができる。でも、意見を聞いた若い連中の頭にツノが生えてこないように、気を使っている部分もあるんですよ(笑)。
足助:私はまだ年齢も経験も若いディレクターだったので、開発チームの中には、私よりもっと年上のスタッフや多くの実績を積んできたスタッフはたくさんいます。しかし、それらベテランのスタッフが、私の足りない部分をサポートしてくれたことと、若い自分の意見を信頼してくれて支えてくれたことは非常に心強かったです。


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“遊び”が最初にあって、愛されるゲームが作られる
NOM:今回は従来のように途中でワープしてショートカットするのとは反対に、条件をクリアしないとワールド4や7に行けないという、ある種の“やり残し感”があるシステムになっています。この狙いは?
手塚:このゲームは全部で80コースあるんです。そのすべてをクリアしないとエンディングまで行けないというのは達成感の距離としては長すぎる。アクションゲームを初めて遊ぶ人でもたどり着けるぐらいのコンパクトさが大切だと考えました。また、ゲームが得意な人に歯ごたえのあるコースを提供したいという意見もあって。その両方の立場で自分に合ったルートを自由に選んで挑戦してもらえれば。
足助:シリーズを通してワールド8というのは最後のワールドになるというイメージがあるので、最終的なゴールがワールド8というのは従来と変わらないけど分岐点を多く作ってみました。1つのワールドのなかでもクッパを倒すまでのルートが遊ぶプレイヤーによって色々変わるので楽しめるはずです。
手塚:そのコンセプトはコースのなかでも同じなんです。それぞれのコースには3枚のスターコインが隠されているんですが、これを全部取りに行くのはけっこう難しい。ラクにクリアするならスターコインを無視して進めばいいし、慣れてきてコースを完ぺきにクリアしたいなら3枚集めるルートに再挑戦してみてください。自分なりの戦略を色々と立てられるというのが“マリオという遊び”の大切な要素ですからね。

NOM:『スーパーマリオブラザーズ』シリーズ全体を見ると、コースをスクロールさせる方法も色々と異なりますよね。今回フリースクロールを選択したのは難度調整の結果ですか?
足助:ファミコン版の『スーパーマリオブラザーズ』、それと『2』は進んだぶんだけ画面も進んで戻れなくなるスクロールでしたよね。『3』以降は進行方向の逆へ戻れるフリースクロールになっています。あっ、戻れないほうも遊んでみたいですか?

NOM:そんなモードがあっても……かなり難しそうですよね。
手塚:開発時には検討の意味もふくめてシステムに組み込んでおいたんです。そしてゲームが完成間近となって、忘れた頃に戻れなくなるスクロールで遊んでみると、これがものすごく難しい。コースレイアウトはフリースクロールを前提に設計されているので、コースの構造をキチンと把握していないとクリアできないわけです。
足助:何回もコースを遊び尽くして攻略を極めているプレイヤーにも、また新たなチャレンジになると思いますよ。開発チームで一番うまい人でも最初はその難度に驚いていました。

NOM:マリオvsルイージは、どのような経緯で生まれたものなんですか?
ゲーム画面足助:開発途中で1つの画面内にマリオとルイージがいっしょに出したことがあって、それがとても新鮮な感覚で。しかも対戦時にはそれぞれのニンテンドーDSの画面を見ることになるので、左右に長いコースを別方向へ自由に移動させることもできるんです。今風の『マリオブラザーズ』のようになってくれればと思いました。対戦モードとして大切にしたのが逆転要素をたくさん盛り込むことです。巨大マリオなどアイテムを使って変身するのはもちろん、ヒップドロップで相手を倒すと最高3個までスターを一気に落とすので試してみてください。

NOM:対戦時にオススメのコースなどはありますか?
足助:草原のコースがじつは『スーパーマリオブラザーズ』の1-1を縮小したデザインになっています。アイテムの配置などもふくめて懐かしく遊べると思いますよ。まずはここでコツをつかんでもらえたらいいと思います。

NOM:そういえば、本編ではルイージが登場していないですよね?
足助:じつは本編をルイージで遊ぶこともできるんです。その方法はエンディングまで行くことでわかります。お楽しみに。

NOM:ミニゲームは『スーパーマリオ64DS』よりもかなりパワーアップしていますね。
手塚:今回本編のマリオが十字ボタンと2つのボタンだけで遊ぶということで、ミニゲームは反対にタッチペンだけで遊べるものを用意しようということになりました。オマケではなく、本編とは別のモードとして楽しんでもらえたらと思います。それだけの内容とボリュームで作ってありますよ。
蔭山:担当のデザイナーが『スーパーマリオ64DS』のミニゲームを担当していたこともあって、今回のグラフィックについても沢山のアイデアを提供してくれました。

NOM:少し抽象的な質問なのですが、『スーパーマリオブラザーズ』シリーズの中心となるコンセプトは20年前からほとんど変わっていないと思います。ゲームシステムのデザインがプレイヤーに訴えかける力というものを、どのように捉えていますか?
手塚:これは宮本のゲームの作り方なのですが、理にかなったことをたくさん考えていくんです。いわゆるキャラクターだけをポンッと何も無いところから考えて、それをゲームに登場させるというよりは、考えついた遊びに沿ってゲームをデザインしていく。絵や動きにしても、演出にしても、すべては遊びが最初にありきなんですね。だから時代の移り変わりによって要素が加わることはあるかもしれないけど、“マリオという遊び”が変わることはないわけです。

NOM:最後に『New スーパーマリオブラザーズ』ユーザーの方へメッセージをお願いします。
鈴木:ぜひ、周囲のひとが驚くような声をあげるぐらいのノリで楽しんでもらえたらと思います(笑)。BGMと敵の動きが連動しているので屋外でもヘッドホンをして遊ぶのがオススメです。

蔭山:社内でも遊んでいる人間がとても多くて、アクションゲームが苦手な社員は開発に関わった自分に文句を言いつつも「今日はどこまで行けた」とうれしそうに話すんですね。本当に誰でも遊べる『マリオ』なんだと、あらためて実感しています。家族みんなで楽しんでください。

足助:開発スタッフそれぞれが抱く『スーパーマリオブラザーズ』というものがあって、それはおたがい少しずつ考えが異なるものだったりもするのですが、それぞれが抱いている『スーパーマリオブラザーズ』の良い部分だけを凝縮して完成したのが今回の作品です。目につかないようなところでも、スタッフの1人1人の想いとこだわりが入っています。
手塚:マリオのアクションゲームはエンディングに行くことよりもコースを攻略する過程を楽しんでもらうものだと思っています。コースによっては少々難しく感じる部分もあるでしょう。でも、やさしいだけのゲームって、つまらないと思うんですね。そこを自分のアイデアで切り抜けていくことができるように作っているので、ずっとずっと楽しんでいただけたらと思います。

NOM:こだわりをヒシヒシと感じます。今日はありがとうございました!


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【マル秘情報1 ひみつのチャレンジモード】一旦コースの先に進むと、左方向や下方向に戻れなくなって難度がアップするのがチャレンジモードです。1度エンディングまで行ったデータでゲームを開始して、各ワールドのマップ画面でSTARTボタンでポーズをかけた状態で以下のコマンドを順番に入力してください。マップ画面の右上に黄色い矢印が登場したらコマンド入力成功。クリアしたことのあるコースだけ強制スクロールで再挑戦することができます。 入力コマンド:L→R→L→R→X→X→Y→Y

【マル秘情報2 ルイージで本編をプレイ】マリオの弟であるルイージで遊べます。ジャンプ力などはマリオと変わらないので同じ操作感覚で楽しめます。コマンドさえ入力すればエンディングまで行っていないデータでも試せるけど、コマンド自体はエンディングで表示されるので、ぜひチェックしてみてください。ちなみにエンディング時にスクロールしていくスタッフ達の名前をタッチすると、ちょっとおもしろいことが起こりますよ。


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