開発スタッフインタビュー N.O.M 2007年5月号 No.106

■ディレクター:よしのぶ ともあき(9段/アインシュタインあたま) ■プランニング:ふじい ひでき(6段/アインシュタインあたま) ■プログラマー:きうち としかず(名人/天文学あたま) ■デザイナー:ひろの あきこ(7段/デザイナーあたま) ■サウンド:みずた まさと(8段/名探偵あたま) ■サウンド:ながまつ りょう(名人/音楽家あたま)

1:『Wiiでやわらかあたま塾』は運動会から生まれた!?
N.O.M:
2005年にニンテンドーDSで『やわらかあたま塾』が発売されて、今年2007年にWii用ソフトとして『Wiiでやわらかあたま塾』が発売されます。この間にDS版の海外での発売もありましたが。
よしのぶ
海外には北米向けに英語版を、それにヨーロッパ向けに6言語版を出しました。国内でミリオンを達成できたときは嬉しかったですね。海外版を出すに当たって、「言語」というジャンルの問題だけは日本語のままでは通じないので、そこを「論理」というジャンルに置き換えて問題を追加しています。それ以外は基本的に内容を変えていません。  
北米版パッケージ欧州版パッケージ

  国や言語が違っても評価してもらえるというのは、やはりこのソフトが普遍的なものを扱っているからだと思うんです。Wii版では更にみんなで楽しめる商品を目指しました。
ふじい
N.O.M:
そのWii版ですが、今回のテーマは何でしょうか?
よしのぶ
実はDS版が発売された後、「Wiiでも発売してみては?」という声があったとき、僕達には「Wiiで出すことの答え」がまだなくて、すぐには取り掛かれませんでした。  

  で、全然話は変わるんですけど(笑)、私がその頃、子供の幼稚園の運動会でお父さん達が参加するリレーに出場したんです。あれって最終的な順位に到達するまでには悲喜こもごもがあるんですよね。抜かれて順位を下げる人もいれば、抜き返してくれる人もいる。
他のチームと競争しているんだけど、同じチーム内でも協力したり足を引っ張ってしまったり。前の走者が頑張れば、「子供の前だしオレも!」という気持ちになる。その状況がすごく面白くて、何か頭から離れなかったんですよね。
ふじい
N.O.M:
予測不能な展開が醍醐味なわけですね。
ふじい
そうです。それで、Wii版のコンセプトに悩んでいたある日、午後からお休みをもらって、大文字山に登って京都の街並みを眺めにいったんです。そこで、ひらめいたんです。「リレーのバトンがWiiリモコンやっ!」って。受け渡すことで生まれる楽しさ、周囲に対する自己責任を持つ緊張感とでもいうか。同じ画面と時間を共有することで、そこには色々な状況やプロセスが生まれるだろうと。  

  大文字山とは聞いてませんでした(笑)。でも、その考えを聞いて、それはイケるなと感じました。
というのも、『やわらかあたま塾』を体験会などで出展するとき、順番待ちをしている人にもゲーム画面が見えるように、ニンテンドーDSのプレイ中の画面を大きなモニターで流しているんですが、そのモニターを見ている順番待ちの人もいっしょに考えてドキドキしている。そんな光景が頭の中にあったんです。
よしのぶ

ふじい
“みんなで共有”というWiiの基本理念をがっちりつかむことで、より楽しいものが作れるんじゃないかと。ニンテンドーDSの『やわらかあたま塾』で、「なんだか分からないけれども、ためになることをみんなで楽しく」ということは実現できたんですが、それでも、DSの場合の対戦って個々の画面を見てプレイしているために、少なからず“閉じている部分”もあるんですよね。  
N.O.M:
たしかに。おたがいの顔を見て対戦していないかも。
ふじい
十分おもしろいんですけどね。それがWiiなら1つのテレビを囲んで、みんなで楽しめます。アドバイスしたり、ときにはたしなめたり(笑)。競争するなら勝ちをめざすけど、場合によっては協力もする。たとえミスをしてもその場に参加している面白味となるわけです。  

2:操作のしやすさのポイントは「巻き物」にアリ!
N.O.M:
Wiiリモコンの操作がシンプルで新鮮に感じます。
きうち
画面をポイントするだけのオーソドックスな操作方法は比較的早い段階で決まりました。Wiiを楽しんでいるお客さんの中には、シンプルに操作したいというニーズも少なからずあると思うんです。初めて多人数プレイに参加する人でも、すぐに溶け込めるでしょう?  

  ゲーム画面:ユーザーインターフェース画面の操作も同様です。Wiiという新しいハードウェアだから従来の決まりごとにはこだわらずに進めてみました。私自身、今回のソフトで初めてユーザーインターフェースのデザインに関わりましたし。最初はパソコンのマウス操作などを参考になるかと思って、いろんなWebサイトのデザインを見て回ったのですが、実際にゲームに出してみるとパソコンとWiiでは色々と違いが見えてくるわけです。
ひろの
N.O.M:
同じポイントするにしてもWiiリモコンとマウスとでは少し異なると?
ひろの
はい。幅広い年代の方が操作することを予想して、ボタンのサイズなどは余裕を持ってポイントできる大きさにしています。
それと、Webサイトは階層式に画面が切り替わるのが特徴ですが、階層が多いということは慣れていない人にとっては、現在位置がわかりにくくなる危険もあると思うんです。そのため階層は極力少なくして、いつでも最初のメニューに戻れるように心がけました。
 

  メニューを選択していくときに画面を切り替えずにスクロールさせていく仕様は、ひろのの発明といってもいいと思います。私たちは“巻き物”と呼んでいるんですが。
実際にプレイすると、どこに何があるのかすごくイメージしやすいんです。
よしのぶ
N.O.M:
画面のデザインといえば、いろいろなところで出てくる手描きの文字もカワイイです。
ひろの
ゲーム画面:手描きの文字あの文字は、DS版のアートワークを担当していた末武の手書き文字が元になっています。私たちは彼の名前をとってスエタケフォントと呼んでいます。足りないものは手書きで付け加えたりしながら、使わせてもらいました。
Wii版では曲線を主体にして、良い意味でゆる〜い感じをめざしました。
 

  画面のテイストがじつに爽やかだよね。それでいて独特の味がある。
ふじい

ひろの
一番イメージしたのは絵本の持つ上品さですね。“カワイイんだけど、甘くなりすぎない”とでもいいますか。  
N.O.M:
最新作では問題が一新されたと聞いています。
きうち
はい。すべて新作です。DS版のジャンルにあった「言語」から「直感」という新しいジャンルを加えています。より幅広い年齢層にスムーズに遊んでもらいたいという狙いもあって。  

  問題は開発チーム全体でワイワイ言いながら作っています。サンプルの問題は、収録した問題数の3倍は作ったかな。でも、採用されるかどうかは、この手のパズルが非常に得意なきうち次第で。関所ですね。
ふじい

きうち
いえいえ。周囲からのプレッシャーがすごくて(笑)。  

  ゲーム画面:レールつなぎ興味深いのが、企画段階で紙に書いて考えるだけでは面白く感じない問題でも、プログラムを組むと妙に魅力を増すものがあったりするんですよね。「でまえ記憶」や「レールつなぎ」などはその典型でしたね。
よしのぶ
N.O.M:
問題の数はどのくらい用意されているのですか?
きうち
問題は自動生成されています。各種条件に応じて、あとはプログラムの方で自動的に作られる。だから同じ条件でも問題パターンは膨大な数が生まれるんです。  

  ゲーム画面:型ぬきブロックこれが面白いもので、「型ぬきブロック」という個人的に好きな問題があるのですが、とても人間では思いつかないような、ものすごくデキのいい出題をするときがある。あれには驚かされます。
よしのぶ

きうち
こんなのぜったい解けない、みたいなパターンが出てきますよね。明らかに人間の発想じゃない(笑)。  

3:独特なサウンドを奏でるのは懐かしの楽器
N.O.M:
1度聴くと妙に耳に残るテーマ曲ですよね。
ながまつ
ありがとうございます。自分はWii版からの参加で、DS版はユーザーの立場で楽しんでいました。そんなこともあって、前作のイメージがしっかり出来上がっている中で、その音楽をどう変えていくか最初は悩みました。ただ、グラフィックが仕上がってきて塾っぽいイメージが見えてきてからは、あるアイデアが浮かんできまして……。  
N.O.M:
んっ、それは何ですか……?
ながまつ
個人的にリコーダー(縦笛)が好きということもありまして、塾っぽい、学校っぽいイメージなら合うだろうと今回のサウンドにも取り入れてみました。参考になるかと思って今日はこのように持参したのですが。  

  あれ、持ってきただけ? 吹いてくれないの?
ふじい

ながまつ
いいんですか(おもむろにウォーミングアップ開始)? それではソフトとは少し趣きの異なる演奏の仕方で……。  

おおっ(と拍手)。 一同
N.O.M:
尺八のような和風の音色にも聞こえてきます。
ながまつ
ありがとうございます。じつは最初、この奏法でリコーダーパートを収録したら、みずたの方から「その吹き方、やめてくれ」と言われまして。  

  これがあたま塾で鳴るとなると、ちょっと雰囲気が違うと思ったんですよね。
みずた

ながまつ
最初は実験的にリコーダーパートを入れてみたのですが、調整していくうちにソフトのイメージに合う音色がだんだん見えてきて。  

  ゲーム全体としては、曲のイメージが子供っぽいものにならないよう気をつけて、リコーダーを使っています。あくまでも子供から大人までが楽しむソフトですから。ただ、たくさんの曲でリコーダーが使われていますので、見つけてみてください。
みずた

ふじい
帰宅途中なんかで、妙に思い出す音楽になっているんですよ。気がついたら口ずさんでいる。  

  リコーダーって“温かくて明るい”雰囲気を醸し出してくれるんです。あと、実は今回、サウンド部分にちょっとした仕掛けが隠されているんですよ。
ながまつ

よしのぶ
あるモードでがんばっていい成績を出すとどこかで何かが起こるかも。  
N.O.M:
Wiiリモコンのスピーカーも積極的に使われていますね。プレイしているとWiiリモコンがいろんなことを話しかけてくれて。
みずた
最初は塾だから“リモコン講師”と呼んでいたんです。そのうち自然とアシスタントのような位置づけになっていきました。あつかうセリフには注意を払いました。本当は少し毒のあるセリフがあっても面白いと思ったのですが、最終的に、あまりネガティブに感じられることがないように気をつけて全体をまとめています。  

  Wiiリモコンのボイスは出題する手段としても使われているんですよ。
ながまつ
N.O.M:
「でまえ記憶」ですね。最初に挑戦したときは驚きました。
みずた
ゲーム画面:でまえ記憶あれは実際に、お子さんの声を収録してあります。最初はながまつの声を加工して使ってみたのですが、何かがちょっと違う。そこでお子さんのいるスタッフを探して。実は、あそこに・・・。  

  あっ、ウチですか(笑)。単なる演出レベルに終わっては申し訳ないので、みずたから依頼を受けたあとは家族で特訓しました。
ふじい

みずた
今回、Wiiリモコンのスピーカからは講師ボイス以外の効果音をほとんど鳴らしていません。本当は色々と鳴らしたかったのですが、講師ボイスを中心にするために止めました。
更にテレビからは、ゲーム開始時や交代時にお知らせボイスで名前を呼んでくれます。
 

  そういえば、そのお知らせボイス、段位などを名前にくっつけて呼んでくれますよ。がんばって高い段位をめざしてみてください。
ながまつ

4:開発スタッフに対戦プレイで挑戦!接戦の理由とは
N.O.M:
せっかくですから皆さんと対戦しながらお話を聞いても良いでしょうか。
(無謀にも開発スタッフに挑戦を挑むN.O.Mチーム。大接戦の末…)
ゲーム画面:開発チーム対N.O.Mチームゲーム画面:意外にいい勝負ゲーム画面:結果はやっぱり…
N.O.M:
結局1勝2敗でN.O.Mチームの負けか……悔しい。どれも接戦だったけど。
よしのぶ
ゲーム画面:おまかせ実際にいつもプレイしているデータを使えば、もっと接戦を楽しむことができます。「たいせんレース」と「きょうりょくサバイバル」というモードでは、出題のレベルを選択するときに「おまかせ」という選択肢があるんです。これを選ぶとプレイヤーごとのプレイデータが入っている塾生ブックを参照して、出題内容を自動的に調整してくれます。  
N.O.M:
なるほど……具体的に言いますと?
きうち
「きょうりょくサバイバル」では塾生ブックのプレイデータを参照して、その人のやわらかさに合った問題が出題されます。例えば得意なジャンルでは少し難し目な問題、反対に苦手なジャンルはカンタンな問題になるという感じです。つまり、適度な緊張感で遊べる。
そして「たいせんレース」ではチームのレベルに合わせて問題のレベルも調整されます。だから、さきほどのような接戦になることが多いわけです。
 
N.O.M:
やわらか度の異なるお父さんとお子さんでもいっしょに楽しめますね。
よしのぶ
はい。途中でチーム編成を変えても大丈夫です。幅広い年齢層が気兼ねなくいっしょに楽しんで欲しいし、プレイ中に仲間外れを作らないというのが大切なコンセプトなのです。塾生ブックにプレイデータを多く記録している人ほど、より反映されていきます。この塾生ブックはWiiConnect24でWiiフレンドに送信することもできるんですよ。  
N.O.M:
よかったら、みなさんの好きな問題を聞かせてください。
ひろの
知覚の「絵合わせスタンプ」と「まちがいアニメ」ですね。複数のデザイナーが絵を描いているので、色々なバリエーションがあって楽しいですよ。  

  さきほども言いましたが、やはり「型ぬきブロック」でしょうか。
よしのぶ
みずた
「形当てキューブ」など分析ジャンルの問題が好みです。サウンド的には、「さかさ記憶」も好きなゲームですが。  

  私も「型ぬきブロック」が好きなのですが、数字の「玉入れカウント」もオススメです。シンプルなんだけど解き方に色々なパターンがある。
きうち

ながまつ
数字の「順番ふうせん」や知覚の「レールつなぎ」など、感覚的にWiiリモコンをすばやく操作して解く問題が好きです。  

  予想どおりとは思いますが、「どきどきパネル」限定で出てくる「でまえ記憶」です(笑)。残業で疲れたときに、あの声でどれほど励まされたことか。
ふじい
N.O.M:
最後にユーザーの方へひとことずつお願いします。
ながまつ
前作のユーザーという視点で見ても、今回はみんなで遊ぶという点が強調されています。あと、知覚の「まちがいアニメ」で夜間のビルが描かれた問題があるのですが、あそこで聞こえる犬の鳴き声は自分です……無加工です(笑)。  

  最高8人で楽しめるので、3つの対戦・協力モードをワイワイ遊んでほしいですね。それと塾生ブックにメダルがそろってきたらWiiリモコンでポイントしてみてください。何か演奏できるかも?
みずた

きうち
みなさんが各ジャンルでどのくらいのやわらか度を記録できるか楽しみです。同じ問題でも色々なアプローチで解くことができるので、その解き方自体を考えてみるのも、頭をやわらかくしてくれると思います。  

  Wii本体の似顔絵チャンネルでたくさんMiiを作っておくと、そのMii達が塾の廊下にどんどん登場します。自分のMiiに挨拶してきたり、勝手におしゃべりを始めるのを眺めるのも楽しいですよ。
ひろの
よしのぶ
ときには、やわらか度を上げることを考えないで楽しむのもオススメです。家族みんなで相談しながら進めてみたり。面白い問題をたくさん用意したので、じっくり考えながら解いて欲しいですね。  

  一番楽しい遊び方はユーザーであるみなさんのなかに答えがあるはず。我々は“ためになる面白い問題”という場は提供しますが、プレイ中の雰囲気、楽しみの度合いはWiiリモコンを通じてみなさんが作り出すもの。それが『やわらか』らしい楽しみ方だと思います。
ふじい
N.O.M:
お話を聞いて、やわらか度もアップした気分です。今日はありがとうございました!