『DS文学全集』開発スタッフインタビュー

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キャッチ1:『本問題、解決』 本にまつわる心配や不安を解消


N.O.M このソフトはどういう成り行きでできたのでしょうか。
三浦 三浦さんDSは以前から、“ゲーム”とは言えないようなものもお客様が見てくれるという、珍しいプラットフォームになって来ていたので、ゲームじゃない企画でも面白いことができるんじゃないかと。そういうつもりで企画を考えていた中のひとつでした。DSは2画面あって見開きになる。それで本を読むっていうのはいいんじゃないかと。そこで、著作権の消滅した名作がいっぱいあるので、それを一気に詰め込んで、本という形にしたものを任天堂さんに提案させていただいたのがきっかけですね。
N.O.M それはいつ頃のお話ですか?
川本 大体、2005年の年末辺りです。
N.O.M 企画を見たときどう感じました?
山上 ニンテンドーDS直感的に「これはいける」と思いました。当時は100冊とか200冊とか入ればいいねという話をしていたんですが、物理的に本を100冊って持てないでしょう。電車の中に100冊も本を持ち込めない。でも、『DS文学全集』なら100冊持てる。本を読み終わって、「しまった、もう一冊持って来れば…」というときでも、一冊どころかまだ何冊でもある。こういうものは非常に手軽に本と触れ合う新しい機会を提供してくれるのではということで、ビビッと来ました。
N.O.M ジニアス・ソノリティの皆さんは、『DS文学全集』の企画を知ったときに、正直どう思われましたか。
青海 正直、ですか?
三浦 「ゲーム作りたくてこの会社に来たのに…」とか言ってたでしょー(笑)。
青海 青海さんいやいや(笑)。実は僕もDSが発売されたとき、こうやって90度回転させたらまさしく本だと思ってたんですが、まだ『脳トレ』が出ていなくて、本当にこれを縦に使っていいのだろうかと…どこかから怒られそうだなと思っていて(笑)。実際『脳トレ』が受け入れられている市場を見て、これでもいけると思いました。さらにこの企画が動き始めてからしばらくして、DS Liteが出たんですが、軽く持ちやすくなってしっくり来たんです。電車のつり革に掴まって読むシチュエーションを考えたら…これはいけるんじゃないかな、と感じました。
齋藤 齋藤さん僕は電子ブックリーダーに興味があったんですけど、市販のものが4〜5万円くらいして、高いじゃないですか。でもDSだったらもう持ってるし、ソフトが3,000円以下で買えるんだったら、これは個人的にも欲しいなと。本を読むきっかけになるなと感じました。
三浦 タイトル画面このソフトのコンセプトのひとつが、今まであまり本に触れていなくて、何となくコンプレックスがあるような人にも、読んでもらいたいということでした。こういう機械を使った新しい本の読み方があるということで、縁遠かったけどこれだったら再挑戦できるかな、と思ってもらえるんじゃないかと。しかも、名作と言われている教科書や学校で聞いたことのある本が100冊入っているので、これ1本持っておけば一生本の心配をしなくていいんじゃないかと思ってもらえるんじゃないかと考えました。企画のときのキャッチフレーズも“本問題、解決”というものだったんですけど(笑)。例えば本が苦手な人に買っていただいて、5ページ読んで「やっぱダメだー」となっても、持っていてもらえれば「俺は100冊の名作がある本棚を持っている男だぞ」みたいな、心の安心を得られるんじゃないかって(笑)。
N.O.M それはちょっとほっとしますね(笑)。
三浦 そうなんです。だから実際に何冊読んでもらうかではなく、安心感の部分で意外と買ってもらえるかも知れないということで(笑)。実際の本でも、買ったら安心して読まずに積んじゃう人多いじゃないですか。
N.O.M はい(挙手)。まさに積ん読です。
三浦 そうそう。それと同じで、あれば安心なんじゃないかなーと。
N.O.M なるほど。水越さんはプログラマーとして当初どう思われました?
水越 今、三浦に全部言われてしまったので…。
三浦 じゃ、今のは彼が言ったことにしてください!
一同 (笑)
水越 水越さん本のリストを見たときに、知っているようで実は読んだことがないぞ、というのが多くて。本は好きなんですけど、文学となるとあまり読む機会がないし、読んでみたいけど買うまでは…というのがありましたから、これはいいんじゃないかと思いました。
N.O.M デザイナーのお二人はいかがでしたか?
野口 本って文字ばかりじゃないですか。だからグラフィックはやることがあまりないんじゃないかと思って、「ハイ、大丈夫ですー」と引き受けてしまったんですけど、意外と作業が多くて。表紙を作ります、帯を作ります、みたいな感じでちょっとビックリ…正直舐めてました(笑)。
田中 私は、中学校の国語教師をやっている父から色んな話を聞いていたので、文学や本は好きでした。
三浦 初めて知った(笑)。
田中 なので、面白そうだなと。
三浦 彼女が本の表紙のイラストレーションをたくさん描いてくれたんですけど、非常に的を射ていて。もっと可愛いキャラクターとかが得意な人かと思ってたのが、すごく渋い影絵風のイラストをバシッと出して来て。とても若い女性がやったとは思えないような感じのタッチで。 表紙のイラストレーション
N.O.M 描くにあたっては、文学のバックボーンがあったから、イメージ通りのものができたということですか?
田中 それもありましたし、これも父の影響なんですが“切り絵”をやっていたんで。
一同 やっぱり!!
田中 イメージなんかは色々な人に「この本だったら何だろう?」と訊いて回って、そのままズバリ絵にしたんです。自分でこういう風にしたいと思ったものは、見てみると合ってるなあと思って。最初にこの企画を聞いたときも、切り絵とイメージがピッタリだと思いました。
三浦 じゃあ次は、影絵のRPGを作りましょう(笑)。
N.O.M 企画会議はさておき、任天堂側へ話を移しましょう。中野さんはどういう形で参加を?
中野 中野私は主に、このソフトの制作にご協力いただいた 中経出版さん、青空文庫さんと、ジニアスさんとの間のパイプ役や、全体的なスケジュール管理を行なっていました。
DSで本を読むというこの企画の話を聞いたとき、それってDSじゃなくても読めるんじゃないかとか、読みづらいんじゃないかなとも思ったんですけども、企画会議の中であらすじを入れるという話があって。本編をすべて読むのはパワーが必要ですが、あらすじがあることで入りやすいし、しかもそれが100冊分ある。文学自体に興味はあるけど、「タイトルだけ知ってて中身を知らないのは自分だけちゃうか」という(笑)、そういうところに対してニーズがあるのではと思いました。
成澤 僕は後半からの参加で、入ったときには制作が始まってて、それをどうまとめて行くかというところからでした。
中野 一番大変なところですよ。「はい、成澤お願い」みたいな(笑)。
山上 彼はそういう役割だよね。中野がやってたのを「もう無理だから、成澤やっといて」みたいな(笑)。
成澤 はい。ええ。そういうの得意なんです(笑)。

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