『DS文学全集』開発スタッフインタビュー

▲TOP

キャッチ2:現代に失われた衝撃的なテーマが古い作品に


N.O.M このソフトにはすべての本に『あらすじ』がありますが。
山上 山上本を100冊持てるということだけだと、持ち運びという観点以外ではパソコンでできちゃう。そこを危惧していたんですけど、今回はあらすじが入る。この本を知らない俺は常識人ではないのでは…という不安があって、とは言え『坊ちゃん』を読破するような時間はとてもない。そういう人たちがたくさんいて、あらすじ本が非常に人気があると。でも、あらすじ本を読むだけで興味を持ったとしても、そこから元の本を読むにはパワーがいるわけですよ。
N.O.M そうですね。
山上 そういうニーズを考えると、あらすじが入っていて、本編も入っているというのは非常に商品性を感じる。しかも、あらすじと本編がリンクする。ちょっとあらすじを読んで、これは面白いと思ったら途中からでも本編へ行ける。半分読んだけど疲れちゃって、でも結末だけを知りたいというときに、そこからあらすじへ跳べるという機能がついています。

原作→あらすじ,あらすじ→原作
N.O.M 本のチョイスは、どういった経緯で揃ったんでしょう。
川本 川本さん最初に社内のスタッフで候補を選出して、それを元に任天堂さんや中経出版さんと相談して絞り込みました。
中野 あとは本のデータ提供にご協力いただいた青空文庫さんを運営されている富田さんにもご推薦をいただいて。そういったデータを織り交ぜて100冊が決まった形です。
N.O.M ちょっとメジャーではない本があったりもしますね。
山上 そうですね。そういった方面も、オーソドックスな本も、という納得行くような揃え方をしています。
N.O.M 学生時代は文学をどう思っていらっしゃいましたか?
齋藤 すごく苦手でした。昔は「これを読んで作者の意図を書け」と言われても全然分からなかったり。でも年を重ねると、本を読みたいと思い始めますよね。昔は“読まされてる感”があったんですけど、今は読むなら自分からしかないですから。
N.O.M 今回ソフトを作る過程で文学に触れてみて、捉え方は変わりましたか?
齋藤 そうですね。作っているうちに、気づいたら結構読んじゃってました。
N.O.M すごい成果ですね!
齋藤 読んだ分、ソフトに色々とフィードバックできたんで良かったです(笑)。
N.O.M 他に現役時代、国語が苦手だった方は?
山上 『セメント樽の中の手紙』はい。大っ嫌いでした。でも今回、『セメント樽の中の手紙』を読んで、すごく衝撃を受けて。こりゃなんちゅう話だと(笑)。これはこの仕事をやってなかったら、一生読んでないですね。最初は何気なく読み始めたんですが、最後まで一気に読んでしまって、止まらないんですよ。古いお話の中にも、衝撃的な進め方というか…「こんなテーマって、いいのか!?」と、問いかけてしまいたくなるような、すごいお話がある。
三浦 そんなに言われたら、もう読まずにいられない!(笑)
山上 読むしかないですよ!(笑)
中野 帯がまたいいんですよね。
成澤 「これほどの衝撃は他にありません」と書かれてます。
山上 自分にとって新しい表現方法であったり、新しくはないけど、今の人たちが忘れているようなテーマであるとか、そういうものを気づかせてくれる。先人の表現力には改めて驚かされるようなことがあると思います。
N.O.M 古い文学作品ですと、言葉遣いや表現が今と少し違いますよね。そういう部分は大人になってスムーズに読めました?
山上 雰囲気です。
一同 (爆笑)
山上 そう、漢字の読み方も色々な論争が何度もあって…。
中野 青空文庫さんにご提供いただいたデータの中には、入力間違いがある可能性もあると聞いていたのですが、それを確認する必要がありました。
山上 山上,富田さん必ずベースにした本である“底本”と比べるということをやっているんです。でも、その底本の表記が、今の考えから読めば、「これは誤植ではないか?」というのがあるわけですよ。それを安易に直そうとすると、「ちょっと待ってください!」と青空文庫の富田さんが仰る。「私たちの日本語の能力は、狭いんです」と。「先人たちは、日本語というもののありとあらゆるテクニックを駆使して、己が想う表現力を最大限に紙面に叩き付けた結果、この表現が生まれたかも知れないんです!それをなぜ、私たちが誤りだと決められるんでしょう。」と。そしたら「仰る通りでございます! とてもこれが誤植には見えません!」って言うしか(笑)。
N.O.M ないですよね(笑)。
山上 文学というのは深いと。言葉というのはとてつもなく重いと。例えば、最近の人名で普通ではない読み方をする漢字があるじゃないですか。昔の作家さんはそういう風に、当て字のようなものをよく使ったんです。その当て字についているルビの通りに読むのか、またルビが落ちていて何と読むべきかという状況になったときに、自分たちの知識で補足することが宜しくないということを語っていただきました。私たちはこの商品を作ったことによって、文学というものの思想に触れられた。これを色んな方に知ってもらいたいです。100冊を読むと、昔の偉人たちが、日本語というものをいかに駆使して世の中の事象を表現していたかということ、豊かな表現というものを知ることができるのではないかと思います。
N.O.M 最近はそういった表現があまり見られませんが。
山上 それは映像で伝える手段がなかった時代だから、言葉が豊かだったんでしょうね。あの豊かな表現を知るということは、自分を豊かにすると思いますし、それに触れるという機会をこの『DS文学全集』が世の中に増やしてくれるんじゃないかという期待がありますよね。
N.O.M 青空文庫と違う、『DS文学全集』ならではの部分はどこでしょうか?
山上 中経出版『あらすじで読む 日本の名著』ネット上にある青空文庫さんは無料で読めるんですよね。だからあらすじの持つ意味が、非常に重要だと考えました。あらすじで先人たちの偉大な表現力を、まず垣間見て欲しいと。それは表紙もそうなんですよね。表紙を見ただけで世界を垣間見る、そしてあらすじを見て興味を持ち、本編へいざなうという流れ。これは青空文庫さんでは実現できなくて、ここに『DS文学全集』というものの価値があると考えたんです。あらすじはどの作家さんが書いたものがこのテーマに合うだろうかということを議論し、色々なあらすじ本を読み比べたりして、最終的に中経出版さんの、小川義男さん編著『あらすじで読む日本の名著』という本を採用するのが最も良いのでは、という結論に至りました。

もどるつぎへ N.O.M10月号のトップページへ

つぎへ