『DS文学全集』開発スタッフインタビュー

▲TOP

キャッチ4:アナログ感を追求した結果、大幅にグレードアップ


三浦 今回、とことん『本を快適に読んでいるという感覚』を実感してもらわないといけないというテーマを持っていました。本ってなんだろう?ってことで、青海が本の形で表紙を実際に作ったりしましてね。
青海 これは企画書と同時に作ったんですよ。これをDSの中で再現しようというのがあって。
山上 この表紙、この帯、この背表紙がDSの中で再現されて、本棚に並んでいるんですよ。これを引っ張り出して読むというビジュアル表現がされています。
三浦 それと本棚に並ぶ本の厚みも表現しています。どのくらい読むのにヘビィな本かというのは、実際に本を読むときに厚みを確認して決めてるもんなんですよ。それに、読んでいるときにスクロールバーとかボタンとかが表示されてると、集中して読めないじゃないですか。折角DSの見開き画面を使ってるんで、多少操作が分からないとか言われようが、読んでいるときは余分な要素を出さないようにしよう、出すのはページ数だけだと。じゃあどういうインターフェイスにしたら便利に使えるかとかいったことを、初期段階からこだわってました。その方針をスタッフで共有していたんで、時間が空いたときも進んで色々とやってくれました。本をめくるところって、実は技術的に言ったら大変なんです。あんなことね、普通はやらないんですよ(笑)。

本をめくる画面
N.O.M 普通はピッと押して切り替わったりですよね。
三浦 そうそう、でも本を読むときって、ページがめくれている途中で、次に来る新しいページの1行目を読んでいたりするんですよ。じゃあそれができるようにページのめくれを再現しなきゃとか。他にはめくるときの音が気持ち良くないとっていうことで、SE(効果音)を作ってくれるスタッフに、もう何度も何度も作り直してもらって。
川本 本物っぽいのは紙がこすれる感じのSEなんですが、それだとあまり気持ち良くなくて。「紙が“こすれる”んじゃなくて“めくれる”んだ」とか「“シャッ”じゃなくて“ペラッ”で」とか(笑)。そういうようなやり取りを何度も行ってました。
青海 今回はアナログ感というのを大切にしています。今まで電子ブックリーダーが各社から出ているんですが、これらの分析から始めました。値段であったり、テキストデータの準備の面倒さだったり。
N.O.M 青海さんご自身が現物を何台も試されたんですか?
青海 そうです。えー、電気屋さんの店頭で……(笑)。
三浦 そこはね、今回予算が足りなくって。なにしろ価格が2,800円なんで(笑)。
青海 本体だけで4万円とか5万円とかするんですよね。その価値があるだけの最高の技術を使っているのは分かってるんです。ただ、実際にその機械で文章を読んでみると、01のデータというか、“テキストデータ”って感じだったんですよ。じゃあ『DS文学全集』は、デジタルではなくアナログにしようと。データが入っているというよりは、まさに本が中に入っている。何ページや何文字分の本が入っているという形で表現したいと考えました。
山上 背表紙画面何キロバイトって容量が書かれていても、パッと直感的にこの本が厚いか薄いかは分からないでしょう? 『DS文学全集』だったら、画面を見たら棚に文庫本が並んでて、「あ、これ分厚いから長いわ。やめとこ」ってできる(笑)。背表紙の厚みが見えれば、図書館で手を伸ばす前に「やめよう」っていうのと同じ感覚ですよ。こういうところに配慮が行っているということ自体が、読み手を研究していると。読書をする環境という意味では整っているのだということを、是非皆さんに知っていただきたいと思います。
N.O.M 先ほど音の話が出ましたが、このソフトにはBGMもありますよね。普通の音楽の他に、環境音楽がありますが。
山上 やっぱり『寝台列車』でしょう!
中野 電車好きにはたまらないですね。
N.O.M 寝台列車は山上さんチョイスなんですか?
山上 いやぁ、僕が電車好きだから皆さん気にしてくれたんだと(笑)。
三浦 BGM設定画面最高の読書環境というのは何かと考えていたときに、『どこで読んでいるか』というのは非常に重要で、本好きの人には「お気に入りの読書場所」があるんですよね。近所の公園のあのベンチがいいとか、海辺での読書が気持ち良かったとかっていう。じゃあ折角マルチメディアが使えるプラットフォームがあるから、それも再現してみようということで色々入れてみました。ただ人それぞれですので、音楽が気になって本が読めない方は、BGMを消すこともできます。
山上 でもね、夜と電車の『カタンカタン』は最高の読書環境ですよ。
N.O.M こだわりますね(笑)
三浦 こだわる人はヘッドホンをお勧めします。寝台列車とかになるとヘッドホンしたくなると思います。
N.O.M BGMを考えるのも大変なんだろうなと思いますが。
三浦 環境音を決める会議の最初の方はメチャクチャでしたね。「俺は夕方の縁側がいい」とか、「近所の商店街を通りながらっていうのはどうなんですかね」「いや、でも八百屋のおじさんの声は邪魔なんじゃないの?」とか真顔で話してました(笑)。 三浦さん
青海 無音にして『雪の中の音』とか言ってたときがありましたね、そういえば。
三浦 あったあった! 無音という言い方は良くないとか言ってて。四季とか場所とか、分かりやすいテーマを「環境セット」として考えてたから。
川本 BGMではなく、シチュエーションなんですよ、あくまで。
三浦 夏の縁側っていうと蝉が鳴いてるけど、冬の縁側だとシーンとしてる。「もう『シーン』ていう音を入れようか」みたいな(笑)。そういう話までしてました。『本を読むとは何か』という話を徹底的にしてて、そこがこだわりなんですけど。意外とこのソフトは本を読むのに集中できるね、と思っていただければいいですね。

もどるつぎへ N.O.M10月号のトップページへ

つぎへ