『DS文学全集』開発スタッフインタビュー

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キャッチ5:漢字、漢字、漢字、開発者でも判断できない?


N.O.M 話を戻しまして、デザインの野口さんのこだわりはいかがでしたか?
野口 野口さん本らしさ、本らしさと話が続いていたので、本らしさを(笑)。あらすじの原稿が届くまでの期間にやったことが、非常に多いんです。帯の種類も、開発当初は、「ちょっとこの期間じゃ全部はできないんで同じのを使い回してくださいね」、みたいなことを言ってたんですが。お陰で100冊全部それぞれに合った帯ができました。
山上 これはこだわりですよ。
N.O.M 本らしさの一番大切なところはどこだと考えられますか?
野口 表紙でしょうか。内容が分からない本を「読んでみようかな」と思わせるものですから。
N.O.M 本をフォントや表紙の美しさで買ったりすることもありますからね。
野口 フォント…フォントと言えば! 開発当初は潰れた文字がいっぱいありました。活字と違ってドットの集まりなので、どうしても細かい文字になると読みにくくなってしまって。何度も何度も作り直ししました。
N.O.M 実際の本でも画数の多い字は潰れ気味に見えますよね。
野口 それと昔の漢字は、作らないといけない。コンピュータ上で扱える、JIS第一水準や第二水準の文字コードに収まっていない文字もたくさんあって。
三浦 とんでもない字がありましたよね。作家さんが新しい漢字を作っちゃうわけですよ。それでも活版印刷の時代は問題なかった。職人さんが活字を色々組み合わせて作ってたらしいです。
野口 最初に話を聞いたときは「200文字くらい作れば大丈夫ですよ」と聞いてたんですが、増えて増えて最後は800〜900文字に…(笑)。
三浦 青空文庫でその字を見ると、その漢字だけ「こういう字です」とビットマップ表示されていたり、「■偏に●です」みたいに、字の解説があったりするんですよ。でもこれは他の文字と同じクオリティにしないといけないというので、野口が大変な目に…(笑)。「漢字博士か、この男は」というくらいに、漢字研究者の机みたいで。毎日毎日、画面にぶわーっと見たこともないような漢字がたくさんで、「この人は何の仕事してるんだ」っていう(笑)。
N.O.M 今回作ったフォントが、別のソフトに活かされるか日が来るかも知れないですよ。
一同 それはないです!(笑)
三浦 あ、じゃあ漢字が主人公のRPGを作ろう! レアキャラで今回作った漢字を使って。こんな文字あるんだみたいな(笑)。
野口 それを体験したお陰で、他のプロジェクトでフォントを見る機会があったんですけど……。
三浦 すっかり厳しくなっちゃって。「作り直し!」みたいな(笑)。
N.O.M 成澤さんが参加された、後半以降というのはどういう感じでした?
中野 任天堂側では一番苦労してると思いますよ。
山上 中経出版さんと最後の調整したり、デバッグも。
中野 粗原稿の段階で第一回目のデバッグをしたんですよ。で、全部のデータが来てから最終のデバッグをしようということになって、「はい成澤、お願い」と(笑)。第一回目のデバッグで見たときは、修正箇所が500くらいだったんですけど、次に見たらいつの間にかすごい数になってて(笑)。
成澤 成澤ほとんどが文字の修正なんですよ。さっきも話が出ましたけど、勝手に変えられないんですよね。例えば濁点がついているかいないかの判断も、文章だけを見たらここはついてる方が合ってる。だけど全体の文体を見るとここはない方が正しいとか、そういった質問がデバッガーさんから来るんですよね。尋常な数じゃなくて。質問に答えるのに、一部分だけを見ていたらダメなので、文章全体を見て「ここに似たような表現があるから正しい」という作業を一個一個やって。それでも分からないときは、青空文庫さんに聞きました。あらすじ部分の修正も、その答えが電子的に返って来るのだったら、「ここはこういう風に変わったんで、修正お願いします」とジニアスさんにフィードバックできるんですけれども、残念ながら印刷したものに手書きで「ここはこう、あれはこう」と。それが、かなりの厚さの荷物が宅急便で来るんですよ。「うわっこんなに来た!」って(笑)。
N.O.M 赤(校正)が入って来るわけですね。
成澤 それを全部見て、毎晩泣きながら(笑)。
中野 今回収録した100冊の中に、青空文庫さんにはデータがない本もあって、それは新たにこちらで用意しました。データの打ち込みをやっている会社の方に頼んだんですが、その打ち込み精度が非常に高いと言われていたんで、「じゃあデバッグしなくても行けるんじゃない?」とか思ってたところ…。
成澤 蓋を開けたらえらいことに(笑)。「全体の文字数からカウントして、99.95%の精度でお渡しできますよ」って言われていたんです。その比率で計算すると確かに間違ってないんですよ。
山上 母数が75万文字で、そのうち間違いが0.05%。一般的に考えて99.95%の精度って言うと、これは精度高いぜって思うけど、実際の量を見てみると結構な数になって、それを彼ひとりでデバッガーとせっせせっせとチェックをかけて。一見すると地味な商品ですけど、実は普通のゲームよりデバッグは大変だったということです。
三浦 デバッグスタッフの方も、今日はどんなゲームのデバッグかと思ったら、「本を読みなさい」(笑)。
成澤 物量の多い大変なデバッグなので、色々と考えてできるだけ眠くならないように配慮しました。根を詰めすぎないよう、時折他愛のない話をしたり、飴を配ったり、飲み物を出したり。デバッガーさんにしてみたら、邪魔だったかも知れないですけどね(笑)。
三浦 本を好きになってもらいたくて作ってるのに、スタッフの中に本が嫌いな人が出てきたらどうしようって心配しました(笑)。

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