青空文庫 富田倫生氏インタビュー
『DS文学全集』では、インターネットの電子図書館『青空文庫』にも色々とご協力いただきました。『青空文庫』は、著作者の死後50年が経過して著作権の消滅した作品と、著作者自身が「自由に読んでもらってかまわない」とした作品を読むことができるWebサイト。古典的な文学作品を中心に、様々な作品を誰でも自由に読むことができます。
今回は青空文庫の世話役をされている富田さんの元へお邪魔することに。本、文学への想い、そして『DS文学全集』へのエールをお話ししてくださいました。

1.コンピュータ社会の発展と共にスタート
2.誰でも、いつでも、空の恵みのように本が読めるという環境を
3.文学の世界へ可能性を広げて欲しい
インターネット図書館 青空文庫 世話役 富田倫生さん
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キャッチ1:コンピュータ社会の発展と共にスタート


N.O.M 富田さんご自身は、青空文庫設立までどういったお仕事をされていたんですか?
富田 雑誌記者からテレビの構成、フリーランスのライターなどをやっていました。その頃からパソコンが台頭してきまして、それをテーマのひとつとして、コンピュータ社会史のようなものを書いていました。青空文庫っていうのは、その後の余生でやっているものです。
N.O.M 余生ですか?
富田 そうそう、アーリーリタイアメントをしてね。38歳ぐらいで病気をして、引退を余儀なくされたものですから。それで、何かできるかなあと思って。
N.O.M 青空文庫はどういった経緯で設立されたんでしょうか。
富田 富田さん青空文庫は今年2007年の7月7日で10周年の誕生日を迎えました。ですから始めたのは1997年の7月7日ということになります。本当はその辺でだらしなくだらだら始まった感じなんですけれども(笑)。電子本のソフトウェアに興味を持ってるものが4人ほど集まって始めようということになったんです。電子本というものの歴史をさかのぼると、まずパソコンっていうのが、1970年の後半から出てくる訳です。当初は計算させてみたり、ちょっとしたゲームをやってみたり、そのうち通信もできるようになってね。そして“テキストをパソコンの画面で読む”っていうソフトウェアが出始めるんです。これまでにも、パソコンの画面でテキストを読んではいましたが、それは最終的に紙に印刷するためのことで、表計算やワープロの画面を嫌々見ていた。そうじゃなくて、文章を快適に読むというか、パソコンの画面が人間との最後のインターフェイスとなるソフトが作られるようになりました。それが出始めるのが1990年とか1991年頃の話。

MacintoshというOSで動くソフトに、ハイパーカードというマルチメディアの概念をいち早くパソコンに持ち込んだカード型のデータベースが出たんですよ。テキストと音声なんかを、自在にパパッと組み合わせられるんだけど、「ああ、マルチメディアっていうのはこういうものか」と。その環境を利用して、カードの一枚一枚をページに見立てて、文章を書いたカードのたばを作った。カードをめくるとページがまるで切り替わったような印象で、パソコンの画面が本当の本のように使えました。これが電子本の先駆けですね。
N.O.M なるほど。
富田 富田さんそういうものが出てくると、紙の本との関係はどうなるんだろうということになります。これまで500年くらいに亘って、印刷本という非常によくできた形態に我々は慣れてきている訳です。電子本は、これを駆逐するものなのだろうか、どういう対抗関係になっていくのか、ああでもないこうでもないと一部の人たちが言い始めた。それも1990年頃です。

その頃、先ほども言ったように私はマスコミの世界を引退したんですが、そんなときに電子本と出会って、コンピュータの上に新しいメディアの世界が拓けるんじゃないかと考えました。マスコミから落ちこぼれたタイプの人間にとって、これまでとは違ったメディアが拓ける可能性をどこかに見つけたかったんですね。私の他にも、例えば、ミニコミ(小部数雑誌)をやってる人だとか、好きで旅行記を書いてるけど出版の目処は立ってない人だとか、「ここにないメディアの世界が、どこかにあって欲しい」と願ってる人たちがいて、何も育っていない「電子本」という世界に心惹かれて行った。そんなことを考えている何人かと知り合いになったんですよ。

そして1994年頃、インターネットがわーっと世の中に普及し始めた時期がありました。それまで“コンピュータの上の本”って言ったって、大きな印刷設備がなくてもやれるという部分に関しては解決できていたが、配布に関しては綺麗な答えが出ていなかった。これまで紙の本と同じように、フロッピーやCD-ROMなど物理的なものにして配送する、さらに売ろうとすると本屋に並べるということしかできなかった。しかしインターネットが出てきたときに思ったのは、「これで全て揃ったじゃないか」と。インターネットを使って、データだけのやりとりで済むなら配布の問題が無くなったじゃないっていうことで、これは大きな変化が起こるだろうと思ったんですね。
N.O.M それは劇的な変化ですよね。
富田 そうです。それで2つ思ったことがありまして、ひとつは、これからネット上の“電子書店”が台頭して来るだろうということ。当時は夢の話でしたけど、音楽なんかも配信されるだろうし、テレビ番組も映画もいつか配信されるだろうと思ってましたが、それよりも前に、テキストが配信され、本が配信され、そしてそれを売るという枠組みができると思っていました。そしてもうひとつ思ったのが、“電子図書館”ができるということ。それもいつかできるではなく、今あるものですぐにでもできるのではないかと。そしたら電子本で知り合った仲間の一人が「それなら評論家みたいなこと言ってないでやってみませんか」って言ってきたんですよ。

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