N.O.MJune 2008 No.119特集2

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4.“もうひと手間”が、忘れられない作品を作る

ギリシャを舞台にしたRPGということで、ギリシャらしさを強調した部分はありますか?
 
齋藤
齋藤さん
例えば、フィールドマップは大きく引いて見るとギリシャとその近辺に似たような地形になっています。ただ、街などのグラフィックに関しては、ギリシャ神話に登場するような建物をそのまま造って並べると、ゲーム画面としてそっけないものになってしまうので、そのあたりは近藤とも話し合って、神殿などの象徴的な建築要素のニュアンスは多少残しながら、普通の家などはあえて中世風のデザインにしたりしています。服装も当時のものを忠実に再現すると、布と革だけになってみな同じ姿になりゲーム画面としての華がないので、ローマ時代や中世風にアレンジしています。ギリシャ神話時代の映像をそのまま作っているのではなくて、『ヘラクレスの栄光』の世界を作っているということで、ご理解いただければと思います。
弘田
音楽に関しては、ギリシャらしさを出すために「ブズーキ」と呼ばれるギリシャの民族楽器の音をサンプリングして使っています。ギターのような形なのですが、同じ音を持つ弦が複数張られていて、鋭い金属的な音色を持っています。実際のところはブズーキと同じ音が出るオリジナル楽器を使ったのですが、そこにドラムマシンやアナログシンセサイザーなどの現代的な音を組み合わせたりして、ギリシャ音楽のリミックスみたいな感じにしています。
その楽器は今回のために用意されたんですか?
 
弘田
オリジナル楽器
いえ、私物です。(笑)たまたま持っていたのですが、今回とても役に立ちました。

右の写真は、今回使われたオリジナル楽器。 ブズーキ、琵琶、リュートを元に作られています。
ところで、イベント中のキャラクターたちのアニメーションは非常に凝ってますよね。3Dモデルを動かしているのですか?
 
近藤
3Dモデルを2Dのドット絵に変換しています。そのへんも、やはり『ヘラクレスの栄光』の世界観を意識していますね。最近のRPGですと、イベントシーンには3Dのキャラクターが動き回るムービーが流れるものも多いですが、ムービーで表現するのではなく、演出でプレイヤーがそのシナリオを十分体感できるように力を入れました。
西村
ゲーム画面
モーションをつけていくのは本当に大変だったと思うんです。剣を出して、またしまうさまなどは、僕らが見ても凝っているなあと思います。個人的にすごく印象に残っているのは、最初に浜辺で主人公が蹴られるシーンですね。すごく生々しくて、最初ちょっと驚いたのですが、いい演出だと思うんですよ。
芸が細かいというか、笑えるシーンが結構ありますよね。
 
齋藤
普通だったらここまで終わるシーンなんだけど、あえてもうひとつつっこんで何かをさせるとか。例えば浜辺で蹴られるシーンでも、ただ蹴られるだけじゃなく、蹴られた方も、ちゃんと「うっ」とのけぞったりするんです。近藤がもともとそういうコンセプトが好きで、ずっとそういうものを作ってきたので、“常にもうひと手間”というのは、イベント内のあらゆる部分にありますね。
近藤
我々は、作る手間みたいなところで作品が変わると信じていまして、「こんな手間を普通はかけない」ということをやることによって、ほかとは違うクオリティや作品性が出るんじゃないかと思うんです。今作についても、スタッフに「こういうことをしてくれ」と指示すると、「えー、そんなところに手間をかけるゲームないですよ?」と返ってきましたが、「だからこそ、我々はそこに手間をかけよう」と。そうすれば、いままでと違うゲームになるはず、というのが制作のコンセプトでした。
弘田
弘田さん
各シーンで流れるBGMの選曲や鳴らし方にも、かなりこだわって時間をかけています。普段はディレクターから、「このシーンはこんな雰囲気の曲で」という指示を受けて、それにあわせた作曲をするだけなのですが、もう一歩踏み込んで「このタイミングでこの曲を流す、止める」「セリフが終わってから一呼吸置いて鳴らす」だとか作った曲をどう鳴らすかまでを、もう1人の作曲担当と2人で全シーン細かく考えました。通常はコンポーザーが作中の全シーンに対して曲の指定をすることは、まずないのですが、おかげで音楽面でもキャラクターの感情をうまく表現できたかなあと思います。
戦闘中のフキダシのセリフなども、なかなか味がありますよね。
 
はん
ゲーム画面
回復魔法を仲間にかけたときに、かけた方が「がんばれ」と声をかけ、かけられた方が「わかってるって」と返すような、かけあいになるところも見て欲しいですね。実はかけあいのセリフはランダムで組み合わせているんですが、たまにこっちも全然予期しない、シチュエーションにピッタリのかけあいが起きたりします。
齋藤
ボス戦のときに出る「攻撃が効いてるぞ!」なんてセリフもあります。
西村
『ヘラクレスの栄光』シリーズは戦闘中のかけ声が個性的で面白いので、本作でもフキダシとして引き継ぎました。ボス戦の「効いてるぞ!」も、例えばゲージとかでダメージを表示されたとしても無機的な印象になったと思うんです。フキダシのおかげで手触り感が良くなったと思います。
はん
混乱状態になったときに出るセリフなんかも面白いですよ。そのキャラクターの本性が垣間見れます。
近藤
『ヘラクレスの栄光『III』や『IV』でも、「こんなところにこんな手間を」というのがたくさんあって、それが自分としては魅力に感じていました。そういうのって、なんか開発者の愛を感じるじゃないですか。