N.O.M Nintendo Online Magazine No.151 February 2011

N.O.M2月号特集 「マリオうごメモコンテスト」入選者座談会

マリオ

「マリオうごメモコンテスト」入選者座談会

5. 『うごメモ』と「モノづくり」

宮本

座談会前は、なんとなく『うごメモ』以外でもいろんなツールを使ったり、コミュニティに投稿されている方が多いのかなと思っていました。でも、絵を描いたのは『うごメモ』がはじめてだったり、今回の投稿ではじめて完成した作品を作られた方が多くて驚きました。みなさんは、誰も自分の作品を見てくれないとしても描きますか?

みち

ある映画監督の言葉に、「無人島に映画の撮影機材が一式あったとしても撮らないだろう」というのがあって、やっぱり誰かに見てもらうために作っていると思います。

宮本

僕もそうで、「ゲームは芸術か?」と聞かれると困ってしまうんです。だから「誰も見てくれなくても作る人が芸術家なんじゃないですかね?」と。僕は誰も見てくれないなら作らへんからなあと。

グリーンペッパー

僕も弟に見せようと思って作ったりしていますね。

小泉

それもやっぱり誰かに見てもらいたくて作ってるわけですね。

手塚

『うごメモ』って、最初からたくさんの人に見てもらえる、投稿できる場があることがセットになっている企画だったんです。たんにツールを作るだけじゃなくて、みんなに見てもらって、それに描き足していって、という広がりができたらいいなと。そこがうまくいっているのは、うれしいところですね。

宮本

では、逆に何か私たちに聞いてみたかったことはありますか?

グリーンペッパー

ゲームを作っていて、行き詰まったり、いろんな困難にぶつかることってあるかと思うんですが、どうやって乗り越えられますか?

小泉

困難を困難だと思わないようにしている、だと話が進まないですかね(笑)。
アイデアを自問自答するところは辛いですけど、それ以外はコミュニケーションなんで面白いだけなんですよね。ダメって言われたら、どうダメなのか調べるのも含めて。

宮本

作っている中での困難と、想定しているレベルに達しない困難というのがあって。思っていた予算じゃ足りなかったとか、このゲーム機では処理が追いつかないとか、そういうのはちょっと勉強すれば予測がつくんです。でも、できたものが思っていたより良くならないのが一番の困難で。小泉さん、僕が「こんなんじゃダメ」って言った時、どうしてます?

小泉

見方を変えたりとかいろいろありますが……手塚さんはどうしてます?

手塚

冷静になると、問題が別のところにあるのが見つかったりするんですよね。あと、誰かに助言をもらったり。

宮本

アイデアが出ない時って、とにかく頭の中でいろいろ試すんです。それで最後に「これが一番マシかな?」というのを選ぶんです。そういう時は、たとえば『うごメモ』のこの機能について、自分が世界で一番考え抜いたって思うんです。その中で出てきたベストの結論なら、たぶん他の人が見ても大丈夫だろうと。たまに「これしかない!」っていうのが出てくる時もあって、それは気持ちいいんですけど、たいていは妥協しているんです。

「完成させる」っていうのは大事で、妥協してでも完成させて出すんです。だから、これは困難じゃないんですよね。たくさん考えたかどうか。みなさんが『うごメモ』を自由に作れるのと同じように、任天堂も比較的自由に作れる会社なんです。もし、どうしても通らなかったら、それはきっと、ほんとにダメな企画だったからでしょうね(笑)。

でも、深く考えて知りすぎると、他の人に対して「こんなこともわからないのか!」って感じるようになるんです。たとえば僕らはマリオの動きの仕組みとか、こういうふうにすべって動く時どうなっているかとか、全部わかっている。でも何にも知らない人がどう思うのか。たとえばコントローラを左右逆に持ってみるとか、そういうところから自分でシミュレーションするんです。すると、意外に根底のところで間違いや解決法に気付くんです。「画面が明るすぎるのか!」とか(笑)。世界で一番知っている人と、世界で一番知らない人に同時になる、使い分ける仕事なんですね。そういう意味では、みなさんと同じだと思います。

小泉

作り始めてからの難しさというのは、いまお話があったようなことだと思いますが、一番難しいのって、「何を作るのか決める」ことなんじゃないかと。そう考えると、ここにいるみなさんは、何を作るか決めて、それを完成させて、投稿された。それを乗り越えてここにいらっしゃるということで、非常に尊敬しています。
次に何を作るのかというのは、私たちにとっても一番難しいことです。作りたいものは山ほどあるんだけど、かたっぱしからつくることはできませんから。みなさんは、プロでもできないことをできておられると思うんです。

手塚

今日は、みなさんそれぞれいろんな関わり方で『うごメモ』に接していただいている。そして『うごメモ』からもみなさんに影響を与えているということを、あらためて実感できました。うれしい半面、ヘタなものは作れないというか(笑)。身が引きしまる思いです。

宮本

とにかく、道具は使ってもらってナンボっていうものなので、今日は実際に使って頂いている皆さんのお話が聞けてよかったです。今回は遠いところまで、本当にありがとうございました。

一同

ありがとうございました。