オヤ・マー博士の研究日誌

  • XXX-001 偶然の産物
  • XXX-002 “グー”の特性
  • XXX-003 グーイージの誕生
  • XXX-004 懐かしのあの屋敷
  • XXX-005 新たな能力
  • XXX-006 グーイージの弱点
  • XXX-007 グーイージの完成

XXX-007:グーイージの完成

危うく命を落としかけた上、“グーイージ”くんの弱点改善にも失敗してしまったわしじゃが、気を取り直して新たな実験に取り組むことにした。今度の目的はズバリ「“グーイージ”くんを意のままにコントロールする」じゃ!
“グーイージ”くんは自らの意思で行動できるのじゃが、どうもかゆいところに手が届かんというか、人間ではないから気の利いた行動ができんのじゃよ。オバケにこっそり忍び寄ってほしいのに、堂々と近づいてしまってオバケに逃げられたり……なんてことも起きてしまうのじゃ。そんな“グーイージ”くんを思い通りにコントロールすることができるようになれば、わしのオバケ収集も効率を飛躍的に上げられるというわけじゃ。
そこでまずわしは、“グーイージ”くんに特殊チップを埋め込み、コントローラーで操ることを試みてみた。わしがコントローラーを操作すると、“グーイージ”くんは思い通りの方向へと歩き始めた。実験は順調……かと思いきや、オバキュームを使わせようとしたところで問題にぶち当たった。“グーイージ”くんにオバキュームの吸い込み操作をさせようとすると、なぜかストロボ操作をしてしまったり、吸い込み操作を始めたかと思えば今度は止めることができずいつまでも吸い続けたりしてしまうのじゃ……。
コントローラーのアルゴリズムに変更を施して数十パターン試してみたが、どうにもこうにも思ったようにいかん。いら立ち始めたわしがつい不用意にコントローラーへ手を触れてしまったその時……事件が起きてしまったのじゃ!吸い込みをやめられないままの“グーイージ”くんが、うっかりわしの方にオバキュームを向けてしまい、その拍子にわしの髪の毛を吸い付けてしまったではないか!髪の毛はあっという間に吸い込まれ、わしは頭までノズルに吸い付けられてしまった!このままでは、わしが発明したオバキュームにわし自らが吸い込まれてしまうわい!またしても命の危機が迫り、どうにか頭を引き抜こうと必死にジタバタするわしじゃったが……。
顔が半分くらいノズルに吸い込まれ、いよいよわしもあの世行きかというその時、もがくわしの足に何かが当たり、次の瞬間、わしの体は急に支えを失って投げ出された。わしが蹴っ飛ばしたのは、床に置いてあった掃除用のバケツじゃった。入っていた水が床にぶちまけられたことで“グーイージ”くんが溶け、それでわしは危うく一命を取り留めたのじゃ。皮肉なもんじゃが、“グーイージ”くんの弱点を改善できなかったことが、わしの命を助ける結果となったわけじゃ。
九死に一生を得たわしは、懲りずに実験を続けることにしたのじゃが、ここで思い切って発想を変えてみることにした。 コントローラーでの操作はあきらめ、もっとこう……“グーイージ”くんに意思を乗り移らせるというか、自分自身が“グーイージ”くんになりきることはできないか?と考えたのじゃ。というのも、ひとつ当てがあっての。実は以前からわしは、“グーイージ”くんを普段はオバキュームに格納しておければ便利じゃなと考えておっての、そのために新型のオバキュームを開発中じゃったのじゃ。この新型オバキュームは“グーイージ”くんを自由に出し入れできる設計なのじゃが、この機構を利用すれば、“グーイージ”くんを出現させるとき、装着者の意識を“グーイージ”くんに乗り移らせることが可能なのでは……とひらめいたのじゃ。
さっそく新型オバキュームに改良を加え、背中の部分にセンサーを取り付けて実験してみたところ……フェッフェッフェッ!思った通りじゃよ!わし自身が“グーイージ”くんになりきることで、思いのままに操ることができるようになったのじゃ!さすが、わし!ただ、意識を乗り移らせてしまうもんじゃから、“グーイージ”くんを操っている間、わし自身の体は眠ったような状態になってしまうんじゃがの……。まあそんなことはこの大発明にとって大した問題ではないわい。自分の体と“グーイージ”くんとの間で意識を自由に切り替えられるから、どちらかが危険な状況に陥っても、うまく対応できるじゃろう。
さて、改良を加えた新型オバキュームがこれで完成し、“グーイージ”くんを操る方法も会得したわしは、いつものように“ルノマングリーニーコーヒー”で一息ついておったのじゃが、そんなわしの元へ、ある一通の便りが届いたのじゃ。それは、とあるホテルのオーナーから送られてきた招待状じゃった。そのホテルは、珍しいオバケが生息しているとかねてから噂される地域にあるのじゃが、その豪華ホテルへわしを無料招待したいというのじゃ!
なんでも、むかしオバ渓谷での危機のときにルイージくんが捕獲し、その後わしがコレクションとして管理しておるキングテレサを、そのオーナーとやらはどうしても見てみたいらしいのじゃ。キングテレサを連れてきてくれれば、オーナーの持つ貴重なオバケコレクションをわしにタダで譲ってくれるというのじゃよ!! こいつはありがたい話じゃわい!オバケのためならそんなものお安い御用じゃ!まだ見ぬオバケコレクションに胸を躍らせつつ、新型オバキュームと“グーイージ”くん、そしてキングテレサが格納された“テレサイト”を車に積み込んで、わしは意気揚々とホテルに向かって出発したのじゃ……。