6. 60フレームを体験してほしい

岩田

それでは最後に
アピールしたいことをひとことずつお願いします。
まずは松下さんから。

松下

今回は、続編をつくる難しさを思い知らされました。
前作の評判がものすごくよかったですし。
ですから、前作のお客さんのことをかなり意識して
とくに開発の後半は専念しました。
なので、『罪と罰』ファンの方々の感想を
ぜひともお伺いしたいと思っています。

岩田

それを聞くのが楽しみである一方・・・。

松下

ちょっと恐いです(笑)。

岩田

恐楽しみ?

松下

恐楽しみです(笑)。

岩田

はい。
次は服部さん。

服部

さっきトレジャーさんが
「好きなモノをつくってください」と
社員のみなさんに徹底した、
という話をなさってましたけど、
それがソフトの中身にもすごく反映されていると思います。
というのも、今回の『罪と罰』は
「好きなように遊んでください」というソフトなんです。
システム的には1本道なんですけど、
自分に向いたコントローラを各種から選べたりだとか、
どうやったら高得点がとれるのか、
答えが用意されていないんです。

岩田

正解のないゲーム。

服部

そうです。
もしかしたらこのコントローラを使ったほうが
この面は得点が高いんじゃないかとか、
空中で戦うのと地面で戦うのでは獲得できる点数が違うので、
こっちの方が有利なんじゃないだろうかとか、
敵を倒す順番も、こういう順番で倒したほうが
点数が高いんじゃないかとか、
戦略を探っていくのがすごく面白いゲームなんです。
なので、お客さんどうしで、
正解を探り合って遊んでいただければと。
さらにランキングで確認すると、
「このコントローラの人のほうが点数が高いぞ」とか、
そこでも切磋琢磨していけるゲームですので、
そういった部分もお楽しみいただきたいと思います。

岩田

今回はニンテンドーWi-Fiコネクションに
接続できるようになっているんですね。

服部

はい。そこで、全国のプレイヤーの
ランキングも見られるようになっています。

岩田

なるほど。それでは山上さん。

山上

今回の「社長が訊く」で
このゲームを知った方にお伝えしたいのですが、
ちょっとマニアックな話をしましたので
「自分のゲームじゃない」と思われる方もいるかもしれませんが
そうは思わないでほしいんです。

岩田

誰もが楽しめるようにつくったと。

山上

はい。
そもそも今回のメンバーのなかでは
僕がいちばんヘタで、何回もやられているんですけど、
たとえやられても最初からやり直す必要はありません。
ステージの先へ先へとカンタンに行けるようになってますので、
世界観だけを楽しみたい方でも十分に遊べると思います。

岩田

もともと『罪と罰』には
壮大な世界観があるんですよね。

山上

ええ。今回の『罪と罰』では
すごい壮大な、難解な不思議な世界の一部が
ゲームで再現されているんですけど、
任天堂ホームページでも違った角度で
→世界観の一部を紹介しています。
なので、シューティングがちょっと苦手な方にも
この世界をぜひ楽しんでいただければと思います。

岩田

それでは前川さん、お願いします。

前川

もともとコアなファンの方を想定していまして、
そういった方々に楽しんでいただける
ゲームになったと思います。
でも、いま山上さんがおっしゃったように、
イージーモードは、アクションシューティングゲームの
入門編にもなっていますので、
このようなゲームを触ったことのない人にも
「よけて、撃つ、スコアを競う」という
昔ながらのゲームのスタイルはすごく面白いんだよ、
ということをお伝えしたいです。
先ほど、わたしたちが「好き勝手につくってる」
という話もありましたけど、
やっぱりこのタイプのゲームが面白いからであって・・・。

岩田

かつてはシューティングゲームが
メインストリームでしたから。

前川

そうなんですよ。
「よけて、撃つ、スコアを競う」という
それこそ汗を握ると言いますか、
その部分は万国共通の面白さがありますし、
誰にでも楽しんでいただけると思います。
それに今回は60フレーム(※13)でつくっていまして・・・。

岩田

どうして60フレームにしたんですか?

前川

ちょうど『罪と罰』の開発がはじまった頃、
『マリオギャラクシー』(※14)が出てきたんです。
あのゲームは60フレームでつくってると聞いて
「じゃあ、うちもやんなきゃ」と。

岩田

(笑)

※13

60フレーム=1秒間に更新される画面数が60コマの場合をさす。通常は30フレームで処理されるゲームが多く、60フレームは格闘ゲームやレースゲームに向いていると言われる。

※14

『マリオギャラクシー』=『スーパーマリオギャラクシー』。Wii用ソフトとして、2007年11月に発売された3Dアクションゲーム。

前川

そこでかなり苦労して60フレームにしました。
実際にやってみると全然違うんです、
なめらかに動くというだけでも。

岩田

明らかに違いますね、触ってみると。

前川

でも、画面写真だと
魅力がよく伝わらないんです。

岩田

それに、ネットで映像を流しても
60フレームでは動かないんですね。
たとえば「みんなのニンテンドーチャンネル」(※15)を使って
みなさんにご覧いただくことはできるんですけど、
残念ながら60フレームの映像は流せなくて。

※15

「みんなのニンテンドーチャンネル」=WiiやDSに関する情報などを映像で見られるほか、体験版もダウンロードすることができる。Wiiチャンネルで試聴可能。→「みんなのニンテンドーチャンネル」については、詳しくはこちらからご覧いただけます。

服部

そこで今回は
一部の店舗(※16)だけとはなってしまうのですが、
店頭体験版を用意することになりましたので
ぜひそこで体験していただきたいです。

※16

一部の店舗=『罪と罰 宇宙の後継者(そらのこうけいしゃ)』の体験版は、→こちらのお店で体験いただけます。

岩田

それでは中川さん、お願いします。

中川

僕はそうですね・・・
じゃあ、最後はプログラマーらしい話を・・・。
ハード的にはかなり高度なことというか、
無理なことをしてるんで、
内容のほうもいつもどおりごちゃまぜというか、
やり過ぎというか、そんな感じなので・・・。

岩田

そんな感じなので?

中川

よろしくお願いします!

岩田

(笑)。
それでは最後に鈴木さん。

鈴木

わたしはデザイナー代表として。
今回はかなりボリュームが持てるということもあって、
できるだけ詰め込んでます。
広大な背景にさまざまな敵、動きも重視してます。
何度も遊ぶなかでいろいろな発見ができると思います。

前川

鈴木がものすごい量の素材を作るので、
スタッフ全員が本当に苦労したんですけどね(笑)。
ものすごい敵の量ですから。

岩田

チーム規模では考えられないですよね。
この人数で、この量は。

鈴木

それから、前作のテイストを出したい、
という話がさきほどありましたけど、
自分はあくまで新作としていちから組み立てました。
当人だからこそ遠慮なく出来たと思います。

前川

かなり明るくなったという声もありますし。

鈴木

いつも新作をつくりたいという気持ちが
自分のなかにありますので。
今回は色彩も増やし明るくしました。

岩田

そういった違いも楽しんでほしいということですね。

鈴木

はい。

岩田

最後にわたしから。
時代とともにゲームが大規模化するなかで、
チームの運営がよりシステム的に、より分業が進み
ひとりひとりの職域が狭くなりがちなものづくりに対して、
前川さんの掲げる方向性というのは、
ある意味、近代の大規模な商品をつくるには
個人に対してものすごく負担がかかるのかもしれません。
 
それなのにあえて、
「うちには企画専門の担当者はいない。
絵を描く人やプログラムを書く人が企画を考えるんだ」
という方向性で一貫してものづくりをし、
しっかりした商品がつくられていく・・・。
 
今回は、話を訊く前に想像していたこととは
ぜんぜん違う話をいっぱいお訊きすることができて
素直に面白いなあと思いました。
ただ、このような人たちの
たくさんの情熱とエネルギーがつまったものが、
1人でも多くの方々に伝わってほしいというのが
わたしの願いです。
寡黙だけれど、情熱を込めてつくった人たちのエネルギーを
ぜひ現物で感じてほしいと思います。
本日はありがとうございました。

前川

こちらこそありがとうございました。

岩田

ところで前川さん。

前川

はい。

岩田

わたしはこれまで
いろんな個性をもったチームの方々と
おつきあいしてきたことがあるんですが・・・
やっぱりユニークです、トレジャーさんは(笑)。

一同

(笑)

岩田

もちろんいい意味でです。

前川

ありがとうございます(笑)。