5. みんなに健康になってほしい

岩田

『Wii Fit』のように、体を動かすソフトって
ほかにはそんなに例がありませんよね。
みなさんが、このソフトをつくっていく過程で、
自分の体について、新たに発見したこともあったと思います。
もともとバランスに興味のあった峰岸さんはどうでしたか?

峰岸

バランスにどれだけ興味があったかと言うと、
体の自然な使い方について、習いに行っていたこともあるくらいなんです。
1時間、椅子から立ったり、また座ったりするのを先生に見てもらったり、
はいはいをさせられたりとか・・・(笑)。

岩田

立派なバランスおたくだったんですね(笑)。

峰岸

そのとおりです(笑)。
その教室では、人は普通に立つと、
後ろに傾きやすいと教えられていましたので
いつも重心を気持ち前のほうに置くように心がけて、
やがてついに、いいバランスを習得できたと確信していました。
ところが今回、『Wii Fit』では、
自分の重心を画面上で見ることができますよね。
自信満々でバランスWiiボードの上に乗ってみたら、
なんと重心は思いっきり後ろにあったんです。
僕にとっては非常に大きなショックでした(苦笑)。
でも、毎日やっているうちに、
なんとか重心が中央にくるようになって、
すごくホッとしています。

宮川

僕は峰岸さんほどおたくではなかったんですけど、
自分の重心が左側にあることは何となくはわかっていたんです。
でも、毎日バランスWiiボードに乗るようになったことで、
重心が左に寄ってるということが、
以前よりハッキリ自覚できるようになりました。
だから、いつもは左手で持つことの多いカバンを、
右手に持ち替えるようにしたりとか、
日常の生活が変わっていったことが、新しい発見でしたね。
これぞ、実世界とつながりのあるゲームの醍醐味だなあと思いました。
プレイする人にも、そのような実感をしてもらえればうれしいですね。

尾山

僕はバランスよりも、体重のほうが気になるようになりました。
毎日体を動かしてるのに、体重が減らないのでおかしいなと。

岩田

減らないどころか増えたりして(笑)。

尾山

そうなんです(笑)。
開発が佳境になって、減るはずの体重がどんどん増えていく様子も、
グラフで毎日の体重の変化がしっかりと記録されているので、
見てわかります。
そういった部分でも、このソフトの幅の広さを感じましたね。

岩田

ストレス太りということもありますからね。
ところで、みなさんで体重競争とかやったんですか?

柴田

「サンプルにしたいから」と言われて、
保坂さんやほかのスタッフたちとやってました。
開発の部屋に大きなテレビがあって、
モニター役のスタッフのデータが毎日蓄積されるようになっていて、
誰もが見られるようになっていたんです。

保坂

だから、みんなのさらし者状態(笑)。
「BMIの変化が見えるだけだし、
体重の中身まではわからないから大丈夫」って言われてたんです。
でも、自分でがんばってダイエットしたのに、急にやせたりすると、
「どうもシステムがおかしいみたいだ」と言われ、
結局は、計算されて体重がばれちゃいました(笑)。

一同

(笑)

柴田

でも、いいなと思ったこともありました。
わたしの体重が急激に下がっていったことがあったんです。
自分ではやせようと思っていたわけじゃなかったんですけど、
やせてるのでおかしいなと思ったときに、
そのあとで体調を壊してしまって・・・。
それからは、PL(プロジェクトリーダー)さんとかが、
「また体重が下がってきてるけど、大丈夫?」って
心配してくれるようになったんです。

岩田

体調の変化の先読みができて、
しかも、それをほかの人が気遣ってくれるなんて、いい話ですね。

柴田

そのとき、家庭のリビングで使われてる光景が浮かんだんです。
たとえばお母さんが、わたしの体重が減ったことを心配して、
「たくさん食べて、栄養をつけなきゃダメよ」って
ご馳走を用意してくれたりしたらいいなあって(笑)。

一同

(笑)

保坂

その逆で、チーフディレクターの松永さんの体重が
どんと増えたことがあって、どうしたんだろうと思ったら、
社内でのプレゼンテーションの日が近づいていたんですね。

一同

(笑)

保坂

これ本当なんですよ(笑)。
たぶんストレスが体重に影響してるのかなあって。
しかも上がる人と下がる人がいるんです。

岩田

ああ、それはわかります。わたしは上がるタイプです。

一同

(笑)

尾山

それにしても、みんなで体重の変化が見られるのって、
すごいですよね。毎日ニュースを見るような感じなんです。

保坂

で、モニターの前にみんなで立って、
何を食べたから体重が増えたとか、分析しあっていました。

尾山

そんなやりとりが、家族の中でも起こるんだろうなと思いますね。
毎日チェックがついていくことの楽しさがあって
おもしろいなあと思います。

岩田

それでは最後に、
お客さんに「ここを見てください」というメッセージをお願いします。
峰岸さんは「聴いてください」ですね(笑)。

峰岸

音楽に関してでしたら、ステップとよく合った
→踏み台系の有酸素運動の曲はおすすめですね。
保坂さんとサウンドチームとの間で、何度も何度もやりとりをしました。
シンプルな有酸素運動ですが、BGMとあいまって、
ノリノリで楽しんでいただけると思います。
でも、「特にここ」というよりもむしろ、最初にお話したように、
自分の健康のためにがんばる人を励ましたり、応援するような、
とても居心地のいい場所に感じてもらうために、
このソフトのすべての音楽、サウンドをつくっていますので、
みなさん、ぜひ続けてくださいね、と言いたいです。

宮川

今回はトレーナーの声がフルボイスで入っています。
情報開発本部のソフトとしては、ほとんどやってこなかったことなので、
そこは、ぜひお楽しみいただきたいですね。
それと、普通のヨガの教材なんかだと、淡々としていて、
感情をあまり表に出さないようなものが多いですよね。
でも『Wii Fit』では、プレイヤーの動きをチェックしていて、
途中でバランスWiiボードから降りて、ボーッとしてると、
トレーナーから「さぼってますね」って言われたりするんです。

岩田

あれって、すごく新鮮ですよね。
「さぼってるのがバレちゃってる」って(笑)。

宮川

DVDなどの教材ではそんなことはありえないんですけど、
『Wii Fit』には、ゲームだからこそできる
インタラクティブな仕掛けもいろいろ入っています。
しかも、男性と女性のトレーナーではキャラが違いますし、
ときには感情をあらわにすることもあります。
同じトレーニングでも雰囲気はすごく違ってきますので、
「わたしは男性のトレーナーのほうがいい」なんて決めつけないで、
ぜひ、2人とのトレーニングを楽しんでほしいですね。
ただ、はりきりすぎの筋肉痛にご注意ください(笑)。
特に最初は普段の生活で使うことのない筋肉を動かすこともありますので。

尾山

今回は、自分の体型の変化に合わせて
Miiの体型も変わるようになっています。
記録をためればためるほど、
植物の成長を高速度カメラで見るように、
自分のMiiの体型変化を早回しで見ることもできます。
そんな機能も入っていますので、
ぜひ毎日体重を量って体験してほしいですね。
今回はやればやるほど、続ければ続けるほど、
いろんな発見のあるソフトになったと思います。
ご褒美は自分のMiiがやせること、です(笑)。

岩田

でも、体重が増えていった人は、
早回しで見たいとは思わないかもしれませんね。

一同

(笑)

尾山

太ってしまったときに、イヤな気持ちにさせたり、
気持ちを逆なでするような演出は避けるようにしましたので、
そのあたりは大丈夫だと思います。ただ、自分でごまかして、
やせたりするようなことはできないように、誰が見ても、
この人のMiiだということがわかるようにMiiの体型の調整をしましたので、
ぜひ続けて触ってほしいですね。

柴田

わたしは、どこをやってほしいというよりも、
とにかく毎日乗ってくださいって言いたいです。
「健康は1日にしてならず」ですし、
毎日乗りたくなるような仕掛けはとくに力を入れてつくりましたので、
やればやるほど新しいことが出てきたり、
ウィーボが何かを言ってくれたりとか、仕掛けは盛りだくさんです。
それに自分のグラフができていくのは楽しいですし、
家族の会話にもなると思うので、毎日1回乗ってほしいと思います。

保坂

とりあえずいちばん最初の段階では、
誰にでもできるようにつくってあります。
説明もていねいにしていますので、
おじいちゃんもおばあちゃんも、みんなで楽しんでもらえると思います。
自分が好きなトレーニングをやりこむことで、奥深いところが出てきて、
さらにハマっていけるという設計にしていますので、長くつきあってください。
トレーニングの種類もたくさんありますので、
全部をやって、みなさんに健康になってほしいと思っています。

岩田

『Wii Fit』というソフトはもともと
宮本さんの「体重を毎日量ったらおもしろい」という考えがあっただけで、
お手本がないものをつくった感じがしています。
今回のプロジェクトに関わった人たちの話を訊いて、
不思議な出会いがたくさんあって、
バランスWiiボードが生まれ、
しかも『ゼルダ』をやってた人たちも関わって、
最初はゴールがまったく見えなかったのに、
このようにゴールにたどり着くのが、
ものづくりのおもしろさだと感じました。
1年後には、日本中のあちこちで、たくさんのお客さんたちが、
自分の体重の増減とその理由について語っていたり、
おじいちゃんとお孫さん、あるいはお母さんと娘さんが
仲良く「フープダンス」をやっているようなことが起こることを祈って、
今回のインタビューを終わりにしたいと思います。
みなさん、本当にお疲れ様でした。