5. 直感で遊んでほしい

岩田

ところで田邊さんは、
原作の『メトロイド』をつくったわけではないですよね。
坂本(賀勇)(※13)さんら原作をつくった人たちから、
受け継いだり意識していることはあるんですか?

※13

坂本賀勇=『メトロイド』シリーズほか、『光神話 パルテナの鏡』や『ファミコン探偵倶楽部』などの開発に関わる。ニンテンドーDS用ソフト『高速カードバトル カードヒーロー』では、プロデュースを担当。

田邊

坂本さんはすごく大らかな方で、何を聞いても
「おもしろかったら、何でもいいよ」って言ってくれました。
でも、「モーフボールになったときに、
サムスがボールの中でどうなってるかは解説しないで」
とは言われました。

一同

(笑)

田邊

シリーズから受け継いだことは、
いろんな場所をしらみつぶしに調べることで、
活路がどんどん開けていくようなシステムです。
そこで、同じ場所を行ったり来たりしながらマップを広げていったり、
新たなアイテムをとればマップがさらに広がるといった
『メトロイド』の伝統は、意識的に残すようにしました。

岩田

そもそもFPS系のゲームは、
3D酔いをしやすいと言われますけど、
どんな対応をしましたか?

田邊

パソコンのFPSは、
マウスとキーボードで操作するようになっていて、
マウスを動かすとカーソルも動いて、
それにともなってカメラもついていくようになっています。
だから、すごく反応がいいんですけど、
そのようなクイックな動きをすると、
3D酔いをしてしまう人が少なくありません。
そこで、一定の範囲内であればカーソルを動かしても
カメラが動かないようにすれば3D酔いは少なくなるんですが、
クイックに遊びたい方にとっては、
反応が鈍いゲームになってしまいます。
そこのところで、どのようなバランスにしたらいいのか、
レトロスタジオの人たちとは議論を繰り返しました。

田端

わたしも田邊さんも3D酔いしやすい体質ですので、
だからこそ、できるだけ多くの人たちに
快適に遊んでほしいと思って、
カメラの動きを抑える方向で考えていたんです。
でも、レトロスタジオの人たちは、
せっかくWiiリモコンのポインターが使えるので、
もっとクイックな動きにしないともったいないし、
そういうゲームをつくりたいという意見だったんです。 

田邊

試行錯誤の結果、初心者用、中級者用、上級者用と
3つのカメラの→反応精度を揃えて、
お客さんに選んでいただけるようにしました。

岩田

カメラの反応を選べるようなことは、
任天堂のゲームではあまり例がないんですけど、
最終的に選択できるようにしたんですね。

田邊

それで思い出したんですが
難易度の選択というのもありますよね。
アメリカ版では、時間の関係もあって、
基本的に自分で選べるようにしたのですが、
日本版では、任天堂らしい味付けをしようと、
銀河連邦からのアンケートに
答えるような仕組みにしました。
連邦のアンケートに答えるって言うのは、
レトロスタジオのアイディアなんですが・・・
その質問に答えると、「あなたのオススメの難易度はこれです」と
教えてくれるようになっています。

岩田

銀河連邦からのアンケートっておもしろいですね(笑)。
とは言え、アメリカ版の発売からおよそ半年とは、
日本版をつくるのに、けっこう時間がかかってしまいましたね。

田端

テキストの量がとても膨大だったんです。
『メトロイドプライム』のようなゲームなのに、
どうしてテキストが多いのって思われそうなんですけど・・・。
もちろんキャラクターがしゃべったら、
字幕のようにセリフが出ますが、
それだけでなく、スキャンバイザーを使うと、
調べたい情報を能動的に読み取れるシステムが入っています。
ゲームの進行に必須なのはすごく少ないんですけど、
世界観がわかるようなテキストが山のように仕込んでありますので、
そのテキストの量が半端ではないんです。
→スキャンバイザー

田邊

しかも、単なる翻訳ではなくって、
日本人にフィットするように、私たち二人とサポート一人の三人で
全てを書き換えましたので、リライトに時間がかかってしまいました。
長い間お待たせして、日本のお客さんには
申し訳ないと思っています。

岩田

それでは最後に、
お客さんへのメッセージをひと言ずつお願いします。

田邊

いちばん言いたいことは、
新しい操作性をとにかく体験してくださいということです。
実際に体験していただければ、これまでにない、
新しい遊びの世界が広がると思いますので、
一見難しいゲームに見えるかもしれませんけど、
ぜひ触ってみてください。

田端

わたしは直感で遊んでくださいと言いたいです。
これまで、日本でFPS系のゲームが敬遠されていたのは、
2本のアナログスティックを使いこなす事を要求する
操作の難しさがあったようにも思います。
でも、今度の『メトロイドプライム3』では、
本当に直感的に遊べるようになりましたので、
それをまず体感してほしいですね。
たとえば、カップルとかで、彼女がかっこよく遊んだら、
彼氏も見直すかもしれないですし、惚れられるかもしれないので、
ぜひ遊んでみてください。主人公のサムスは女性ですしね(笑)。

岩田

田端さんもかっこよく操作していましたよ。

田端

ありがとうございます(笑)。

田邊

田端さんは、腰のあたりにWiiリモコンを持って操作するんですよね。

田端

だって、サムスの銃はその位置にあるでしょう?

岩田

というわけで、サムスに成りきる田端さんでした。

田端

えーっ、それで閉めちゃうんですか?

一同

(笑)

岩田

わたし自身、こんなにゲームが好きなのに、
2本のアナログスティックを使いこなす
FPS系のゲームの操作の複雑化についていけなくなって、
「どんどんマーケットが狭くなってるジャンルだなあ」
と思っていました。
そして、それを「すごくもったいない」とも感じていました。
でも、WiiになってWiiリモコンとヌンチャクで直感的に遊べる
『メトロイドプライム3』だったら、
「こういうゲームは自分には無理」と信じている
『食わず嫌い』のお客さんにも楽しんでいただけると思いましたし、
今回のインタビューで、その可能性を
ちょっとでも知ってもらえるとうれしいですね。
お2人とも、本当にお疲れ様でした。