社長が訊く
IWATA ASKS

うごく社長が訊く『Wii Sports Club』

うごく社長が訊く『Wii Sports Club』

目次

3. 悔しがる対戦相手のMii

岩田

それ以外にはどのような仕組みがあるんですか?
今回、プレイ中の画面にコメントが出たりするんですよね。

嶋村

はい。「応援コメント」という
ほかの人からのMiiverse投稿が表示できる仕様になっています。

岩田

それは人を応援するために書くんですか?

嶋村

はい、そうです。
事前にそういうメッセージを書いておくと、
たとえば「ボウリング」を
リビングで、1人プレイで遊んでいても、
ストライクをとったときに
僕が入っている京都クラブの人から
「ストライク、おめでとう!!」
とか、言ってもらえるんです。

岩田

ひとりで遊んでいても
同じクラブの人からほめてもらえるんですね。

嶋村

そうなんです。難しいスペアをとったときは、
「わあ、よくとったなあ!」とか・・・。

岩田

状況に応じて、
コメントが変わるのはおもしろいですね。
コンピューターではできない、
生身の人間の意思が感じられますし。

嶋村

しかも手書き文字ですから、
Miiverseがすごく活きていると思います。
もちろんWii U GamePadを使って、
キーボード入力することもできるんですけど、
たとえば「ストライク、おめでとう!!」
という手書きの文字の横に
ボウリングのピンの絵が描いてあるだけでも
すごくうれしくて・・・。

岩田

応援してくれる人の気持ちや
体温が感じられるんですね。

嶋村

そうなんです。
そのようにひとりで遊ぶときも、
Wii Uをインターネットにつないでおけば
地域の仲間が応援してくれます。
ほかにも、Miiverseを使った
「ちょこっとメッセージ」 という
コミュニケーション機能も用意しています。
インターネットで人と対戦をするときに、
事前に十字ボタンにメッセージを登録しておけば、
「絶対にストライクをとるぞ」とか、
「おれのサーブを受けてみろ」みたいに、
ひとこと言ってからプレイに入ることができます。
ただ、それをリアルタイムの
チャットのようなものにしようとすると・・・。

嶋村03

岩田

プレイが中断してしまいますよね。

嶋村

そうなんです。
それに人によっては不快に感じるようなことを
書かれないとも限りませんので、
まず最初に、Miiverseに投稿していただいて、
その1時間後に使えるようにしました。

岩田

不適切なコメントが
出にくいような仕組みになってるんですね。

嶋村

はい。なかには親御さんが
自分のお子さんに遊ばせようとするときに、
何を言われるかわからない
というご心配もあると思いますし、
この『Wii Sports Club』で
はじめてネットワークゲームをプレイされる方が、
イヤな思いはしてほしくない、
という想いから、そのような仕様にしました。
その「ちょこっとメッセージ」も
のちほど見ていただきます。

岩田

楽しみです(笑)。

嶋村

あと、これは開発中に
みんなで話していたことなんですけど、
『Wii Sports』の「テニス」は、
プレイヤーの移動がオートになっていますので、
「もしかして戦っている相手はコンピューター?」
と思われてしまうのがいちばん損だなあと。

岩田

でも、いまの「ちょこっとメッセージ」で
人と遊んでいる感が出るようになったんですね?

嶋村

はい。でも、それだけでなく
試合をしている相手が人だと感じていただけるよう、
意識的にそのような仕様を入れることにしました。
たとえば「テニス」の場合、
Wiiリモコンプラス対応になったことで、
ラケットを・・・(手をくるくる回して)
こう動かすだけで、画面の中のMiiも
同じ動きをするんです。

岩田

あ、そういうのも見えるんですか?
(同じように手をくるくる回して)
相手がこうするのが、見えるんですね。

嶋村

はい、ちゃんと見えます。
それで、いつものコンピューターの動きとは
Miiがまったく違う動きをするので、
相手が人だということが感じられるんです。
たとえば、自分が打ったスマッシュが
相手のコートのコーナーギリギリに決まったときに、
対戦相手が悔しがってるのもわかりますし(笑)。

岩田

ああ、相手がラケットをぶんぶん振って、
地団駄を踏んでる感じが見えるんですね(笑)。

嶋村

そうなんです。
もしボタンで遊ぶゲームだったら、
ボタンでモーションが出るだけなんですけど、
『Wii Sports Club』の場合は、
Wiiリモコンプラスを動かしたとおりに
ラケットも動きますので、
「悔しがってる」っていうのが伝わってくるんですよ。

岩田

それは、相手が人間という感じがしますね。

嶋村

ですから、
インターネット対戦のテストをするときは
いつもニヤニヤしていました(笑)。

鈴木

ホントにそうですね(笑)。
嶋村さんの仕事場は本社ですけど、
僕らふたりは京都リサーチセンター(※9)ですので、
いつもインターネット対戦していたんです。

鈴木03
※9
京都リサーチセンター=京都市東山区にある任天堂旧本社の施設の呼称。現在は企画開発部(一部)とマリオクラブ株式会社のスタッフの職場がある。

嶋村

仕事場が離れているので、
仕事上のやりとりをするのは
ちょっと大変だったんですけど、
逆にネットワークゲームをつくるうえでは、
いい環境にいたと思います。

岩田

ふつうは、チームは同じ場所にいたほうが
うまくいくことが圧倒的に多いんですけど、
今回は珍しいケースですね。

嶋村

相手の声が聞こえない
離れた場所で遊んでいても、
「おもしろいものはおもしろいんだ」という
手ごたえをすごく感じることができましたし。
それに「ちょこっとメッセージ」で・・・。

牧野

いろんなことを書き込んで・・・。

鈴木

好き勝手書いてましたよね(笑)。

嶋村

対戦する前は
「今日はどんなコメントを仕込んでおこうかな」
と考えるだけでも楽しかったですから。

岩田

そのように、離れた場所で
同じソフトを開発しながら、
インターネット対戦が快適に遊べることを
自ら体験することができたんですね。

嶋村

はい。

岩田

あのう・・・。

嶋村

はい?

岩田

立場上、わたしは
「新しい『Wii Sports Club』を見せてください」
と言えば、今日まで待たなくても
すぐにでも見せてもらえるはずじゃないですか。
でも、これまでずっとがまんしてきたんです。

嶋村

はい(笑)。

岩田

その楽しみを
今日までとっておいたんです(笑)。

一同

(笑)

岩田

だから、はじめて触るのが
すごく楽しみなんです。

嶋村

では、そろそろ・・・。

岩田

はい。マジでやりますよ(笑)。

一同

(笑)