社長が訊く
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社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ 2』

社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ 2』

目次

5. 2人でがっぽり

岩田

今回、本編のコースを
2人でいっしょに遊ぶことができますが、
その2人用はどうやって生まれたんですか?

石川

このときも手塚さんが
「やりたい」と言ったんですよね。

手塚

なんか、僕、わがままみたいやね(笑)。

一同

(笑)

石川

でも僕らは
「やりたくない、やりたくない」
と言ってたんです(笑)。

岩田

なぜ、やりたくなかったんですか?

天野

勝算がなかったからです。
どうやってつくればいいのか、
まったくわかりませんでしたから。
あと、デザイナーさんの作業も大変で・・・。

石川

そうですね。2人用になると
ルイージが加わりますので、
その分、変身するアクションを
2倍つくらないといけなくなります。

岩田

そうなると、開発期間が延びても
おかしくないですね。

天野

ええ、なので何度も手塚さんに言いました。
「この期間じゃできません!」って。

岩田

そもそも手塚さんが
2人プレイに着目したのはどうしてなんですか?

手塚

あまり明確なことじゃないんですけど、
触ってて、楽しかったんです。

岩田

2人用を実際に触ってみたんですか?

手塚

はい。実験でつくったものがあったので。
それを触るとすごく楽しくて。
なので「技術的に実現不可能」という話ではなくて、
頑張ったらできそうなところまで見えていたんです。
そこで「せっかくだから、ちゃんとつくろうよ」
と、ずっと言い続けていたんです。

岩田

でも、天野さんや石川さんからすると、
「実験で動かすのと、実際に商品として
 完成させるのはまったく違うんです!」
ということなんですよね。

天野・石川

そうです(キッパリ)。

岩田

それは2人用の専用コースだったんですか?

手塚

いえ、前作のDS版(※12)のときは
専用コースでしたけど、Wii版では
本編のコースをすべて遊ぶことができましたので、
3DS版でもWii版と同じことがしたいと。
もしそれができなければ
「やめにしよう」と決めていたんです。

※12
前作のDS版=『New スーパーマリオブラザーズ』。2006年5月に、ニンテンドーDSで発売されたアクションゲーム。

岩田

すると、それまでにつくっていた
本編のコース全部に影響が及ぶわけですよね。

天野・石川

(強くうなずきながら)はい。

岩田

それは「やりたくない」と
言いたくなるかもしれませんね(笑)。
で、2人用を実現するにあたって、
どのようなことがハードルになったんですか?

天野

Wii版のときは、
ひとつの画面にマリオとルイージがいて、
先に進む人をカメラが追いかけるように、
画面が横にスクロールするように
なっていましたよね。

岩田

はい。

天野

でも、今回の3DS版の本編のコースは、
ただ右に進むだけじゃなくて、
入り組んだかたちのコースが多いんです。

岩田

なので、画面を単純に、
右にスクロールさせるわけにはいかないんですね。

天野

そうなんです。
しかも画面に映る範囲も、Wii版に比べると
とても狭くなっていますし。

岩田

Wii版のときは、カメラを引いて
画面に映る範囲を拡げていましたからね。

天野

はい。みんなで遊びやすくするために
画面を拡げたんですけど、
3DSではそれができませんし・・・。

岩田

そんな厳しい状況のなかで、
何が突破口になったんですか?

天野

マリオとルイージのどちらかを
リーダーに決めることにしました。
で、リーダーにカメラがついていくと。

岩田

そうすることで、入り組んだコースでも、
カメラがしっかりついてこられるんですね。

天野

はい。リーダーではない、
もう一方のプレイヤーがついていくのが遅れると、
画面から見えなくなって、
シャボンに入ってしまいます。

石川

これを使ったリーダー争いをするのも楽しいんです。

天野

たとえばマリオがルイージにヒップドロップすると、
リーダーが入れ替わったり、
次のエリアに進むための土管に
先に入ったほうがリーダーになったりするんです。

岩田

だから、リーダーになるために競争したり、
ちょっとじゃまをしたり、イジワルもできれば、
逆に、うまい人がリーダーになって、
うまくない人を手助けするような、
純粋な協力プレイも楽しめるわけですね。

天野

そうです。
うまい人のプレイを見て、そうでない人が
「ああ、そういう遊びかたができるんだ」
みたいな発見があったりもします。

岩田

ああ、うまい人のプレイを見て、
学習できるような効用もあるんですね。

天野

それに今回は、
あり得ないくらいコインが出てきますので、
1人だと取り切れなかったりするコインも、
2人で協力して全部集めることも可能なんです。

石川

しかも、2人で遊ぶと、いつもより
コインが2倍、稼げるようにしましたので、
たぶん2人プレイをやりたくなると思うんです。

岩田

「2人で遊んで、コインをがっぽり」ですね(笑)。

一同

(笑)

岩田

で、最初は「やりたくない、やりたくない」
と言っていた2人用ですが、
実際につくってみて手ごたえはどうですか?

天野・石川

・・・おもしろいです。

岩田

最初はできないと言ってたのに、
できちゃいましたしね(笑)。

石川

はい。できちゃったんです(笑)。

天野

Wii版のときは、
ひとつのテレビ画面を見ながら
みんなでわいわい楽しむことができましたけど、
今回はちょっと離れた場所でプレイして、
こっちが笑うと向こうも笑ったりとか。

石川

同じ画面を見ながらプレイするんですけど、
離れたところにいる人が
同時にニヤリとしたりするのを見ると、
ものすごく新鮮なんですよね。

天野

「あー、リーダーが奪われた!」
とか突然叫んだり(笑)。
なので「つくってよかったなぁ」と
つくづく思っています。
もともと、こういうかたちに着地できることが
最初からわかっていれば、手塚さんに
「2人用をやりたい」と言われたときに、
「やりますよ!」と言えたんですけどね。

手塚

ふふふ(笑)。

石川

だから、最初に「やりたい」と言ってくれた
手塚さんには、ものすごく感謝しています。

手塚

いや、僕はわがままを言っただけです(笑)。

一同

(笑)