社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第17回:『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D』

目次

4. “間口は広く、奥行きは深く”

岩田

『プロフェッショナル』からここまで、
早かったですね。

犬塚

そうですね。
でも毎年、春に出して夏に大会の予選をやって、
秋に決勝をゲームショウ(※28)でやる・・・
という流れを、くり返したかったんで、
その目標に向かってつくってきたんです。

※28
ゲームショウ=東京ゲームショウ。毎年、幕張メッセで開催されるビデオゲームをはじめとするコンピューターエンターテインメントの総合展示会のこと。

堀井

早かったよねぇ。

犬塚

早かったですねぇ。
ちょっと大変でしたけど(笑)。

岩田

『テリー』のリメイクの話がきたとき、
犬塚さんは最初に何を考えたんですか?

犬塚

堀井さんがおっしゃった時点ではまだ、
3DSなのかDSなのかも
定かではありませんでしたけど、
DSでソフトを3本つくって、やりきった感があったので、
3DSでは「何ができるんだろう」って期待はありました。
先に期間も設定しちゃったので
開発は駆け足でしたけど、
もちろん、生半可なもので
堀井さんは首を縦には振りませんから、
ファンのみなさんは安心してください。
逆に暴走しようもないから、
そこが僕らも安心なんです。

岩田

たとえ暴走しても、絶対に止めてくれるんですね。
それにしても堀井さんは
いま制作中の『X』(※29)と同時進行で
大変だったんじゃないですか?

※29
『X』=『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』。Wii用ソフト、Wii U用ソフトとして発売予定のRPG。Wii用ソフトは2012年8月2日に発売予定。『ドラクエ』シリーズ最新作。

堀井

そうそう、まいったなあと思って・・・。
どんどん彼に任せていました(笑)。

犬塚

でも「任せる」と言っても、
やっぱり堀井さんの中で
譲らないラインが確実にあるんですよ。
だからそこは安心して積み上げていきました。

岩田

それだけ、堀井さんが大事にすることを
チームのメンバーがわかるようになったっていうことは、
この20年間の変化なのかもしれませんね。
ちなみに今回、モンスターはシリーズ最多ということで、
ちょっとおどろいたのは『X』のモンスターが
ゲスト出演しているんですよね。

犬塚

はい。やっぱりそこはお客さんも期待するだろうから、
『X』のディレクターに交渉して、
何体か先行して入れることにしました。

岩田

それも堀井さん的には、
お客さんへのサービスですか?

堀井

はい、そうですね(笑)。

犬塚

ただ、このモンスターは
『X』のプロモーション的な役割なんですよ。
やっぱり『X』にモンスターとして登場してこそ、
価値がある気もしますし。

堀井

見る回数が増えれば増えるほど、
親しみは増すんだよね。

岩田

なるほど。
それから『モンスターズ』をプレイする方には、
超ハードな方もいれば、久しぶりの方もいますし、
当然、はじめての方にもさわってほしいですよね。
そんなふうにいろんな方が戸惑わずに遊ぶために、
どうやってバランスをとっているんですか?

堀井

“間口は広く、奥行きは深く”です。
間口が広かったら、誰でも来てもらえますから。

岩田

広く用意してあるから誰でも入れるし、
「どれだけ奥深くつめていくかはお客さんが選んでください」
ってことですね。

堀井

そうです。人によってはエンディングを見て、
「ああ、おわった」と思う人もいると思いますし。

犬塚

いますね。

岩田

効率よく、表面をなめるように遊ぶのも楽しみかただし、
ずぶずぶと入ってコンプリートする遊びかたもあるし。

堀井

極端なことを言えば、対戦せずに
モンスターだけ強くしていく方もいますからね。
と思えば、ネットにつないで知らない人と戦うのが
超楽しいっていう方もいらっしゃるし。

犬塚

中間あたりに、すれちがい通信で対戦するっていう
ライトな対戦層もいますし。

岩田

確かに『マリオカート』(※30)
対人対戦がいちばん面白いって方もいれば、
対人対戦はやったことがないとおっしゃる方もいるんです。
でも、それぞれ、ご本人は大満足なんですよね。
だから「このゲームはこう遊ばねばならない」って、
考えすぎないほうがよくて、
それが間口が広いってことですね。

※30
『マリオカート』=『スーパーマリオ』シリーズの世界を舞台にしたレースゲーム。1作目『スーパーマリオカート』は1992年8月、スーパーファミコン用ソフトとして発売され、昨年2011年12月にはシリーズ最新作『マリオカート7』がニンテンドー3DS用ソフトとして発売された。

堀井

そうです。
「遊びかたはご自由にどうぞ」ってことです。
今回、それでモンスターを連れて歩ける仲間枠を
最大4体にしたんだよね。

犬塚

ええ、とりあえずつかまえたモンスターを4体、
バトルで並べられるので、
慣れてないお客さんでもバトルしやすくなっています。
でも同時に、やり込んでいる方にとっては
新しい戦術が増えていく面もあるんです。

岩田

3体から4体に増えたことで、
組み合わせと作戦がどんどん立体化するわけですから、
深くなると同時に、広がってもいきますね。

堀井

それにやっぱり、単純にモンスターをつかまえて
強くしていくのが楽しいんです。
そこがね、ホントに基本ですよ。

岩田

自分が育てたモンスターで対戦するところに
面白さを見出す人もいれば、ひたすら強くして
それで目的を達成している人もいる。

堀井

そう、自分でモンスターを育てる楽しみですね。
そこはやはり、鳥山さんの絵の力も大きいと思います。
お客さんは「好きなモンスターを強くしたい!」
という思い入れがあるので、
モンスターをイメージしながら
より楽しくプレイしていると思うんです。