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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

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第20回:『BRAVELY DEFAULT -FLYING FAIRY-』
1. 魅力的な世界を

岩田

今日はよろしくお願いします。

一同

よろしくお願いします。

岩田

今日は、スクウェア・エニックスさんの
新しい王道RPGである
→『BRAVELY DEFAULT』についてお訊きします。
一昔前と比べて、新作の王道RPGをつくることは、
すごくハードルが上がっていますので、
そういったチャレンジをどうやって乗り越えてきたのかについても、
お話をお訊きしたいと思っています。
まずは自己紹介も兼ねて、
ビデオゲームとの関わりが
どのようにはじまったのかについて、
お話しいただいてもいいですか?

浅野

はい。今作のプロデューサーの浅野智也です。
僕はドンピシャなファミコン世代で、
小学3年生か4年生のときにファミコンと出会いました。

岩田

そのころはもう、『ドラクエ』(※1)
『ファイナルファンタジー』(※2)
はやっていましたか?

※1

『ドラクエ』=『ドラゴンクエスト』。エニックス(現スクウェア・エニックス)から1986年5月にファミコン用ソフトとしてシリーズ1作目が発売されたRPGシリーズ。通称『ドラクエ』。

※2

『ファイナルファンタジー』=スクウェア(現スクウェア・エニックス)から1987年12月にファミコン用ソフトとしてシリーズ1作目が発売されたRPGシリーズ。通称『FF』。

浅野

はやっていました。
じつは最初にはまって、
クリアしたRPGが『FF3』(※3)でした。

※3

『FF3』=『ファイナルファンタジーIII』。1990年4月、スクウェア(現スクウェア・エニックス)からファミコン用ソフトとして発売された、『FF』シリーズ3作目。

岩田

不思議な運命ですね。
後にDSで、浅野さんが『FF3』の
初リメイク(※4)を担当されることになるわけですから。

※4

『FF3』の初リメイク=2006年8月、スクウェア・エニックスからニンテンドーDS用ソフトとして発売された、ファミコン版『ファイナルファンタジーIII』初となるリメイク作。浅野智也氏がプロデューサーを担当。

浅野

そうですね(笑)。
それで大学生になったら、仲のいい友達を集めて、
『RPGツクール』(※5)でゲームをつくっては、
趣味でホームページに掲載していました。

※5

『RPGツクール』=RPG制作ソフト。さまざまな画像や音楽、コマンドなどを組み合わせてオリジナルのRPGを制作することができる。

岩田

ビデオゲームをつくることは、
その時点では趣味だったと思うんですけど、
趣味から仕事に変わっていくのは
自然な過程だったんですか?

浅野

いえ、必ずしもゲーム業界に
入りたいと思っていたわけではなかったんです。
僕自身はSE(システムエンジニア)になるんだろうと思っていて。
でも、何社か受けたゲーム会社のうち、
たまたまエニックスに受かって、入ることになりました。
当時は『ドラクエVII』(※6)が出たあとで、
すごい倍率だったと思うんですけど、
「せっかくだから行けよ」ってみんなに言われて、
「そう?」ってノリでした。

※6

『ドラクエVII』=『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』。2000年8月に、エニックス(現スクウェア・エニックス)から発売された『ドラクエ』シリーズ7作目。

岩田

実際にゲームをつくる会社に入って、どう思いましたか?

浅野

やっぱり、大好きだったゲームの原体験というのは、
どうしても残っているものなんですよね。
だから『FF3』『FF4』(※7)
『光の4戦士』(※8)とつくってきて、
今作もそうですけど、自分の中にある原体験の面白さを
提案しつづけているのかなと思います。

※7

『FF4』=『ファイナルファンタジーIV』。2007年12月、スクウェア・エニックスからニンテンドーDS用ソフトとして発売されたリメイク作。浅野智也氏がプロデューサーを担当。リメイク元の『FF4』は、1991年7月にスクウェア(現スクウェア・エニックス)からスーパーファミコン用ソフトとして発売された『FF』シリーズ4作目。

※8

『光の4戦士』=『光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝-』。2009年10月、スクウェア・エニックスからニンテンドーDS用ソフトとして発売されたRPG。浅野智也氏がプロデューサーを担当。

岩田

浅野さんはリメイク作品を多く手がけられていますが
もともと原作や世界観があるゲームと、
今作のようにオリジナルのゲームとでは、
アプローチに違いがありますか?

浅野

原作があるものは、
その原作に対してすでにファンがいますので、
「ファンの方に楽しんでもらうには、どんな作品にすべきか?」
というアプローチになります。
対して、完全新作の場合、
ゼロからファンをつくらなくてはならないので、
「いかに魅力的な作品を生み出せるか?」
というアプローチになります。
だから横にいらっしゃる林さんや
吉田明彦(※9)のように、ゼロからイチを生み出せる
強力なクリエーターに協力してもらいました。

※9

吉田明彦さん=ゲームクリエーター。『タクティクスオウガ』『FINAL FANTASY XIV』など、多くのキャラクターデザインを手がける。『BRAVELY DEFAULT』でもキャラクターデザインを担当。

岩田

はい、ありがとうございます。
では林さん、今日はよろしくお願いします。

株式会社MAGES.(※10)の林です。
今作ではシナリオを担当しました。
よろしくお願いします。

岩田

林さんは5pb.Games(※11)でシナリオを担当されて、
たくさんの商品の“世界”をつくってきた方、
とご紹介するのがよいですか?

※10

株式会社MAGES.=東京都渋谷区に本社を置く。ゲーム、アニメ、音楽、イベントの制作などさまざまなコンテンツ業務を行う。

※11

5pb.Games=株式会社MAGES.が展開するゲームブランド。

世界・・・そうですね。
脚本という部分で、シナリオは
小説や映画に近いところがあります。
ただゲームの場合、僕ひとりでつくるのではなく、
僕がベースとなるものをつくって、
それをプログラマーやキャラクターデザインの方たちといっしょに、
ゲームとして完成させていきます。

岩田

林さんもかつて、ビデオゲームを
楽しんでいた時代があったんですか?

はい。僕も小学2年生のころ、
親に必死にねだってファミコンを買ってもらいました。
『マリオ』から入って、
エニックスさんやスクウェアさんのRPGを
とても楽しみながらプレイしていた世代です。

岩田

子供たち同士の話題の中心に、
いつもゲームがあった、といっても
過言ではなかった世代ですね。

まさにそうです。
だからRPGのシナリオを担当するというのは、
ある種のあこがれではありました。

岩田

もともと文章を書いたり、
世界を考えたりするのがお好きだったんですか?

はい。小学校のころは漫画家になりたかったんです。
そこから小説家をめざして、
いまはゲームのシナリオを担当しています。
最初はドラマCDなどのシナリオライターとして
フリーでやっていたんです。
そうしたなかで、アドベンチャーゲームのお仕事を
させていただいて、いまの会社に入りました。

岩田

いまの会社とのご縁は、どうやって生まれたんですか?

以前、KIDという会社のゲームで
シナリオを担当させていただいた作品があるのですが、
そのゲームの主題歌を担当していたのが、
MAGES.代表の志倉千代丸(※12)で、
その縁で誘われました。

※12

志倉千代丸さん=株式会社MAGES.代表取締役社長。

岩田

いっしょに仕事をした縁だったんですね。
誘われたとき、どう思いましたか?

やっぱりうれしかったです。

岩田

自分の力を認めてくれて、
必要としてくれたわけですからね。

そうですね(笑)。
志倉は自分の世界観をもっている人間ですし、
彼といっしょに仕事ができるということは、
自分の中でワクワクするところがありました。

岩田

林さんは、いままでさまざまなシナリオを
書いてこられたと思うんですけど、
今回の仕事は、何かいままでと違うことはありましたか?

僕はずっとアドベンチャーゲームをつくってきたので、
シナリオが大きなウエイトを占めていたんです。
でもRPGはキャラクターを動かして行動するゲームです。
だから文章を多く書いても、プレイヤーはきっと、
「もっとキャラクターを動かしたい」と思うでしょうから、
アドベンチャーゲームとRPGとでは、
シナリオだけ見ても、つくりかたはぜんぜん違いました。
「すべての台詞をいかに洗練させていくか?」
という部分がポイントでした。

岩田

逆に制約があるので、
研ぎ澄まされた台詞でないといけないんですね。

はい。なので、台詞ひとつひとつに
エネルギーを込める感じになりました。
とくに今回は、異世界ファンタジーという世界観なので、
世界そのものからつくりはじめる必要があったんです。
最近のアドベンチャーゲームですと、
現代の日本が舞台であることが多いんですけど。

岩田

住んでいる世界と地続きのものをつくるのと、
異世界をつくるのとでは、やはり違いがありますか?

はい。歴史からつくっていく必要がありましたので、
そこは浅野さんや、今作の開発を担当する
シリコンスタジオ(※13)の方と相談しながらつくりました。

※13

シリコンスタジオ=シリコンスタジオ株式会社。東京都渋谷区に本社を置く、ゲームソフト制作会社。

岩田

「彼がこうしゃべるのはこういう背景があるから」
といった、ある意味、時代考証的な話がセットなんですね。

はい。街のグラフィックも、
シナリオとの齟齬が出ないように、
すり合わせながらつくっていきました。

岩田

それって、ひとつひとつは小さなことですけど、
ひとつポカがあると、たちまちお客さんが冷めてしまうので、
気が抜けない部分なんですよね。

そうなんです。