社長が訊く
IWATA ASKS

社長が訊く『ニンテンドーeショップ』

社長が訊く『ニンテンドーeショップ』

目次

1. 用がなくても行く場所に

岩田

今回はニンテンドーeショップの話ということで、
eショップそのものをつくっている人と、
そのeショップで楽しめるコンテンツを
つくっている人たちに集まっていただきました。
 
このニンテンドーeショップというのは、
6月7日に予定している本体更新で利用できるサービスで、
「ニンテンドー3DSダウンロードソフト」などを購入できるほか、
さまざまな商品の映像なども見ることができる
ニンテンドー3DSの新サービスのことです。
 
では、最初にみなさんの自己紹介をお願いします。

中谷

はい。ネットワーク事業部の中谷和人です。
ニンテンドーeショップでは
おもにアプリケーション側のディレクターを担当しました。

今井

同じくネットワーク事業部の今井大二です。
映像配信関係のクライアント側のディレクションを担当しました。

中野

企画開発部の中野隆生です。
3Dクラシックスのディレクションを担当しています。

田中

環境制作部の田中健太です。
ニンテンドーeショップで配信される
バーチャルコンソールを担当しました。

岩田

はい、ありがとうございます。
まずニンテンドーeショップの話からお訊きします。
eショップとは、ひとことで言えば
従来のニンテンドーDSiショップ(※1)
みんなのニンテンドーチャンネル(※2)が統合された、
ニンテンドー3DSならではのショップのことですが、
中谷さんはDSiショップのときからかかわっていますね。
DSiショップの反省点をふまえて、
最初にどんなことを実現しようと思いましたか?

※1
ニンテンドーDSiショップ=ニンテンドーDSiまたは、DSi LLからインターネットを通じて、「ニンテンドーDSiウェア」をダウンロード購入できる内蔵ソフト。
※2
みんなのニンテンドーチャンネル=Wiiチャンネルのひとつ。Wiiショッピングチャンネルから無料でダウンロードできる。WiiやDSに関する、さまざまな情報やソフト映像などが楽しめるほか、お客さんの「おすすめ投票」をもとにした「おすすめランク」など、お好みのソフトを探すこともできる。

中谷

今回、eショップを担当することになったとき、
「ショップに対しては言いたいことがある人が
たくさんいるよ」と周りから釘をさされていたんです。
なので、ある程度は覚悟していたんですが、
いざはじめてみたら、従来のDSiショップに関して
「ここがよくない!」とか、
「こんなことを実現できないの?」といったレポートが、
世界中から山のように届いたんです。
まずはそこからのスタートでした。

岩田

わたしも会議で「ショッピングをもっと楽しくして、
用がなくても行く場所にしましょう」と言いました。

中谷

そうでしたね、最初の岩田さんの言葉はそうでした。
それに今回は“みんなのニンテンドーチャンネル”と
ショップの機能を統合することになったので
関係者の数が一気に、倍以上に増えたんです。
そんな中で、「何となく立ち寄って、こんなものもあるのかと
つい買ってしまうようなショップにしたい」
というお題をいただきまして・・・けっこう悩みました。
画面デザインを担当したデザイナーも
最初はかなり悩んでいて、
本物のゲームショップ、雑貨屋さん、
本屋さんなどを何度も見に行って、
デザインやアイデアのヒントを探して回っていたようです。

岩田

いままでのショップは、“目的があるときだけ行く場所”でしたけど、
今回は“ウィンドウショッピングを楽しめる場所”にしたかったんです。
そうしてたくさん届いた要求を、どのように選んでいったんですか?

中谷

最初は、リクエストの多い順で調整していきました。
ただ今回はeショップのデモ機をつくって、
実際にさわってもらうようにしたんですが、
そのころには新たな声が上がったり、
最初にリクエストされていても
じつはそれほどでもなかったものが出てきたりして、
ちょっとずつ変わっていったんです。

岩田

ああ、そうでしたね。
前回のDSiショップは、みんなの意見を聞く時間がとれずに、
ショップとしての最低限の機能を実装しましたが、
今回のeショップでは、サーバーと通信せずに単独動作する
動作試作版を先につくって回覧したんですよね。

中谷

はい。サーバーとつながっていなくても
アプリケーション単独で動かせるデモ機をつくりました。
わりと早い段階から、みなさんにそれをさわってもらったので
いろいろな人からの声が入って、徐々にみがかれていきました。

岩田

最初は重要だと思っていたけれど、
じつはそうでもなかったことや、
逆にある程度さわってから声が上がってきたことは、
どんなことがありましたか?

中谷

たとえば検索に関しては、
はじめは非常にこまかい条件検索を希望する方が多かったんです。
でもショップがかたちづくられていくにつれて、
お客さんに検索してもらうよりも
「最初にどんなものを並べたいのか」とか、
「売り手側がどんなショップにしたいのか」
ということのほうが重要視されていったので、
だんだん検索についてこまかく意見する人が減っていきました。

岩田

確かに、そもそもお客さんに検索してもらうようでは、
eショップの目的を果たしていないですからね。

中谷

そうですよね。

岩田

一方、今回は世界各リージョン(地域)のショップの店長さんが、
自由にショップの棚をつくり替えることができるので、
棚をどのように柔軟に組み替えてお客さんに見せていくか、
ということに関しては、ものすごく意識してつくったんですよね。

中谷

はい、そのとおりです。
と言っても、今回はじめての取り組みなので
これからどうなるのか不安はありますが・・・(笑)。

岩田

確かにeショップがはじまったあとは、
各地域の店長さんがどのように運営していくかが大事になりますね。
いわば「アメリカがうまくやっているぞ」とか
「どうもヨーロッパの売り上げがいいらしい」
というようなことが起こるかもしれないしくみですから、
店長さんの力量が“もろ見え”になるんじゃないかと思います。

中谷

各リージョンの店長さんも
そういうプレッシャーをだいぶ受けているみたいなんです。
今回、新たに店長会議というものが組まれまして、
各リージョンのショップの運営をみんなで共有しながら
競争していこうという動きがあります。

岩田

ショップがはじまって少したってから
「社長が訊く eショップマスター国際篇」
をやると面白そうですね。

中谷

ああ、そうですね。
そのときにどこの地域がいちばんいいショップをつくっているか、
わたしも興味があります。

岩田

せっかく用意したしくみですから
どう活かされるか、楽しみですね。