株主・投資家向け情報

2009年1月30日(金)第3四半期決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

ご覧いただいていますように、通期売上から第3四半期末時点での売上を差し引けば、計算上の第4四半期の売上が算出できます。その結果、前期実績で第4四半期が3,559億円であるのに対して、今期は2,836億円ということになり、前期比較で大きな減少となっています。この数字だけを見ると、「任天堂のビジネス環境は好調と聞いていたのに、実際には足下のビジネスの勢いに急ブレーキがかかっているのではないか」というように誤解を招きかねないと思いますので、少し踏み込んでご説明します。


今期の第4四半期売上の予想が、前期の実績と比較して減少している理由には、為替による2つの要因が影響しています。
当期の第4四半期の予想においても、足下のビジネスの勢いは堅調であり、ビジネスに急ブレーキがかかっているということはありません。事実、為替を昨年と同条件として比較すると、第4四半期の売上規模は前年に対して10%強増加する見込みです。しかし、外貨建ての売上を円換算する会計処理上、この間の急激な円高の影響を受けて、会計上の売上は減少します。減少幅が大きく見えるのは、2つの要因が重なり合うからです。ひとつは当第4四半期の売上高換算レートが前年同期に比べて円高になると見込んでいるためで、こちらは比較的わかりやすいのですが、もうひとつの理由である、当四半期の為替水準の影響が通年の外貨建売上に影響を及ぼすために、差し引きで計算する第4四半期の売上により大きな減少効果となるということについては、 少しわかりにくくて、私自身も、森から説明をしてもらうまですっきりしませんでしたので、少しお時間をいただいてご説明させていただきます。


当社が外貨建売上を円換算する際には、四半期連結財務諸表において累計差額方式を採用しています。これは、1年を1会計年度とし、当該四半期までの累計と、その前の四半期までの累計差を当該四半期の売上高とするものです。
当期の例として、特に為替の変動幅が大きくなっているユーロ建の売上を例に挙げて説明します。第1四半期には11億ユーロの売上があり期中の平均レートは1ユーロ163.43円でした。これを乗じて円換算した売上を計算します。次に第2四半期までの累計売上は22億ユーロ、期中の平均レートは1ユーロ162.68円で、これを乗じて円換算の中間期売上となります。そしてここで求めた第2四半期までの累計売上から第1四半期の売上を引いて、累計差による第2四半期単独の売上が計算できます。ここでは為替の変動が小さく、大きな影響はありませんでした。そして、第3四半期までの累計売上は42億ユーロ、期中の平均レートは1ユーロ150.7円と大きく変化しました。今回の第3四半期決算では、これを乗じてユーロ建売上を円換算しています。そして同様に第3四半期までの累計売上から第2四半期までの累計の差額が第3四半期単独の売上となるわけです。このとき、第1、第2四半期の22億ユーロの売上についても、為替が1ユーロあたり約12円異なるため、22億ユーロ×12円分の264億円分、計算上の第3四半期単独の売上を減少させるマイナスの影響を及ぼすことになります。そして、第4四半期には、期中平均レートはさらに円高にシフトしますので、累計差により第4四半期単独の売上を求めるときに第3四半期までの42億ユーロに対して為替変動分を乗じた320億円以上のマイナスの影響を及ぼすことが見込まれます。これはユーロの影響だけですが、さらにドル等他の通貨の為替レートの変更の影響も受けております。このように、為替の変動により、前四半期までの売上分も為替の影響を受けるため、今回のように円高が急激に進むと、四半期単独の計算上の売上高を大きく減少しているように見えてしまうわけです。


昨年の年末商戦の好調ぶりは、既にさまざまな形で報道され、ご存じの方も多いと思います。

ご参考までに何点か申し上げますと、NPDの発表したデータによると、アメリカでは2008年1月から12月までの1年間で、Wiiは1,017万台を売り、ニンテンドーDSは995万台を販売しています。これは、どちらもゲーム機の年間の記録として新記録です。それ以前の年間販売記録は2007年にニンテンドーDSが達成した850万台でしたので、両機種共に大幅な記録更新になりました。


2008年のビデオゲーム業界全体の売上は、年を通じた最大の需要期に世界同時不況が進行していたにもかかわらず、2007年比で19%増加しました。この小売増加額の99%は任天堂プラットフォームのハード・ソフトによるものであることが、統計上明らかになっています。また、アメリカでは、年末商戦において、任天堂プラットフォーム用の他社のソフトメーカーさんのタイトルは、他のプラットフォーム向けよりも2ヶ月連続でより多く売れました。任天堂プラットフォームではソフトメーカーさんのヒットが出ない、とのご指摘もありましたが、Wiiで全世界ベースで累計ミリオンセラーとなった任天堂・ポケモンを除くソフトメーカーさんのタイトルは、2008年3月末時点では12タイトルに過ぎませんでしたが、2008年12月末時点で30タイトルと大幅に増えています。同じくニンテンドーDSは3月末時点で28タイトルでしたが、12月末時点では49タイトルと、こちらも大きく増えています。ハードの普及と共に、任天堂以外のソフトメーカーさんからも多くのミリオンセラーが生まれるという循環が生まれています。
ヨーロッパにおいては、Wiiは2008年1月から12月までに830万台を販売し、これは据置型ゲーム機の年間販売台数のヨーロッパにおける新記録になりました。ニンテンドーDSは、同時期に1,120万台が売れました。これはヨーロッパのゲーム市場において、あらゆるゲーム機の年間販売台数の最高記録になっています。


しかし、多少不景気であっても何かプレゼントを購入する人が多くいらっしゃる年末商戦の時期が終わり、年明け以降の市況がどうなっているのか、ということがみなさんにとってより重要な情報ではないかと思います。今回の世界金融危機に端を発した世界同時不況は、ゲームビジネスにおいては、年末商戦にはあまり大きな影響を与えませんでしたが、年が明けてプレゼント需要が落ち着いた後でも、勢いを維持できているのかどうかは、今後を占う重要な指標ではないかと思います。
そこで、アメリカやヨーロッパの市場の足下の状況がどうなっているのかを少しお話ししておきたいと思います。今回は、新しい社内データを持ってきました。


これは、年が明けてからのアメリカにおけるWiiハードの週間販売数の推移です。昨年との比較でご覧いただいています。昨年も今年も2週目の落ち込みは品不足が原因です。Wiiの勢いは、年末商戦が終わった後も継続しており、前年実績を大きく上回り、1月は昨年の約2倍のペースで売れています。


こちらは、同じく年明け後のDSの販売推移です。昨年に比べて在庫状況が改善されていることも影響していると思いますが、1月は昨年実績に対して70%アップと順調に推移しています。こちらも、昨年暮れの勢いに対して、減速は感じられません。


これは、今年に入ってから、ヨーロッパ主要国におけるWiiハードの毎週の販売データです。
1週目が非常に大きな数字になっているのは、スペインにおいてスリーキングスという、プレゼントを買う商戦期が年頭にあるためです。昨年、一昨年と、スリーキングスの時期には、まったくWiiハードの店頭在庫が残っておらず、この機会を活かせていなかったのですが、今年はWii発売以来初めて、スペインではスリーキングス商戦の本来の需要を販売に繋げることができました。このこともあって、1月になってから4週間のWiiの販売数は昨年同時期との比較で2倍以上になっています。


こちらは今年に入ってからのヨーロッパ主要国におけるDSハードの販売推移です。昨年との比較をご覧いただきたいのですが、今年はスリーキングス商戦を活かすことができ、1週目は昨年比で非常に大きく伸びました。3週目のみ昨年の方が売れているのは、一部の国で1週目、2週目に完全に品切れとなり、その需要が一部3週目にシフトしたことによるものです。DSにおいても、昨年からの好調が維持できており、1月4週間のDSの販売数は前年比約5割アップになっています。



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