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2009年1月30日(金)第3四半期決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

ソフトについてはひとつ例として、Wii Fitの販売推移をご覧いただきたいと思います。
一般的に、12月は1年でもっともソフトがよく売れる月です。年末以前に発売されたソフトは、年が明けて1月になると売れ行きが落ちるのが普通です。任天堂の代表的なソフトの場合、12月の販売数に対して、20〜30%程度になることが多いのですが、Wii Fitは明らかに例外的な推移を見せています。先週は、Wii Fitがアメリカでは30万本以上の販売となるなど、商戦期が終わったとは思えないような推移になっています。このため、12月の4週間と1月の4週間を比較しますと、12月に対してアメリカは75%以上、ヨーロッパも40%以上のペースで販売が推移しています。
Wii Fitは、昨年年末の時点で1,400万本以上出荷しているのですが、ヨーロッパやアメリカでは未だに品薄が続いており、今年も継続して普及が進むことが期待できます。このほかにも、マリオカートWiiなど、年が明けてからも好調に推移しているソフトが多数あります。


このように、特に現在の任天堂ビジネスの主戦場といえるアメリカやヨーロッパのマーケットにおいて足下の推移は堅調といえますが、「今期の見通しが好調なのはわかった。問題は来期以降だ」と感じる方もおられるかもしれません。
任天堂ビジネスは、過去3年で大きく拡大しましたが、「果たして来期以降この規模のビジネスが維持できるのか。あるいは、さらに拡大ができるのか」ということが次の関心事かと思います。


世界でいちばん最初にゲーム人口拡大が進んだのが日本の市場であるということから、「日本は世界のゲーム市場の先行指標になっている」という見方もあって、昨年前半にDSの勢いが減速していたことや、アメリカやヨーロッパに比べて、もうひとつWiiの勢いが弱いことなどを根拠に「任天堂のWiiやDSのビジネスは、今年度でピークアウトとなり、来年度以降は市場が縮小するのではないか」、「任天堂の業績は今期がピークではないか」という予想をされる方もいらっしゃるようです。
確かに、日本の市場は、新しい情報の伝わる速度が速く、飽きがもっとも早く広がりやすいという特徴もあります。他の市場に比べて人口も小さいですから、どうしても市場の飽和感が早く出てしまいやすい特徴があるのは事実だと感じています。


そのこともあって、日本では海外市場に先駆けて昨年11月にニンテンドーDSiを発売し、「一家に1台」から「1人に1台」という新たな流れを生み出すための新たな提案をし、その結果として、海外のDS市場の勢いを削ぐことなく、日本のDS市場の再活性化を達成することができました。


任天堂ビジネスが今期でピークとなり、来期から縮小に転じるのではないかという話の、もうひとつの根拠になっているのは、プラットフォームサイクルという考え方だと思います。特にDSは、2004年の発売から5回目のクリスマスを超え、これまで信じられてきた「プラットフォーム5年周期説」からすると、来期ビジネスが下り坂になるとの主張は、一見合理的に感じられるのかもしれません。確かに、技術はどんどん進歩しますから、ひとつのハードの寿命が永遠ということはありえないと思います。いつかは新しいプラットフォームが必要になるときは来ると思いますし、これまでもそうであったように、任天堂はそのための準備をもちろん始めています。しかし、お客様の層が劇的に広がっている今、「過去に5年サイクルでビジネスが一巡したから次も同じようになるはずだ」ということが本当に当てはまると考えるのは、必ずしも適切ではないと私たちは考えています。


ちなみにこれは、DSやWiiが登場する前の、ゲームキューブやゲームボーイアドバンスの時代の普及台数です。任天堂は、この時代ヨーロッパでの展開力が弱く、全体の半分以上をアメリカで売り、残りの半分弱を日本とヨーロッパで同じくらいの割合で分け合うという構造でビジネスをしていました。


昨年年末時点での、ソニーさんのPS2の累計普及台数を見ると、市場ポテンシャルは、アメリカは日本の倍以上あり、任天堂よりも早くヨーロッパ市場のポテンシャルを開拓されたソニーさんは、この時点で既に日本の1.5倍の市場を創り出していたことがわかります。PS2の数字は、任天堂がDSやWiiで取り組んだ「ゲーム人口拡大」が始まる前のビジネスの結果ですから、ヨーロッパの市場のポテンシャルは、このとき以上に拡大することが十分期待されます。PS3の販売結果を見ても、アメリカとヨーロッパの差が小さくなってきているように感じられます。


これは昨年年末時点でのWiiやDSの累計普及台数ですが、Wiiは、PS2を超える史上最速のペースで普及が進んでおり、ゲーム人口拡大による新たな顧客層の拡大を合わせて考えると、PS2以上の累計普及台数を実現することは、決して不可能ではないと思います。したがってWii市場はこれからもまだまだ拡大の余地があると考えられます。ソフト市場についても、来期は今期以上に拡大することが可能ではないかと考えています。どんなソフトでそれを実現するか、ということについては、今年6月にアメリカで開催されるE3でお目にかけることになると思います。
一方でDSによるゲーム人口拡大が、日本、ヨーロッパ、アメリカの順で広がり、しかもかなりの時間差があったこと、そして、日本で携帯型ゲーム機の市場が急拡大したことから、日米欧の普及台数がこれまでにない割合になっています。これまでほとんどのゲーム機でアメリカの約半分の大きさだった日本のゲーム市場で、アメリカとほとんど変わらない量のハードが売れているというのは、これまでにはないパターンのことです。昨年前半に日本のDSビジネスは減速していましたが、既にみなさんもご存じの通り、ニンテンドーDSiの投入で勢いを取り戻しつつあります。そして、アメリカやヨーロッパでは、市場が飽和するのはまだまだ先のことではないかと思いますし、来期前半にはアメリカやヨーロッパでもニンテンドーDSiを投入して、普及の次の段階を目指していきます。


これは、各地域のDSとPS2の累計普及数の違いです。日本では、DSは既にPS2以上に売れていますし、これからDSiを中心にさらに普及が進むと思います。
もし、日本におけるDSとPS2の販売実績比率で、アメリカやヨーロッパの普及台数が飽和すると仮定すれば、


DSのポテンシャルは、このようになります。そもそも、携帯型は究極には1人1台までの普及のポテンシャルがあり、据置型以上に伸びることが期待できます。事実、日本では既にDSがPS2以上に普及していて、これからさらにDSが伸びると思います。したがって、アメリカやヨーロッパでもDSの普及台数がPS2の普及台数を大きく超えることになってもまったく不思議ではないと思っています。特にヨーロッパは、携帯型ゲーム機の市場が既にアメリカを超える規模になりつつありますから、これは上ブレするチャンスが十分にあると思っています。



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