株主・投資家向け情報

2009年5月8日(金)決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文
前のページへ1 2 3 4 5 6 |

参考までに、アメリカでは、DSでも比較的早期から、ソフトメーカーさん主導のソフトマーケットが形成されています。


ヨーロッパ主要4カ国についても、アメリカと傾向は同じです。比較的早いうちから、ソフトメーカーさん主導のソフトマーケットが大きく存在しています。


ヨーロッパは、『脳トレ』や『nintendogs』などのTouch! Generationsソフトが世界で最も売れた国々です。ですから任天堂の販売シェアが高い時期が一時あったのですが、多くのソフトメーカーさんが積極的にDS向けのソフトを展開され、すでに結果を出されています。


ちなみに、69期は、これまでで最も多くのミリオンセラーが登場した1年でもありました。


全世界の出荷ベースで100万本を超えたDSタイトルは、68期で任天堂・ポケモンのタイトルが15タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが11タイトルでしたが、69期には、任天堂・ポケモンのタイトルが16タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが15タイトルとなりました。前期までの累計では、任天堂・ポケモンのタイトルが29タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが28タイトルでしたが、最新の累計では、任天堂・ポケモンのタイトルが37タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが54タイトルと、ミリオンセラーのタイトル数ではソフトメーカーさんのソフトの方が、かなり多くなりました。


Wiiにおいては、その増え方のペースはさらに急激です。全世界の出荷ベースで100万本を超えたタイトルは、68期で任天堂・ポケモンのタイトルが12タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが8タイトルでしたが、69期で任天堂・ポケモンのタイトルが11タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが23タイトルと、こちらも単年度でソフトメーカーさんのタイトルの方が多くなりました。前年までの累計では、任天堂・ポケモンのタイトルが14タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが12タイトルでしたが、最新の累計では、任天堂・ポケモンのタイトルが18タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが36タイトルと、ミリオンセラーのタイトル数ではソフトメーカーさんのソフトの方が、自社タイトルの倍に到達しています。


最後に、ひとつお話ししたいことがあります。それは、昨年の決算説明会で、中期の重点目標としてお話しした、「ゲーム機の世帯あたりのお客様の数」にどういう意味があるのかについてです。私たちがこの数字にこだわっている理由は、世帯あたりのユーザー数が高まることが、私たちの目指すゲーム人口拡大にとって非常に重要な要因となると考えているからです。


ゲームをしていないお客様や、遊ぶのを止めてしまったお客様など、先ほどのゲーム人口構成のグラフにおいて、黄色やピンク色で表されている人たちに、ゲーム雑誌やインターネットなどを通じて製品に関する情報を能動的に集めていただくことはほとんど期待できません。それどころかTV宣伝でさえ、ゲームというだけで心のシャッターが降りてしまうような方がたくさんおられると考えるべきです。これは、私自身が女性用化粧品のCMをいくら目にしても、商品名を覚えることも、商品の特徴を理解することもできないのと同じことだと思います。また、今、ビデオゲームを遊んで下さっているアクティブなお客様、グラフの青色の人たちの中でさえ、そういうお客様が少なからずいらっしゃることがわかっています。そうすると、そういう人に、我々のビデオゲームの製品の魅力を伝えることができるのは、周囲の人のクチコミということになります。しかし、そもそもクチコミは、例えば同じ学校に通う女子高生のグループや、同じ会社に通う年齢の近い男性のグループなど、同じ集団に属する近い年齢の同じ性別のグループの中では比較的起こりやすい傾向にありますが、年代を超えて、性別を超えては伝わりにくいのが普通です。 ただし、ひとつだけ例外があります。それが「家庭」です。だからこそ、世帯あたりユーザー数は、大きな意味を持つと私たちは考えています。

単身世帯を除く多くの世帯では、男女間のコミュニケーションが発生します。さらに、家庭には親子の世代間のコミュニケーションがあります。 また、必ずしも同居していなくても、家族や親せきが集まれば、 孫とお爺ちゃん・お婆ちゃんなど、3世代にわたるコミュニケーションさえ自然に成立します。家庭の中で、ゲームが上手な人が初心者に教えるというようなコミュニケーションも自然に発生します。こうして見ると、家庭は世代や性別を超えるクチコミを生み出せる、非常にユニークで貴重な存在であることがわかります。ですから、世帯の中でビデオゲームを理解する人が増え、世帯あたりのユーザー数が増えていくと、その中でユーザー層が波及的に拡大するチャンスが生まれるのです。
また、家庭で楽しめる人が多いほど、購入意向が実購入につながりやすい、すなわち、「みんなが楽しめるもの」として、購入の心理的障壁が下がるという作用もあります。みなさんにも共感していただけるのではないかと思うのですが、何か外で買い物をして帰るとき、それを持って買ったときに他の家族の方がどんな表情をするかを自然と想像して、心の中でブレーキが踏まれたり、逆に背中を押されたりしている方が多いのではないでしょうか?一般的に商品は、欲しいと思った人のごく一部しか実際には購入しないと言われているんですが、ここで、背中を押されるか、ブレーキを踏まれるかは、実際の商品の売れ方に非常に大きな影響があるわけです。
だからこそ、この「世帯あたりユーザー数」に任天堂は強くこだわってきたわけです。


これが、昨年の決算説明会のときにお見せしたデータです。日本におけるDSやWiiが、はっきりと他のプラットフォームと異なるコントラストを見せていたのですが、アメリカではそれほど鮮明な違いになっていませんでした。それが、この1年の間にどのように変わったかと言いますと、


このようになりました。日本では、世帯あたりユーザー数は、Wiiでは3.4、DSでは2.9と、他のプラットフォームには見られない高い水準を維持しています。任天堂が、「Wiiの間」のような新しいサービスに取り組むのも、Wiiがこのような他のプラットフォームには見られないユニークな特性を有しているからでもあります。アメリカでも、Wiiの世帯あたりユーザー数は日本と同水準の3.4に増え、明らかに他のプラットフォームとは異なる水準になっています。Wiiについては、本当の意味で、アメリカにおいても家族全員にとってゲームが関係のあるものになったと言えそうです。これが、Wiiがゲーム人口を拡大しながら、ソフトビジネスの急激な拡大を生み出している構造になっています。
その一方で、DSについては、携帯型としては相対的には高い水準とは言えますが、まだ日本のように他機種と劇的なコントラストを生み出せていません。この数字が伸びてくると、アメリカにおけるDSは、さらに巨大なポテンシャルを持つ、幅広い年齢層に普及する流れができると私たちは考えています。このポテンシャルが開かれるように、今後も努力を続けていきたいと思います。


ご清聴どうもありがとうございました。


前のページへ1 2 3 4 5 6 |

このページの一番上へ