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2010年5月7日(金)第70期 決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

こちらは、同時期の携帯型ハードの販売推移です。昨年末以降、DS市場は全体的に盛り上がりに欠けた推移となっており、前年を下回る状況になっています。


次に、アメリカの市場についてお話しします。


これは、NPDグループが毎月発表している据置型ハード販売数の推移を昨年と今年で比較したものです。以前にもお話ししましたが、NPDの月別データは、4週間の月と5週間の月がありますので、1週毎の平均値としてグラフを作ってお見せしています。昨年1〜2月は、Wii本体の販売が非常に好調だった時期でしたが、昨年12月にWii本体が記録的な販売数となったことで、今年の1〜2月は、Wii本体やバランスボードを同梱した『Wii Fit Plus』が店頭で長期間在庫不足となってしまった影響も受けて、昨年を下回る実績でスタートしました。3月に入り、在庫状況の回復と共に、勢いも回復しつつあります。昨年は7月発売の『Wii Sports Resort』まで有力ソフトがありませんでしたが、今年は、5月に『スーパーマリオギャラクシー2』を発売しますし、後でもお話ししますが、昨年後半に発売したソフト群がこの春まで好調に推移していますので、Wiiビジネスが昨年のように春以降急速に勢いを失うという事態が生じる可能性は低いと判断しています。


これは、アメリカの主要小売店5社さんにおけるWii本体とバランスボード同梱の『Wii Fit Plus』の店頭での在庫状況を任天堂で毎週調べて、それを小売店さんの販売シェアで加重平均したものです。例えば、これが40%であるということは小売店さん5軒のうち3軒では品切れになっているということとご理解ください。全てのお店に在庫があれば100%となりますが、任天堂のハードや定番商品は、本来100%であらねばなりません。
昨年12月のWiiハードの販売数は、NPDのデータ集計で歴代の記録を大幅に塗り替えるものだったことは1月にもお話ししましたが、このことにより、年明け以降、生産してから輸送に時間がかかるWii本体やバランスボード同梱の『Wii Fit Plus』は、深刻な在庫不足に陥る結果となってしまいました。在庫不足が特に深刻だったのは、1月後半から2月にかけてです。特にバランスボード同梱の『Wii Fit Plus』については、ほぼ3週間は、まったく店頭で見つからないという事態を招いてしまいました。
Wii本体については4月から順次在庫状況が改善していますし、バランスボードについては5月には順次在庫状況が回復していく見通しになっています。アメリカは小売店さんまでの配送に非常に時間がかかりますので、このように一旦在庫不足が生じると、ビジネスの勢いに大きな影響が出てしまいます。今後、改善しなければならない点だと思っています。


これは、同じくNPDグループのデータを元にした、携帯型ハードの販売推移です。2月、3月と、これまでのNPDの実績で、それぞれ2月単月・3月単月の月間販売数の新記録を作るなど、DSの今年の出足は決して悪くありません。ただし、昨年は4月に新製品のニンテンドーDSiを発売しており、そこで大きな盛り上がりがありましたので、4月は昨年を下回ることが予想されます。


これは、NPDによる昨年1〜3月の累計ソフト販売数ランキングのトップ30です。
この中には、任天堂プラットフォームのタイトルが14タイトルあります。その内訳はWii向けが9タイトル、DS向けが5タイトルでした。この14タイトルのうち、2009年になってから発売されたタイトルは1タイトルだけで、7タイトルは前年の2008年に、6タイトルは2007年以前に発売されたものでした。特に、13位の『マリオカートDS』は2005年発売、14位の『New スーパーマリオブラザーズ』(これもDS用です)が2006年発売であるにもかかわらずランクインしています。これに対して、他社さんのプラットフォームでは、合計16タイトル中、9タイトルは年が明けてから発売されたソフトで、前年に発売されたタイトルは6タイトル、それ以前に発売されたタイトルは1タイトルだけでした。ゲーム人口拡大がある程度進んで以来、任天堂プラットフォームには、ロングセラー型のタイトルが多く登場しましたが、昨年も、その傾向は見られていたわけです。
一方、この時点ではWii本体のビジネスは好調とまだ見られていた時期ですが、その前年末に発売したソフト、例えば、『Animal Crossing(どうぶつの森)』 や『Wii Music』は、既にランキング外になっていました。その前年の春に発売した『Wii Fit』や『Mario Kart』、あるいはアメリカでは2007年2月に発売しているWiiの定番ソフトである『Wii Play(日本での名称は『はじめてのWii』)』が市場を支えているという、やや不健全な状態でした。そして、年明け以降Wii向けの有力ソフトが7月の『Wii Sports Resort』までありませんでしたから、このことが、春以降にWiiが勢いを失っていく流れを作ってしまったと考えられます。


こちらが、今年の1〜3月の累計ソフト販売数ランキングのトップ30です。
今年も、昨年と同じく、任天堂プラットフォームのタイトルは合計14タイトル含まれています。その内訳はWii向けが8タイトル、DS向けが6タイトルでした。この14タイトルのうち、2010年になってから発売されたタイトルは『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』の2タイトルだけで、8タイトルは前年の2009年に、4タイトルは2008年以前に発売されたものでした。先ほどお話しした『マリオカートDS』や『New スーパーマリオブラザーズ』は、このチャートにも残っています。これに対して、他社さんのプラットフォームでは、合計16タイトル中、13タイトルは年が明けてから発売されたソフトで、前年に発売されたタイトルは3タイトルだけでした。昨年以上に、他社さんのプラットフォームは新作中心になっています。
この時期には、昨年と同様に、『ポケットモンスター』を除いて、任天堂の新作ソフトはほとんど出ていません。また、昨年11月に発売され、ビデオゲームソフトとして初動記録を塗り替えたアクティビジョンさんの『Call of Duty: Modern Warfare 2』というソフトに需要が集中することを懸念された多くのソフトメーカーさんが、他社さんのプラットフォーム向けの大作ソフトの発売を年末から年明けに延期されまして、この1〜3月期に発売されましたので、昨年以上に、いわゆるゲーマー向けの大作ソフトが、数多く発売された時期でもありました。
昨年と大きく異なるのは、これだけ年明けに新作のラッシュがあった後であっても、任天堂が昨年後半に発売した有力ソフト3本は、全てランキングの上位に残っているということがあります。逆に、他社さんのタイトルでは、『Call of Duty』を除くと、前年発売のタイトルは1タイトルしか残っていないわけで、いわば、売れ続けているタイトルがあまりない、非常に初動性の強い状況になっています。


最後にヨーロッパです。


これは、ヨーロッパにおける、今年に入ってからの毎週の据置型ハードの販売の推移を各国の調査会社さんのデータを元に任天堂で集計したものです。ヨーロッパでは、スペインで年始の第1週が、年間を通じた最大のギフト商戦となるスリーキングスにあたるため、第1週の販売数が非常に大きくなります。これを含めるグラフにすると、全体の推移が見にくくなるので、週間販売台数20万台を上限にしたグラフにしていることをご了解ください。
ヨーロッパにおいても、Wii本体は、イギリス以外の地域では、2月までクロのハードについて在庫不足が起こっていました。イギリス仕様のクロハードは在庫があったのですが、イギリスとそれ以外の国で、電源プラグの形状が異なることから、柔軟に在庫を配分できないという事情があり、これは今後に活かすべき反省点だと感じています。アメリカと同じように、バランスボード同梱の『Wii Fit Plus』も、最近まで品薄が続いており、ようやく、4月に入ってから徐々に回復傾向という状況です。
アメリカと同様に、年明け以降は、任天堂プラットフォームの有力ソフトの新発売はなく、他社さんのプラットフォームに大作ソフトが続々と発売される状況でした。
アメリカでは、今年に入ってもXbox360がPS3をリードしているのですが、ヨーロッパでは、2009年秋以降にPS3が伸びて、Xbox360が落ち込んでおり、パブリッシャーさんがマルチプラットフォームで展開した大作ソフトの恩恵というのは、主にPS3への追い風となっているようです。


一方、ヨーロッパのDSハードですが、アメリカと異なり、前年に比べて低調に推移しています。
3月に日本で先行発売していた画面の大きなニンテンドーDSi XL(日本ではDSi LLと呼んでいますが)を発売しましたが、昨年4月のニンテンドーDSiの発売と比較すると、盛り上がりは小さい状況です。
Wiiは、昨年後半から大きなヒットタイトルにいくつか恵まれていますが、DSは、ハードを強力に牽引するような大ヒットソフトがしばらく出ていませんので、社会の話題となるようなヒットタイトルを提案して、お客様に注目していただくことが必要な局面になっていると認識しています。



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