株主・投資家向け情報

任天堂カンファレンス Q&A セッション
質疑応答
Q 7  業績予想の前提条件の変更に伴う具体的な数字と要因分析について、もう少し解説してほしい。為替前提の変更に伴う売上高、営業利益への影響額および営業外の為替差損益について、通期ベースで教えてほしい。
 また、DS、Wiiのハード、ソフト、それぞれ下方修正されているが、マーケット全体による影響、ソフト不足、マジコンあるいは違法ソフトによる影響、恐らくこの三つの影響があると思われるが、DSとWiiそれぞれについて、どういった割合で影響が出ているか。
A 7

専務取締役 経営統括本部長  森 仁洋:

 上期の業績予想は本日(2010年9月29日)の為替を参考にして計算しております。本日はドルが84円、ユーロが114円くらいだったと思います。下期は、ドルが85円、ユーロが110円という計算をしておりますので、下期には大きな影響は出ないと思っております。上期について、まだ9月の決算を締めておりませんので、具体的な数字でお話しすることはできませんが、大体の感覚としまして、営業利益と経常利益の差額プラス私どもの営業外収益部分が、為替差損という形で影響するものと思います。


岩田:

 DSとWiiのハード、ソフトの前回の予想と今回の予想の差異についてですが、まずニンテンドーDSに関しては、今年の年末にニンテンドー3DSを発売しないことにいたしましたので、そのことによってニンテンドー3DSの今年度内の数量が減りました。これが一つの要因です。また、今年の上期は昨年と比べますとDSの販売数が減っています。そのことを考慮いたしまして、この新しい数字を決めました。Wiiのハードについては、数字を若干減らしておりますが、極めて大きな変動という数字ではないので、これは現状の足元を見て新しい予想を下に再計算した結果だとお考えください。
 ソフトについては、DSもWiiもそれぞれ減っております。もちろん、娯楽のゲームソフトのビジネスというのは、基本的にヒットソフトの有無が非常に大きく状況を左右するビジネスですので、「ソフト不足」というよりは、「ヒットソフト不足」の方がより的確かと思います。すなわち、市場を牽引するような、「ゲームを遊ぶことにちょっと飽きてしまった」という人が、「またやってみようか」と思うような、あるいは、今までお客様でなかった方が、「そんなソフトならやってみたい」と思うようなヒットソフトが今期はまだ新しく見えてきていないということです。それを前提に計画を立てることができないという状況の中で、私たちの期初の見立てよりも少しペースが落ちそうだということで出した数字です。
 ちなみに、ゲームマーケット全体でソフトが少しスローになっていて、これは任天堂だけの問題ではないと思います。すなわち、今できている様々な提案の中で、目新しさがお客様にとって感じにくくなっているということかなと思います。ですから、任天堂もヒットソフトを出せていないし、マーケット全体にヒットソフトが少なくなっているという印象を持っています。

 違法ソフトといいますか、海賊行為といった方がいいでしょうか。ゲームソフトをコピーして遊んでしまうというようなことがニンテンドーDSでもWiiでもそれぞれ起きていて、私たちもいろいろな対策を講じるわけですが、いたちごっこのようになかなかなくなりませんし、法律でも完全に防ぐことはなかなかできません。こういうものの影響がもちろんないとは言えませんが、一方で、「ソフトはこういうことになったから売れないんだ」という議論がよくあります。例えば、つい最近の例ですが、スペインはソフトウェアの海賊行為に対して法的な手段を取ることが他の国よりも難しい国だと言われています。そういうデバイスが他の国では違法であるという判決が出るのに、スペインではなかなかそういう判決をいただくことが難しいということもあって、結果として、「ニンテンドーDSのマーケットは海賊行為が横行しているのですごく縮小してしまった」と言われていましたし、しばらくニンテンドーDS用のソフトがヒットチャートの上位に来ることも事実なかったのです。ただ、日本で『絵心教室DS』という名前で出た、絵の描き方を教えてくれるソフトが『アート・アカデミー』という名前で今年の夏ヨーロッパで発売されているのですが、これはスペイン全体のあらゆる機種のソフトの中で週間ヒットチャートで一番になりました。たくさんの人が興味を持って社会の話題になれば、いくら海賊行為があってもソフトは売れるわけです。ですから、もちろん海賊行為をどう防ぐかというのは、私たちはプラットフォームホルダーの責任として今後も取り組みますし、ニンテンドー3DSのように新しいプラットフォームにする時はそれを強化する絶好のチャンスですので、積極的にやります。しかし一方で、「海賊行為のせいでゲームは売れないんだ」と私たちが言うのは言い訳だとも思うのです。本当に多くのお客様に興味を持っていただき、楽しんでいただけるものができたら、そのような環境でもソフトはヒットチャートの一番になれます。これらのことを同時に、両面から考えたいと思います。海賊行為の影響は確かにありますが、買ってまで遊びたいと思っていただける方をいかに増やすかがポイントなので、その影響のせいで数が減ったというふうには簡単に考えないようにしたいと思っています。

Q 8  ソーシャルゲームの急拡大による影響というのは、あまりないという見方か。それとも、より脅威的な存在になっているというような認識か。
A 8

岩田:

 最近非常に頻繁に、「ソーシャルゲームの急拡大によって任天堂のビジネスに影響が及んでいるのではないか」という話がされるものですから、ちょっと調べてきましたので、スライドを使います。

ユーザー規模ニンテンドーDSユーザーとソーシャルゲームニンテンドーDSユーザーとソーシャルゲーム

 「ソーシャルゲームが流行したから任天堂の業績が悪くなった」というような話が報道されることがあります。時期的に任天堂がWiiやDSで業容を拡大した後、少し踊り場が来てちょっと下がったという今の状況と、日本で携帯電話用のソーシャルゲームが急拡大した時期というのが一致するものですから、「これには因果関係があるのではないか」、すなわち「DSやWiiのお客様が大量にシフトしているのではないか」、「今までゲームにお金を払って遊んでいたけれども、ゲームが無料で遊べるようになったので、それが原因だ」ということがよく新聞に書かれたりしておりますので、本当にそうなら私たちは何かしないといけませんし、そうでないなら、「そうではありません」とはっきり申し上げた方がいいと思い、ちょっと調べました。
 結論から言いますと、私は、これには因果関係はないと思います。同時期に起きただけで、これを因果だとするのは論理的に正しい論調ではないと思っています。まず、これはユーザー規模の話です。任天堂は定期的にゲームユーザーの人口を調べているのですが、任天堂の基本戦略は「ゲーム人口の拡大」ですから、お客様が何人ゲーム機で遊んでいただいているのかということは非常に重要なポイントで、これを継続的に、年に2回程度ですが、調べ続けることで、私たちのゲーム人口拡大が今どういう状態にあるのか、もしゲーム人口拡大が停滞しているとすれば、それは早く、定量的に把握したいので調べているのです。

 DSのお客様は、2010年7月の最新の調査、これは東京と大阪で面接調査を3021人に対して行い調べているのですが、日本の7歳から74歳までの方の推定で3678万人、Wiiのお客様は2989万人です。下にあるSNSのゲームですが、大手2社さんのどちらか一方以上で遊んでおられる方は、1493万人です。ここには、「遊んだことはあるけど今はほとんど遊んでいない」という人、私たちで言うところの“スリープユーザー”、「ゲームは昔遊んだけど最近は遊んでいないよ」という人を抜いた数がWiiやDSでも書かれていますので、それと同じ条件で比べています。
 では、DSのお客様はどれくらいソーシャルゲームのお客様と重なっているのでしょうか。これも調べました。すると、DSのお客様のうち、21%はDSもソーシャルゲームも遊んでおられ、79%はDSだけを遊んでおられることがわかりました。では、このDSもソーシャルゲームも遊ぶお客様がDSを遊ぶ頻度が下がったとか、DSのソフトを購入されなくなったというデータが出ていたとしたら、これは因果ではないかという仮説が成り立つと思い、調べてみました。
 これが、過去1年に購入されたDSソフトの平均本数です。ちなみに、これはお客様当たりなので、台数当たりではございません。1台のゲーム機というのは複数のお客様で共有されています。これを見ると、DSもソーシャルゲームも遊ばれるお客様の方が平均のソフト購入本数は多いようです。すなわち、両方遊ばれる方はゲームがお好きなのだと思います。なので、これだけ見ても、「無料のソーシャルゲームがDSが遊ばれなくなる理由だ」という論拠はかなり弱いのではないでしょうか。
 それから、DSの稼働率、どれくらい遊んでいますか、というのも調べているのですが、クロス集計をかけて、ソーシャルゲームを遊ばれている方と遊ばれていない方で、有意な差があるかどうかを調べました。これも、差はございませんでした。DSのユーザー人口の変化について定期的に調べていますと、大体年末直後はちょっと高くて、夏に計るとちょっと低いというのが毎年のパターンです。これは、年末年始が一番ゲームが遊ばれる時期で、夏ごろは遊ぶ方が少し減っているからです。そうやって調べますと、確かに今年の1月より今年の7月は若干減っていましたが、劇的な変化ではありませんでした。ですから、これも(因果関係があるという)理由にはなりません。

 これらのことから、私は「無料ソーシャルゲームがDSのお客様の減少に影響している」というふうには思っていません。ただ、今は「無料で遊べる」と称するゲームが山ほどある世の中になったわけですから、私たちは「さすがにお金を出して遊ぶものは面白いな」と言っていただける状況を維持できないといけないというふうには強く思っています。


このページの一番上へ