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2011年7月29日(金)第1四半期決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡

おはようございます。質疑応答に移ります前に、私から一つだけお話しさせていただきたいことがございます。

 


第1四半期は、年間を通じてのゲームビジネスにおきましては重要性が低い四半期ですので、その時期に関して足下のビジネスの状況を詳しくプレゼンテーションすること自体に大きな意義があるとは思えませんので、その様な用意は本日してきておりません。しかし、「ニンテンドー3DSは、なぜ、今、これだけ大幅な値下げが必要なのか」と、多くの皆様が疑問に思われているはずですので、そのことに関しまして、質疑に先立ち、お話をさせていただこうと思います。

 


まず、値下げを決断した理由ですが、ニンテンドー3DSの発売前・発売直後と、現時点とでは、状況が大きく異なっていると認識したためです。


ゲームプラットフォームのビジネスにおきましては、勢いが非常に重要ですが、一度勢いが落ちてしまいますと、その流れを変えるためには大きな力が必要になります。

 


6月にロサンゼルスで開催されたE3で発表いたしましたように、年末にはニンテンドー3DS用に有力タイトルが複数控えており、ハードの普及を加速させることができると判断しておりましたが、足下の状況を踏まえ、ニンテンドー3DSをニンテンドーDSシリーズの後継プラットフォームとして本来の普及軌道に戻すためには、相当に思い切った手段が必要だと考え、今回の値下げを決断しました。

 


年末に予定されているような有力ソフトの無いこの時期にこのような値下げをしたことで、「任天堂は焦っているのではないか」という見方も一部にあるようです。

 


もちろん私たちのビジネスは年末偏重であり、今回の値下げのインパクトだけを考えるなら、有力ソフトが揃う時期に値下げをした方が理に適っており、それがむしろ定石という考えから、値下げをするなら年末あるいは秋以降と予想されていた方が多かったのではないかと思います。しかし、私たちが、この時期に値下げを決断したのには理由がございます。

 


まず、ニンテンドー3DSを発売してから私たちが認識したことのひとつに、この商品の魅力が伝わるのに、私たちの事前の想定よりも時間がかかっているということがあります。ニンテンドー3DSの内容を理解いただけたお客様には魅力をご評価いただいている手応えがありますが、それが必ずしも期待したスピードで広がってはおりません。この年末の有力ソフトの効果を最大化させるためには、その前に、今よりも相当多い台数のハードが普及し、新しいソフトの魅力が短期間でお客様の間に広がるような環境にしておかなければ、私たちの期待する爆発的な年末商戦にはならないと考えました。これがひとつの理由です。


もうひとつの理由は、普及に対する懸念を早期に払拭しておくことが、小売店様、そしてソフトメーカー様の今後の力の入れ方に大きな差が生じると考えたからです。世界中の小売店様は、夏商戦の結果を踏まえて、年末商戦の棚割りや力の入れ方を決められますし、ソフトメーカー様は、来年以降に発売されるソフトの開発チームをどのように割り当てるのかを今検討されております。ニンテンドー3DSの普及に対する懸念を払拭することは、来年以降の対応ソフトを充実させるために非常に重要になると考えています。事実、昨日の発表の後、当社で世界各地の流通様、ソフトメーカー様から当社担当者にフィードバックをいただいておりますが、総じてポジティブに受け止めていただいているという報告を受けております。

 


一言で申し上げますと、ニンテンドー3DSが、ニンテンドーDSの後継プラットフォームとして普及するためには、今思い切った手を講じる必要があると考えたということです。

 


その意味で、値下げの効果は短期的なものとしてではなく、この年末商戦まで、おおよそ4カ月ほどの期間で、どのようにこれが効くのかということで判断していただきたいと思います。

 


ハードウェアの量産効果が出る前の現時点でのこのような大胆な値下げの実施は、当然ハードの販売において損失が出ることになりますし、その結果、今期の収益には非常に大きなマイナス影響が出ることになりますが、ニンテンドー3DSが当社のビジネスを支えられるようなプラットフォームに育つためには、たとえ短期の収益に影響が及んだとしても、最大限の手を、今打つべきだと判断いたしました。

 


11月の『スーパーマリオ3Dランド』、12月の『マリオカート7』が、全世界でこの年末に発売される当社の主軸タイトルになります。これらソフトは、アピールの幅も非常に広く、多くの皆様に販売できるポテンシャルがあります。また、ソフトメーカー様からのソフトも年末商戦までには充実してまいります。

 


発売して半年も経たずに価格を改定するのは異例のことですし、本来、短期の収益と中長期の収益を両立させることが経営陣としての私たちの義務だと思ってきましたので、今回のように発売直後に値下げが必要になりお客様の信頼を損ねたこと、通期見通しにも大きな影響を与え、通期配当が大幅に減額になり、中間配当が無配の予想となったことに対し、大変大きな責任を感じております。

 


ニンテンドー3DSをニンテンドーDSの後継プラットフォームとしての普及軌道に乗せ、来期以降の収益を回復させることで、責任を果たしたいと思います。

 


ただし、このたびの営業損失の規模、ならびに中間期の配当が無配となってしまう見込みに対して一定のけじめをつけるため、昨日の取締役会で、取締役報酬の減額について決定いたしました。当社の取締役報酬は固定報酬と業績連動報酬で構成されており、通常の業績変動は業績連動報酬、いわゆる期末の役員賞与に反映され、減額されますが、今回の経営責任はより重いとの考えに基づき、今回は固定報酬額を減額することにしました。固定報酬枠削減幅は、社長の私が50%、他の代表取締役が30%、それ以外の取締役が20%といたしました。

 


もちろん、取締役の固定報酬のカットは、私たち経営陣にとってのけじめとして、決定したことであり、本来の責任は、業績を回復させ、任天堂を市場でご評価いただける状況に回復させることだと認識しています。

 


私からは以上です。

 


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