株主・投資家向け情報

2013年1月31日(木)経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡

最初に世界中の主要国の中で、最も状況が悪いイギリスのヒットチャートです。
ヨーロッパの中で最大の市場のイギリスですが、チャートの中、それも下位のほうにしか任天堂タイトルが顔を出しておらず、最も任天堂プラットフォームの存在感がありません。ニンテンドー3DSに関して、年末商戦期の前年からの減少が最も大きかったのがイギリス市場です。


こちらは、スペインのチャートです。
テレビゲームのようなコストの割に長時間楽しめる娯楽においては、「景気が悪いから売れない」ということは必ずしもなく、「ウィッシュリストで一番になれるかどうかということが重要である」と繰り返しお話ししてきましたが、スペインの経済状況は、「16歳から24歳までの人たちの6割もの方が失業されている」というような報道が示すように、国内経済が大変な困難に直面されている状況ですので、景気の影響は確かに存在したと思います。
その中で、任天堂のプラットフォームは、一定の存在感を示しており、11タイトルがランクインしています。また、3DSもイギリスと比べていただくと、上位にあるのがおわかりいただけると思います。


こちらは、ドイツのチャートです。任天堂プラットフォームのタイトルが10タイトルあり、その中でも特に、ニンテンドー3DSの主要タイトルが上位にあること、そして、Wiiの存在感が大きく残っていることがおわかりいただけると思います。
もともと、ドイツは市場の変化がゆっくり起きる市場なのですが、ニンテンドーDSから3DSへの移行は順調で、年末商戦においても、ニンテンドー3DSは、前年の2011年並みに推移しました。


こちらは、フランスのチャートです。任天堂プラットフォームのタイトルが11タイトルあり、ドイツと同じように、ニンテンドー3DSの主要タイトルが上位にあること、そして、Wiiの存在感が大きく残っていることがおわかりいただけると思います。また、フランスは、『レイトン教授』シリーズのタイトルがチャートに入っていたり、ここには出ていませんが『New Style Boutique』、これは日本の『ガールズモード』ですが、などのタイトルがよく売れていたりと、ニンテンドー3DSがより幅広いお客様に受け入れていただけている、西洋では、最も順調にニンテンドー3DSが普及している市場です。このため、フランスだけは、ニンテンドー3DSの2012年の年末商戦は、2011年の実績を超えて推移していました。


先ほどまでご説明したデータを、日本、アメリカ、ヨーロッパと、ハード市場の2012年1年間の市場シェアを比較したのがこのグラフです。
日本では任天堂ハードのシェアが突出しているのですが、一番下に示しているように、日本、アメリカ、ヨーロッパを合算すると、ハード販売における任天堂のシェアは、全体の50%弱というところです。

また、ヨーロッパの任天堂ハードの市場シェアが低く見えると思いますが、これを国別に分解すると、


このようになります。任天堂がヨーロッパで市場シェアを下げているのは、ヨーロッパ最大市場のイギリスで状況がよくないことが原因になっています。
フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギーでは、任天堂ハードのシェアは50%を超えて、アメリカよりも任天堂の市場シェアが高い状況ですし、イタリアのように、Wiiが他社さんのホームコンソールゲーム機よりも売れている国もあります。
国によって、ヒットチャートが大きく異なる理由が、このグラフで、かなり具体的におわかりいただけるのではないでしょうか?


これは、任天堂が、四半期ごとにご報告している決算報告の数字から、発売から四半期ごとの累計ハード出荷台数をニンテンドーDSの時と、ニンテンドー3DSの時とで比較したものです。現在ニンテンドー3DSは、ハード発売から四半期が8回経過したことになりますが、ニンテンドー3DSは、引き続き、ニンテンドーDSを上回るペースで推移しています。

ニンテンドーDSの時も、日本市場の立ち上がりが早く、次にヨーロッパの市場が本格的に立ち上がり、最も市場の大きなアメリカ市場が立ち上がったのは、最後のことでした。


ニンテンドー3DSは、先ほどお話ししたように、日本市場では、すでに市場をリードするプラットフォームとしての立場を確立できました。しかし、その一方で、海外市場では年末に市場を牽引するようなヒットソフトが出せず、計画を大きく下回り、通期の販売目標を1750万台から1500万台に下方修正する大きな要因となっています。
海外での普及の勢いが十分に確立できていない要因として、3本のマリオソフト以外に大きなヒットソフトが出せていないことがあります。国内では、任天堂の『どうぶつの森』の大きなヒットがあり、ソフトメーカーさん発売のソフトでもいろいろなソフトがヒットしており、ソフトの選択肢に多様性があるのですが、海外ではプラットフォームとしての「鶏と卵問題」をまだ解けていない、すなわちハードとソフトがお互いの販売を牽引するプラットフォームビジネスにおける好循環をまだつくれていないため、ソフトの多様性が不足しており、結果、ニンテンドー3DSは、DSよりもアピールの多様性が不足した状況になっています。結果、ハード販売に伴って伸びるはずのソフト販売が、期待どおりには伸ばせませんでした。


これらを踏まえると、ニンテンドー3DSは、日本市場と同様の流れを、海外市場でいかに生み出すか、ということに課題は尽きると考えています。

この課題は、かつてニンテンドーDS時代にも存在し、日本で勢いを得るのから少し遅れて、ヨーロッパ、アメリカの順で普及が加速していきました。人口規模が、日本の市場よりも遙かに大きいアメリカやヨーロッパの市場は、本来の市場規模も日本以上に大きいですから、昨年果たせなかった本来の市場ポテンシャルを引き出すことを、今年はぜひ果たしたいと考えています。


一方、Wii Uでは、プレミアムセットとベーシックセットの需給バランスがうまくいかなかったことを除き、発売当初は順調に販売が進みましたが、大きな社会的な話題を生み出すまでに至らなかったこともあって、年始以降は勢いを保てていません。
それに加えて、ソフト開発の遅れによって、今年序盤のソフトの発売が途切れてしまいました。このことにより、勢いが重要なゲームプラットフォームの普及のシナリオが一度崩れてしまいました。
Wii Uについては、「Wiiのときのように、一目で魅力がわからない」というご指摘はありましたが、購入者のみなさまには、いくつかの課題はあるとはいえ、製品価値に一定のご評価をいただいていると思います。しかし、それは、どちらかというとじわじわと実感する魅力で、瞬時に社会全体に広がるというものではないため、まだ、社会全体に、製品の価値を広くお伝えできていない状況です。いわば、いちばん最初に買っていただけるお客様には購入いただけたものの、その次に情報が伝わって購入を検討される方々にうまく情報が伝わっていないわけで、それが、勢いを保てなかった大きな要因になっています。

どうしても、Wii Uは、Wiiの普及ペースと比較されてしまいますが、足下の状況から、仕切り直しをする必要があると考えています。



このページの一番上へ