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2013年1月31日(木)経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡

また、ニンテンドー3DSは、携帯ゲーム機として、これまでにない高いネットワーク接続率になっています。
特にネットワーク接続率の高い日本やアメリカでは、ネットワーク接続率は80%超になりました。昨年この場で、約60%と申し上げましたが、この1年で大幅にネットワーク接続率が高まっています。

また、日本では盛んなすれちがい通信ですが、クルマ社会のアメリカでは、日本のようには、まだ活用されていません。一方でヨーロッパの大都市圏では、すれちがい通信の利用が拡大してきましたし、今後も、本体機能ですれちがい通信系の機能強化を予定していますので、持ち歩くことが習慣になるようにしていただいて、すれちがい通信、いつの間に通信を海外でも普及させる取り組みに、今年は、重点を置いていきます。


また、昨年夏から、パッケージソフトをダウンロードでも併売するという新たな取り組みをはじめました。
そして、このような高いネットワーク接続率に支えられた中、ダウンロード販売も拡大してきました。ニンテンドーeショップも活用していただける方が増え、今では、ニンテンドーダイレクトの最大の視聴経路は、ニンテンドーeショップからになってきています。
昨年は、『とびだせ どうぶつの森』が、SLC-NANDメモリーを使用した特殊仕様のロムカードを使っていたこともあり、増産に限界がありました。もともと、毎日少しずつ遊ぶこのソフトの特性とあわせて、ダウンロード版を多くのみなさんに受け入れていただけ、販売数量全体の1/4がダウンロード版となり、すでに70万本を超えるという、これまでにない結果になりました。

まだ、海外では、このように高い比率でのダウンロード販売の実績は出ていないのですが、この実績には、単にソフトと相性が良かったとか、不測の事態ではありましたがパッケージが品薄になったとかということのほかに、POSAカードによる販売など、販路を広げて、ダウンロード版の販売方法を多様化したことも大きな要因になっていると考えています。
今年は、海外でも販売方法の多様化に取り組み、ダウンロード販売の割合を高め、新たな販売機会の拡大と、収益性の向上を進めていきます。


Wii Uについては、現状ではまだ製品価値をしっかりとお伝えできていないことがはっきりしましたので、じっくりと普及に取り組む必要があると考えています。

ニンテンドーDSも、Wiiも、結果としてご評価いただけるプラットフォームになりましたが、Wiiが一瞬で価値が理解されやすいプラットフォームであったのに比べると、ニンテンドーDSは、その価値を理解していただくのに時間がかかったプラットフォームでした。Wii Uは、GamePadの可能性、『Miiverse』の可能性など、購入いただいたお客様からご評価いただいている要素はいくつもあり、その価値を広くご理解いただければ、大きなポテンシャルがある、ということについては、自信を持っておりますので、これから今年の後半までに、大きく状況を変えていきたいと思います。


また、今年序盤にはタイトルがありませんが、春から夏にかけてはタイトルが徐々に充実してきますし、今年の後半から来年にかけては、先週の「Wii U Direct Nintendo Games」でお知らせしたような自社の有力タイトルを集中的に展開し、ハードを牽引することを目指しています。
ハードを購入いただけるかどうかは、このハードでしか遊べない有力タイトルがあるかどうかで決まるわけですから、この時期には、その密度をしっかり高めたいと思います。


また、先週のダイレクトでは、アトラスさんとの取り組みで、『真・女神転生』と『ファイアーエムブレム』のコラボレーションタイトルについてお伝えしましたが、開発規模が増大した今のホームコンソール機では、ソフトメーカーさん単独でリスクをとって特定のプラットフォームに独占タイトルをつくっていただくということが、以前にも増して難しくなってきていますので、ソフトメーカーさんとの取り組みも、いろいろな新しい形のご提案をしていこうと、いろいろな話し合いを進めております。

任天堂の社内チームは任天堂らしい商品を開発し、セカンドパーティの開発会社のみなさんと、多彩なソフトを一緒につくっていきます。しかし、一つひとつのタイトルの開発規模が大きくなる中、これだけでは十分なソフトが用意できませんし、自然体でソフトが充実するのを待っているというわけにはいきませんので、いろいろなソフトメーカーさんと新たな取り組みを進めていきます。時には、バンダイナムコさんと共同で進めている『スマブラ』の制作のように任天堂のプロパティを一緒に開発したり、先ほどのアトラスさんとの取り組みのようにコラボレーションをしたり、『LEGO® City』のようにワーナーさん、TTゲームズさんと新たな取り組みをしたり、Ubiソフトさんの『JUST DANCE』のように海外でヒットしたタイトルを日本にカルチャライズしたりと、すでにいろいろな事例が出ていますが、これからも、ソフトメーカーさんと、従来のライセンスビジネスという枠組みを越えて、いろいろな新たな事例が生まれると思いますし、それを積極的に推進していきたいと考えています。これは、任天堂というプラットフォームホルダーが、内部に強力なソフト開発者集団を持っているからこそできることだと自負していますので、私たちの強みを活かすことになると思います。


また、Wii Uは、インターネットに接続いただくことで、その真価を発揮するゲーム機ですが、現時点での世界全体でのインターネット接続率は74%と、全体の約3/4のハードを、すでにインターネットに接続していただいています。これまでの私たちのハードの中で、明らかに高い接続率になっていますが、インターネットに接続することのメリットを積極的にお客様にお伝えしていき、これをもっと高めていくつもりです。


また、Wii Uは、手元にタッチスクリーン付きの画面がある新しいコントローラー、Wii U GamePad が標準であることが大きな特徴になっていますが、この構造は、先ほどお話しした高いネットワーク接続率とあわせて、テレビをスマート化し、テレビとインターネットとゲーム機の関係を革新し、リビングルームでのテレビを中心とした娯楽を拡大する潜在能力があると考えています。
現在のWii Uでは、切り替え速度やサービスの使い勝手に改善の余地があることなどから、まだ、そのポテンシャルは一部しかお見せできていません。
これまでのインターネット上のサービスは、PCやスマートデバイスを対象につくられてきましたが、画面を複数の人で共用する構造になっていなかったため、多くのサービスはそのままテレビでは快適に使えません。これまでのテレビとインターネットを融合する試みがあまりうまくいかなかった理由はここにあると思います。
しかし、サービスによっては、大画面のテレビと手元画面を組み合わせて,大きく価値が変わるものがあります。任天堂が12月上旬にお知らせしていた、Googleさんの「ストリートビュー」をWii Uで楽しんでいただくサービス、『Wii Street U powered by Google』は、そのひとつの例になり得ると考えています。1月末頃の配信をお知らせしていましたが、仕上げにもう少し時間をいただくため、2月中旬までに配信とさせていただくことになりました。今日、最新の紹介ビデオを持ってきましたので、ご覧ください。


ご覧のように、Wii Uを通じて、リビングルームが、世界中のいろんな場所とつながる体験を楽しんでいただけます。
Wii Uはもちろんゲームを楽しんでいただくことを主目的とするハードですが、こういうサービスがあることで、Wii U独自の価値を広くご理解いただくことに役立ちますし、その上、家庭内の関与人数が増え、ゲーム機が自分と無関係ではないお客様が増えていくことが、Wii Uというプラットフォームの未来につながると、私たちは信じています。


ちなみに、このサービスは、Wii Uで専用のプログラムを記述する、いわゆるネイティブコードではなく、その大半が、HTML5ベースのウェブ技術を中心につくられており、少人数のチームでコンパクトに開発されました。『Miiverse』や『Nintendo TVii』も、ウェブアプリケーションとして、ブラウザーエンジンを利用してつくられているのですが、Wii Uでは、すべてに専用のプログラムを書かずに、こういう作り方をしても、十分実用になるだけのパフォーマンスを発揮できるだけのマシンパワーがありますから、これまでの任天堂プラットフォームと比較すると、社内のゲーム開発リソースを費やすことなく、いろいろなサービスの展開をスピーディーに進められるようになりつつあります。

ゲーム機のソフトウェア開発が、どんどん大きな投資を必要とするようになった今、ウェブサービスの転用、プロトタイプの作成、あるいは、インディーズゲーム制作など、いろいろなことを考えたとき、ソフトウェアの作り手を広げる試みは非常に重要になってくると思っています。3月のGDCでは、この『Wii Street U powered by Google』や、いくつかのVoDサービスの開発に使用された、HTML5やJavaScriptなどのウェブ技術でWii Uソフトを開発できる環境や、Unityという多くのユーザーに使われているクロスプラットフォームのゲームエンジンなど、ソフトウェアの作り手を広げる試みについて、いくつかご紹介できる予定です。


最後に、すでに一部新聞報道でもご存じと思いますが、来月、当社は9年ぶりの開発部門の再編を行うのですが、ここでは、従来、独立した本部で別々に開発されてきた、携帯ゲーム機とホームコンソールゲーム機の開発主管本部が統合され、新たに専務の竹田の下に統合開発本部が組織されます。

また、将来のプラットフォームのアーキテクチャを統合するためのプロジェクトも、昨年からスタートしています。プラットフォーム統合というのは、携帯ゲーム機とホームコンソールゲーム機を1種類にするという意味ではなく、アーキテクチャを統合することにより、フォームファクターや性能が異なっても、ソフトをつくるための作法が揃い、ソフト資産を相互に転用したり、OSや内蔵ソフトの移植性を高めたりすることを目的とする試みです。このような取り組みは、新しいハード発売直後に陥りがちなソフト不足やソフトの開発遅延を防ぐことにも有効です。
過去には携帯ゲーム機とホームコンソールゲーム機のアーキテクチャを揃えるという試みは技術的に無理があり、むしろこれまでのやり方が合理的でしたし、当社がこのような取り組みを始めてからまだ日も浅く、短期的にすぐに成果をお見せできるものではありません。しかし、この取り組みは、今後の中長期的なプラットフォームビジネスの展開にとって、大きな成果につながると考えています。今日は、経営方針説明会、ということで、敢えてお話しすることにいたしました。



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