株主・投資家向け情報

2013年4月25日(木)決算説明会
質疑応答
Q 7

 Wii Uについて聞きたい。ソフトのクオリティーを追求すると、どんどん発売日が遅れてしまうという問題が起こっていて、おそらくここにいらっしゃる投資家のみなさんは、「『ピクミン3』が出てくるにしても、その後に続くタイトルの発売がまた遅延するのではないか」というリスクを感じておられると思う。ソフトのクオリティーを追求すると、どの部分が一番開発上のネックになっていて、これはこの後のタイトルにも響くようなものなのかどうかについて、コメントをいただきたい。また、足下のWii Uの販売が厳しいことで、特に海外のサードパーティーさんの姿勢に変化はあるのかどうか。よく個人の投資家さんからも問い合わせをいただくが、Wii Uは性能が低いというイメージを持っていらっしゃる方が非常に多く、サードパーティーさんからソフトが出てこないのではないかという指摘も、特に直近のラインアップが弱いために見られるが、これについて今現時点での見解をいただきたい。

A 7

岩田:

 まず、自社タイトルが必ずしも順調に仕上がらなかった背景には、昨年の年末にハードを発売し、同時発売するソフトを仕上げるために、予定よりも大きなエネルギーが必要でしたので、そのために、「いろいろなチームから人を借り集めて動かした」ということがありました。これは『ピクミン3』の開発者、あるいは他のソフトの開発者にすれば、「チームの人手をしばらく取られていた」ということがあったと思います。また、単純に「(ソフト開発の中で)ここが苦労しているから」ということではなく、今、お客様に「これなら満足だ」と言っていただけるハードルがどんどん上がっているので、「物理的にこれだけは絶対必要だ」というエネルギーを、今まで以上に多く使う必要があったということもあります。今私が申し上げたのは、従来からあるパッケージソフトの話で、お客様に50ドル、60ドル出していただいて商品を買っていただこうとすると、そういうハードルがあるわけです。一方で、先ほどもお話があったデジタルビジネスになりますと、実はソフトというのは必ずしも50ドル、60ドルのかたまりではない形態での提供の仕方があります。「50ドル、60ドルで買っていただくソフトはお客様に満足していただける水準が上がっていって、つくるのがますます大変になっている」というのはそのとおりで、世界中でたくさんの数を売らなければ簡単には採算がとれなくなってきていますので、ソフト作りというのは昔に比べると採算性が悪くなっていると言ってもよいと思います。その一方で、売れるものは以前よりもますます集中して売れるようになっている面もありますので、そのようなソフトをつくれれば、ソフト作りというのは、今でも非常に収益性の高いビジネスにもなり得ます。ですから、世界中で数百万本以上売れて、それでも採算がとれないということはありませんので、私たちとしては「世界中でそのような形で売れていくソフトをしっかりつくっていく」ということになります。


 一方で、1月の経営方針説明会の場でもお話ししましたが、「Wii Uでソフトウェアの作り手をいかに広げるか」を新たな取り組みとしています。先ほど申し上げたとおり、ホームコンソール型のビデオゲーム機で50ドル、60ドルで売れるゲームをつくろうとすると、以前に比べて非常にハードルが上がってしまっています。私が30年前に初めて家庭用ゲーム機のプログラムを書いたころ、「自分を含めてチームは2人、商品は3か月でできました」というようなことも体験しているのですが、そのころと比べると状況は大きく変わっています。ですので、何らかの形でソフトの作り手を広げないといけないと思っています。3月末にサンフランシスコで開催されたGDCで任天堂は二つの発表を行いました。一つは「Nintendo Web Framework」で、これは先ほどご質問いただきました『Wii Street U powered by Google』というソフトでも使われていますし、これと同じ技術がWii U上で動いているビデオ・オン・デマンドのサービス等でも使われています。HTML5やJavaScriptといった汎用のウェブテクノロジーを使ってソフトをつくれる人は、ゲーム専用機のソフトの書き手と比べると、おそらく100倍以上の方が世界中にいらっしゃいますので、その人たちにソフトをつくっていただこうという考えです。現に、『Wii Street U powered by Google』は、ゲーム専用機のプログラムを初めて行ったプログラマーの方が中心になって開発されており、このソフトの開発チームの規模も非常にコンパクトです。その非常にコンパクトなチームで先ほども申し上げたように、短期間で何度もアップデートが発信できているということは、逆に言えば、今までと比べてソフト作りの敷居というのは大幅に下がっているということです。現に、このような発表をGDCで行ったところ、数百件規模の新しい開発会社さん、あるいは個人の開発者さんからお問い合わせをいただき、そういうものが出てくることによって、その中から新しく光る魅力的なものも生まれていくと思いますので、そういう裾野を広げるということを行っています。

 もう一つがUnityという、マルチプラットフォーム対応のゲームエンジンがあるのですが、これについてもWii U版の発表をいたしまして、先日来、開発者の皆様にご提供が始まりました。このUnityも世界中に百数十万人の開発者の方がいらっしゃって、世界中でゲーム専用機のビジネスがそれほど盛んではない新興国にもたくさんの開発者の方がいらっしゃいますので、そういう人たちがつくられたものもWii Uで発表しやすい機会をつくり、そして、先ほどの『ニンテンドーeショップ』の話や電子マネーによる決済の話などを組み合わせますと、新たな可能性が開けるのではないかと思っています。

 それから、ソフトメーカーさんの中には、先ほどご質問された方がおっしゃったように、「Wii Uは性能が低い」と決めてかかっておられる方がいらっしゃるのも事実です。一方でソフトメーカーの開発者さんの中には、「アーキテクチャーが違うから、他機種と同じようにやっても性能が出ないだけで、きちんとやれば性能が出るよ」というようなことをインタビューで答えている人もおられ、そういう情報が今、錯そうしている状態だと思います。その意味では、任天堂自身がそのような誤解を解くためにもっと努力をしなければならないと思います。ソフトメーカーさんの中には積極的にサポートしてくださるところもあれば、そうでもないところもあるというのが現実ですので、積極的にサポートしてくださるところの中から成功例をしっかり出すことで、結果として「やっぱりWii U向けに開発しておいてよかった」という状況にしていくことだと思います。これは一朝一夕にはできませんし、足下でWii Uのビジネスの勢いが出ていないときには、なかなか説得力を持ちにくいですから、夏以降のWii Uの再活性化とともに、その成果をお示しするように動いていきたいと思います。

Q 8

 今期の営業利益の予想が1000億円だが、自社株買いを検討する余地はあるか。

A 8

岩田:

 たびたび、決算説明会の場で自社株買いについてのご質問をいただくのですが、自社株買いというのは、株主様への還元の一つの方法だと理解していますし、また、特に株式の需給バランスが極端に崩れるような特別な事象があった場合などには大変有効だと思っています。一方で、「自社株買いが本当に株主様への還元方法として最も良いのか」ということについては、局面に応じた違いがあると思っていまして、短期には株価を上昇させる効果があるかもしれませんが、中長期に上昇する力に本当になるかどうかというのは、その時の局面次第だと思います。また、見方によって、自社株買いは、株の売り場を探している人だけがメリットを享受するというような一面も持っておりますので、自社株買い以外の株主還元策も含めて、どのようにするのがベストであるのかということを考えて、総合的に決めたいと思います。

 ちなみに、自社株買いをするかしないかについては、フェア・ディスクロージャー上の観点から申し上げますと、この場で「します」とも「しません」とも申し上げられないということはどうかご理解ください。ただ、私たちは常に「株主還元というのはどうあるべきか」ということについては、真剣に考えています。


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