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2010年6月29日(火) 第70期 定時株主総会
質疑応答
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Q 16  私も貴社製品のへビーユーザーだが、家では肩身の狭い思いをすることもある。Wiiのマリオのように、みんなでできるソフトならよいが、一人でやるゲームは家族が寝静まってから布団から出てきてやることが多い。私のように家庭内で肩身の狭い思いをしてる人はけっこう多いと思うが、そういった状況を緩和するためにPRの一環として、例えばキャラクタービジネスのようなものをどう考えているか。ポケモンなどは大々的に展開している気がするが、そのほかのキャラはポテンシャルがあるのに、あまりテレビや街で見ることが少ないように思う。また、その究極的な先として、テーマパークのようなものをつくるような、超長期的な未来像はあるか。
A 16

岩田:

 まず、最初にお話しされた、家庭内で肩身が狭くならないようにということについては、まさに今日「対処すべき課題」としてお話しした、「社会受容性を高めることを目指します。そのことによってゲーム人口が拡大すると信じております。」という話とぴったり合うお話で、やはり家庭の中でビデオゲームの悪い面ではなくて、良い面にいかに目を向けていただけるようにするかということは、我々の中長期の非常に重要な課題だと思います。

 キャラクタービジネスにつきましては、ポケモンとそれ以外が違って見えるということには一つの背景がございまして、そのポケモンというキャラクターを管理しキャラクタービジネスを展開するための専門の会社である株式会社ポケモンという会社が存在しています。ポケモンは1990年代の終わりから2000年くらいにかけて、日本、アメリカ、ヨーロッパで世界的なブームになりました。キャラクタービジネスは、短期的に繁栄させることは比較的容易なんですが、長期的に繁栄しているキャラクタービジネスは、実は数えるほどしかなく、非常に難しいんです。それはどちらかというとキャラクタービジネスの構造というのが、キャラクターの価値を消費し、消費して価値がなくなったら次の別のキャラクターを代わりに据えればよいという形で運営されているケースがけっこう多いからなんです。もちろん少数の例外はあって、長いこと、非常に価値のあるキャラクタービジネスを展開されている方もいらっしゃるのですが、あくまで少数派です。ですから、そういう状況の中で、一時、ポケモンはこのまま行くとおそらく短期的に価値が大幅に棄損するだろうという危機意識を、任天堂は持ちました。それで、ポケモンの中長期の未来を考える役割というのをはっきり決めて、そこでキャラクターのライセンスを一元管理しようということで、ポケモンという会社はできました。おそらくこういう取り組みをしていなければ、それから10年近く経った今、ポケモンの価値が高く保たれていたかどうか私は疑問です。

 一方で、ポケモンについてはそういうことをするのに適切な人材がいて、その人が責任を持ってポケモンのキャラクタービジネスを回していくということが実現できたわけですが、それ以外の任天堂のキャラクターについて、どうするかというのは当然経営上の選択肢だと思います。一つの考え方としては、例えばマリオをはじめ、任天堂の多くのキャラクターのソフトをつくってきた宮本が、その他のキャラクターのビジネス展開を考える責任者になるとすればそれなりの結果は出せるかもしれません。しかし、一方でキャラクタービジネスにエネルギーを割けば、おそらく宮本がビデオゲームに使えるエネルギーはその分減ります。ポケモンの場合はビデオゲームのつくり手と、キャラクタービジネスの中心になっている人がたまたま被りませんでしたので、うまく役割分担ができましたけども、マリオに関してすぐにそれができるとは考えませんでした。そのことが、「ポケモンだけはキャラクタービジネスを一生懸命やっているけど、それ以外はあまりやっていないような気がする」というふうに見える一つの背景になっています。当然、将来の可能性の一つではあるのですが、これはやり方を誤りますとむしろ逆にキャラクターの価値を棄損することになりかねません。むしろマリオというのは、その時その時の最新の一番面白くて魅力的なビデオゲームにマリオが出てくるというくらいの位置づけであることがマリオの価値を高く保つことでしょうし、その他のキャラクターについてもそれぞれの役割を決め、その時その時、それぞれビデオゲームで光り輝くことが一番重要だと思っていますので、キャラクタービジネスをやるとしても、それは我々のキャラクターの価値がそれによって傷つくことがないと、我々が確信できる場合のみに行うことになるでしょう。また、私は宮本がビデオゲーム以外のことにエネルギーを使うことが、任天堂の利益に必ずしもつながらないと思っています。

 テーマパークの話も何度も議論が出たり話が出たり、いろんな形でうわさになったりするのですが、現時点で何か具体的な計画があるということはございません。もし、あったとしても、それはいわゆる今までにあるテーマパークと同じ形では後追いですから、他の方がされないような独創的なやり方でテーマパークというものがこうすれば実現できると、それは任天堂のビデオゲーム分野の強みがこのように生きるという方法が発明されたら任天堂はそれをするかもしれません。その意味で未来永劫絶対ないとは申しませんが、一方でいわゆる今あるようなテーマパークと同じようなものの、キャラクターだけが任天堂のキャラクターになったものをつくることが、任天堂の価値の向上につながるとは必ずしも考えていないこともご理解いただければと思います。

Q 17  他社のハードへのソフト供給について。任天堂のハードのつくり方というのは、アイデアを実現するためにこんなハードがあるといいという形で、WiiもDSもつくられたのだと思う。3DSも、びっくりさせられるアイデアがたくさん集まったソフトが出てくるに違いないと期待しているが、一方で、iPadなど、他社から面白いハードも出始めている。岩田社長や宮本専務の頭の中には、3DSの100分の1程度でも、これらを使ったアイデアが沸いてしまっているのではないか。間口を広げすぎるのもどうかと思うが、経営戦略としてどうなのか、社長のお考えをお伺いしたい。
A 17

岩田:

 今のお話に限らず、「他社のハードに自社のソフト資産を出す気はありませんか」という話は、いろいろな形でご質問を受けることがありますし、また、そのような申し入れを頂戴することもございます。それは、当社のソフトの価値を認めていただいているということでもあると思うので、そのことに関しては大変ありがたくも思います。一方で、「任天堂はどうして、この娯楽の分野で、このビデオゲームの分野で、このようにご評価いただけているのだろうか」ということを考えましたときに、それは、この建物の中にハードのエンジニアとソフトのエンジニアが両方いて、彼らが交流をしながら、「こんなハードをつくったら、こんなふうにお客様に驚いてもらえるんじゃないか」という提案をソフトの人間が、またキャッチボールで投げ返し、ということを繰り返しながら、他の会社さんでは実現されていないような、「独創的」と後で表現していいただけるような、さまざまな提案を一定以上の頻度で出し続けてきているからではないかと思うんですね。いわば、我々の娯楽というのは、ソフト主導ではあるのですが、やはりハード・ソフト一体でご提案しているわけです。他社さんのデバイスを拝見しますと、「任天堂だったら絶対こうしないんだけどな」という点があります。それは任天堂とこだわりが違うのですから、どちらが正しいかという問題ではないのですが、やはり任天堂の価値観とは相容れないつくり方をされているところもあるわけです。ですから、現時点で私どもは、任天堂以外のハードウェアに任天堂がソフトを供給するということは全く考えておりませんし、また、仮に供給したとして、それは非常に短期間では小さなプラスにはなるかもしれませんが、長期的に考えますと、そのことで、任天堂プラットフォームの価値も棄損いたしますので、結果として何ら未来の任天堂の価値創造にはつながらないのではないかと考えています。ですから、私どもとしては、我々がお客様に驚いていただけると自信を持ってご提案できるようなハード・ソフト一体型の娯楽を提案することに、今後とも全力を注いでいくということで、進んでいきたいと考えております。

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