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株主・投資家向け情報

2012年6月28日(木) 第72期 定時株主総会
質疑応答
Q 6 3DS本体の採算性について。今回LLを投入して3DSに画面サイズという付加価値を追加するが、今後も、防水、音質といった付加価値を追加して3DS本体の採算を改善するような策をとっていくのか。
A 6

岩田:

 本体の採算改善のために、さらなる付加価値のあるモデルを出す予定はあるかどうかというご質問だと思います。まず、付加価値をつける分、製造コストも上昇いたしますので、その付加価値に見合う製造コストの上昇をお客様に受け入れていただけるかどうかという点が一つございます。また、任天堂のビジネスモデル自体、ゲーム機の種類をどんどん増やしていくと、店頭でどれを買ったらいいのかよく分からないということになりかねません。例えば携帯電話等を選ぶときに、選択肢が多過ぎてどれを買っていいかよく分からないということが起こっています。人間というのは不思議なものでして、選択肢がある程度増えることはうれしいんですが、一定以上増えすぎると、今度は「多過ぎて選べない」という状態になってしまうことがございまして、私たちはそのことも踏まえて考えなければいけないと思いますので、現時点で付加価値をつけて次なるモデルをつくるという具体的な計画はございません。長いレンジの将来ということになると、もちろん分からないわけですが、もう一つ、任天堂自身は一つのモデルを他の産業では考えられないほど大量に製造するので、その中身の割に製造コストを抑え込めています。特に、昨今はアメリカやヨーロッパでビジネスをする上で為替というのが大変大きな問題になっておりまして、かつては、われわれが例えば1ドルで売ったものが120円で換算されていた時代は、200ドルで売ったものは2万4000円分になって返ってきたわけですが、今は1ドル80円前後ですから、同じ200ドルで買っていただいても1万6000円にしかならないわけで、それだけ輸出産業としては苦しいわけです。われわれも製造(における部品仕入れや工賃支払い等)をドル建てにするとか、いろいろな工夫をして少しでも円高の影響を小さくするように努力していますが、円建てのコスト、具体的に言うと日本で作られている部品、日本でものを開発するための開発費等は、これは円建てから変わりません。逆に、いくら円高になろうと、アメリカのお客様にとっては、100ドルは100ドル、200ドルは200ドルであって、為替がどうであるかというのはお客様に関係のないことですので、いたずらに値段を上げることもできないというようなこともあって、いかにコスト構造として大量生産による量産効果を効かせるかということも重要ですので、実はあまりたくさんのモデルバリエーション展開というのはできないんですね。そういう中で、3DSに関しては「画面の大きさをもっと何とかならないのか」という声を非常に多くいただいたことと、以前にニンテンドーDSiのときに大画面モデルというものを作ったところ、それが大変お客様に評価いただけたという手ごたえがあり、それによって市場が拡大したということがございましたので、今回バリエーションモデルを展開することにしたものでございます。

Q 7 『ファイアーエムブレム 覚醒 スペシャルパック』の発売について。何回か小分けに分けて発売されており、発売時間の発表すらなかった。これでは本当に欲しい人が買えないのではないのか。受注生産や抽選という方法もとれたと思うが、どうしてこういった方法をとったのか。
A 7

岩田:

 まず、今の株主様もそういう経験をされたのかもしれないんですが、何度も当社のオンラインの販売のサイトを訪問されたにもかかわらず、この『ファイアーエムブレム 覚醒 スペシャルパック』というハードウェアの特別バージョンとソフトウェアを同梱したパッケージをご購入いただけなかった方がおられたということで、そのことにつきましては、会社としまして大変申し訳なく思っております。

 当社は当初、特定のキャラクターのデザインを施したニンテンドー3DS本体とソフトをセットにしたスペシャルパックというものにどの程度の需要があるのかということにおいて、完全な読み違いがございました。これは、「お客様からのご要望はこれぐらいであろう」と予想して製造手配をし、準備をしたので、それで数量限定品として販売させていただいたわけですが、数量を一定以下に限定いたしましたので、例えばお住まいの地域によって購入のしやすさに不公平が生じないようにするにはどうするかということを考えた結果、当社のオンライン販売を採用させていただきました。ところが、このお客様からのアクセスは、初回販売後に当社の販売予想をはるかに上回る、大変多くのお客様からアクセスをいただいたために、残念ながら販売で使用しているサーバーが混雑によりまともに動かない状態になってしまい、多くの方々が購入画面に入れない、またはカートに入れたはずなのに決済ができない、というような、大変申し訳ない事態が発生しました。

 このことが最初に起きたときに、たくさんのお客様からの声をいただいて、私も報告を受けました。具体的には今お話があったように、「今からでも遅くないから予約販売や抽選販売への変更はできないのか」というようなご意見、あるいは、「自分はこんなに『ファイアーエムブレム』のことが好きなのに買えない。ところが、これを何らかの方法で入手してオークションで売っている人がいる。こんな転売をする人を許して、会社は何だ」というお叱りも含めて、大変たくさんのご意見を頂戴しましたので、実は、期日や数量をいったん限定して発売を開始した商品を、後から販売方法を変更できるのかという検討をいたしました。しかし、これは社外の弁護士の先生に相談した結果なのですが、期日や数量を限定していったん発売を開始した商品を後から追加で予約販売や抽選販売に変えてしまいますと、今度は最初に買われた方が、「期日や数量が限定だから私は買ったのに」というご不満を持たれる可能性も含めまして、景品表示法という法律に触れる可能性がございました。「販売方法を変更すると(法律に)触れる可能性が高いです」というコメントをいただきました。われわれとしては、お客様のご期待に応えることももちろんですが、一方で、日本の社会でこのような形でみなさんと向き合っていく企業として、法令を順守する、コンプライアンスというものも同時に非常に重いものでした。ですから、われわれとしても、お客様のご要望に何とか応えたいと考えつつも、結果的に変更ができなかった、コンプライアンスを考えるとそうすることができなかったという事情がございます。これは、すべて販売企画の時点で、お客様にどの程度の数量の購入をしていただけるかということを読み取る力、予測する力の問題だと私は考えておりますので、今後は商品の特性や需要に応じて販売方法を正しく判断できるようにすることで、今回のような不本意な思いをファンのみなさんに二度と感じていただくことのないように努力したいと思いますので、今回に関してはどうかご容赦いただきたいと思います。

Q 8 中国への進出はどのようになっているか。また、中国でビジネスをする上で、どのような問題点があるか。次に提案として、子供も大人もハラハラドキドキできる、あるいは夢いっぱいのソフトをどんどん作ってほしい。宮本専務は世界的な賞を受けたとNHKで紹介されていたが、岩田社長や宮本専務は、ゲームクリエーターと共に、例えばサハラ砂漠をラクダの背中に乗って走破したり、南米のアマゾン川へ繰り出し、ピラニアやアナコンダやワニがいっぱいいる所等で命懸けのさまざまな体験、経験を積んでいただき、そのようなソフトを作ることに活かしてほしい。
A 8

岩田:

 まず中国に関して、任天堂は現地にiQue社というわれわれの商品をお届けするための会社を持っています。iQueブランドの製品としては、2005年の7月にニンテンドーDSを、2006年6月にはニンテンドーDS Lite、2009年12月にはニンテンドーDSiを発売しております。今後につきましても、同様にiQue社が販売するということは予定しています。ただ、では具体的にいつなのかということも含めまして、実は中国では、日本で発言した内容がいったん英語に翻訳されて、英語に翻訳された内容が再び中国語に翻訳されてという形で情報が広まりやすいものですから、過去に私は何度か経験しているんですが、私が意図していないような文脈と、意味づけが変わった状態で中国本土で私の発言が報じられたことがあって、それが現地の方にとって大変不快な内容になっていたりというようなことがありまして、どうも中国という所でビジネスをする上ではさまざまな発表は現地でした方が良いようだということをわれわれは学びました。実際に、中国で他のビジネスをされている会社さんを拝見しても、総論ではお話しされているんですが、個別論では現地の法人から発信されているところが大変多いように思います。ですので、今後このiQue社を通じて、さらにビジネスを展開していく予定ですが、具体的な内容については、この場ではご容赦いただきたいと思います。

 中国でのビジネスの難しさですけれども、一つの難しさとして、まず、ビデオゲームのゲーム機というのは今、世界中どこで発売されてもすぐに流通しますよね。地球のどこかで発売された商品は、たちどころにほかの地域で誰かがいち早く欲しい人のために販売をされるような構造になっています。中国でもゲーム機は売られているんですが、売られているゲーム機は、いわゆる正規の輸入ではなくて、密輸形式で輸入をして、結果、日本でいう消費税に相当する増値税を払わないで売っているという形のようです。われわれは正規の、法律上問題のない形でビジネスをしようとしますから、当然増値税をお支払いしてiQueがビジネスをするわけです。すると、同じ値段で売っているはずなのに、増値税分だけ差額が生じてしまうという問題がありまして、現地の会社が売るものにどうやって付加価値をつけて現地で認めていただいて売るかということが一つの課題です。これについては、何らかの答えをぜひ、今年は一つ見いだして、結果を出したいと思っておりますので、その結果がお話しできるようになるタイミングまでお待ちいただければと思います。

 また、いろいろな夢あふれるご提案をいただきありがとうございます。ちなみに、宮本が賞をもらった話をしていただきましたが、ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので、念のためちょっとだけ補足をさせてください。これはスペインのアストゥリアス皇太子という方が主催する「スペインのノーベル賞」と呼ばれているアストゥリアス皇太子賞という賞の受賞者の一人に宮本が選ばれたということが先日報じられたもので、授賞式そのものは10月末にございますので、10月末に宮本は現地に行って賞をいただくことになると思います。ちなみに、ノーベル賞と同じくいくつか部門がございまして、宮本がいただいた賞は「コミュニケーションおよびヒューマニズム部門」というもので、受賞理由として、アストゥリアス皇太子財団が発表しているコメントは、「教育に有益なビデオゲームづくりに革命を引き起こした中心人物であり、暴力を排し、多面的なものの見方を鍛えるソフトの開発技術で抜きん出ている。あらゆる年齢層の人々が民族や考え方の違いを超えて楽しめるコミュニケーションの形態を生み出した」ということでした。宮本自身は、本人がコメントを発表しているんですが、ゲームは一人で作れるものではなく、このような栄誉ある賞を個人的にお受けするということに対して恐縮をしておりまして、「この話は何か話題が出たら話してもいいけど、絶対能動的に言わないでね」といつも言われています。一方で、任天堂はゲーム人口の拡大を目指しますと先ほど申しあげましたが、この受賞はゲームの社会受容性の向上という、当社の目標達成にとって非常に重要な一歩だと私は思っていまして、まさに任天堂がこういうことをしたいと思ってやってきたことを、その通り認めていただいて、こういう権威ある賞をいただけたということで、同僚の一人として大変誇らしくも思っております。

Q 9 昨年の株価と今の株価を比べると、半分以下になっている。ということは、会社の資産もそれだけ減っており、当然株主分も減っているということになっているので、株価対策をどのように考えているのか、教えてほしい。
A 9

岩田:

 まず、何よりも昨今の株価の水準に対して、株主のみなさまに多大なご心配をお掛けしており、ここにおられる皆様が大変不本意な思いで今日ここにいらしているということについて、大変残念に思っていますし、また、会社がご期待に応えていないということに対して、私は会社を代表して本当に申し訳なく思っています。

 株価というものは、会社の業績を基礎的な条件として、基本的には市場の皆様のご評価で決まるものです。「株価が下がったということは会社の資産も減った」という表現がありましたが、会社の資産が減っているかどうかとは別の問題で、会社がこれからどれぐらい利益を生み出していけるのかということに対して投資をされているみなさんが不安に思っておられるということだと思います。特に、第72期の業績は先ほどご報告いたしました通り、1962年の上場以来、初の最終赤字ですし、第73期に業績回復を見込んでいますけれども、任天堂は営業利益年1000億円以上をコンスタントに出してきた会社ですから、そういう水準と比べますと、まだまだ任天堂らしい利益水準に至らないとか、また投資家の方によっては、今の会社目標(業績予想)でさえ難しいのではないかと考えられているので、株価が昨今のような状態なのだと思います。現状の任天堂に対して株式市場がどのような懸念を持っていると私が見ているかということは、みなさん共通の関心事だと思いますので、少し時間をいただいてくわしくお話ししたいと思います。

現状の任天堂に対する市場の懸念

 まず、ポイントとして、ニンテンドー3DSは国内では一定の勢いがありますけれども、アメリカやヨーロッパでは足下の勢いが弱いということがあります。さらに具体的に申しあげますと、ニンテンドー3DSの国内での販売状況は順調で、むしろ期初の予想を上回るペースで販売できていると申しあげてもよいぐらいです。年明け以降、週間販売数の平均は8万3000台ぐらいで、これは、日本で売れている全部のゲームハードの約55%がニンテンドー3DSだということですから、今や昨年末にニンテンドー3DSの勢いがついてからは、日本のゲーム市場というのはニンテンドー3DSを中心に回っているとも言えます。すなわち、ここは私たちが当初目指していたシナリオ通りであり、順調なわけです。その一方で、本来日本に比べて人口も多く市場も大きいアメリカやヨーロッパの市場では、日本よりもずっと売れていないといけないんですが、昨年末に販売の勢いは、一度日本と同じようになったものの、年明け以降に販売ペースが落ちてしまいまして、今では全ハードの販売の中でニンテンドー3DSの占める割合は約2割ぐらいということで、本格的な勢いは出せておりません。このことを見ておられる投資家の方々は、「これは会社が言うように今期の業績が回復しないのではないか」、あるいは、「収益回復には会社が見通しを立てているよりももっと時間がかかるんじゃないかと」考えておられるかもしれません。先ほどお話をしましたニンテンドー3DS LLもそうですし、『Newスーパーマリオブラザーズ2』などの有力タイトルもそうですが、これらが夏に世界で発売されていきますので、このような懸念を早期に払拭できるような勢いをつけることが当面の最優先の課題の一つでございます。

最も魅力的なゲーム機

 ちなみに、任天堂にとってニンテンドー3DSでのアピールが難しいことの一つに、携帯型ゲーム機が主流になっている日本のゲーム市場と、据置型ゲーム機が主流になっているアメリカの市場の違いということがあります。このグラフを見ていただきたいんですが、上が日本で下がアメリカです。すべてのお客様、これはゲームを遊ばれる方も遊ばれない方もすべてに対して「この1年間ゲームを遊びましたか」「どんなゲーム機を持っていてどんなふうに遊んでいますか」というのを定期的に調べているんですが、その調査の中で、過去1年間ゲームを遊ばれた方に聞いた、「あなたにとって最も魅力的なゲーム機は何ですか」という割合のグラフなんです。左側の水色がWii。その次のグレーがPlayStation 3、これはソニーさんですね。次の緑色がマイクロソフトさんのXbox360。そして、赤色がニンテンドー3DS。ピンク色がニンテンドーDS。そして青がソニーさんのPlayStation Vita。薄いグレーがPlayStation Portable。そして、いわゆる携帯電話で遊ぶゲーム、スマートフォンで遊ぶゲーム、そしてパソコンのソーシャルネットワークで遊ぶゲーム。これは、今ゲーム機は単に任天堂とマイクロソフトさんとソニーさんだけの競争ではないと言われるようになりましたので、あえてこういうことを聞いております。これを見ていただきますと、下のアメリカでは、3つの据置型と呼ばれてきた、いわゆるテレビゲーム機が圧倒的なんですね。だから、アメリカではゲームといえばテレビゲーム機なわけです。ところが、日本ではゲームといえばテレビゲームと答える方は半分程度で、その分、携帯性のあるゲーム機に魅力を感じていただいているわけです。そしてここで、現時点でニンテンドー3DSが最も魅力的なゲーム機だと、この上の日本が今年の1月、下のアメリカが今年の3月のときのデータで、また将来データが更新されたら、チャンスがありましたら決算説明会等の場でみなさんにもお伝えできるようにしていきたいと思いますが、この赤色の部分の違いが今の勢いの差でもあると思います。一方で、これは現状のゲームビジネスをよくご存知の方は、現状の販売状況と全然一致しない、つまりWiiはそんなに売れていないのに、Wiiの数字はどうしてこんなに高いのかと思われるかもしれませんが、これは、Wiiで遊んだ思い出がそれだけ強烈にお客様に刺さっていて、最も魅力的なゲームとして今でも挙げていただけるということなんです。これは逆に言えば、今後Wii Uを発売する上で、われわれにとってとても大きな財産であり、プラスだと思っていますが、実はこういうデータは投資家の皆様はお持ちではないので、Wii Uに対する悲観的な見方に対して、それを覆すためにわれわれはこういうデータも発信していかないといけないのかなとも思っています。ちなみに、DSのときもそうでしたが、アメリカでは日本と比較するとプラットフォームに勢いがつくまでに相当時間がかかりました。(DSにおいては)日本では1年弱で勢いがつきましたが、アメリカでは2年強かかりました。ですから、最終的にはアメリカでもDSはWiiよりも売れたんですけれども、(市場の)流れを変えて、(それを)見ていただくということが、私は何よりの株価対策だと思っています。

現状の任天堂に対する市場の懸念

 また、新聞報道等を読みますと、「ソーシャルゲームの影響で任天堂の業績は下がっているのだ」という話があります。実は国内ではソーシャルゲームの影響を心配される方が非常に多くて、私は国内のマスコミの記者の方の取材を受けると、たいていソーシャルゲームとの競争について質問を受けるわけですけれども、一方で海外に行きますと、誰もそれを聞きません。みなさん聞かれるのは、「スマートフォンがこんなに普及したらゲーム機は買わなくていいし、ゲームは安く買えるので、任天堂はこれからどうするのか」という質問はされますけれども、ソーシャルゲームは実は国内独自の現象でもあるんですね。今年のE3でも、私はソーシャルゲームとの競争について誰からも聞かれませんでした。ですから、それくらい日本と海外の認識は違うんだということも、あわせてお知らせしておきたいと思います。当然、スマートフォンがどんどん普及していくと、「ゲーム機を買わなくても、それなりに魅力的なゲームが非常に安い値段で楽しめる」という時代が来たわけですから、ゲーム専用機が必要とされ続けるために、われわれはスマートフォンではできない独自の楽しさを持ったゲームソフトを次々と供給できるようにしたいと思います。

現状の任天堂に対する市場の懸念

もう一つ、Wii Uですね。「Wii Uは、Wiiのように革新的な製品ではない」という論調があります。先日E3に行ったときに海外のマスコミの記者の方から取材を受けたときにも、「Wiiのときは一目見て成功を確信したけれども、Wii Uはそうじゃないね」というご指摘がありました。ところが、みなさん忘れておられるんですね。発売前において発表直後のWiiは、実は今のWii Uと同じような反響だったんです。具体的に言いますと、新しいものが出てくると、最初は理解してもらえないところから始まるんです。たくさんの誤解や、「こんなものが本当に普及するのか」というネガティブな部分が先に出て、後から実感とともに変わっていくんですね。事実、私は2006年にWiiをE3で発表し、そしてそのときに大変好評だったと報道はしてもらえましたが、一方で、そのときにマスコミの記者のみなさんから受けた質問は、全部非常に厳しい質問ばかりで、「こんな機械で本当にソニーさんやマイクロソフトさんと戦っていけるのか」と、ほぼ全員に質問されました。でも、みんな忘れてしまわれるわけですよ。そして、いわゆる後知恵バイアスみたいなものですが、結果を見た後で、「私は最初から成功を確信していた」と言ってしまうんですね。今任天堂は、すごく大きなビジネスになったWiiの残像と戦わなければなりません。もちろんWii U発売までにこれと競争して、乗り越えていくのがわれわれの使命なんですけれども、そういう側面もあるということは、どうかご理解ください。

 それから、大変残念な報道の中に、「発売日や価格の発表を見送った」という報道もありました。もともと、「E3では発売日も価格も言いませんよ」と言っていましたし、かつてWiiを発売したときも、ニンテンドーDSを発売したときも、ニンテンドー3DSを発売したときも、E3で発売日や価格を言ったことは一度もないんです。そうであるのに、何か自信がないから発売日や価格の発表を見送った、みたいなトーンで記事が出てしまいまして、それがお客様に何となく心理的な影響を与えて、結果的に株価の形成に影響してしまうということがございます。

 それから最後に、今後のソフトの展開が不透明であるというポイントもございます。これは、E3の発表では、海外市場向けのソフトが目立って、また発売時と発売近辺のソフトラインアップしかお知らせしていないので、「じゃあ来年何が遊べるのか」ということをまだ全然お知らせできていないんですが、これは、われわれは秋にしっかりとコミュニケーションをして、発売日と価格を発表し、お客様にそのときに「買いだ」と言っていただくことで勢いをつけていこうと考えていますが、このことについても(現時点では)懸念がございます。ですから、今日ご説明したようないろんな懸念の結果、今の株価が形成されているんですが、まず足下では、今年の7月、8月と、「ニンテンドー3DS LLが発売されて、新しいソフトが出て、世界での3DSビジネスの勢いをどう変えられるのか」、ここが一番のポイントでして、次に任天堂がWii Uを発売するときには「未来はこうなりますよ」ということを、また次のステップの将来像を発表して、そういう形で市場のご評価を変えていきたいと思っています。

 また、直接ご質問いただいたわけではないのですが、この機会にお話ししておきたいことがあります。本日、この株主総会の終了後に、ニンテンドー3DS LLをご覧いただけるような場を準備いたしました。この総会の終了後に案内をさせていただきますので、終了前に退場されてもご覧いただくことはできませんので、その旨ご了解いただきたいということが一つでございます。それから、もう一つは、「Wii Uは見せてもらえないのか」という株主のみなさまのご期待があるかと思うんですが、実はわれわれの中でも相当検討したのですが、参加される株主様の人数と、それから一人当たりの体験にかかる時間、それから、テレビゲーム機というのは大きなテレビと、それなりに大きな試遊スペースを必要としますので、携帯型ゲーム機のようにコンパクトなスペースでたくさんの方に短い時間で見ていただくということがどうしても運用上できないということで、今回、いろいろ考えた末、できないという結論になりました。1階のロビーに動作モデルではございませんが、モックアップモデルを置き、また、E3のときに発表した映像等もご覧いただけるように用意しました。E3の発表というのは海外で行われたことで、まだ日本のメディアの方にもこういう発表会はパブリックには行えていません。クローズドな形で一部お見せした以外は初めてのことですので、ご期待に添えない面もあるかと思いますが、最後に見ていただければと思います。ご案内につきましては、総会の終了後に係の者から退場の段取りも含めてご説明しますので、どうかよろしくお願いいたします。

Q 10 取締役の所有する任天堂株は、代表取締役が5人いるにもかかわらず、100株、200株とか1000株にすぎない。経営者は任天堂の株式に興味がないのか。
A 10

岩田:

 過去の株主総会でも持株数について質問を受けたことがありますし、また、責任に対して持ち株数が少な過ぎるのではないかというご意見をいただいたこともあります。しかし、私どもは、現在の経営体制が、株式を持っているかどうかで適性が決まるのではなくて、取締役にふさわしい能力発揮ができるのかということに懸かっていると考えています。その意味で、現状この9名がこれから1年間任天堂を率いていくために最も良い体制だと確信してご提案しているものですし、また、持ち株の多い少ないによって経営に対する真剣さが違うということはございませんので、その点につきましては、どうかご理解いただければと思います。


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