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2012年6月28日(木) 第72期 定時株主総会
質疑応答

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Q 1 任天堂以外の会社ではWiiやWii Uなどの機能を十分に活かせていないような気がする。業界全体の作り手の育成を任天堂はどう考えているのか。ハードウェアだけの性能でなく、面白いタイトルをつくる新進気鋭のクリエーターの育成はどのようになっているのか。
A 1

取締役社長 岩田 聡(議長):

 念のため確認をさせていただきたいのですが、当社の若い世代のクリエーターの育成をどう考えているかというご質問ではなくて、業界全体の作り手の育成を任天堂はどう考えるのかというご質問と考えてよろしいですね? (質問された株主の方が同意されるのを確認して)株主様が今おっしゃったように、Wiiに関しては、「任天堂の内部で作られたソフトと、社外の方が作られたソフトで(ハードの)使いこなしの度合いが違うのではないか」というご指摘を受けたことは確かにございます。もちろん、これは一概に申しあげるのは大変失礼な話で、社外の方でも大変上手に使いこなしていただけるケースもあるのですが、それぞれのものの作り手、クリエーターさんによって、やはり得意な分野の持ち味というのがございます。新しい構造で遊びを作ることを得意とされる作り手の方もおられれば、みなさんがほれぼれするような美しい映像を作ったり、あるいは重厚なストーリーラインを作ることで魅力を感じていただくことに強みを持つ作り手の方もおられますので、Wiiの特性から来る「どういうことがWiiにとって得意で、どういうことがそうでもないのか」ということと、相性のようなものもあったかもしれません。

 一方でわれわれ自身も、任天堂単独ですべてのお客様のニーズに応えられるソフトが作れるとはまったく思っておりません。やはりたくさんの作り手のみなさんが、そのハードの魅力を活かしてソフトを作っていただける環境を整備しないといけませんから、いくつかの点でわれわれ自身、改善を図ろうとしてきたことがございます。一つは、新しいハードウェア、新しいプラットフォームができるときに、情報をいち早くご提供できる信頼関係を築いて、社内のチームと同時期に開発がスタートできるようにしました。そういう協力関係ができる社外の作り手の方というのは以前より増えましたので、その意味では、かつての任天堂プラットフォームであれば、「(ハード)発売時の任天堂のタイトルと他社さんのタイトルとでは磨き込みにすごく差があった」と言われやすかったと思うんですけれども、それがニンテンドー3DSでは少し改善し、Wii Uではさらに改善するように取り組んでおります。

 それから、業界全体のクリエーターの育成という意味では、任天堂は「ゲームセミナー」という取り組みを行っていまして、東日本大震災があり、今はいったん中断していて、来年度から再開することにしているのですが、学生さんに大体9か月間くらい、任天堂の神田にあるオフィスに通っていただいて、任天堂の若手社員と一緒にものづくりの体験をし、過去にはDSソフトでやっていましたので、こんなものができましたというのを世の中のみなさんにダウンロード配信によって楽しんでいただくということをしております。このセミナーの出身者が、任天堂に入社し、その後社内でものづくりをして活躍する人もすでに出ておりますし、また、その出身者全員が任天堂に来ているわけではございませんから、他のゲームソフトメーカーさんに入られている方もいると聞いておりますので、そういう意味での人材育成もできていると思います。

 また、それ以外にも、現在、他社さんとの組み方の構造を変えつつありまして、例えば、つい最近発表した例では、『大乱闘スマッシュブラザーズ』というシリーズのソフトの最新作は、バンダイナムコゲームスさん、そしてバンダイナムコスタジオさんと一緒に作ることにいたしました。これは、彼らの持ち味を活かしつつ、われわれのゲームのテーマであり、そしてわれわれのソフトウェアの仕上げの総合力をともに集結させて一緒に魅力的なソフトを作っていくことができるのと同時に、そのことによって、大規模なソフトウェアを作っても、社内の人がそれに全員シフトしてしまってほかのソフトが作れないということがなくなりますので、いろんな意味で、一緒に組むことにはメリットがあると思っています。そういう形も含めて、こういう経験を通じてお互いの総合力が上がっていくという形にしたいと思っています。

 ただ、今クリエーター育成という表現をされたんですが、私どもは社外の開発者のみなさんと一緒に仕事をするときに「われわれが育成してやるんだ」という発想は持っておりませんので、育成をするというよりは、「どうやったらともに成長できるかということ」あるいは、「お互いの持ち味の得意な分野をどうやって相互に活かし合って、お互いの長所を出し合い、短所を埋め合うか」という組み合わせを考えることが大切だと思っております。

Q 2 これからWii U等の発売にあたり、オンラインサービス等のコストが増大していくと思うが、それをどうやって補っていくのか。例えば、有料会員から月額料金を徴収する、パッケージソフトに(コストを)上乗せするといった方策はあるのか。
A 2

岩田:

 Wii Uでは、さまざまなネットワークサービスを拡充させる予定です。任天堂では今、「ニンテンドーネットワーク」という呼び方をすることにしているんですが、ニンテンドーネットワークという共通の大きなネットワークのプラットフォームをつくり、そこへWii Uをつなぎ込む。これが最初です。次に、ニンテンドー3DSも、今では部分的につながっているんですが、より深くつないでいく。そしてもし、将来任天堂がWii Uやニンテンドー3DS以外の新しいハードウェアプラットフォームを作るとしたら、それもニンテンドーネットワークにつないでいこうとしております。

 一方で、任天堂のお客様は、ゲーム関与の度合いに大きな差があり、非常に熱心に遊ばれる方から、非常にカジュアルに、普段はあまりゲームのことには興味はないけれども、世の中で盛り上がったり、はやることがあれば、一緒にお付き合いいただける方や、あるいは、年末年始であるとか、夏休みであるとか、そういう季節のときに一緒にお付き合いいただけるというお客様までおられますので、私は、必ずしも有料会員型のサービスが望ましいとは思っておりません。もちろん、「どんなに濃密なサービスをしても必ず無料で提供します」などとお約束できるはずはないのですが、少なくともお客様が普通にネットワークのサービスと向き合っていただく上で有料にしようという考えはございません。

 一方で、このように収益も厳しい中で、「そんな悠長なことを言っていていいのか」というご指摘も、今日お集まりのみなさんには当然あると思うのですが、私どもは、このネットワークサービスが最終的に、たとえネットワークサービスそのものが無料で提供されたとしても、トータルでは任天堂の収益に寄与するという形を目指すのが筋だと思っております。具体的に言いますと、ネットワークサービスを通じて他の人といろいろなやりとりができたり、ほかの人はこんなことを面白がっているというのが可視化されたり、世の中で自分は知らなかったけれども、こんなものがあるのかと分かったり、いろいろなことがあると思うんです。そういうことで、みなさんも例えば音楽や映画で、自分はこの音楽や映画を知らなかったけれども、友達に紹介されてそれを初めて見て聴いて、今までこのアーティスト、この映画監督の音楽や映画に触れてこなかったことを後悔したというご経験をお持ちではないでしょうか。それは、知らなかったから、なかったのと一緒だったんですね。ゲームにも実は同じようなことがございまして、われわれは特に今回、Wii Uで展開する『Miiverse(ミーバース)』と呼んでいるネットワークサービス、社内では、「お客様のゲームに関する共感をいかに増幅してお伝えするか」ということをテーマにしているんですが、例えばあるソフトを楽しまれている方が、「こういうソフトも楽しいよ」というのを見たときに、今までまったく購買の対象として考慮に入っていなかったソフトウェアを「あ、これも面白いのかも」と、目を向けていただけるチャンスが生まれると思っています。すなわち言い換えると、こういうネットワークサービスを展開していくことで、直接収益は得られないとしても、ゲーム機の稼働率が高い状態が維持され、新しいソフトが出たときにより売れやすくなる。あるいは、年に2本ソフトを遊ばれていた方が、3、4本遊んでみようと思う。すなわち、ハード1台当たりのソフトの売れ方が変わってくるという形で、収益に立派に貢献できるはずだと考えていまして、それを実現するためのサービスとして何が必要かという観点から、経済的な面では運営をしていこうと思っております。

 したがって、先ほどのご質問に関しましては、直接的に会費をいただくというようなことは考えておりませんが、そのサービスを通じてソフトウェアがより売れるようにしていきますので、結果的にそこに投資をしても十分に見合う成果が上がると私たちは信じて準備を進めております。

Q 3 今日ここに来るのにずいぶん迷ってしまい、いつも思うことだが、お土産の充実よりも、京都駅から送迎バスとか、みなさんの来ていられる地域を考えて、そういうことを株主のために考えていただいた方がいいと思う。地下鉄でもバスでも非常に不便な場所なので、お土産の充実よりもそういうことを考えてほしい。
A 3

岩田:

 まず、お土産を充実させることよりも送迎バスその他を用意すべきで、交通が必ずしも至便でない場所に建物が建っているということを自覚すべきだ、というご意見だと受け止めましたので、今後の総会の運営の参考にさせていただきます。ありがとうございます。

Q 4 Wii U等の今後の任天堂のソーシャルコミュニティーについて。ネットワークでつなぐと、ファミリー向けのゲームが多い任天堂においては、モラルの問題や、ネガティブな意見を小さい子供が見てしまうとか、あるいは意識的に、面白いゲームなのに面白くないように見えてしまうという問題があると思うが、どのような対応をとるのか。
A 4

岩田:

 今まずご質問いただきました「Wii Uのソーシャルコミュニティー」ということの意味ですが、Wii Uには先ほどもご説明したネットワークの機能を通じてお客様同士が自分がゲームと触れて感じた感想や意見や、そして自分の達成感のようなものを交流し合える仕組みをつくろうとしていまして、われわれはそれを『Miiverse』という名前で呼び、E3の直前にそれを発表しました。

 一方で、そのネットワークの世界には、割合としてはごく一部なんですが、大変行儀の悪い方もおられます。特に匿名性のある世界では、「どうせ行儀の悪いことをしても自分の素性はバレない」とお考えの方が、社会常識上許されないような発言や態度をとられることがあって、その結果、人が傷ついたり、不愉快な思いをしたりということもあり得る、ということが一つのポイントになると思っております。当然、先ほど「ネットワークの運用にはコストがかかるのではないか」というご質問があったときに、その決意も含めて私は申しあげたつもりなんですが、不明確だったと思いますのでもう少し申しあげますと、この件については、実際に運用する上で、運用にいかにエネルギーを注ぐかが大変重要だと思っています。具体的に言いますと、単純に場を作って「みなさん好きにコメントを書いてください」と言うだけで運用できるとは思いません。必ず、実際に行儀の悪い行動をとられる方というのは一定割合で出ますので、その方たちの発言を削除したり、あるいは、お子さんたちがそういうものに触れないように、何らかの形で守る仕組みを作ったりと、いくつかの方法を考えております。あまりにも早く、具体的に「こうします」ということを申しあげますと、「それをどうやってかいくぐって任天堂を困らせてやろうか」という方も出かねないのが現実でございますので、ここで今具体的に詳細は申しあげませんが、相当のパワーと、場合によってはコストもかけて、そこについてはしっかりやっていきたいと思います。

 一方で、昨今よくインターネット上でネガティブな意見を書き込んで、事実と違うのに商品をおとしめるような行為、「ネガティブキャンペーン」とか「ネガキャン」と言われているんですけど、そういうことも行われるんですね。いわば悪質なデマであり、営業妨害だったりします。これは大変困ったことでもあるんですが、一方で、お客様が商品を遊んで満足できなかったということと、ネガキャンで書かれた意図的なものとの区別というのは大変難しいものがございまして、もし「任天堂はネガティブな意見があったら何でも即座に削除する」という場を作りますと、今度は「言論弾圧か」ということにもなりかねませんし、そこにあるポジティブなコメントも今度は誰も信じられなくなるわけですね。幸いなことに、実際に本当にネガティブなことをされる方というのは全体の一部ですので、一定以上の母数がちゃんとアクティブになるようにすると、圧倒的多数の感想の前には、少数のそういう人たちの意見というのはだんだん見えなくなります。あるいは、たくさんの人が「この意見は不適切だと思う」とそこにしるしを付けますと、その意見は信頼ならないものとなって、お客様への影響が下がってまいります。ですから、その意味で、インターネットであらゆる点で性善説で人を見ることはしていませんが、一方で、「集合知の可能性」、人の知恵がたくさん集まったときに非常に面白い、そして魅力的な世界が作れるという可能性は信じたいと思っておりますので、何とかそういう形でサービスを実現したいと思っております。

Q 5 役員について。歴代の役員を覚えているわけではないので、たまたま今だけかもしれないが、女性が一人もいない。人材の教育や育成に何か問題等はないか。
A 5

岩田:

 役員に女性がいないことで、「任天堂全体の女性の活躍が妨げられている土壌はないのか」という質問と理解いたしましたが、それでよろしいですね?

 まず、任天堂にはもちろん女性社員がたくさんおりますし、中には管理職やマネージャーとして活躍している社員もたくさんおります。一方で、われわれが役員を選ぶときには、それぞれ現状の任天堂を経営していく上で、この一年、最善の体制はどういう体制かということで選んでおります。その結果、たまたまここには現在女性が入らなかったということでございまして、今後とも女性を選ぶつもりがないとか、女性は役員になれないというムードがあるとか、そういうことはございません。

 また、任天堂のプラットフォームはゲーム業界の中では非常に珍しく、男性のお客様の数と女性のお客様の数がほぼ同じぐらいなんですね。他社さんのプラットフォームですと、大体7割と3割とか、75%と25%というような形になります。もともとゲームというのは男性寄りの娯楽で、特に若い男性とお子さんの娯楽だと言われていた時代が長かったのですが、DSやWiiのゲーム人口拡大期に女性のお客様が非常に増えました。そして、開発をする上でも、ものを作る上でも、ものを売る上でも、そして会社の運営のベースを支える上でも、いろいろなところで女性の意見を上手に反映していませんと女性に受け入れていただける商品は実現できないと思っております。したがって、現状の役員の中に、役員候補の中に女性はおりませんが、それが「女性が活躍できないという土壌を反映しているものではない」ということはご理解いただきたいと思います。


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