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任天堂株式会社 経営方針説明会 質疑応答

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Q7
このところ過去2〜3年ほどR&Dの金額が上がってきている。この金額の水準を今後どういった形で見るべきであるのか教えてほしい。

岩田: 今は技術の進歩と変化が非常に速くなりましたし、社内のリソースだけでやっているだけでは、十分に魅力的な商品が作れなくなりましたので、いろんな所に、これは、今年の商品に向かって、一年後の商品に向かって、3年後の商品に向かって、ひょっとしたらもっと先の商品に向かって、さまざまな形で研究開発投資を続ける必要がございます。ですからそのこともあって最近増えてきましたし、またソフトの開発等もですね、ゲームキューブのときに、出だしはまあまあ良かった、作った分は全部売れた、という状況がまずあったわけですが、その後、ソフトがしばらく出せない時期があったりして、せっかくの勢いを活かせないまま、失速してしまったという反省がありますから。その意味で、社内のソフト開発の強化はもちろんですけれども、パートナーを含めた、積極的なソフトラインナップの拡充ということを掲げておりまして。例えばニンテンドーDSで言えば、宮本たちのチームがマリオカートやどうぶつの森を、本人たちはゆっくりという自覚があるかわかりませんが、敢えてゆっくりという言い方をさせてもらいますが(笑)、ゆっくり作ってもらうために、その間にソフトを継続的に出し続ける必要があって、そのためにいろんな積極的な投資をいたしました。そういうようなことはWiiでも同じように考えてまして、いかに間隔をあけずに勢いを維持したままソフトを出していくかということは非常に重要だと思っていますので、金額が大きく減るというよりも、若干増えていくのが流れではないかと私自身は思っています。ただ、今の2倍も3倍もの水準が必要かというと、別に任天堂は今すぐに半導体工場を立てようとは思っていませんので、そういうふうにはならないんじゃないかなと思います。

竹田: どのくらいの開発費用が任天堂にとって適切か、ということについてはいろいろとソフト、ハードともに議論はしておりまして、ただ我々の目標とするものは、家族の中のあらゆる年齢層、あらゆる方々に対してダイナミックレンジの広い、ゲーム機、従来でしたらゲーム専用と言われるものから方向が少し変わっておりますから、そのこと自体は、かなりダイナミックレンジの広い、新しさを取り入れるという意味ではやはり開発費がかかるのかなというふうに思います。
もう1つ言えることは、テクノロジーのロードマップに載っているものとは違う、任天堂なりのディファレンスを出すために、ある程度新しさをそこのところに求めていこうとすると、いわゆる打率というか、効率を考えながら使っていきたいなという風に考えております。ですから我々の向く方向に応じた開発費の延びではないかなという風にハードウェアでは思っております。
ただ、効率だけは何とか上げていきたいなと思っています。

宮本: はい、比較的ゆっくり開発をしております(笑)。ありがとうございます。えっとあのやっぱりDSを始める時にですね、それまで2つのハードをベースにしていたものを3つのハードになるというこれはあくまでも新ハードだという風に考えていましたので、それで総開発力が足りないということはずっと常に感じてきたのですが、さらに足りなくなるという危機感は持ちました。
その中で任天堂の社内の開発スタッフっていうのは、まだまだ必要なんですけど、大きくは膨らましていません。ところが社外の任天堂の為に仕事をしている人たちっていうのを含めるともう1,500人を遥かにこえているという大規模な開発組織になっています。
で、正直なところ、他のジャンルっていうか、他のソフトを作っている人たちの中で随分と売り上げが確保できなくなってですね、任天堂がそういう人たちの中で良い人たちがあれば積極的に我々のものに関わってもらおうということで投資をしている部分もございます。
これは幾らぐらい僕は使うか分からないんですよ。あの、ちょっと不謹慎な発言かも分からないですけど、幾ら稼ぐかということが、僕ら、特にソフト屋のテーマと思っていまして、大きな利益を生むことにどんどん投資をしていく、特に面白いそういう可能性を持っている人があればどんどん投資をしていくということが僕の基本的な考えで、そこの投資に糸目をつけないという、すばらしいタニマチとして僕は任天堂で働くことにしたという風に考えていますので、結果を出すためにまだまだコストはかかっていくと思います。
ただ、御存じのように僕は非常に原価意識が高い人間なので、ムービースタジオを造るとかですね、無駄な大きな投資はずっとやれなく今までくり返してきましたし、これからも(投資家の方々に)できるだけ喜んでいただける効率のいいバブルなビジネスをですね、展開していけるように投資していきたいと思っておりますし、あまり心配されるような無茶は僕はすることはないと思いますので、ご安心ください。

Q8
少し漠然とした質問だが、世の中全体に照らし合わせたときに任天堂は本当に攻めてると言っていいのかどうか、社長の考えを聞きたい。

岩田: いま宮本が話したこととちょっと絡むんですけど、私どものような、お客さまに何か聞いたらとか何を作ったら良いか教えてくれるということが全く通用しない世界っていうのは色んな意味で特殊だと思うんですね。
普通の実用品の世界では、「お客さまが真実を知っている」、「お客さまに聞きなさい」、というのがまあ王道だと思うんです。だからお客さまに不満を徹底的に聞いて、それを解決すればヒットする商品が作れる。
ただ、ゲームはいわばお客さまに驚いていただくのが商売ですから、そのお客さまに驚いていただくのに「あなたは何をしたら驚きますか?」っていう質問は全く愚問なわけで、これはずっと私どもが抱えてきた、お客さまの想像のしないようなモノを出すから、お客さまは喜んでくれる、お客さまは驚いてくれるっていう基本の中で、しかもその作る前にはそれが当たるか当たらないか誰も保証できないと。ですから、このソフトプロダクト、娯楽のソフトプロダクトの企画者というのは、私は目利きの力というのがすごい重要だと思っているんですね。
で、幸いにして任天堂はそのことの大事さをずっと会社の経営が理解してやってきていまして、これは山内の時代から私に代わっても変わっていないと私は思っています。
そうゆう状況の中で、任天堂が新機軸を幾つか当てることができたのも、もちろん任天堂がトライしてきた新機軸が全部当たったわけじゃなくて、当たったものと外れたものがあるわけですが、世の中の水準よりは打率は高いんじゃないのかなと、その世の中の水準よりも打率が高いのは、目利きの力があるからじゃないかと。宮本がさっき効率良くやりたいというのも同じで、やはり「あそこに突っ込んでもたぶん実りは少ないだろう」と「ここにはあまり突っ込まない」だから任天堂は端から見ると「無謀なことをしない、堅実な会社」に見えますので、冒険をしていないように見えるんですが、一方で、みなさんの見えないところで、まだ全然需要が保証されてないところで色んな投資をするわけですね。
これが良い例かどうか分かりませんが、例えばDSという商品ができた時に、やはり2画面「え?2画面で何するの?」っていうのが世の中のたくさんの人の認識であり、「タッチパネルを使ったらゲームが変わるって、タッチパネル付きの液晶なんて何年も前からあるじゃない。そこで全く新しい娯楽が作れるとは思えない。」っていうのがむしろ世の中のその当時の反応だったんじゃないのかなと思うのですが、私たちはそのことにある勝算をもって賭けたわけですし、また、脳トレの企画が全くない時点から、ここで手書き文字認識があったらきっと役に立つ日が来るだろうな、音声認識があったらきっと役に立つ日が来るだろうな、だからそのために準備はしておこうということを早めにしておいたんですね。
で、脳トレの企画が別のラインで進行して「さあ実際に作ってみようか?」って時にその手書き文字認識や音声認識の要素技術がDSで使える状態にあったから、我々は3、4ヶ月の内に非常に短い期間で、少ない人数でそのソフトをまとめあげることができてタイムリーにマーケットに出すことができたわけです。

それは、私たちはその時その時で、「全くまだ何に使うか分からない、でも、やっておくべきだ」という目利きの力で判断してやって来たことが今に繋がっていると思っています。
ですから、任天堂が攻めてないんじゃないかということに関しては、必ずしも私はそうは思っていません。
あとインターネットに関しては、最近インターネットを見ていますと、例えば「Web2.0」なんていう言葉が非常によく使われるようになっていて、インターネットの世界も新しいフェイズに入ったと、去年ぐらいからハッキリ言われるようになりました。
そういう環境の中で、「5年前10年前からあった『インターネットに繋いで人と競争するんだ』という遊びの提案だけで良いんだろうか?」という認識があるものですから、私たちは例えばWiiConnect 24を作り、人と人とが情報をシェアしていくような遊び方があるんじゃないかと。そこに、どんな革命的な遊びができあがるかはまだ分かりませんけれども、そういうことに我々は今後もチャレンジしていくつもりですし、ある意味、かつて任天堂がやらなさそうなことを随分最近はやっていると思うのですけど、それは今後も続くんじゃないかなと思います。「そこにお客さまのニーズがあるんじゃないか」と、「ここにお客さまに驚いていただくだけのチャンスがあるんじゃないか」と思った時には、任天堂は積極果敢に攻めたいと思います。

Q9
Wiiの名前のことで色々リアクションがあると言われたが、いま考えて他の名前にした方が良いという風に思うか?

岩田: 私自信はこのWiiという名前をつけた張本人の一人ですけれども、もちろん一人で決めたわけではありませんが、Wiiという名前にして、失敗したと思ったことは一度もありません。恐らくたくさんの方に現時点までに、受け入れて頂けたのではないかなと思いますし、また、現時点でまだ抵抗をお持ちの方がいらっしゃるとすればその方たちに受け入れていただけるように努力したいと思います。

Q10
夏のDSの出荷台数をヨーロッパとアメリカも教えて欲しい。

岩田: DSのアメリカやヨーロッパでの出荷台数について、今日現在申しあげる数字はございませんが、夏には200万台を超えるDS Liteが作れるようになりますので、それを年末商戦に向けた在庫の準備をしないといけませんので、それを順次、日欧米に振り分けていきたいと思っております。
特にまず日本でですね、普通にお店に行ったらあるという状況を早く作らねばならないと私どもは思っています。
あの先ほど申しあげた200万台というのはグローバルな生産台数です。ちなみに過去に任天堂がゲームボーイアドバンスの時にゲーム機の月産台数記録が確か230万台位だったんではないかと思いますから、任天堂が非常にたくさん売ったゲーム機の最高の水準とほぼ同レベルとお考えいただければ結構です。

Q11
DSの需要に対する生産台数が不足している理由は何か。製造した上でのキャパシティであるのか、あるいは部品が何か足りないのか。それを踏まえてWiiの製造では何か工夫をするのか。

岩田: まず一番最初にニンテンドーDS Liteの生産台数が当初極端な品不足から始まってしまった要因は、私どもが新しく2色成型の新しい筺体を作り、採用した時にその面で私どもが期待した歩留まりにすぐならなかったということが大きかったです。当然、品質についてですね、私どもが低いレベルで妥協をして、「まあこれでも大体できているから良いじゃないか」というような形で出せばたくさん出すことはできましたが、それは私どもの製品コンセプトを自ら否定することになりますので、私どもが満足できる仕上がりのものだけを出そうとした結果が、最初は製造が十分できなかった一つの背景にあります。
220万台というような数字になって参りますと、これはもう単一の要因が物事を決めません。すなわち、ここから台数を増やそうとすれば、あらゆる部材の調達についてですね、大きく変えていかないといけませんので、まあ若干の上積みはこれからできるかもしれませんが、例えばこれを倍にできるかっていうと、もうあらゆる基幹部品が全て供給的に無理が出てくるというように思います。
それからWiiについてですが、いつもそうなんですが、「新しいゲーム機が出ますと、最初は初期需要というのがある」ということは先程申しあげた通りで、それが日欧米それぞれにあるわけですし、また私どもはその600万台というように申しあげている年度内の予定の中で、400万台以上は年内に出荷できるようにしたいなというように思っているんですけれども、またそのための準備は色々進めているんですけれども、そういう準備をしたとして、それでも日米欧でどこででも品薄が起こらないようではこれはむしろ新しいゲーム機の立ち上げとしては失敗だという風に思っています。
ですから、そういう状況が長く続かないように、継続的な商品供給のフローを維持できるようにということに重点を置いています。

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