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任天堂株式会社 経営方針説明会 質疑応答

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Q12
DS Liteのライフサイクルをどれぐらいと考えているのか、また今後の携帯ゲーム機のサイクルは何年くらいか。今後、DS Liteにどういった新しい機能/性能をもり込むとの考えをもっているのか。来年にもマイクロソフトがこの携帯ゲーム機市場にも参入するという報道あったと思うが、どのように市場が変わっていくと考えているのか。

岩田: 「あるハードが出るということは、開発チームが手が空いたんですよね」、「何もしないで怠けているはずはないので、当然次を考えているんですよね」というのはご質問の通りで、任天堂のハードのチームというのは継続的に次に何を作ろうかということを考えています。しかし、次に何を作ろうかということの中で出てきたアイデアを全部商品にしていると、とてつもなくたくさんのゲーム機が乱発されることになるので、当然そんなことはないんですね。ですから、そのたくさんあるアイデア、そして、試作も実際に色んなものが進みます。そういったものの中から、「あぁ、これがいまマーケットに必要とされているね」であったり、「これがソフトを作る人たちにとって魅力があるね」ということであったりだとか、そういうことがあって、始めて市場に出るわけです。例えば、任天堂にはゲームボーイがあり、ゲームボーイカラーがあり、ゲームボーイアドバンスがあったわけですけれど、その間に作ったけれど出さなかったものもたくさんあるわけです。いま、私どもも当然、DSが終わったんだから、DS Lite終わったんだから、開発チームは多分複数のチームに分かれていて平行していくつかのことを進めていますけれど、当然、次に何か考えています。考えていなければ任天堂は怠けていることになるので考えていますけれど、その中で何が本当にマーケットに出るかということはまだわかりません。実は、私は携帯ゲーム機をサイクルで考えることが本当に正しいかどうか疑問です。むしろ、マーケットがそれを求めているのか、あるいは、色んな基幹部品や要素技術のコストトレンドであったり、あるいはそれは新しい技術やインフラが登場することが、結果、ここのタイミングだったら、この商品は成立するんじゃないかという結果になるわけで、最初に、何々を出した、寿命は何年だから、次にこれがいるという発想ではないんですね。特に、今のDSのように独自の市場を作る方向に動くとそれは一層顕著になります。よそが新しいのを出すから、うちも新しいのを出さなきゃっていう必要がないわけです。その意味で、ゲーム機のサイクルはどう考えているのかっていうと、うちはサイクルでは考えていないんです。逆に色んなアイデアで開発を進めた中で時代が「これは追い風になる」と、あるいは、「ちょうどいい要素技術がある、ソフト屋さんがそれを求めている、今までのものでは行き詰ってきた」と、そういうときに機が熟すのですね。そういう風に基本的には考えています。
Liteがさらに進化するのかということに関して、これはお答えのしようがなくてですね、市場に出るのかどうかわからない様々なアイデアで、実際にLiteを作った人たちは、「もっとこうならないのか」、「もっとあぁならないのか」、「こんな機能は入れられないか」と色んなトライをしていますけれど、その中のどれがマーケットに出るか決まっていませんので、今、お答えのしようがありません。
マイクロソフトさんの携帯ゲーム機に関しては、ずいぶんこのところ話題になっていて、今日私の資料でお分かりいただけるように、据置から携帯への流れみたいなものは明らかに存在しているんですね。これはゲーム市場全体です。これは現代人がどんどん忙しくなっていく、そしてどんどんテレビの前でしか遊べない遊びについて限界が見えてくる、広がりに限界が見えてくる。あるいはテレビゲームは基本的に一家に一台ですけれど、携帯ゲーム機は理想的に普及すると、一家に複数台売れるチャンスがあるんですね。現実にゲームボーイはそういう風に売れた時期がありますし、いま、DSはそういう広がりを見せつつあります。ですから、あれほど「携帯ゲーム機はやりません」とおっしゃていたマイクロソフトさんがいつ、「やっぱりやります」とおっしゃっても私は全く驚きません。そのときに何が変わるのかですけれど、マイクロソフトさんが何かをすると任天堂がやることが何か変わるのかというと、基本的に私は変わらないと思います。私達は、今のところ、一番早く、「どうやったらゲームをやってくれる人が増えるんだろうか」と考え実践してきたと自負していますので、そこの路線でまだまだやれることがいっぱいありますから、そこをさらに拡充して、日本のほとんどの人がゲームっていうのは知っているし、やったことがあるよと言ってもらえるようになるまで、世界の人がそうなっていくまで、僕らは基本的には、今の路線を続けていけばいいと思いますので、それでルールが変わるという風にはあまり考えていません。

Q13
Wiiの次の据え置き型ゲーム機についてはどのように考えているのか。

竹田: Wiiの次なんですけれど、E3の結果が予想以上に良かったものですから、我々のメンバーに対して「まだ終わっていないぞ」と言っているわけでして、まだまだやらなくちゃいけないことはたくさんあるよという意味でかなり緊張感を持ちながら続けようとしているのが、今の現状です。とは言いながら、当然ながら、何か新しい楽しいことはないかなということは止まることなく考えているというのが現状です。ですから、今、うちの中でまだ(次のハードは)禁句で、「まだ済んじゃないぞ」と。メンバーの中で、まだ終わったんじゃない、いま始まったんじゃないのと、今話し合っているところです。
すると、もう1つ次のものをどういう風にして考えていくか、新しいものをどういう風にして考えていくかっていうことなんですけれど、今回ほど、一番つらかったことはないと考えています。ファミコン、スーパーファミコン、64、ゲームキューブと続いてきてですね、その中ではたと感じることがありまして、これって全部「ムーアの法則」に、一直線のいわゆるある半導体の流れに乗って商品がきただけじゃないかということにはたと気がつくわけです。我々はただ、お釈迦さんの手のひらの上に乗って商品を作ってきただけなんだな、そこに気がつくのがものすごく時間がかかったというのが一番大きなところじゃないかと思います。技術屋というのはどうしても、よりすごいもの、より早いもの、より最先端をというそういう形を望むのは当然なんだけれども、色んな技術が色んな方向に向かって、色んなものがあるんだと、色んな方向に技術っていうのはあるんだよ。特に遊びの分野でエンターテインメントっていうのは同じ方向の一直線上のいわゆる半導体の「ムーアの法則」に従った形で、一直線上に行った場合はやっぱり飽きてしまうんだよね、別に新しくも何もないんだよねと当たり前のことに気がつくのにものすごく時間がかかったっていうのが現実です。そこを越えた以上はこれから本当にあらゆる方向にあらゆる楽しいことを実現させるための技術をもとに実現していきたいという、ある意味では目が晴れたというか、見通しがたったというか、そういう気持ちで、今おります。ですから、突然ぽっと思い浮かぶものではなく、ある意味では原点にかえって、遊びっていうのは何だろうねって、ユーザーというものがあって、我々がハードを作る役割とそれからソフトを作る役割と、そういうところで、一つはっきり、任天堂としての答えが出たと思います。それの結果がどういう風に出て、みなさんに反応していっていただけるかということそれで、また方向をフィードバックしていきたいなと思っています。

Q14
一般的にDSのゲームソフトは任天堂ブランドばかり売れて、他社のソフトが売れないということがよく言われが、これをどのように認識しているのか?

岩田: DSのソフトが任天堂ばっかりが売れると、日本の市場に限って申しますと、ミリオンセラーが10本と申しあげましたが、9本が任天堂ブランドのソフト、1本バンダイさんのたまごっちのソフトがミリオンセラーになったんですが、まあ、そうはいっても、やはり任天堂のソフトばっかりが売れるというイメージがありますし、マーケットシェアも現時点ではそうかもしれません。これはソフトというのが実際に作り始めてから実を結ぶまでにかかる時間を考えていただきたいんですね。今、たくさんのソフトメーカーさんたちが非常に力を入れて、DS用のソフトを作っていただいていますが、DSの爆発を本当に皆さんがご覧になったのは去年の年末なんですよ。それで、「よし、これはいけるぞ」ってどんなに力を入れていただいても、まだ全然間にあわないんですね。また、ソフトメーカーさんの得意とするコッテリ型のゲームはですね、作るのに時間がかかります。たとえば、ファイナルファンタジー3はですね、(2004年10月の)DSの発表会の時に「やります」と宣言はあったわけですけども、実際の発売はこの夏ということで。この年末までに出てくるそういうソフトをご覧いただいてから、任天堂しか売れないのかソフトメーカーさんのソフトも売れるのかということの論評をしていただくべきではないのかと思います。任天堂はDSが売れないと困りますから、DSがまだ世の中に1台もない時代から、社内あるいはセカンドパーティーの皆さんと、それはそれはこれに集中してモノを作ってきたわけです。先ほどデータでご覧いただいたように、昨年の前半までは市場の中心はPS2だったわけです。ですから、そこに主力の方たちがかかっていたのが現実なんですね。少数のチームだけが、時間をかけていて、今年の後半にそれらのソフトがどんどん出てくるというのが現状です。ですから、1つはそういう観点で、任天堂しか売れないかどうか判断すべきはないかというのが1つです。もう1つは先ほども少し話に上りましたが、新しくて面白くて珍しいものを作るっていう風に動いているアイデアで勝負しているチームと、より良い「○○ゲーム」を作っていこうという形で専門家として特定のゲームをどんどん深彫りしていくチームとで、DSが出てきたときへの対応のスピードはどうしても違うと思います。現実にアイデアという点でお困りのソフトメーカーさんもあると。これは私と波多野がよく話し合っていることですけれども、逆に、任天堂がこういうソフトはこういう風な形でDSやWiiの機能を使ってみてはどうですかとこちらから提案していくくらいにならないといけない。これはこういうプロジェクトも徐々に始まってきましたので、実を結ぶのは今年じゃなくて来年になると思いますが、そういうことにもご期待いただければと思います。

Q15
宮本さんは現在、どういったことに興味を持っているのか。最近、趣味としてどういう風なことについてエネルギーを費やしているか教えてほしい。

岩田: 庭いじりをするとピクミンができて、犬を飼うとnitendogsができた宮本に、現在の趣味について答えてもらいます。

宮本: 何に興味を持っているかといえば、色んなものに興味を持っています。僕が今日、最近はネコを飼っていますと言えば、分かりやすいと思うんですけれど(笑)。トカゲを飼ってますとか。実はそういうことではないんですよね。やっぱりピクミンをやるときも庭いじりをやったからではなくて、ピクミンのような構造のゲームをゲームキューブっていうハードで面白がってどんどん実験している時に「あ、そういえば、庭をやっているよな」とか、まぁ、さっき竹田も言っていましたけれど、「犬はいいよな、犬はいいよな」って思ってたけれど、犬を飼ってみると、結構ゲームになるなと。しかし思っていても、モノにならないわけで。DSのハードを見たときに、これは使えるなという風に感じてくるんですね。そういう意味では僕は今ずっと家族を粗末にしてきた日本人らしい男性なんですけれど、結構最近、家族と交流を深めてですね、やっぱり家でみんなどんな風に遊んでいるのかということに興味があってということと、今のWiiというハードのブランディングが非常にかみ合っているんですね。そういうことでは、非常にWiiのハード自体が僕の過去20年くらいの興味を満たしてくれるハードで、非常に楽しんで作ってます。
もう1つ最近やっていることがあるんですけれど、これはちょっと核心に触れるので、また、半年以内に発表できると思います。

Q16
今回NOA(Nintendo of America)の社長に就任したレジーさんに対する期待と、日本と異なる欧米市場の戦術について聞かせてほしい。

岩田: 戦略が国ごとにバラバラというのでは会社として何をやっているのかわかりませんし、開発のリソースも分断されてしまいますので、当然、戦略は世界共通です。「ゲーム人口拡大路線」というのは世界共通ですし、また、それがゲーム業界の中で、今、ある意味異端児であって、異端児であるということは競争のない商品作りというのができるというチャンスがあるわけですから、そうしていきたいと思います。一方で、NOAという組織を見ますとね、これは従来型のゲームを売る上で、ものすごく実績のある組織なんですね。そのために非常にシステマティックに仕組みができ上がっています。そこに「今までと全然違うものを売りなさい」という指令が行くわけですから、当然最初は混乱が起こるわけです。日本の中でも混乱がありました。日本の中は私が直接毎日、やり取りができますし、ここに並んでいる代表の皆さんも協力してくれますから、私自身は皆さんと一緒にそれをやれば、もちろんいろいろ思い通りにならないことは当然最初はあるんですけれども、全体としては順調に行っている。これが日本では世界一早く爆発を起こせた理由でもあるんじゃないかなと思います。一方で、アメリカやヨーロッパはゲーム離れ現象が表面化していないから、そもそも新しいことを始めないといけない理由が見えにくいのです。見えにくいところに今までのやり方とは違うことを本社が言ってきたので、戸惑いがあるのです。ここで、レジーという人間が任天堂に来てから、もう三年になりますけれども、彼が、母国語で会社の顔として喋る、そして会社の中に対して、任天堂のストラテジーを語っていくことの価値を感じて、今回彼に社長をお願いすることになったというわけです。ですから、その意味で、より任天堂の戦略の理解が任天堂の中で進むのではないかと思いますし、まず基本的にですね、我々の社内、そしてパートナーの方々に、戦略が十分に理解されてこそ、戦術が機能するわけで、戦術っていうのを一個一個こちらから指導しているようでは、健全な形とはいえないと思いますし、各国ごとに文化が違い、環境が違い、受容性が違うわけですから。ただ、先ほど申しあげたように、nintendogsが日本以上に売れていたり、Brain Ageがちゃんと長寿命型商品の軌道に乗ったりだとかがありますから、私達は、基本的に日本で成功したことの中で、アメリカやヨーロッパでも使えることはたくさんあるんじゃないかなと思っています。

Q17
累計の販売数が180万台というゲームボーイミクロについてどういう分析しているのか。

岩田: ミクロについては私達の期待通りにはならなかったと思っています。これは日本と海外では少し状況が違うように思いました。日本ではやはりミクロは出だしはそれなりのスピードで売れていましたし、注目も集めましたから、その意味で、最初から全く箸にも棒にもかからなかったということだとは思っていません。ただ、年末にかけてやってきたDSについての一極集中現象がですね、そのすべての勢いをそっちに持っていってしまったと感じています。そういうことがあったことで日本では期待に届きませんでした。
海外では、そもそも商品の価値を伝えることにうまくいきませんでした。これはどういうことかといいますと、E3で実際に商品をお見せしました。見た方は皆さんものすごく絶賛してくださいました。「これは売れるぞ」と多くの方が言い、流通の方がおっしゃり、ソフトメーカーの方が、パブリッシャーの方やデベロッパーの方が皆さんおっしゃるので、今までと同じように、「ゲームボーイに新しいモデルが出た」というふうに言えば売れると思ってしまった。ところが、実際に良いと言ってくれた方は実際に現物を見て、触って、質感を実感して良いと思ったんですね。ところが、最初に興味を持つかどうかということは、その分の値段に見合うかどうかとかということですから、あの質感を実感していない人にとっては、それほど魅力のある、アピールのある値段でもなければ、商品コンセプトでもなく見えてしまう、それを伝えることが出鼻でつまずいてしまうわけです。なんでもそうなんですけれど、プラットフォームというのは勢いのビジネスですから、出鼻でつまずくと非常に苦しくなります。しかも、任天堂はDSを拡販しなきゃいけない時期ですから、当然、DSにエネルギーをかけます。するとますます、そういう形で良い循環が生まれないということで、これは出だしで「ミクロは売れるはずだ」ということに過信があったことが大きな反省材料ですね。もちろん値段帯についても、見た人の評価と、実際に見て触った人ではない、商品を例えば、プリント広告で見ただけの人がどれだけの価値を感じるのかという部分をもう少し冷静に見るべきだったのかも知れません。

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