6. 誰にとっても初めての『ゼルダ』に

岩田

では続いて、森さん、お願いします。

今日はゼルダの話ばかりしましたし、
もちろんがんばって彼女を助けてほしいのですが、
ギラヒムの話も少しだけいいですか?

岩田

→宮本さんが、倒すのに苦戦したと言っていた
リンクの振った剣を素手で止めたりする敵ですね。

はい。ギラヒムは魔族長というんですけど、
藤林さんから最初にもらったキーワードが
「ヘビのような性格のナルシスト」だったので、
できるだけそんな感じにしようとしました。

藤林

できあがってきた映像を見て
すごくビックリしました。
舌をペロペロッと出したりするので(笑)。

岩田

ヘビのような性格だからですか?(笑)

まあ、そんな感じです。
とにかく細かいところまで
いろいろと気持ち悪くしましたので、
ぜひがんばって倒してやってください。

岩田

先ほど森さんは、登場するキャラクターの
人生とかを考えると言ってましたけど、
ギラヒムみたいな、強烈なキャラクターのことを
ずっと考えていると、自分の頭のなかの
正常を保つのが難しくなりませんか?(笑)

まあ・・・そういうこともありますが、
逆に楽しい部分でもありますね(笑)。
たとえ気持ち悪い敵であっても、
どんなことをやらせてあげようかとか、
どんなことを言うだろうかとか、
いろいろ考えるのが、やはり楽しかったりしますので。

岩田

なるほど(笑)。吉田さんは?

吉田

先ほど「序盤のデモが多すぎる」
という話もありましたけど、
調整に調整を重ねた結果、
デモシーンがストーリーに合わせて
バランスよく配置されたと思いますし、
それが全体をとおして実現できた、
という手ごたえがあります。
また、デモだけではなく、
キャラクターと話しているときに、
三択のメッセージ表示なども入れましたので、
いろんな反応を楽しんでいただければと思います。

岩田

二択の「はい、いいえ」ではなく、
いろんな会話が楽しめるようにしたんですね。

吉田

はい。

藤林

今回は、時系列的には『ゼルダの伝説』の
いちばんはじめの物語になります。
で、最初に、マスターソードができあがるまで、
という話がありましたけど、それ以外の
さまざまな要素がどんどん展開していきますので、
ストーリーもいままでにないほど
“濃密”になったと思います。

岩田

正真正銘の『ゼルダの伝説』になったわけですしね。

藤林

はい。なので、お話的な仕掛けも
たくさん用意していますので、
ぜひこの世界に入って
どっぷり楽しんでいただきたいと思います。

青沼

僕はさっき、「ちょっと泣けたりする」
と言いましたけど、本当にそうなんです。
序盤に出てくるいろんなシーンのある部分が、
そののちに、森さんの“森節”によって
ゼルダの言葉になって、語られるときがあるんです。
すると、「絶対にゼルダを助けてやるっ!」
という気持ちが、僕自身のなかで
グッと盛り上がったりしましたので、
ぜひお客さんにもそういう気持ちになってほしいです。

岩田

今回はゼルダ25周年記念でもあり、
『ゼルダ』の25年の歴史とともに歩んできた人たちに、
ひとつの集大成としてお届けしたいという
ミッションでもありましたけど、
一方で、全員のお客さんが遊んでこられたわけじゃないし、
遊んでこなかった人にとっては
「なんか難しそう」とか、
「設定を知らないと楽しめないんじゃないの?」とか、
少し漠然とした不安を持たれているようにも思うんです。
 
青沼さん、『ゼルダ』を初めて遊ぶお客さんに、
今回の『スカイウォードソード』の意味というのを
ちょっとだけ語ってもらってもいいですか?

青沼

そうですね・・・今回、『ゼルダ』の“はじめての物語”なんです。
だから、「前にこういうことがあった」ということを
まったく知らなくても楽しめるんですね。
主人公のリンクも突然、
物語に巻き込まれるかたちになりますし・・・。

岩田

自分が緑色の服を着る運命にあることを
まったく知らないで生きているんですよね。

青沼

そうです、知らないんです。
緑の服を着て、幼なじみのゼルダを捜しにいくわけですが、
ときおり「運命づけられていた」みたいなことを言われて
「えっ、そうなんだ」と思うのは、リンクだけでなく、
プレイする人にとってもまったく同じなんです。

岩田

つまり、リンクが冒険の途中で
いろんなことを知っていくということを
同時にプレイヤーも知っていく、ということなんですね。

青沼

はい。それに、
いままで『ゼルダ』を遊んできた人にとっても、
そのような“はじめての物語”は
受け入れやすいんじゃないかな、と思うんです。
なので、そこはうまく融合できたように思います。

岩田

いままでの『ゼルダ』を知ってる人も、
知らない人も、両方にとってOKな入口を用意しています、
ということですね。

青沼

はい。

藤林

ディレクターの立場で話すと、
5歳でも9歳でも遊べるようにしようということを
今回はつねに意識していて、
だからこそ、ファンだけが楽しめるような設定にしたり、
独りよがりなものにならないよう、
こころがけてつくったつもりです。
それに、何より今回は
Wiiモーションプラスでの剣戦闘ができますから・・・。

岩田

それはある意味、
みんなが初心者になる、ということなんですよね。
シナリオが“はじめての物語”なら、
Wiiモーションプラスを使った
初めての『ゼルダ』でもあるわけですから。

青沼

そう、みんながゼロからのスタートです。
誰にとっても初めての『ゼルダ』なんです。
まず、「Wiiモーションプラスを“道具”としてどう使うか」
というところからはじまりますから。
それに、この“道具”に慣れると
自分の身体に一致するような、
不思議な感覚も味わえるようになります。

岩田

その意味で、すごく声を大きくして言いたいのは、
「『ゼルダ』は遊んだことがない」とか、
「前にちょっとかじったけど、合わない気がした」
という人たちにこそ、
「ちょっとやってみませんか?」
とお伝えしたいですよね。

青沼

はい。実際に触ると
きっと、わかっていただけますから。
そして、きっと心が動きますから。

岩田

わかりました。
みなさん、今日はありがとうございました。

一同

ありがとうございました。