5. テーマは「旅立ち」

岩田

まだ『ゼノブレイド』のことをよくご存じない方に、
竹田さんが「こんなゲームだよ」と伝えるとしたら
どのように表現されますか?

竹田

そうですね・・・ストーリー的には
→すごくちっぽけな1人の少年と、
ものすごく巨大な神が正面から向き合う
ことで
接点が生まれ、そこにどんな物語が生まれるのかという、
“マクロとミクロの対比”みたいなものを考えていました。
実際にゲームを触っていただけると、
すごく巨大な世界のなかを自由に動くことができて、
システム的にも新しい体験ができるゲームになっています。
ですから、広い世界を冒険しながら、
マクロとミクロの対比を感じながら、
ゲームを楽しんでいただければと思います。

岩田

高橋さんはいかがですか?

高橋

今作はまず最初に、このような大きな模型・・・
物語の世界をつくったわけですが、
その世界のなかで僕自身が描きたかったことは、
ちっぽけな存在の主人公たちがどうやって成長し、
旅立っていけるのか、ということでした。
なので、今作のテーマをひとことで言うと
「旅立ち」と言っていいと思います。
 
ゲームの序盤に主人公たちが旅立っていきますけど、
未来に向かって、まだ見ぬ世界に向かって、
主人公たちが進んでいく部分を、僕は描きたかったんです。

岩田

そのテーマは、
最初に「神様のような、すごく巨大な体の上で
人が暮らしていたら面白いんじゃないか」と考えたときから、
揺らぐことなく、最後まで貫くことができたんですね。

高橋

いっさい揺れませんでした。最後までブレなかったです。

竹田

僕自身、最初に高橋さんからアイデアを提示されたとき、
ものすごく太い幹だと感じたんです。
どっしりとした太い幹なので、あとからどんなものを足しても、
それは枝葉にしかならなくて、
幹の存在感を脅かすことがなかったと思うんですね。
それに、できあがったものの印象が
最初に聞いたときの話とまったく変わりませんでしたので、
やっぱり最初の幹が本当に太かったんだなあと思います。

岩田

まさに、最初につくったこの模型が
太い幹のようにどっしりしていたということなんですね。

竹田

まさにそう思います。

岩田

それでは最後に、竹田さんから
お客さんに対するメッセージをお願いします。

竹田

はい。でも、僕が何かをしゃべろうとすると、
お客さんの楽しみを奪ってしまうところもありまして(笑)。

岩田

ああ、ネタバレになってしまいますからね(笑)。

竹田

そうなんです。
発売後であればお話ししたいことは山ほどあるんですけど・・・。
そうですね・・・敵役(かたきやく)たちについては
個人的にもすごく気に入って書けたと思いますので、
悪役たちの散りゆく姿を見てくださいというのが1つです。

岩田

そこはこだわりを持って書いたということですね。

竹田

そうです。
それに、リキというキャラクターが
けっこう気に入ってるので、注目してほしいです。
というのも、すごくギャップのあるキャラクターなんです。
シナリオ上の文章だけを読んでいると、
すごく腹の立つキャラというのを目指して描きました(笑)。
でも、口では憎たらしいことを言うけれど、
かわいい外見とかわいい声が組み合わさったときに、
きっと化学反応が起こるはずだと思ったんです。

岩田

実際、ゲームのなかでは
どんな感じになったんですか?

高橋

すごく憎めないキャラクターになりましたね。

岩田

竹田さんの狙い通りということですね(笑)。

竹田

はい。なので、うっとうしいシナリオ上のセリフや演技と、
かわいい外見や声が合わさったときの化学反応を
ぜひ楽しんでいただけるとうれしいですね。

岩田

それでは、高橋さん。

高橋

はい。僕らもずっとものをつくってきて、
いろいろな経験をしてきて、そのなかで今回は
ここまで登ろうと高いゴールを最初に設定しました。
その高いゴールに向けて、各セクション、各パート、
みんな一丸となって走り続けることができたのが、
すごくいい経験になったと感じています。
 
先ほど竹田さんがおっしゃってくださいましたけど、
シナリオの幹が太いだけではなく、
実際にゲームのなかに入ると、拡がりがあって、
とても豊かな世界を感じていただけるのではないかと思います。
 
今回、そのようなゲームをつくることができたのは、
スタッフひとりひとりが、周りとの調整をしながら
自分の担当することに注力してつくりあげた結果だと思います。
そういったいろんな人たちが関わってつくりあげられた
密度の濃い部分をぜひ触って、感じていただきたいと思っています。

岩田

すでにいろんな映像で
『ゼノブレイド』の世界を見ることができますが、
それはほんの入口に過ぎなくて、
高橋さんたちがつくりこんだ世界の魅力は
触ってこそ感じられるということをお伝えしたい、
ということですね。

高橋

はい。その通りです。

岩田

モノリスソフトさんができて10年ということですけど、
任天堂もこのようなかたちで
近い距離でおつきあいさせていただくようになり、
今作の『ゼノブレイド』はそんな関係でできあがった
渾身の一作だと、わたしは感じています。
 
前回の音楽家のみなさんや、今日お話を訊いた竹田さん、
それに任天堂のスタッフもそうですし、
もちろんモノリスソフトのみなさんの
誰ひとりが欠けても『ゼノブレイド』は
このようなかたちにならなかったと思います。
 
たくさんの人たちが関わってできた『ゼノブレイド』ですが、
このゲームの魅力を受け止めていただける方が、
1人でも多く生まれるように願っています。
 
本日はどうもありがとうございました。

一同

ありがとうございました。