ニュースチャンネルの開発スタッフに制作にまつわる話を語ってもらいました。

※インタビュー内容は掲載日(2007年2月15日)時点のものです。

はじめに

 

環境制作部の河本です。ニュースチャンネルの開発では、全体をまとめる役でした。

 
 

環境制作部の松下です。ニュースチャンネルを実際に操作する画面のデザイン全般を担当しました。

 
 

研究開発部の藤川です。ニュースを配信するサーバを担当しました。報道機関などからニュースの配信を受けて、ニュースチャンネルにニュースを送る仕組みを作りました。

 
 

企画開発部の鈴木です。ニュースの配信元である報道機関と、社内の開発チームとの連携を担当する窓口的な役割でした。ニュースチャンネルは北米や欧州でも同時に公開する予定だったので、国内だけでなく、海外の報道機関や任天堂海外子会社との連携も重要な仕事になりました。

 

ライバルはインターネットチャンネル

 

ニュースチャンネルの開発を始めたとき、既に世の中にはニュースの配信サービスというものは山ほどあったんですね。ニュースの数や充実度でインターネットと競争したら敵わないなと。そういったものとどう違いを出すかというところが、開発当初は本当に悩みました。

 
 

さらに同時期に別のチームでインターネットチャンネルの開発も進んでいたので、ニュースを確認するだけならインターネットチャンネルで十分じゃないかっていう声も聞こえてきて・・・。

 
 

その上、インターネットチャンネルが2007年6月まで無料になる、というのを聞いて、目の前が真っ暗になりました(笑)。開発序盤には、ライバルのインターネットチャンネルでは実感できない、ニュースチャンネル独自の長所がなかなか見つからずに、手応えが持てない時期がありました。

 
 

手ごたえを感じたのは「流し読み」という見せ方ができたとき。Wiiのコンセプトがテレビのチャンネルを増やすというものだったので、ニュース番組にあるヘッドラインニュースに近づけてデザインしていったんです。そうするうちに独特のトーンが出てきて、他の世の中のニュース配信サービスと差別化ができたなと思いました。

 
 

「流し読み」の開発は、もともと、NOA(米国任天堂)から「ニュースでスライドショーを作ってくれ」という依頼があって始めたものなんです。最初はなんのことかわからず、とりあえず作り始めたんですが、いろいろ自分好みにいじっていくうちに、見たいニュースだけ見ようというものに仕上がりました。チームのみんなも開発中にニュースチャンネルでニュースを確認するようになっていましたね。「朝、会社に来たらとりあえずニュースチャンネル」みたいな。

 
 

他のチームの人から見れば、開発しているようには見えていなかったでしょうね。ただニュースを見ているようにしか見えないですから。(笑)

 
 

でも、実際に使っていたからこそ、不満点や、ここはこうしたらいいんじゃないかという話がすぐ出てきてどんどん反映できました。たとえば、十字ボタンの左右で次のニュースにさくっと移ったほうがいいんじゃないかとか、「流し読み」の時間を自由に変えられたほうがいいんじゃないかとか。実際に使いながら調整ができるというのは、ゲームでは当たり前ですけど、こういったタイプのアプリケーションでは、はじめての経験でしたね。

 
 

あと、ニュースチャンネルでは、Wiiのサーバと24時間やりとりをするWiiConnect24という仕組みを使って、最新のニュースを常にWiiにダウンロードしておき、インターネットチャンネルにはない、ニュースを次々に表示するレスポンスの速さを実現させました。十字ボタンで、次のニュースを表示したり、前のニュースに戻ったりするさわりごこちがインターネットチャンネルとはだいぶ違うものになったと思います。

 
 

もう1つ、インターネットチャンネルとの違いが大きく出せたのは、地球儀を回しながら世界のニュースを確認できるところですね。

 

ニュースと地球儀

 

ニュースチャンネルの開発前にニンテンドーDSで地球儀を動かすというソフトを実験していたんですが、DSではハード性能の限界もあって、きれいに表示することがなかなかできなかったんですね。でもWiiだときれいに表示できるに違いないと思ってやってみると、予想通りうまくはまった、うまくつながったという感がありました。ニュースは世界中で起きるので、それが地球儀で表示できたら雰囲気としていいんじゃないか、と考えたのがきっかけでしたね。

 
 

うまく地球儀上にニュースを配置できるかについてコンテンツプロバイダさんと話し合いを繰り返しました。でも、毎日新聞さん、日本テレビさん、加えて海外の報道機関など、ニュースの配信元が異なるためデータのフォーマットも異なってしまい、フォーマットを統一するのに苦労しました。記事を地図上に配置するのはニュース本文を検索して実現しています。地域名はいろいろな形で表現されていますので完璧ではありませんが、ある程度は実現できていると思います。

 
 

初めて触ったとき、単純に地球儀を回しているだけでも楽しかったんですね。さらに地球儀の上にニュースが配置されて、ニュースと場所の関係が一目でわかるようになった。こうなると今まで知らなかった地名など新しい発見があったりして地理の勉強にもなるかなと。

 
 

このあいだ、南極にニュースがあったときなんかは、うれしかったですね。地球儀にした意味を感じました。

 
 

これは言いづらいんですが、開発終盤に、南極だと記事が消えてしまうという不具合が見つかって。ギリギリでしたけど、本当、なおせて良かったです。ニュースチャンネルの運用が始まってすぐに南極発のニュースがありましたからね。あぶなかったです。(笑)

 

日米欧同時スタート

 

ゲームソフトの開発では、日本版と北米版を同時進行で進めるという経験はあったのですが、今回はそれに欧州版も加わって、日米欧同時開発になりました。しかも、ニュースというのは、日本版のものを単純に翻訳すればいいわけではなくて、ニュースを配信してくれる会社も別、ニュースのジャンルの構成も別、流れてくるニュースのフォーマットだってもちろん違う。さらに北米版や欧州版では、Wiiメニューで設定した国や言語に従って配信されるニュースが変わるようにしてあるため、日本版以上に仕組みが複雑になっているんです。

 
 

そういう意味で、ゲーム開発とはまったく違うな、と思いました。3地域あったら、3本いっぺんに作っているような感覚が強かったですね。しかも写真チャンネル・お天気チャンネルとも同時開発だったという・・・。

 
 

特にむずかしかったのが、北米や欧州の人にとって違和感のないニュースサービスとは何か、ということでした。日本人的な感覚で、ニュースといったらこれ、と思いこんでいたことが、実はそうではなかった。現地の人たちと連携をして、これでいいのかという議論をずいぶん交わしました。

 
 

意外な文化の違いがありましたね。その記事が公開されて何時間経っているのかを表示してほしいとか。記事を掲載するページの文字量を増やしてほしいとか。

 
 

他にも欧米のニュース記事では、その記事を書いたライターさんの名前を必ず表示するんです。途中までは、そんな表示が必要だなんて気づかずに開発をすすめていたので、後になってNOA(米国任天堂)から入れるよう指摘され、表示する位置の調整などに苦労しました。

 
 

サーバを設計する側からすると、世界中のWiiが眠らずにアクセスしに来るというWiiConnect24の仕様は正直悪夢のようなことなんです(笑)。お客さんにとっては、事前にニュース記事がダウンロードされていてスムーズにニュースを見ることができるのがメリットですから、確実にデータを配信できるように、アカマイさん(コンテンツデリバリー事業者)を利用させてもらうことになりました。

 

ゲーム屋が作ったニュースチャンネル

 

もともと私たちはゲームを作る側だから、楽しいものを作ってなんぼという感覚は常にあります。たとえニュースでも、楽しいものを作りたいなという血が騒いでしまって(笑)。

 
 

地球儀にニュースが積まれていく仕組みも、見た目に楽しく感じてもらいたかったからなんです。

 
 

似顔絵チャンネルで作ったMiiがニュースキャスターになれば、楽しいのではないかという案もありました。例えば、お父さんのMiiがニュースキャスターになったりすれば、お子さんに受けるかもしれないぞ、とか。ただ、ニュースの内容によっては不謹慎に感じることもあるので、その案はお蔵入りにしましたが・・・。

 
 

デザインで気をつけたのは、主張しないデザインにするということです。なにしろ、主役はニュース記事ですから、とにかく文字を読みやすく、シンプルなデザインにすることを心がけました。文字の拡大・縮小機能もあるんですが、単純に文字の大きさを変えるのではなくニュース記事が読みやすいように、改行位置を調節しているんです。この時の文字の動きも見ていて楽しいものになっていると思います。

 
 

あの文字の動きは試作段階からありました。普通にぱっと表示を変えることはできるのですが、それだと味気ないので、写真チャンネルの写真の並べ替えのプログラムをちょっと改造して流用したら、あまり見たことのない不思議な動きができたんです。

 
 

あと、地球儀の背景にはオリオン座や北斗七星など実際とおなじように星座が見えるようになっているんです。

 
 

これは、このためだけに国立天文台に許可をいただいて、星のデータを使わせてもらっています。星の表面温度も反映していて、赤っぽい星は赤く、青っぽい星は青く見えるようになっています。ここまでくれば完全に趣味の世界でしょうか・・・?(笑)

 

おわりに

 

インターネットで天気やニュースを確認する人にとっては、ニュースチャンネルは無用の長物になるのではないかと思っていましたが、そうではないものになったかな、と思います。常に新しいニュースがWiiに保存されていますので、毎日たくさんの方々に利用してもらいたいですね。ニュースチャンネルのレスポンスの早さやさわりごこちを体感頂ければと。「流し読み」で、時々気になるものをAボタンを押して見てみてください。ニュースチャンネルがなければまったく知らずに終わっていたニュースに出会えるかもしれません。

 
 

家族の中でもお父さんとかお母さんとか、どちらかというと普段ゲームをしないような人たちにも使ってほしいチャンネルです。ニュースはあまり見ない人でも、「流し読み」をぼんやり眺めたり、地球儀をさわるところから徐々に興味を持ってくれればうれしいです。

 
 

「流し読み」といえば、夜帰るのが遅く、テレビだと音がするので寝ている家族の邪魔になるから、ニュースは自室のPCで、という知り合いがいたんです。でもその人がWiiを買ってからリビングでニュースチャンネルの「流し読み」を見るようになった、と言ってくれて。その時、ついでに「Wii伝言板」で家族が一日なにをしていたかがわかるようになって、直接的ではないけれどなんとなくみんながやっていたことの想像ができる、って。うちも昼間に妻がWiiでピクロスを遊んでいたのがわかります。想像するのも楽しいんですよね。

 
 

お父さんお母さんにはもちろん見ていただきたいのですが、あえて、お子さんにも見てもらえればと思います。自分が子供の頃にもしこの地球儀があったらきっと私は地理が好きになっていただろうなと。是非ニュースチャンネルで世界の地理に詳しくなってもらえればと思います。

 
 

もともとリビングで使ってもらえることを考えて作ったので、みんなで同時に使ってほしいなと。ひとつの画面に表示されているニュースに対して、みんなであれこれコメントするというのは、PCにはない感覚ですね。そういった使い方などを通して、このニュースチャンネルでリビングのコミュニケーションが広がればいいなと思います。

 

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