社長が訊く
IWATA ASKS

社長が訊く『ゲーム&ワリオ』

社長が訊く『ゲーム&ワリオ』

目次

2. 便利でズルい入れ物

岩田

最終的に、Wii U本体の内蔵ソフトから
パッケージソフトへと方向転換しました。

阿部

はい。

岩田

それはいつ頃のことだったんですか?

阿部

2011年の夏頃のことです。
『パイレーツ』の原型をつくってみると、
とてもよい手ごたえがあって、
その一方で、本体に同梱するソフトとしては、
ちょっとボリュームがありすぎるような気がしたんです。

岩田

でも、パッケージにするからといって、
いきなり『メイドインワリオ』ではなかったんですよね?

阿部

はい。もともと『メイドインワリオ』のゲームは、
味のあるグラフィックで勝負してきましたけど、
Wii Uは高解像度のHD(※7)になりましたので、
そこをどうしようかと・・・。

※7
HD=High Definition(ハイデフィニション)の略。テレビなどにおける高解像度(高精細、高画質)のこと。映像のピクセル数が多く、720本以上の走査線数を保持し、かつアスペクト比が16:9であることが条件。高解像度の映像を扱う地上波デジタル、BSデジタルなどのテレビジョン放送をHDTVと呼ぶ。

岩田

スーパーフォトリアルの
『メイドインワリオ』というのもちょっとね。

坂本

超美麗な画像も
使いかた次第なんだと思いますけど、
全体がそうだと、やっぱり違和感がありますよね。
『メイドインワリオ』の場合はとくに。

阿部

そこで、映像技術にくわしい
小林(仁志)さん(※8)たちに
監修してもらうことになり、
「自分たちが得意な表現で
 やったらいいんじゃないか」という
アドバイスをいただきました。

※8
小林仁志=企画開発本部 企画開発部 デザイン推進グループ所属。

で、その時に、
デザイナーのひとりが描いた
ちょっと味のある船長の絵をたまたま小林さんが見て、
「この絵をぺらぺらで動かしたらよいのでは?」
というお話をされたんです。
そこからすごくつくりやすくなって、
「味を出す方向でいってもいいんや・・・」
ということで、開発を進めていきました。

阿部

そうでしたね。

それからあの頃は、物語をつくっていましたよね。

阿部

そうです。物語をつくって
ゲームの流れをひとつにしようとしていました。
でも、自分たちにとってははじめての試みでしたし、
「より時間がかかってしまうんじゃないか」と思ったので
その年の12月までをデッドラインにして
試行錯誤を重ねていったんですけど
「これだ」という手ごたえを感じることができず、
しかも、そのまま進めていくと
とてつもなく時間がかかりそうだったんです。
そこで、「ワリオたちがつくったゲームとして
まとめたらどうかな」と考え、再構成して、
坂本さんに相談しました。

岩田

開発から丸1年たって、ようやく
『メイドインワリオ』という入れ物を使うことにしたんですね。

阿部

そうです。

岩田

目の前に並んでいる人たちの顔を見ていると
最初から『メイドインワリオ』をつくるのが
必然だったような気もするんですが(笑)。

阿部

はい(笑)。

岩田

それに『ワリオ』という入れ物は、
すごく便利だと思うんですよね。
本来は相容れないようなものでも、
混ぜこぜにして入れられるわけですから。

坂本

そうですね。

岩田

まったく別に見えるようなものでも、
おもしろいものであれば
「だって『メイドインワリオ』なんだし」と
ある意味、開き直って入れることができますし。
でもそれって、ズルいとも言えますが(笑)。

坂本

まあ、「便利でズルい入れ物」なんです(笑)。

岩田

森さんは、阿部さんから
「『メイドインワリオ』にしようと思うんだけど」
と言われた時、「やった!」と思いました?
それとも「また『メイドインワリオ』?」と思いました?

「よっしゃよっしゃ」と思いました。

岩田

(笑)

ただ、残念な気持ちもあったんです。
それまでお話をつくっていたのを
途中でやめたわけですから。

阿部

でも、その時に考えたネタも、
今回はちょこちょこと入っていて・・・。

そうですね、生きてますね、今回。

阿部

いろいろと混ぜ込んでいます。

岩田

「ただでは転んでませんよ」っていうことですか(笑)。

はい。捨てるところ無しです(笑)。

阿部

たとえば今回は
「シャカポン」というオマケがあるんです。
それを実際に遊んだときに
「オマケなのに、なんでこんなに
 つくり込んだものが入っているんだろう?」
というのがあったりすると、たぶんそれは
その時につくったものだったりします。

岩田

つくり込んだ「シャカポン」を見たら、
何かの残骸だと思えということですね(笑)。

阿部

はい(笑)。
残骸になりかけていたものを
しっかり磨いてオマケにしました。

岩田

ちなみにその「シャカポン」というのは
どんな仕組みになっているんですか?

阿部

これまで『まわるメイドインワリオ』(※9)
『さわるメイドインワリオ』(※10)でも
オマケが出てきましたけど、
たとえば『まわる』の時は、
ガチャガチャのような
「ガチャコロン」というオマケがありまして。

※9
『まわるメイドインワリオ』=ゲームボーイアドバンス用ソフトとして、2004年10月に発売された瞬間アクションゲーム。シリーズ3作目。
※10
『さわるメイドインワリオ』=ニンテンドーDS用ソフトとして、2004年12月に発売された瞬間アクションゲーム。シリーズ4作目。

岩田

ミニゲームとまではいかなくても、
触るとインタラクティブな反応が
楽しめるようなオマケですね。

阿部

そうです。
それで今回は、ゲームを遊んでいると
「ポンメダル」というものが手に入ります。
で、そのポンメダル1枚につき1回、
ガチャガチャのような「シャカポン」ができて、
カプセルを開くとおもちゃが出てくるんですけど、
そのオマケを240種類用意しました。

岩田

え? 240種類もつくったんですか?

最初は「100個つくろう」という話だったんです。
でも、気がついたら300個になっていまして、
でもメニューの都合で240個に絞りました。

岩田

・・・なんだかチームのなかに、
本物のワリオがいるような
無茶さ加減ですねぇ(笑)。

一同

(笑)

阿部

ただ、240個が全部、遊べるかというと、
そうではなくって、「ひみつカード」といって
いわゆるゲームの遊びかたの
ちょっとしたコツのようなものが
69種類入っていたり、
あとはキャラクターの紹介カードなども含めて、
全部で240種類なんです。

インタラクティブに遊べるものは
100種以上ありますよね。

阿部

そうですね。

岩田

一時期、わたしは
ウワサを耳にしたことがあったんです。
「開発スケジュールが押しているはずなのに、
 阿部さんはこれを全部つくるって
 言ってるらしいけど、正気か??」
っていう(笑)。

阿部

もちろん物量が増えて
たいへんなところもあったんですが、
最後の最後で“助っ人”のみなさんに
お手伝いをいただきましたので・・・。

岩田

はい、はい。
その“助っ人”の話は
のちほどお訊きすることにしますね。
でも、かなりダイナミックなことが
起こりましたよねぇ(笑)。

阿部

はい。そうでした(笑)。