社長が訊く
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社長が訊く『Wii U』

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社長が訊く『Wii U』

本体篇

目次

4. テレビに寄生しないゲーム機

岩田

ちなみにWii Uのハードで
いちばん見てほしいところはどこですか?
赤木さんからいいですか?

赤木

僕は従来、SDK(※18)を担当していて、
どうしてもCPUが好きなんです(笑)。
だから「ゲーム機がここまできたか」ということがうれしいですし、
このCPUで「こういうソフトが出せるんです」
というところを見ていただきたいです。

※18
SDK=Software Development Kit(ソフトウェア開発キット)の略。ゲーム機などのアプリケーションをつくるために必要な、開発ツールのセットのこと。

岩田

「CPUが好き」という表現も面白いですね(笑)。
変な癖がなく、期待どおりに動いてくれるCPUになりましたね。
はい、北野さん。

北野

筐体設計の立場から言わせていただくと、
パッと見はWiiと変わらないように見えますが、
便利になった点がいくつかあります。
まずシンクロボタン(※19)を、Wii Uでは蓋の外に出しています。
「Wiiリモコンのシンクロのしかたがわからない」という
お客さんからのお問い合わせが多かったと聞いていましたので、
わかりやすいように変更しました。
あと、WiiではUSBコネクタは背面のみでしたが、
Wii UではUSBコネクタを前にも配置していますので、
USB周辺機器を前から接続しやすくなります。

Wii U シンクロボタン+USBコネクタ
※19
シンクロボタン=WiiリモコンをWii本体と接続させるための「SYNC.」と書かれた赤いボタンのこと。

岩田

前と後ろの両方に、ふたつずつありますからね。

北野

はい。あと、細かいですけど・・・蓋がですね、
Wiiは前に出る構造でしたが、
今回は中に入り込むような構造になっています。

Wii Uの蓋(WiiとWii Uの違い)

岩田

おっ、おお~。
開けたときも邪魔にならないですね。

北野

・・・ということも、アピールさせていただきます!(笑)

岩田

塩田さんはどうですか?

塩田

設計の観点からコメントしますと、
単に性能向上のためだけに最新の技術を使うのでなく、
消費電力の低減とか、筐体を小さくつくることにも使うことで、
性能と電力、そしてチップサイズのバランスを
うまくとれた機械になったと思います。
それから、お客さんがゲーム以外のことも
もっと経験される機械になるだろうと想定し、
Wii U開発当初から、大きなメインメモリーを搭載するという
方向性を決めていました。
あと、もうひとつのアピールポイントとして、
HDMIのケーブルが
標準で付属していることを挙げさせていただきます。
HDの画像をひとりでも多くの方に
楽しんでいただきたいと思います。

岩田

じつは標準でHDMIケーブルが付いている機器って、
いまはまだ、世の中にあまりないんですよね。
従来のWiiで使っていたケーブルでも映りますが、
それではせっかくのWii Uの性能を
活かしてもらえないですから。
竹田さんは?

竹田

わたしはやっぱり、効率のよさです。
コンピューターを効率よく動かすには
メモリーの階層化(※20)が重要なんですけど、
今回は基本的なメモリー階層がピチッとできているので、
オーソドックスではありますけど、
“効率のいい機械”というのがいちばんの特色だと思います。

※20
メモリーの階層化=パソコンのメモリー階層構造の仕組み。人間の脳には、ある事柄が進行中の間だけ、それに関係する情報を記憶する“短期記憶”と、当面は関係しない情報を長期間保持する“長期記憶”と呼ばれる機能がある。パソコンも同様に、CPUを頂点に、その下に高速・小容量のキャッシュメモリーと呼ばれる短期記憶を置き、その下にハードウェアが管理する低速・大容量の主記憶、さらにその下にOSが管理する補助記憶装置を置く・・・というように、記憶装置を階層化して、データ転送・管理を行っている。

岩田

それもゲームキューブ以来の考え方ですね。
どんなに大きな数字を誇っても、
特定の条件でしか引き出せない性能なのか、
それとも実際に使ったときに安定して引き出せる性能なのか。
それは後者でなければ意味がない、という考え方は、
これまでの任天堂のハードやシステムづくりの
根っこにあったことですから。

竹田

そうですね。

岩田

以前、テレビゲーム機とずっと歩んできた竹田さんが、
「テレビに寄生してきたのがテレビゲーム機の歴史だったけれど、
 はじめてテレビに寄生しなくてもいい機械ができた」
という話をされていました。
Wii U GamePadでテレビゲームができるWii Uは、
リビングルームにおけるテレビゲーム機の存在を
ちょっと変えるかもしれませんね。
ちなみに、Wii Uだからできることで、
みなさんがワクワクしていることはありますか?

塩田

わたしはいつも子どもとテレビゲームで遊んでいますが、
Wii Uなら手元に画面があることで、
たとえば子どもがこっそり隠して何かをやっていて、
「え、何なに?」ってのぞき込もうとしたら、
子どもが「いや、見せないよー!」
っていうことが起こるわけですよね。
なんだか、いまよりも会話が増えそうな気がします(笑)。

岩田

北野さんはいかがですか?

北野

わたしにも小さい子どもがいるので、
Wii U GamePadであればタッチスクリーンを使って
いっしょにプレイできますから、
それをリビングに置いて楽しめたらなと思います。

岩田

はい、赤木さんはどうですか?

赤木

わたしには子どもがいないんですけど(笑)、
タッチスクリーンで対象をさわることで、
テレビに反映されるので、母や父、
とくに普段ゲームをあまりしない
母にもすすめやすいな、と思っています。

岩田

“コントローラーをさわったらテレビに反映される”
ということを生理的にピンとこない方が、
まだまだ大勢いらっしゃるんですよね。
でも、なぜDSがそういう方たちに
受け入れられたかといえば、
“タッチスクリーンをさわったら、そこに反応があるから”でした。
そういうものがテレビゲームの世界にもやってきて、
しかもさわった結果が、同じ部屋にいる人たちと
共有できるという面白さもありますね。
竹田さんは?

竹田

リビングルームでテレビが放送されると、
その話題をもとに、いろんな話が広がりますよね。
ちょっと疑問が出たら、Wii Uでパッと探すことができます。
そういった知識や好奇心をナビゲーションしていくかたちは、
みんなをハッピーにさせるんじゃないかと思います。

岩田

いわば、リビングルームの会話を増やす機械、でしょうか。

竹田

はい。そうなればいちばん、ありがたいと思います。
当然、ゲームを楽しく遊んでいただくことは
メインにありますけど。

岩田

Wii Uはテレビを専有しなくても遊べますし、
いままでよりも、電源が入る機会の多い
テレビゲーム機になるかもしれませんね。
では最後に、お客さんへのメッセージを、
赤木さんからお願いします。

赤木

頑張って、頑張って検査しています(笑)。
安心してゲームを遊んでいただきたいなと思います。

岩田

はい、北野さん。

北野

Wiiに引きつづき、リビングの中心に置いていただいて、
より多くの家族やお友達のみなさんと遊んでいただきたいです。
あと、同梱されているHDMIケーブルを
ひと手間かけて接続し直していただいて、
ぜひHDで楽しんでいただきたいと思います。

岩田

はい、塩田さん。

塩田

ゲームを満喫できるのはもちろん、
ゲーム以外にも遊べる要素をたくさん仕込んでいます。
たくさん電源を入れてさわっていただけるとありがたいです。
テレビとWii U GamePadの2画面を活用した新しい遊びで
リビングルームでの会話が増えるような可能性を感じていますので、
ぜひみなさんも楽しんでいただければと思います。

岩田

はい、竹田さん。

竹田

やっぱり、ハードは黒子です。
我々はようやく、SDKにバトンを渡したわけです。
お客さんにはその遊びかたや、コンテンツを楽しんでもらいたいです。
我々のつくったハード、および我々が関与しているSDKを使って、
さらにアプリケーションの方々に頑張っていただいて、
魅力あるコンテンツを届けていきたいなと思います。

岩田

はい、ありがとうございます。
ハードはたしかに黒子なんですが、
そもそもハードがないと、何ひとつできません。
実際にさわってみると当たり前のように動くんですが、
当たり前に見えることを当たり前に実現するために、
何千回もの熱実験をしたり、
何百回もテストパターンを考え直したり、
不具合解析をしたりしているわけですよね。
 
このハードをこの大きさにし、この性能にし、
この消費電力に抑え、この値段にするために、
たくさんの人たちが本当に汗をかいていることを
わざわざこの記事に目を通してくださる方にこそ
わかってほしい、それがわたしの率直な思いです。
 
さらにWii Uは、
Wii U GamePadに映像をレイテンシー(※21)なく
飛ばしつづけるという、
もうひとつのチャレンジも成し遂げています。
その話は「Wii U GamePad篇」で
くわしくお訊きしたいと思います。
みなさん、今日はどうもありがとうございました。

一同

ありがとうございました。

※21
レイテンシー=データを受け取るまでにかかる時間のこと。メモリーのデータ読み出しにかかる時間や、ネットワークで情報を受け取るまでの時間を指す。